『ポトスライムの舟』
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- 2014/06/02(Mon) -
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津村記久子 『ポトスライムの舟』(講談社文庫)、読了。
芥川賞受賞作には、なかなか触手が伸びないのですが、 本作は面白かったです! 29歳、女、独身、母親と実家で同居、 工場勤務、バイトを掛け持ち、自由になる時間もお金もない、 自分の年収163万円は、世界一周旅行の代金と同じだと食堂ポスターで気づく・・・・。 (これって、ピースボート的なヤツですよね・・・・きっと) 雇用が不安定な現在(アベノミクスの今からすると、ちょっと前!?)、 その不安定さの末端で酷使される女性労働者の日常を こんなにリアルに捉えている作品には、初めて出会いました。 主人公が、メンタル的な理由で前職を辞めて工場勤務にしたという経歴も、 今の時代を感じさせる要素が満載です。 山田詠美が、芥川賞の選評にて「『蟹工船』よりこっちでしょう」と言ったのに納得。 うちの会社の派遣さんとかパートさんとか、 多分、みなさん100万円~200万円の年収で、毎日働いてるんだなぁと、再認識。 単純労働だと言ってしまえばそうなんですが、 毎日単調な仕事を繰り返す苦痛も、これまたあるわけでして。 いろんな人が何かを捨てている上に、 企業活動なり、経済活動なり、国家運営なりが成り立っているんだなぁと。 一方、併録されている「十二月の窓辺」は、 職場での女性係長からの容赦のないパワハラに晒される主人公。 主人公の立場に共感しすぎると非常に読むのが辛い作品ですし、 役職側の目線で読むと、この係長の卑怯なところが手に取るように分かり、 「最後の最後に、ガツーンと食らわせてくれないかな」と期待してしまいます。 しかし、私が気になったのは、同僚のPさんやQさんの立場です。 気弱で愚図な主人公が、会社員として使い勝手のよくない人材であることは分かるのですが、 PさんもQさんも、そんな主人公を育てようとも、叱ろうともせず、ただ傍観しているだけ。 必要最低限の関わりしか持とうとしません。 これって、自分自身を振り返ってみると、もしかして私も・・・・・と思ってしまう恐怖が結構あります。 若手の危なっかしい行動に見てみぬフリをしてしまったり、 ミスをしても「私が対応しておくから手を出さないで」とやってしまったり、 結構、私自身、自分でも冷たいなぁと思うことが多々あります。 (だったら直しなさいよと言われそうですが・・・・・) ミスを叱るとか直すとかいうレベルでなくても、 ちょっとした雑談を振られても、すげなく返してしまったりしてしまうところがあり、 結構、周りの若い人に気を使わせてしまっているかもしれないと、 この小説を読んで反省しました(苦笑)。 あんまり続けざまに、この手のワーキングプア小説を読んでしまうと 気が滅入ってしまいそうですが、著者の作品は他も挑戦してみたいと思います。
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