『希望の国のエクソダス』
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- 2010/02/24(Wed) -
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村上龍 『希望の国のエクソダス』(文春文庫)、読了。
読み応えのある作品で、非常に面白かったです。 中学生が学校を捨てて、自分たちの国ともいえるネットワークを作っていく・・・ 中学生にそこまでの組織力や団結力があるのかというような疑問を持ってしまうと どこまでも荒唐無稽な作品に思えてしまうかもしれません。 でも、「もし日本という国に失望して、日本という社会を捨てるのは誰か?」 という設問を考えると、 既成社会に頼りきった大人は無理、 自分という個人の目先のことしか考えていない大学生にはそんな気概はない、 高校生も大学受験しか見えていない、 小学生は、まだ大人である親にどっぷり依存している、 ということで、一番可能性があるのは中学生な気がします。 親の庇護を受ける子供の状況からは脱し始めていて、 でも、自分が大人になったときの姿を、現実より理想に寄って描いてしまう年代。 そんな中学生の姿を、ある意味、ファンタジーの力で持って底上げしたのが、 この作品なのかなと思います。 そこで描かれているのは、中学生が秘める可能性などではなく、 いかに日本の大人がダメなのかという反省であると思います。 毎日に流され、先のことなど何も考えずに、 ただ、今だけを目に映して生きている大人たち。 自分も含め日本人は、危機感がリアルに描けない状況にあるんだろうなと感じました。 もう、何がどうなってしまうのか把握できないほどに 世界の動きが早くなり、大きくなり、広がってしまっているという。 本作で描かれた、経済のお話は、 ちょっと私の知識ではついていけないレベルだったのですが、 新聞の国際経済面で記事にされているのは、 この手のことなんでしょうね。 記事を書いている方も、読んでいる方も、本質が分かっているのか掴めない世界。 なんとなく、記事を読むことで、そんな世界を知った気になれてしまう。 誰も知らないところで、大きな変革、もしくは大崩壊が近づいているのではないかと 背筋が凍る作品でした。
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