『死にぞこないの青』
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- 2011/08/22(Mon) -
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乙一 『死にぞこないの青』(幻冬舎文庫)、読了。
今まで読んだホラー系作品の中で、相当ハイレベルなものでした。 (ま、怖がりの私が読むホラーなんて限られていますが・・・・) 大卒新人教師が受け持ったクラスでは、 生徒の人気を維持しようと、先生自らが、一人の生徒をいじめの標的にした・・・・。 この手の作品を読むと、人間の内面の嫌らしさのようなものに恐怖を感じるのですが、 本作では、それ以上に、アオの存在感が恐怖でした。 その身体的特徴の描写が恐ろしくて。 しかし、しかし、もちろん、人間たちが恐ろしいことには変わりが無く。 特に、担任教師がいじめに走る過程の描写がお見事。 最初は、純粋に、生徒や親たちの期待感により人気があった先生が、 熱心に教育を施そうとした結果、生徒たちが距離を置き始め、 それを取り戻そうとした手段が、「いじめの構造の創出」だったというところ。 やっている行動の程度は異常すぎるのですが、でも、その心理的な部分は 読んでいて理解できるものがありました。この辺の説得力が凄いです。 最後、どのような結末に持っていくのか興味深々でしたが、 担任教師にとっては、不安の種をずっと持ち続けるという復讐になっています。 ある意味、死よりも、過酷な復讐なのかもしれません。 ところどころ、小学5年生にしては難しい思考をしているところがあり、 (著者があとがきで書いているような表現の話ではなく、思考内容のこと) キャラクター設定を加味しても、ちょっと無理があるかなと思いましたが、 全般的には、このような環境に置かれた子供をよく描いていると思いました。 凄い作品です。
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