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『則天武后』
- 2011/05/10(Tue) -
津本陽 『則天武后』(幻冬舎文庫)、読了。

中国三大悪女の一人とされる則天武后。
悪名ばかりが耳につき、その実態がよくわからない歴史上の人物だったので
本作を読んでみました。
初・津本作品でございます。

太宗の側室の一人だったが、その崩御により出家を余儀なくされ、
普通であれば、そのまま尼僧として生涯を静かに暮らすところを、
策を講じて息子の高宗に取り入り、尼寺から後宮へ復帰するところは
女の強かさを十分に発揮しています。

そして、高宗の正室を失脚させ、寵愛していた側室も失脚させ、
後宮のトップにのし上がっていく様はお見事。

が・・・・・則天武后が実権を握ってから、正直、面白くありませんでした。
家臣たちに互いに密告させ、冤罪で死罪や流罪に陥れ、
ことごとく対立者を抹殺していくことが繰り返されます。
「それだけ」と言っても良いくらいの内容です。

しかし、一瞬の栄華で悪名を轟かせたのではなく、
数十年にわたり、あの広大な唐の領土を女帝として治めたというからには、
恐怖政治だけでは成り立たないと思うのですよ。

確かに、宮廷内の支配の仕方は恐怖政治だったんだろうと思いますが、
客観的な目で見て、内政や外交で評価されるべき手腕を
何かしら持っていなくては、これだけの治世を得ることはできなかったのではないかと思います。
もしくは、本人の政治スキルではなく、有能な官僚を使いこなす才能を
持っていたとか・・・。

ところどころ、それらの才能を暗示する表現はあるのですが、
あくまで描写の中心は恐怖政治だったのが残念です。

人を斬って捨てる描写ばかりを続けるよりも、
政治の才能と対比して残忍さを示す方が、
一層、その恐ろしさを際立てて印象付けることができたのではないかと思います。

というわけで、上下巻を頑張りましたが、期待外れでした。


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