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『WILL』
- 2015/04/08(Wed) -
本多孝好 『WILL』(集英社文庫)、読了。

気づけば3年半ぶりとなってしまった本多作品。
こちらは、以前に読んだ『MOMENT』の続編です。

前回の感想では、十分に作品を楽しみながらも、
「葬儀屋の森野を活かしきれていない気がする」と書いたのですが、
本作では、その森野が主人公です。

いやはや面白かったです。

高校生のときに両親を事故で亡くし、
家業の葬儀屋を継ぐことになった森野。
現在もまだ20代での葬儀屋社長としてフル回転・・・・・ではなく、
商店街に佇む地域密着型葬儀屋では月に2回葬儀が入れば御の字という経営状態。

そんな葬儀屋事情も垣間見えて興味深いのですが、
やはり、このシリーズは、人の悪意というものの取り扱い方が
非常にドラスティックかつナイーブで、絶妙のバランスで成り立っています。

それは、各物語の主人公となる葬儀屋のお客の事情が直接的な原因ですが、
主人公である森野の精神のバランスのなせる業だと思います。

表面的には、男っぽいぶっきらぼうな言葉遣いをし、
会話もユーモアにまぶして上手く立ち回ります。客あしらいも上手い。
しかし、一歩内面に踏み込むと、亡くなった両親への思い、
葬儀屋という稼業への思い、商店街の幼馴染の恋人への思いが交錯し、
しかも、外向けのアクティブな姿勢とは裏腹に、内面では非常にもろさを感じさせます。

このあたりの描写は、下手な書き手だとアンバランスさが目立って
読むのがしんどくなってくるのですが、著者は流石の筆致で書き進めていきます。

死というものに日々触れる主人公だからこそ、
なぜ生きるのか、何のために生きるのか、どうやって生きるのかということを、
自分一人で必死に考えています。
誰にも相談できずに。

本作の葬儀屋の面々のキャラクタ設定からすると、
ポップなユーモア小説にすることもできたでしょうが、
それを、深みのある作品にもっていっているので、読み応えがあります。

本多作品、いいわぁ。


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本多 孝好

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