『風に舞い上がるビニールシート』
- 2014/12/31(Wed) -
森絵都 『風に舞い上がるビニールシート』(文春文庫)、読了。

直木賞受賞短編集です。

最初の方に収められている作品は、
面白く読みましたが、それほど強い印象を残すものではありませんでした。

しかし、後半に入って、ぐいぐいと攻めてくる感じを受け、
流石の直木賞受賞作だと思うに至りました。

表題作「風に舞い上がるビニールシート」は、何の前知識もなかったので、
女性の日常生活を描いた作品かしら?ぐらいに思っていたのですが、
何の何の、国連難民高等弁務官事務所の仕事が舞台のお話でした。
ソマリア、コソボ、アフガンといった単語が作品の中を飛び回ります。
なのに作品の舞台は平和な東京。
まずはこのギャップが、主人公の置かれたアンバランスな境遇を象徴しています。

東京事務所の現地採用一般職ということでフィールドに出たことがない主人公。
しかし、職場結婚した旦那は毎1年単位で危険地域へと出向き、会えるのは年に数日。
結婚生活は数年で破綻し、そしてついに元旦那は危険地域で銃弾に倒れる・・・・・。

元旦那と知り合う前の過去を何も知らなかった、
元旦那がどんな場所で仕事をしていたのか想像も実感もなかった、
元旦那とはそもそも結婚生活で何かを共有し合えていたのかも自信が持てなくなった、
それは、自分が、元旦那が使命に燃えていたフィールドに出向くことを何度も拒絶したから・・・・。

この絶望感は耐え難いですよね。
なんせ自分の決断により、チャンスを拒絶していたのだから。元旦那の居場所を拒絶していたのだから。

国連という世界中のエリートが集まり時間に追われながら仕事をする厳しい環境、
広報というマスコミにたかられるストレスフルな役割、
そんな状況に置かれながらも、この作品の中に悪意を持った人が出てこないことが救いです。

自分の人生に判断を下し、何かを捨てることの厳しさを知りました。

他の収録作では、「ジェネレーションX」のテンポの良さと、その裏に隠れる人生の哀愁、
「守護神」の仏教文化と現代人の折り合いの付け方など、
いろいろと興味深い側面で日常を見ることができ、
満足度の高い読書となりました。


風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)
森 絵都

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2016/10/17 23:14  本と旅とそれから ▲ top

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