『島津奔る』
- 2014/03/06(Thu) -
池宮彰一郎 『島津奔る』(新潮文庫)、読了。

朝鮮出兵~関が原の戦いにかけてのお話ということで、
「我らが高虎さんも出てくるかな♪」という感覚で読み始めたら、
主人公・島津義弘に惹きつけられてしまいました。

朝鮮出兵からの退却時、20万人の明・朝鮮軍を、たった数千人の兵で倒し、
さらに他の日本側の陣営の退却の時間も稼いで、戦傷の拡大を防いだという剛の者。
その戦闘シーンの描写の面白さに、一気に惹き込まれました。

明・朝鮮軍は、島津を「石曼子(シーマンズ)」と恐れたとのこと。

「しまづ」からの「シーマンズ」ですが、これは“ Sea Mans' ”に通じる音。
後に琉球貿易で財をなす島津藩にとって、
「海の男」と聞こえる呼び名は、未来を予見しているかのようです。
「島の港」の「島津」という名前も、いっそう際立って見えます。

朝鮮半島から戻った後は、家康と秀吉家臣たちとの政治的な駆け引きがあり、
そして下巻では関が原の戦いへとなだれ込んでいきます。

この大きな2つの戦において、国許の兄・義久の支援を受けらず、
また島津義弘本人にとっても望まぬ「大義なき戦い」を強いられることになります。
この苦しい状況下での冷静な判断、機を見ての勇猛な振る舞い、
そして、それにぴったりと付いてくる家臣団との信頼関係。
凄いですわ。

このような立派な人物が、日本の中心にではなく、
遠く離れた九州の端っこに生まれてくることこそ、
日本の戦国時代における人材力の層の厚さを感じさせてくれます。
ま、反対に、日本全国に優秀な人材が揃っていたからこそ、
誰かが突出するのではなく、戦国時代という戦乱の期間が成立したのでしょうけれど。

歴史上、戦国時代を経験している国は、
中国にしろ、東ローマ帝国にしろ、イスラム帝国にしろ、
素晴らしい人材を輩出する人的資源の土壌を育んでいるのだと、本作を通して認識しました。

大きな歴史の中の、1人の優秀な武将の話。
その大局観と個人の非凡なる才能との対比が面白く、
これぞ歴史小説!という醍醐味が味わえる作品でした。

ところで、高虎さんですが、登場したものの、良くも悪くもない書かれ方で、
登場人物の1人に過ぎない扱いでした。
ま、家康の小間使いのような描き方をされなかっただけでもマシな方でしょうか・・・。

一方、小早川秀秋の書かれ方は、まぁ、分かっているとはいえ、
筑前や岡山の皆さんは、不本意な思いをされているのではないかと、
同じく歴史小説で否定的に扱われがちな高虎さんの地元民として、
勝手に心を寄せてしまいました(苦笑)。

本作の登場人物の描写で、主人公の義弘と並んで興味深かったのが、石田三成です。
根っからの官僚人間として描かれていますが、
大名・武士の心が分かっていない一方で、家臣たちの忠誠心は高く、
また、天下を支配する欲は強いのに、自分の蓄財には関心が無い、
政治的な計略を巡らすのに、戦場での奇襲は好まないなど、
その独特な思考回路が興味深かったです。
しかも、作品の中では、その複雑な思考回路が、きちんと1人の人物として
結びついて出来上がっていることに驚きました。

あー、面白かった!


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