『感染遊戯』
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- 2014/09/28(Sun) -
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誉田哲也 『感染遊戯』(光文社文庫)、読了。
姫川シリーズの第5弾。 うーん、まだ第2弾までしか読んでない・・・・・と思いつつ、 このシリーズの人間関係そのものにはあんまり興味を持てないでもいるので、 ま、いいか、と先に手をつけてしまいました。 そしたら、スピンオフだったようで、主人公は勝俣警部補。 シリーズの連続性を気にしなくても読めたのはラッキーでした。 最初にポコポコと、過去の殺人事件がいくつか語られます。 時代も、登場人物も全くバラバラなので、 「あれ?短編集だったっけ?」と思わず感じてしまうほどなのですが、 唯一の共通点は、被害者が元エリート官僚で今は天下りの悠々自適生活ということ。 サスペンスとして読んでしまうと、 大した謎解きは出てきませんし、真相も予想の範囲内で、面白さはあまり感じないかもしれません。 しかし、官僚組織に対する世間一般の憎悪という面を考えると、 この作品が描く社会問題は、非常に興味深いものでした。 私自身、官僚ではないですが、官僚のモノの考えに近いものを持っているという自覚があるので 国益のためには時には憎まれ役を買って出なければいけない、それが官僚だ、 もちろん、憎まれるような表立ったことにならないよう、水面下で仕組みを作るのが デキル官僚の姿だけれど・・・・みたいな考え方を持っています。 国益をもらたす官僚と、天下りで利権を吸う官僚とは 本質的に違うものだと私は思うのですが、 なかなか、そこは、世間様からは理解されずに、一緒くたになってしまっていると思います。 それを、世間とはこういうものだから、仕方がない・・・・・と割り切った瞬間に、 この本で描かれたような社会の憎悪を集約して行動に移させるような仕組みが 是認されてしまうというところに、この本が描いた内容の怖さがあるのかなと思います。 読んでいて、一番強く印象に残ったのは、 この憎悪を行動に移させる仕組みが、今の世の中であれば、 簡単に実現できてしまうという、その身近なリアリティ感でした。 現在、日本の空気が、右に寄っていっているのも、仕組みとしては同じような形で 空気が醸成されていっているのだと思います。 指示・命令されたわけではないのに、攻撃的な行動に移ってしまう、 攻撃的な行動を、善きものとして肯定できる思想をもっているかのように錯覚してしまう、 こういう社会は、一線を越えたときに、非常に恐ろしい事態になる可能性があります。 そういう怖さを読み手に想像させる作品でした。
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