『安政五年の大脱走』
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- 2015/05/07(Thu) -
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五十嵐貴久 『安政五年の大脱走』(幻冬舎文庫)、読了。
江戸時代の脱走モノということで、 500ページ近い作品でしたが、チャレンジしてみました。 冒頭、井伊直弼の不遇の少年時代を描き、 その利発で素直な姿に共感を覚えるのですが、 そこから二十五年が経ち、江戸幕府の大老の位置を手にした直弼は、 いわゆる「井伊直弼」になってしまっており、 冒頭で覚えた共感はどうしたらよいのかしら・・・・・と気持ちの切替に戸惑いました。 少年の頃に一目ぼれした姫と瓜二つの娘に会い、それが小藩の姫と分かったら、 陰謀をでっち上げて、藩士51人とともに姫を急峻な山の頂上の廃寺に幽閉、 自身の側室になるように迫る・・・・・・。 って、もう、エロ親父まっしぐらな強引発想なのですが、 この行動と冒頭の描写が結びつかないんですよねぇ。 大老という権力により、どれだけ人が変わるのかということを暗に示しているのかもしれませんが 井伊直弼とともに、その右腕である外記の立場に最初に共感してしまったものだから、 この展開にはどうにも気持ちが落ち着きません。 井伊直弼の側に心が残っているものだから、 小藩である南津和野藩の面々にもすんなりと共感することができず、 結局、どっちつかずのまま読み終わってしまいました。 中盤までの展開というか、作戦が地味なだけに、 終盤のどんでん返しが、あまりに劇画的過ぎるような印象も受け、 全体的にバランスの悪い読書となってしまいました。 残念。 映画向きの作品なんでしょうかね。
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