FC2ブログ
『菊と刀』
- 2011/03/26(Sat) -
ルース・ベネディクト 『菊と刀』(社会思想社)、通読。

東北太平洋沖大震災をめぐる世界各国の報道の中で、
日本人のモラルやマナーについての記事が目につきました。

外国人の目から見た日本人論ということで、
学生時代から「読まなきゃなぁ」と思ってた本作をやっと読みました。

日本語独特の表現や言い回しに錯誤は見られるものの、
日本社会での参与観察などの現地調査を行えない状態で
ここまで日本人の思考回路の分析に達したのは、素晴らしい業績だと思います。

特に、今回読むきっかけとなった、苦難に際しての集団行動については、

日本人の国民に対するお決まりのせりふは、これは前からわかっていたことなんだから、
少しも心配することは無い、というのであった。
明らかに、お前たちは依然として何もかもすっかりわかっている世界の中に住んでいるのだ
と告げることによって、日本国民に安心を与えることができると信じたからであろう

つまり、「いつか大地震が起きる」ということは、日本人ならば皆が認識していたことであり、
そのために子供のころから地震のメカニズムの学習や避難訓練などの教育を受けてきたおかげで、
地震に遭っても、非常に冷静に、また助け合って対処することができたのでしょう。

その被害が、想像を絶するような甚大なものであっても、
「地震が起きたのなら仕方がない」と、甘んじて受け入れるだけの気持ちが
持てているのではないかと思われます。

被災地の状況に涙し、また、東京の消費電力を東北地方で賄ってもらっていたことに感謝し、
計画停電を受け入れ、節電に積極的に協力をするという姿勢や、
地震そのものの影響を受けなかった関西以西でも電力確保を心配して行動する心持ち、
そして、日本全国での義援金の支援というような、
国難に対する全国民の姿勢が際立っていると感じました。

しかし、一転して、原発事故という思ってもみなかったことが起きると、
現地で混乱が生じ、不安が高まるのは当然のことですが、
東京でも大げさなパニックに陥り、一気に関係各所への突き上げが始まりました。

問題が起きるまでは、自分の頭で物事を考えることをせず、
おかみの「私たちエリートがきちんと考えてあげていますから、あななたちは何も考える必要はなく、
安心して生活をしてください」という言を、これまた大して考えずに鵜呑みにしていたのに、
ひとたび「想定外らしいこと」が起きると、それが本当に想定外なのか否かの判断もせずに
「俺たちを騙していたな!」と、ヤイノヤイノ騒ぎたてます。

今の政治にリーダーシップが無いことは、まったくもって憂慮すべき事態ですが、
そのような無能な政治を許容してきたのは、私たち国民ですからね!
政治家や東電への批判は、同じく自分たち自身にも向けられるべき批判だと思います。

「日本政府と東電は、地震大国に原発を造るという、なんてバカなことをやってきたんだ!」
という批判は、私からすると「何をいまさら」感があります。
大きな地震が起きうる国土であることも、原子力発電所が電力需要の半分を賄っていることも、
原発推進派と反対派の論争がずっと行われていることも、周知の事実だったはずです。

それを、「面倒なことは考えたくない」「便利な暮らしができればよい」と判断を他人に預けて、
電力消費の恩恵を享受し続けてきたのが、東京を中心とする地域の住人です。
自分たちの過去の思考放棄を棚に上げて、一方的に政治批判をするのは、
首相や経済産業大臣の放言と同じくらい、幼稚な挙動のように思えます。

その挙動には、これまでの間、原発を受け入れて(受け入れさせられて)、
原発のふもとで生活を送ってきた方たちへの想像力があまりに欠如しています。

敗戦への道を辿った日本における、政府と国民のやりとりの分析が、
本日只今現在の日本の状況と重なって見えて、非常に憂鬱な気持ちになってしまいました。


菊と刀―定訳 (現代教養文庫 A 501)菊と刀―定訳 (現代教養文庫 A 501)
ルース・ベネディクト 長谷川 松治

社会思想社 1967-03
売り上げランキング : 95910

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

関連記事
この記事のURL | | CM(0) | TB(1) | ▲ top
<<『総理の値打ち』 | メイン | >>
コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://seagullgroup.blog18.fc2.com/tb.php/2388-1aabcf6b
-菊と刀(ベネディクト)-
菊と刀 (光文社古典新訳文庫) ★★★★ <内容> 第二次世界大戦中、米国戦時情報局の依頼を受け、日本人の気質や行動を研究した文化人類学者ベネディクト。日系人や滞日経験のある米国人たちの協力を得て、日本人の心理を考察し、その矛盾した行動を鋭く分析した。ロン …
2011/06/15 21:03  点滴はシェイクにしてください。 ▲ top

| メイン |