『名著講義』
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- 2015/09/09(Wed) -
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藤原正彦 『名著講義』(文藝春秋)、読了。
藤原センセがお茶の水大学の新入学性に対して行ったゼミの講義録です。 新渡戸稲造の『武士道』にはじまり、内村鑑三『余は如何にして基督教徒となりし乎』、 福沢諭吉『学問のすすめ』など、錚々たるラインナップです。 これを毎週のゼミに向けて読むのは、1年生では相当しんどいと思います。 なのに、さすが、あえてここに飛び込む20名は、 毎回、藤原センセと対話ができる程度に読んだ感想を携えていて、 その気合ぶりが伝わってきました。 惜しむらくは、藤原センセ対女子学生個人という 1対1の関係の対話しか生まれておらず、学生同士の議論がなかったことです。 (収録されていないだけかもしれませんが) むしろ、この読書を経て、同年代の学生たちの間で、 どんな変化が生まれたのか、その議論を聞きたかったです。 また、当時はデフレ真っ只中で、不況にあえぎ、国家への冷めた意見が多かったせいか、 藤原センセは、かなり強い国家への思いを学生に向けて語っています。 『きけわだつみの声』では、編者の左翼思想により 収録されている手紙に偏りがあるという指摘を何度もゼミの中で行っていますが、 反対に、藤原センセの熱い国家論を、学生さんが素直に受け止めている姿も ちょっと大丈夫かいな?と思えてしまうところも。 もう少し、批判の目も養ってから、国家論は語った方が良いのではないかと懸念しました。 藤原センセは、もうお茶の水大学を定年退官されてしまっていますが、 今の、ナショナリズムに振れているご時勢において同じゼミをやるとすれば、 藤原センセはどのような本を選ぶのでしょうか。やはり同じラインナップなのでしょうか。 そして、どんな話をするのでしょうか。また、学生さんはどういう反応を示すのでしょうか。 時代の置かれた状況で、右にも左にも大きく振れる世論ですが、 そんな中でゼミのあり方、学生さんの反応の仕方が気になった読書となりました。
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