『ゴサインタン』
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- 2012/12/09(Sun) -
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篠田節子 『ゴサインタン』(双葉文庫)、読了。
ネパールから農家に嫁いできた陰のある女。 言葉は通じず、日本の習慣にも馴染めず、何となく家の中で浮いたままの存在だったのが とある出来事をきっかけに、不思議な現象を起こし始める・・・。 オカルト的な要素を期待して読み始めたのですが、 新興宗教が出来上がっていく過程を見ていくうちに、 そういう組織論的な部分に関心が向くようになり、 そういう組織に取り込まれずにいる主人公の男のことが気になったら、 今度は、その男の無気力な生き方が呼ぶ暗い闇が怖くなってきました。 なんで、こんなにも自分の人生に無関心になれるのだろうかと。 普段だと、こうやって自分の目が移って行ってしまう時は、 「この本は何が書きたいのだろうか?」と軸のブレが気になってしまうのですが、 本作は、その重量さから、軸のブレは気になりませんでした。 むしろ多面的な作品の世界の中で、自分の関心の軸を探していたような感じです。 地方の旧家の農家を継いだものの、 農業に身が入っているわけでもなく、拡大する気もなく、 副業の家賃収入で生活が成り立っている現状。 旧家の立場で顔役としてあちこちに駆り出されるものの、 未だに周囲の頭にあるのは父親への信頼であり、主人公は当てにされていない。 こんな閉塞感漂う環境で40歳まで過ごし、恋人も作れず、ネパール人の妻を義務感から娶る。 この主人公の人生の空しさを思うと、オカルト的な出来事よりも、 数段恐ろしいことのように感じてしまいました。 結局、作品中では、オカルト的な要素には答えが用意されていないのですが、 主人公の男自身には答えが訪れるエンディングになっているので、 物語としては、上手く締まったように思いました。
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