『キング&クイーン』
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- 2013/10/20(Sun) -
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柳広司 『キング&クイーン』(講談社文庫)、読了。
柳広司作品は、歴史のとある場面を切り出して ミステリ仕立てにアレンジする作風だと思っていたので、 現在の世界の舞台にした護衛サスペンスと知り、意外に思いました。 しかし、読み進めていくと、物語の軸をなすのはチェスの歴史。 その歴代のチャンピオンたちの流れの中にいる現・チャンピオンの護衛ということで、 チェス文化が根付いている地域の人々にとっては、 れっきとした歴史の一部なのかもしれないと思い至りました。 私が小学生の頃、クラスの男の子たちを中心に将棋ブームが起こり、 私も皆の対局を観戦する輪に入れてもらってました。 で、家に帰り、父に将棋の手ほどきをしてもらい、 飛車角落ちの状態で何とか父との対戦が形になるくらいにはなりました。 そんな時、叔母の家の大掃除の手伝いに行ったときに、 チェス盤が出てきて、将棋に似ているゲームだと聞いて、もらってきました。 父も詳しいルールを知らなかったので、超・簡略化して遊んでみましたが、 正直、将棋ほど面白いとは思えませんでした。 将棋のように駒が成ったり、取った駒を再び使えたりという変化がないことが 将棋よりもつまらないもののように思えてしまった原因です。 ただ、後に何かの本で、「これは西欧と日本の戦争観・捕虜文化の違いによる」と読み、 比較文化論的な面では非常に興味深く感じた思い出があります。 とまぁ、本題から外れてしまって何ですが、 本作では、「今起きている護衛劇」「主人公のSP時代の話」「アンディのチェス戦歴」 この3つの物語が同時並行で語られていき、どれにもワクワクしました。 1つ1つの物語は、正直、本1冊にするには物足りないのですが、 3つを絡めていくことで、ワクワク感が醸成されていき、読む手を止められませんでした。 現在起きている事件の真相は、正直、風呂敷を広げ過ぎて内容は薄っぺらかったです。 真相究明を期待して読んでいた人は、ガッカリだったのではないでしょうか。 登場人物たちのキャラクターで言うと、バー「ダズン」の面々は活かせていませんでしたが、 SP仲間たちは魅力的でした。『ジョーカー・ゲーム』に通じる面白さを感じさせます。 チェス自体への私の興味は、結局、本作を通してもあまり盛り上がらなかったのですが、 実在するチェス王者たちの奇人ぶりには関心が向きました。 将棋や囲碁の世界の実力者たちは人格者が多いイメージがありますが、 チェスに限って、なぜ、こんな風に我が儘爆発な感じになってしまうのでしょうか。 これも、チェスや将棋が歴史の中でどのような地位でどのような役割を担っていたのかの 違いによるものなのでしょうかね。 将棋も囲碁も、武士のたしなみという側面により、人格者として振る舞うことが 運命づけれているように思いました。
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