『よろこびの歌』
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- 2014/12/07(Sun) -
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宮下奈都 『よろこびの歌』(実業之日本社文庫)、読了。
とある新興の女子高校における2年B組メンバーの 1人1人が抱えた思いを紡いでいく連作短編集。 有名なバイオリニストの一人娘が、 音楽学校の受験に失敗し、新興の女子高に入学する。 屈折した思いを抱え、クラスメイトとも距離をとって過ごす毎日。 しかし、校内合唱コンクールをきっかけに、音楽の楽しさを再び知り・・・・・。 と、まぁ、要約すると青春王道な感じになってしまって、 つまらない紹介になってしまいますね。 本作では、この音楽学校受験失敗の女の子をはじめ、 望まないままに入学してしまった女子生徒たちを描いていきます。 スポーツ万能だったのに体を壊して・・・・・、 美人な姉と常に比べられる環境から逃げ出したくて・・・・・・、 裕福ではない家業の実態をクラスメイトの生活レベルから思い知らされることに・・・・・、 様々な悩みを抱え、卑屈になってしまっている少女たち。 しかし、1つの歌、そして1人の声楽家の卵と出会うことで、 彼女たちの人生は、新たな局面を迎えます。 卑屈な一面を見せる彼女たちも、この歌に出会うことで、美しく生まれ変わります。 嫌な言い方をすると、美し過ぎる嫌いがあるかも。 青春モノには悪役が付き物ですが、本作には悪役らしい悪役は出てきません。 ちらりと悪意を覗かせる人も、その理由がきちんと語られることで、 止むを得ない悪意という位置づけになっています。 小説としては、少しきれいにまとまり過ぎている感じもしますが、 しかし、悪意を持ち続け、それを発揮していくのは、 それはそれでエネルギーの要ることなので、 一般的な高校生というのは、本作に登場するような穏やかな悪意に留まるのかもしれませんね。 あんまり小説じみた過激な悪意は、現実世界には馴染まないのかもしれないと 本作を読んでいてい感じました。 さわやかな青春小説です。
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