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『裁判長!死刑に決めてもいいすか』
- 2015/04/23(Thu) -
北尾トロ 『裁判長!死刑に決めてもいいすか』(朝日文庫)、読了。

いつもの裁判傍聴シリーズかと思い、お気楽な気持ちで手に取ったら、
裁判員制度が始まる直前に、傍聴マニアの立場から、制度を考えてみようという
なかなか硬派な内容で、思わず襟を正して読んでしまいました。
ま、ウィットに富んだツッコミは健在なのですが。

裁判員制度が始まる前後は、メディアもいろいろ取り上げていたこともあり、
「もし自分が選らばれたら・・・・」なんて考えていましたが、
その後、自分はもちろん、周囲でも裁判員になったとか、候補になったとかいう人は居らず、
急激に関心は下がってしまいました。
ホントは周囲で経験者がいるのだけれど、本人が話してないだけなのかしら?

自分がなったら・・・・で考えていたときは、
裁判の内容が理解できるかしら、正しい判断ができるかしら、
自分の意見を他の裁判員に対して主張できるかしら・・・・・てなポイントだったのですが、
本作を読んでみて、著者は別の観点から裁判事案を捉えていました。

今回の判決で厳罰化のバーを下げることになると、それが前例となり今後の事案に影響する、
80歳の被告に懲役10年を課すべきなのか、
反省の弁、謝罪の言葉が無い被告を死刑にすべきか、無期懲役で反省を促す時間を与えるべきか、
このような、社会への影響などを勘案して、非常に幅広い見地から裁判を考えています。

しかも、幅広く考えた上で、判決を自分で下す際の判断ポイントは
非常にシンプルな形で絞り込んで、ほぼ1点に集中して裁判に臨んでいます。

うーん、これは並みの人間ではできない情報整理力と判断力です。

傍聴マニアという経験による部分も大きいのかとも思いますが、
それ以上に、著者の人間力といいますか、思考力により、
このような優れた整理ができているのではないかと思います。

もし、裁判員6人の中に、このような論点整理ができる人が1人も居なかったら・・・・・
被告も検察も弁護士も裁判官も、不運と嘆くしか無いのでしょうか・・・・。

そんな著者でさえ、自身が初めて模擬裁判を裁判員役として経験してみて
新たに気づいたところもあるようですし、人が人を裁く、そのために協議をするというのは
本当に難しいことなんだなと再認識しました。

良い本でした。


裁判長! 死刑に決めてもいいすか (朝日文庫)裁判長! 死刑に決めてもいいすか (朝日文庫)
北尾トロ

朝日新聞出版 2010-08-06
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