『国家の罠』
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- 2010/04/28(Wed) -
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佐藤優 『国家の罠』(新潮文庫)、読了。
ブックオフで見つけて、たまたま手に取った本だったのですが、 読み始めたら面白くてハマってしまいました。 興味を持ったのは、2つの観点です。 ①外交の世界における大局観と駆け引き ②国策捜査というものの実態 ①外交の世界における大局観と駆け引き については、 対ロシア外交という、これまでサッパリ興味がなかった世界が舞台でしたが、 興味がない分、変な思い込みもなくゼロから学ぶことができて、 歴史的背景を踏まえながら未来に向けた関係を構築していくという 外交世界の本質的な部分に触れられたように思いました。 そして、その外交の戦略を作り動いている第一線の外交官や政治家たちの モノの見方、大局観については、非常に勉強になりました。 鈴木宗男という政治家ついても 表面的な話が多い新聞や週刊誌の記事とは違い、 彼の行動原理や信念を知ることができました。 もちろん、鈴木氏に近い立場でのモノ言いですから、 見方が偏っている、または美化しすぎているという指摘はあるのかもしれませんが、 同じ事象を眺めていても、立場が違えば見え方も違うのは当然ですから、 一つの鈴木宗男像として興味深かったです。 もう一つの、②国策捜査というものの実態 については、 西村検事の国策捜査論「国策捜査は時代のけじめ」が、眼からウロコでした。 このキーワードをもとに著者が展開した時代の転換に関する論旨は非常に明快で、 「痛みを伴う改革」を言い続けてきた小泉政権の影響や、 その後の格差社会の誕生や不満ばかりが口を突く世論の在り様も理解できました。 そして、この西村検事の思考は、私の感覚と似ているように感じ、 いろいろと自分の頭のなかを整理することができました。 私は、極論すれば、名声欲にかられた政治家がいても、私腹を肥やす官僚がいても、 彼らのおかげで日本の景況が良くなったり、国益が得られたりして、 トータルでプラスになるなら、必要悪もどんどん活用すべきと思ってます。 談合も、天下りも、機密費も、モノは使いようだという考え方です。 (だから、事業仕分けなんかをみてると、バカバカしい茶番にみえて仕方ないです) 今の日本の状況をみると、国民全体が力を合わせてどうにかできるものではなく、 ごく一部のずば抜けて頭の良い人が、多少の国民へのダメージを覚悟しながらも 思い切った行動を起こさないと、事態を好転させられないように感じます。 今、衆愚政治に陥ると、きっと日本は死んでしまうと思います。 世論は単純な方へ流されます。頭が良くなくても理解できる構図に収斂されていきます。 頭が良くない人の間で共感できることは「怒り」と「歓喜」ぐらいです。 「国家観」「将来像」を共有でき、それらに辿り着くための戦略やアプローチを 具体的に描けるのは、頭と行動力と判断力がある一部のエリートだけでしょう。 官僚組織は、批判にさらされることが多いですが、日本の繁栄を築いてきたのは やはり日本の優秀な官僚組織であり、国益を第一に考えて働いてきた エリート官僚たちの力によるところが大きいと思います。 著者は、時代のけじめとして、外交の第一線からは取り除かれてしまいましたが、 外交を担う組織がある以上、組織がデキル外交官を必ず生みだすものと信じています。 その期待感は、ほかの省庁に対しても同じです。
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