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『東京島』
- 2014/04/05(Sat) -
桐野夏生 『東京島』(新潮文庫)、読了。

嵐のために難破して無人島に辿り着いた主人公夫婦。
生き残るために彼らがしたことは・・・・
というと何だかアドベンチャー風ですが、私は本作を権力論の本だと思って読みました。

自分の権力をどう行使するか、どう維持・向上するかという直接的な面だけでなく、
集団の中で自分の権力を浸透させるための知恵や伏線といった間接的な面まで
いろんな視点から描かれていて面白かったです。

この無人島を「トウキョウ」と名づけたのは、若者のノリのような書かれ方でしたが、
「オダイバ」「コーキョ」「チョーフ」「トーカイムラ」といったネーミングが秀逸です。
そして、当然、その名前にふさわしい権力構造が形作られていくわけで。

主人公夫婦が最初に到着し、
その後20人もの日本人の若者がやってきて、
さらには中国人グループが来て、
しかも、以前に人が立ち寄った形跡も
さらに、さらに・・・・・って、
どんだけ人の出入りがある無人島やねんっ!と思ってしまいますが、
ま、そのご都合主義は横に置いておいてもいいかなと思えるほど権力闘争が面白かったわけで。
権力闘争が起こるには、1つの集団内でのバランス変化もそうですが、
やはり外圧というものがモノを言うわけです。

そして、その権力関係の中で自分のポジションが見つけられなくなった人間は、
その構造の外部に逃げるか、その構造の中で発狂するかのどちらかになるわけで。

フーコー的な分析の目で見ると、面白い作品だと思います。

エンタメ作品としては、ストーリー展開が雑なように感じたので、
あまり周囲に薦める感じの作品ではないですね(苦笑)。


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桐野 夏生

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