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『「夏彦の写真コラム」傑作選1』
- 2013/10/27(Sun) -
山本夏彦著、藤原正彦編 『「夏彦の写真コラム」傑作選1』(新潮文庫)、読了。

夏彦翁のコラムを、藤原センセが編集したもの。
すでに読んだコラムも含まれていると思いますが、
何度読んでも切れ味抜群。

今回は、「写真コラム」と銘打っているだけあって、
週刊新潮にコラムを掲載していた際の写真も何点か載っています。

全てのコラムに写真が付いていたはずなのですが、
本作にするにあたってチョイスされた写真が、これまた強烈です。

初っ端に、いきなり原爆で亡くなった方の遺体の写真。
戦後6年経って「アサヒグラフ」に掲載された写真だそうですが、
戦争の恐ろしさや人間過ち云々を考える前に、「死って怖い」「死体って気持ち悪い」という
感覚的な嫌悪感がぞくぞくと湧き上がってきました。
「アサヒグラフ」の特集が話題になっていた当時に、
「週刊新潮」にこの写真が転載されても、受け入れる気持ちの準備は相応にあったと思います。
しかし、今の時代に、コラム集という形で文庫本を読んでいる際に、
この写真に遭遇するのは避けたかったなぁという思いです。
藤原センセなりの思いがあってのチョイスだったのでしょうが・・・。
こういうヤワな読者へのムチなのかもしれませんね。

他の写真も、「役者のくせに勝手に太る」と題し、歌舞伎役者が太り過ぎだと非難したのち、
「江守徹の太ったのに驚いた。気味が悪い。」と書き連ね、江守徹の笑顔の写真を掲載。
これを「週刊新潮」上でやったというのだから、思い切りの良さに脱帽。
夏彦翁にしかできませんわ。

本当は、文章だけ読んでいても、江守徹のことをズバッと批判しています。
「夏彦翁、いつもどおり口が悪いなぁ・・・(苦笑)」なんて思えるはずなのですが、
写真が付くと、その口の悪さが際立って見えてきます。

というわけで、本作で感じた最大の事は、「写真の威力」というものです。
「写真は『ありのままの事実』を突きつける」ということは分かっていましたが、
文章と並んで掲載されることで、文章のパンチ力、写真のパンチ力ともに
大いに増すものなのだと実感しました。

そして、『ありのままの事実』とカッコ書きにしたのは、
「客観的な事実なんてない」と私が思っているからです。
江守徹の写真も、説明書きを「日本を代表する有名俳優」と付ければ、
その笑顔は堂々とした俳優に見えるはず。
「太り過ぎて気味が悪い、えくぼを出して笑ってる」なんて書かれれば、
確かに気味が悪く見えてしまう(苦笑)。

『事実』なんて、切り取り方、見せ方で、どうにでも作れてしまうということを
改めて認識し、情報というものの怖さを痛感しました。


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