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『ボトルネック』
- 2013/01/15(Tue) -
米澤穂信 『ボトルネック』(新潮文庫)、読了。

もっとラノベっぽいノリかと思っていたら、意外と面白く読めました。
パラレルワールドものなのですが、結構、重たい展開なんですよねー。

不仲な両親、事故で植物人間の兄、恋人は崖から転落死、
全てに見放されたかのような主人公の特技は「受け入れること」。
そんな主人公が別世界に飛ばされ、そこで出会ったのは「姉」。
その世界では自分は存在せず、仲の良い両親と元気な兄と姉の4人家族。

ところどころ違って見えるこの世界について、違っている理由が、
自分と「姉」との行動にあることが分かってきます。
そして、分岐点になった行動の1つ1つが、いずれも「姉」の方で良い結果を生んでいる。
それが、些細なことなのではなく、人生の幸不幸や、人の生き死にとして
厳然とした結果の相違を生んでいるのです。

これって、知った時の衝撃は凄まじいですよ。
自分の行動が他人の人生を終わらせてしまったりしているのですから。
主人公が終盤に見せる苦悩の重さは、並々ならぬもののはず。
それを一撃で破壊するかのような最後の一行。
うーん、容赦ないです。

ストーリーでやや違和感があったのは、
人の生き死にを左右するほどの影響力を持ちながら、
影響が及んでいる範囲がごくごく限定的で、
日常生活の大半においては、ほとんど差が生じていないこと。
この設定は、ちょっと都合よすぎなように感じました。
バタフライ・エフェクトのような要素を使うなら、それこそ至る所に影響が出て、
全く異なる世界になっているでしょうからね。

ま、そこはご愛嬌かな。
あんまり気にならなかったのは、「姉」のキャラクターによるところが大きいかも。
この登場人物は、ラノベの香りをぷんぷん臭わせているのですが、
意外とすんなり読めちゃったんですよねー。不思議。
こういうサッパリした女性のキャラが好きなのかもしれません。

一方、ノゾミとフミカのキャラクター設定には、
リアリティの無さをひしひしと感じてしまいました。
重要な役回りのキャラですが、ポイントでしか出てこないので耐えられたのかも。

ま、文句も言いつつ、全体的には楽しめました。


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米澤 穂信

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