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『八甲田山死の彷徨』
- 2006/09/07(Thu) -
新田次郎 『八甲田山死の彷徨』(新潮文庫)、読了。

古本は、大抵ブックオフで50冊程度のまとめ買いをするので、
後になって「こんな本買ってたんだ」と思うようなことが結構あり、
この本もそんな一冊。
もしかすると、柳田邦男氏あたりが推薦していたのを買ったのかもしれませんが、
記憶定かならず。

で、「どんな本かな?」と不安に思いつつも読み始めてみると、
序章からハマッてしまいました。
ダラダラとした前置きもなく、サクッと本題に入る文章が心憎いです。

日露戦争開戦を前に、八甲田山系で雪中行軍の訓練を行い、
見事生還を果たした弘前三十一連隊の徳島部隊と
生還率5%となった青森五連隊の神田部隊。
物語性の強いノンフィクション作品ですが、
ともすれば組織論についての有益なテキストにもなりそうです。

隊長の人物像、
生い立ちから来る環境や背景の違い、
上官の人物像、
部隊の構成人員の違い、
準備時に得られた経験の違い、
天候の影響、
運/不運、
・・・・・・・・・・・・

一つ一つの要素は小粒でも、
それらが重なり合うことで大災害という結末を迎えてしまう・・・。
それは、どんな人災や事故事件においても言われることであり、
八甲田山の遭難事故においても、
これらの負の要素を個々の事象に留め置くことの出来た徳島部隊は生還し、
負の連鎖を断ち切ることができなかった神田部隊は壊滅状態となった・・・。

様々なノンフィクション作品から学ぶことのできる事故防止の要とは、
結局「負の連鎖の遮断」に尽きると思いますが、
たとえ同じ教訓しか得られなくとも、
実話が持つ物語の力強さの前には、惹き込まれて読み進めてしまいます。

雪山での猛吹雪とそれに伴う人体への影響の描写が生々しく、
気象学者であったという作者の本領発揮です。
また、読後に作者のことを調べてみたら、数学者の藤原正彦氏のお父様ということを知り、
科学者でありながら文章の才能がある血筋なのだと驚きました。


八甲田山死の彷徨
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コメント
--
TBありがとうございます!
藤原正彦さんと親子関係だったのですね。
なるほどー。
理系の頭と文系の頭、両方持ち合わせている親子なのか、と深く感動いたしております。
それにしても、手に汗握って、その汗が凍るような感覚を味わう作品でした。
2009/04/20 11:31  | URL | sakura-kanade #-[ 編集] |  ▲ top

--
sakura-kaneda様

TB&CMありがとうございます。
鋭い観察力とそれを解釈して言葉にする力をもっているというのは
本当にうらやましい才能です。
「読ませる力」というものに圧倒させられる一冊ですね。
2009/04/20 20:42  | URL | かもめ組 #obYDgEv2[ 編集] |  ▲ top


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