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『熱球』
- 2012/04/18(Wed) -
重松清 『熱球』(新潮文庫)、読了。

30代後半の父親が振り返る、自分の高校球児時代・・・・
・・・・・・これはもう、感動青春スポーツモノの王道ですよ。

県立高校の野球部が、まさかの県大会で決勝進出。
しかし、決勝戦前夜の不祥事で、部は決勝戦を辞退。
その過去を引きずる、当時の3年生も、いまや38歳。
それぞれの人生で、さまざまな転機を迎えています。

その舞台設定を、中国地方のとある都市に置いたことで、
東京からUターンしてきた男、新たに地元で商売に挑戦する男、
地元の高校で教師を務める男、地元にいられなくなった女、
それぞれの立場が際立って、興味深かったです。

そして、主人公の家族が、これまた素敵なメンバーで。
妻は、自分の研究のために単身渡米してしまうようなアクティブな人で、
主人公の親族からは評判が悪いですが、夫や娘に目を配り、
距離があるならあるなりのコミュニケーションのとり方が上手い人だなと感心しました。

また、娘も、大人の事情をきちんと解釈し、
大人びたことを言う場面と、大人しく控えている場面とを
しっかり区別してわきまえている、頼もしい子供です。

彼女達のコミュニケーションを見ていて、心がふわっと軽くなるものを感じました。

それに比べて、主人公の優柔不断さといったら・・・・(苦笑)。
一歩が踏み出せないことを、自分でも重々認識していて、
その都度後悔しているので、読んでいて、なんだかガクッときてしまいます。

そのガッカリ感は、半分は、主人公のような一家の大黒柱への失望。
もう半分は、同じようなところがある自分を見ているような自己嫌悪から来ていると思います。
愚図なところにイライラしてしまいます。
最後まで、それがあまり改善されなかったのは残念。
ま、みんな、自分というキャラクターを抱えて生きていくんだということなのかもしれませんが。

野球に関しては、ザワ爺、最後まで感動させてくれましたなぁ。
私は、あんまり精神論の部活動は好きではありませんが、
ザワ爺のような人との繋がりが綿々と続いていく古きよき部活動の世界は好きです。

いろんな角度で考えさせられた一冊でした。


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重松 清

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