『死者の奢り・飼育』
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- 2011/10/22(Sat) -
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大江健三郎 『死者の奢り・飼育』(新潮文庫)、読了。
久々に硬派な小説に挑戦です。 冒頭の「死者の奢り」は、 大学病院の地下に保管された検体の整理のアルバイトに携わった 文学部学生の心情を記録したもの。 物語の設定としては面白いと思いましたが、 描写が主人公の内面世界にどんどん沈んでいってしまうと、 追いついていけなくなる自分が居ました。 そこまで突き詰めて読み込むのに拒否感があるというか・・・。 自分が知っている大学生の像と、上手く結びつかないせいかもしれません。 一方、もう一つの表題作である「飼育」は、高校の教科書で一度読んでいます。 そのときも、相当な迫力のある作品だと思っていたのですが、 今回初めて通しで読んでみて、そのグロテスクな構成に驚きました。 う~ん。 で、やっぱり、本作ものめりこむところにはいけませんでした。 なんだか、生理的な拒絶感を覚えてしまうんですよね。 戦争、子供、性、民族、土着性・・・・・なんだか、そういういろんな要素を消化する力が 自分には足りないのだと思います。 個人的に面白く読めたのは、「他人の足」。 脊椎カリエスで自由に生活が出来ずに、療養所に収容されている少年たち。 そこに足の事故で一時的に大学生が入院してくる・・・。 同じように足が動かなくとも、不知の病と一時的な怪我の違い、 その違いには目を向けずに、不知の少年たちの目を外の社会に向けさせるだけ向けさせて、 怪我が治ったらさっさと退院していく大学生・・・・。 この手の残酷さは、様々な局面で人間が示すものですが、 結構、私好みの”嫌らしさ”の見せ方です(苦笑)。 いずれにしても、大江作品をガツガツ読んでいけるステージには、 私は、まだ立てていないようです。
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