『触発』
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- 2014/03/23(Sun) -
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今野敏 『触発』(中公文庫)、読了。
連続爆弾テロ事件を描いた作品。 地下鉄での爆弾テロを解決するため、 政府の危機管理対策室は、警察庁に自衛官2名を送り込む・・・・。 当然、「事件の解決」という大義名分だけでなく、 外交や軍事の観点での政府としての思惑あってのこと。 このあたりの理屈と解説が興味深かったです。 また、送り込まれた自衛官2名も 警察官に向かって「われわれは軍人です」と言い切るだけの腹の据わりよう。 この辺のぶっちゃけ感も面白かったです。 ただ、事件の推理という点では、駆け足過ぎて雑な印象です。 犯人側を推理で追い詰めるというよりは、 運とまぐれで行き当たったみたいな。 ま、組織力を活かした捜査というのは、往々にしてこんなものなのかもしれませんが。 大量の情報からの絞り込みもサクッと進んで怪しい人物が特定されており、 ちょっと物足りなかったです。 犯人像も腑に落ちず。 海外から日本に戻ってきた際の、日本についての情報の持たなさぶりとか、 そこから日本という社会に対する恨みを抱くプロセスとか。 本作を通して思ったのは、 「組織機構」とか「社会分析」とか、マクロな視点では興味深い分析をするのに、 個人の感情を描くというミクロな視点が稚拙なように感じました。 リアリティがないというか。 あと、その人の強い思いを表すのに言葉を重ねすぎていてクドイと感じました。 本当の思いは、軽々しく言葉を消費せず、内的な思索に沈んでいくものだと私は思っています。 ということで、本作の枠組みは面白かったですが、 登場人物たち個人個人のストーリーとしては不十分かなと。 能代教授の「日本人は平和な日常を破壊されることに慣れていません」という言葉。 3.11の直後に私が考えていたことと重なる部分が多く、 もし能代教授が実在の人物だったら、その著作を読んでみたいと感じてしまいました。
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