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『科学の終焉』
- 2011/11/26(Sat) -
ジョン・ホーガン 『科学の終焉』(徳間書店)、読了。

ずっと、BOOK OFF で気になっていた一冊。
しかし、いつまで待っても1,000円を割り込まないので、
なんとなく放置してしまっていました。
今回、神田古本まつりで500円で見つけたので、早速、購入~。

平たく言うと、「科学の世界で見つけるべき事象は、そのうち全て見つけ終わってしまい、、
収穫逓減の時期に入ってしまう」という、悲観的な内容です。

このテーマを追いかけて、様々な科学者のもとに著者がインタビューに行くのですが、
単なるインタビュー録ではなく、そのインタビューを通して著者が何を思ったかが記録されています。
従って、インタビュー相手の主義思想については、ちょっと分かりにくいです。
というか、科学の素人には、その人の業績自体が良く分からない(苦笑)。

ただ、科学者も、科学そのものについて、このような質問を面と向かってされると、
様々な答えが返ってくるのだというところが、興味深かったです。
それも、自信を持った回答から、曖昧な回答まで程度も様々。

私なりの感想としては、科学の舞台が私たちの日常生活から
どんどん遠くなっている(ミクロの世界とか、深海とか、宇宙の果てとか)ことで、
科学そのものが哲学と接近してきているように思いました。
つまり、最新の科学理論と、神とは何かというような哲学論との
境目が曖昧になってきているのではないかと思うのです。

検証も反証も難しいようなテーマは、結局、結論が出ないんですよね~。
本作では、それは、すでに科学ではないという扱いになっていましたが、
主張している本人は、科学か科学でないかということは関係なく、
自説が正しいことを主張し続けるだけですから、
いわゆる「科学」という分野が衰退することは無いと思います。むしろ活発化!?

というわけで、読んでいるうちに、「科学の終焉」ということ自体は
科学分野の隆盛に、あまり関係がないのではないかと思い至りました(苦笑)。

むしろ、この本の中でレッシャーが指摘しているように、
科学におけるコストの爆発的な膨張のせいで、
費用対効果が急激に落ち込むことのマイナス影響のほうが気になりました。

私たちの日常生活を便利にしてくれる応用科学は、
やはり基礎科学の土台がしっかりしている国において発達するのだと思っているのですが、
では、その基礎科学において、どのジャンルに積極的に取り組むのかというのは、
すべて国や大学や大企業の意向にかかっているのです。
つまり、池田清彦氏の言う、「好コントロール装置」にしか扱えないジャンルになってしまっています。
特に、スーパーカミオカンデみたいな施設を作るのは、
相応の国力を持った国家にしか出来ないことだと思います。

となると、米国、日本などの科学大国が、何にどれだけ予算を投じようとするのかが大事であり、
その点において、最近の日本は、非常に頼りないなぁ・・・・・という暗い思いに。
基礎研究そのものでは、儲けは出ないかもしれませんが、
基礎研究から遠ざかると、必然的に応用科学の力も落ちるように思われてなりません。
分かりやすいところでは、最新の研究成果を早く適切に必要量を仕入れるという事などに
支障が出る気がします。

また、例えば、原子力に関する基礎研究などは、今回の震災と事故を受けて、
今後、国や電力会社の予算手当ては、大きく様変わりするでしょうね。
優秀な若い研究者も、この分野に新たに飛び込む人は少なくなりそうですし。
ヒト(研究者)、カネ(研究予算)、モノ(発電所や研究施設)、全て縮小となりそうです。

原子力発電を強く推すつもりはありませんが、
原子力研究の衰退は、極端な話、原発事故の対策を考える科学の衰退にもなります。
また、原子力発電の世界をリードする国が日本から中国などになったら、
それはそれで、別の、政治的なリスクを日本は抱えてしまうのではないかと心配です。
一つの事故という側面だけではなく、もっと将来も見据えた、多面的な検討の結果、
廃止か、縮小か、継続か、推進か、国家として結論を出して欲しいと思います。

最先端の科学の研究が、コスト的に、好コントロール装置のもとでしか
機能しないものになっているので、科学は政治とセットで考えるべきだと
この本を読んで、改めて思うようになりました。


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