『錆びる心』
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- 2010/08/22(Sun) -
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桐野夏生 『錆びる心』(文春文庫)、読了。
初めての短編集でしたが、短くなっても、じとーっとした厭らしさは変わりなく。 まー、ヤナトコばっかり突いてきます。 「虫卵の配列」は、生物学という生命システムの機能性と命の神秘性に彩られた 愛情の迸りの行方にゾッとしました。 これは、設定とオチの妙です。 「羊歯の庭」は、過去を都合よく整理してしまう無責任な人間っているよねー、と納得。 「ジェイソン」は、私も、たまに記憶がなくなるほど飲まされることがあるので、 他人ごとでは済まされない怖さがありました。 (ま、私は、ジェイソン化したことは無いように聞いてますが) 「月下の楽園」「ネオン」は、設定や話の展開は面白かったですが、 落とし方が、あまり好みではありませんでした。 大どんでん返しというほどの衝撃が無かったからかな。 表題作「錆びる心」が一番面白かったです。 主人公が、死につつある重病人と深夜の庭で会話をし、 「あっ」と悟った瞬間が、まさにカタルシスでした。 読んでて、私も、「あっ、なるほど!」と。 このおかげで、こんなに重い作品が並びながらも、 読後感が良くなったように感じました。 良くできた短編集だと思います。
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