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『にょっ記』
- 2023/12/31(Sun) -
穂村弘 『にょっ記』(文春文庫)、読了。

年末の仕事で疲れたので、お気楽に読めそうな薄い本をば。

日記の体裁で、ふと思いついたこと、たまたま目にしたこと、急に頭をよぎったこと等
短文で書き留めたもの。
どこまでが現実で、どこからが妄想なのかの線引きが分からないまま
穂村ワールドを楽しめる作品になってます。

本の数行の日本語で、変な世界をパッと作り上げてくれるのは、
やっぱり歌人という才能あってのものなんでしょうね。
ショートショート作家とはまた違った切れ味で、しかし最後の一言で余韻が感じられる
面白い日本語世界です。

あと、穂村さんが古本屋で見つけてきたという、教養女性文化会編の『女性百貨宝鑑』。
昭和34年の本だとのことですが、当時の女性に向けた心得本。
まぁ、結婚前に社会の常識と婚姻とは何かを知りなさいという本なのだと思いますが、
今読むと、毒の効いたコメディ本になっていて面白い。
紹介されていたページ以外も読んでみたいわ(笑)。

続編までは一緒に買ってきましたが、第3巻まであるようなので、探しておかないと。




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『50代からの選択』
- 2023/12/29(Fri) -
大前研一 『50代からの選択』(集英社文庫)、読了。

なんとなく買ってきた本でしたが、これまでに読んだ大前本の中で一番面白かったです。
なんせ、大前氏の本音がダダ洩れ。
高齢者には「貯めるな使え!」と怒り、若者には「なんで政治に興味がないんだ!」と怒り、
中年世代には「お前ら不憫な人生で可哀そうだな」と憐れむという、
なんとも喜怒哀楽の表出した内容で、面白かったです。

本作の最初の出版年は2004年。
その時の50代といえば、団塊世代の最後の方としらけ世代の最初の方あたり。
で、タイトルからするとこれから50代に入っていく人たち向けの本だと思うので、
要は、団塊世代を反面教師にして、しらけ世代よ、うまく老後を乗り切れ!みたいな
そんな本だと思います。

ただ、肝心の50代手前のしらけ世代に向けたメッセージよりも、
団塊世代に向けた糾弾の言葉とか、ロスジェネ世代に向けた馬鹿にするような言葉とか、
そういうストレートなメッセージの方が印象に残りました。
そして、その通りだと思います。

団塊世代は、たぶん、自己評価が高かったりしても、世代的に豊かなので大負けしないというか、
多少裏では悪口言われてても、生活には支障が無かったのではないかなと思います。
多少の失敗はリカバリできる経済力がありそうだし。

でも、しらけ世代は、団塊世代の真似をしたら致命的な失敗に陥り老後の生活に
支障をきたすレベルになってしまいそうなので、気を付けろよ!という警告はそうだなと思います。

そして、著者が都知事選に立候補して、青島幸男氏に4倍以上の票差をつけられて負けたという
その悔しさを、ここぞとばかりにボヤいてますが、理路整然とした政策提言よりも
大和言葉で「いい国つくろうよ」と呼びかけるだけで良かったんだよと言う加山雄三氏の
慰めの言葉を読み、有権者の中央値のレベルを分かっている加山雄三なら都知事になれるかも
と思ってしまいました(苦笑)。

著者自身が、60代の今、どんな生活を送り、人生を楽しんでいるのかという自慢話もたくさん出てきますが
正直これはレベルが高すぎて反感をもつ気も起きません。
成功すると、そういう老後が送れるんだな・・・・という程度。
むしろ、これだけ成功してたら、いろんな世代に人にアレコレ放言しても
まぁ許せるかな・・・・と思ってしまいました。

私自身はロスジェネ世代の後半の方なので、
こういう厳しい声には反発心はあんまり湧いてこず、とりあえず受け止めてみて
自分なら何か改善できることはないかな?という感じで捉えてしまいます。
特に取り上げるほどの意見でなければ、無視して忘れればいいや・・・・という感じで。
そういう態度は、著者から見ると、もっと反発してこないと!って思われるのかなぁ。




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『世界で一番カンタンな投資とお金の話』
- 2023/12/28(Thu) -
村上世彰、西原理恵子 『世界で一番カンタンな投資とお金の話』(文春文庫)、読了。

村上世彰氏といえば、ホリエモンと同時期に 証券取引法違反で逮捕された印象が強く、
長い間、私の中でもワルのイメージでした。

しかし、出所後のホリエモンの言論活動の内容に共感するところが多く、
ホリエモンは異端児とか破壊者とか非常識人とか金の亡者とかではなく、
改革派、新たな価値観を提示する人、ときどき素人相手に激ギレする怖い人、というイメージに変化しました。
その影響で、なんとなく村上氏のことも、そういう人なのかなと、再評価路線で捉えてました。

で、サイバラ女史との対談本を見つけて、「今の村上氏はどんな感じなんだろ?」と買ってきました。

ギャンブルまみれ、負け続けのサイバラ女史が、投資の達人・村上氏に教えを乞うという設定ですが、
投資素人が読んでいて、分かりやすい内容でした。
サイバラ女史が、まぁ本の設定もあってでしょうけれど、投資ナンニモワカリマセン的なスタンスで
初歩的な質問をしてくれるので、村上氏の返答も超初心者向けで、わかりやすいです。

基本は、「期待値が1を超えるものにしか投資しない」「損切りは早く」の2点。
まぁ、確かに、元手がしっかりある人なら、この基本を守ってどんどん投資していけば、
大負けすることなく、勝ち筋のない案件に投資することもなく、堅実に利益を上げていけるのかなと思います。
でも、世の中の大多数の人は元手がないから、なけなしの金を投資した案件にしがみついちゃうんでしょうね。

そして、サイバラ女史のエピソードを聞いていると、この人は、どんだけ村上氏から指導を受けても
投資には手を出しちゃいけないタイプの人なのでは?と感じてしまいました。
まあ、株式投資はこの企画が終わったら手を引いて多少の利益で終えたようですが、
それ以外に、もっとヤバいことにカネ突っ込んだり、変な人にカネ貸したりしてそうです(爆)。

村上氏は、小学生の時に、父親からもらった100万円で株式投資を始めて
いろいろ投資について実地で学んだようで、サイバラ女史も息子さんと一緒に100万円で株式投資を
したようですが、この取り組みは良い学びが得られそうと感じました。
特に、金融知識云々ということよりも、時事ニュースに興味が湧き、
いま世界で何が起きているのかを自分の身に引き付けて考えるようになったというところ。
その土台の部分で、社会科、算数、国語などの要素もきっと学びが多く、
投資先が理系の企業なら理科とか、海外事業をしていたら英語とかにも繋がっていき、
基礎学力の向上にもなりそうです。

こういうことを言うと、「子供にぽんと100万円を渡せる家庭なんてごくわずかだ!」という反論が
返ってきそうな気がしますが、個人的には、それで良いんじゃないの?と思います。
全ての家庭でこの金融教育を実行するのは不可能だと思いますが、
例えば、経済的に上位10%の家庭で実行されれば、英才教育として効果があるのでは?と思います。
「格差の助長だ!」とお叱りを受けるかもしれませんが、この上位10%の教育を受けた中から
1%でも優秀な人材が生まれてくれば、日本経済をぐいぐい牽引してくれるんじゃないかと期待できます。
結果として、日本経済が上向き、長期的に安定成長してくれれば、大半の国民には
好影響があるのではないかと思います。変な平等を押し付ける場合よりも。

アベノミクスのトリクルダウン理論的な考え方ですが、
これには批判の声も多いので、共感されるのは難しいですかねぇ。
まぁ、アベノミクスはトリクルダウン理論は採用してない、という内輪からの批判もあるみたいですけど。

村上氏は、子供たちに向けての金融教育の取り組みを実際に実行しているようなので、
そちらの活動の本とかがあれば、読んでみたいなと感じました。




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『文豪ナビ 夏目漱石』
- 2023/12/26(Tue) -
新潮文庫編 『文豪ナビ 夏目漱石』(新潮文庫)、読了。

ブックオフで見つけて、「そう言えば太宰治バージョンは面白かったな」と思い出し、
だったら漱石は買わないと!ということで早速。

一橋大学の入学試験では、必ず国語の1問目が漱石作品から出るということで、
私も漱石作品には思い入れがありますが、しかし、入試対策で学んだというだけで、
実は作品自体はあまり読んだことがありません

高校の教科書に載っていた『こころ』が、ちょっと苦手だったからかもしれません。
青春真っただ中で「自殺」の「遺書」を読まされるのって、正直しんどいです。
しかも親友の恋人を奪って結婚したことで親友が死に、自分も死ぬという・・・・・
何やってんだよ!という気持ちになってしまいます。
「先生、結局、自分の懺悔告白に酔っちゃってるんだじゃないの?」と嫌味な見方さえしてました。

もし、『坊っちゃん』あたりから漱石始をしていれば、子供の頃にもっと意欲をもって読んでいたかも。
現に、芥川龍之介は、『蜘蛛の糸』を学んで以降、結構熱心に読みましたから。
まぁ、小学校の読書感想文の推薦図書に『坊っちゃん』も挙がっていたような気がしますが、
読書感想文っていう宿題、大の苦手だったんですよねー(苦笑)。

で、改めて、本作で、夏目漱石という文豪は、どういうインパクトを日本社会や日本文学に与えたか
ということを学び直した感じでしたが、やっぱり漱石は日本のシェイクスピアですね。
文章のリズム感が現代の日本語にしっかりと繋がっていて読んでいて気持ち良いですし、
文体も今からすると違和感がなく、逆に当時の読者にとっては斬新な感じだったんじゃないかなと思います。
さらに、ワードチョイスや感じの当て字などのユーモアも、今でも十分楽しめます。

大学入試で毎年出されて、それでも使い減りしないという奥深さがある作品たちであり、
社会に出る前に一通り学んでおきなさいとされる文豪として全く違和感ありません。

齊藤孝先生による漱石リズム感の体感の仕方の指導も、
三浦しをんさんによる、ボーイズラブ要素を意識した感想文も面白かったですが、
木原武一氏による「10分で読む『要約』夏目漱石」が、なんだかんだで勉強になりました。

漱石作品は、日本人なら順番にきちんと読んでいかないといけないなと思いました。
『こころ』も含めてね。




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『そしてだれも信じなくなった』
- 2023/12/25(Mon) -
土屋賢二 『そしてだれも信じなくなった』(文春文庫)、読了。

退官されてから助手との攻防戦がなくなったのでマンネリ化・・・・・などと言いながら
結局また買ってしまいました。

奥様との攻防や、教え子との攻防は、丁々発止な感じで面白くて好きです。
でも、センセイの頭の中で繰り広げられていくだけの妄想は、
クドイというか、とめどない感じがイマイチ不安を掻き立てられます。

あははと笑って読み終えればよいものを、
「あぁ、年を取るっていうのは、こうやって社会との交流が減って、自分の頭の中で妄想して楽しむ時間が
増えていってしまうということなんだな・・・・・・」と、たぶん著者の思惑とは全然異なる方向で
感想を持ってしまいました。

でも、まだあと2冊手元にあるから、また読んでは、同じ感想を持ってしまうような気が・・・・。
まあ気晴らしの読書だから、テレビの『水戸黄門』みたいな感覚で読めばいいんでしょうけれど。

個人的に面白かったのは、奥様が喫茶店で出会ったという微笑みの老女。
会話の所々が破綻してるのが怖いわー。




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『世界観』
- 2023/12/24(Sun) -
佐藤優 『世界観』(小学館新書)、読了。

雑誌『SAPIO』での連載をまとめたものだそうで。

掲載時に話題になっていたと思われる国際情勢について、
著者独自の視点による解説や、外交官時代のエピソードなどを交えて述べたもの。
タイトルはかなり大きいですが、書かれているのは断片的な時局の解説であり、
大局観はあまり感じられなかったので、ちょっとタイトル詐欺な印象はあります。

外務省でロシアを担当し、ロシアの日本大使館に駐在していたこともある著者が語る国際情勢は、
ロシアを中心に、中国、ウクライナ、トルコ、イスラエルなど多岐にわたり、
しかも、出版から10年以上たった現在もホットな地域ばかりです。

ロシアとウクライナの領土戦争という足元の問題を語るには、
旧ソ連時代の出身地による派閥関係というか勢力対立の経緯があり、
トルコのヨーロッパとアラブの狭間に位置する地政学的な観点と、エルドアン首相(現大統領)の強権ぶり、
イスラエルの強気な独自の外交戦略の裏には、宗教的な思想や周辺国との複雑な利害関係があったり、
具体的な政治家の名前と活動実績、その功罪について、著者の見解は勉強になります。

正直、今、ウクライナやイスラエルは戦争状態にあって日々報道がされているから
私自身も意識をもって情報に接することが出来ますが、もし本作の発売時点で読んでいたら
興味を持てずに・・・・・というか読み通すことすらできないまま終わっていたかも・・・・と反省。
結局、大きな出来事が起きて、誰かの上に悲劇が降りかかって行かないと、
遥か遠い地での政治問題に興味関心を持つのって、難しいですよね。

逆に言うと、その辺の政治問題に意識を持たずに済めているというのは、
地理的な面もありますが、日本の政治や官僚組織を一定程度信頼していて
「普段は、政府や官僚に任せておけば大丈夫だろう」と判断して
無関心ともとれる態度をとっていても問題ないと考えているということなんだなと思いました。
だって、ウクライナのように離れていない北朝鮮の話題でも、
何か起きなければ意識の外ですからね。
ミサイルが飛んできたときだけニュースを見て気にするだけで。

そういう意味では、自分も、平和ボケだなぁと思ってしまいますが、
政府と官僚組織を無意識の中でも信頼出来ている国というのは、
相応に幸せなことなんだろうなと思いました。




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『不安の力』
- 2023/12/23(Sat) -
五木寛之 『不安の力』(集英社文庫)、読了。

五木作品は、小説は結構アグレッシブな印象を与えるのに、
エッセイは「無理をしなくていいよ」と優しく語り掛けるようなものが多く、
たぶん読者層も違っているんだろうな・・・・と思いつつ読んでます。

本作は、「みんな不安を抱えているものだから、自分だけが不安に陥っていると悲しまなくていいよ」
というテーマの本で、気持ちが落ち込んだり傷ついたりしている人には大きな癒しを
与えてくれるんじゃないかなと思います。

「仕事への不安」「孤独への不安」「老いへの不安」「災害への不安」「戦争への不安」、いろんな不安が
自分たちの周りにはぼんやりとした形で存在していると思います。
そんな曖昧なものをやたらと怖がっても仕方がないので、それは所与のものとして受け入れて
うまく共存していきましょう、という話だと思います。

私自身、具体的な形をもって目の前に現れてきた不安は「リスク事象」と判断して、
どうにか小さくするか、回避するか、乗り越えるか、といった方法を検討し、
なるべく早く動くようにはしています。
しかし、曖昧な形の不安は、考えても仕方がないと割り切って、ある種、放置というか静観というか
静かに観察しているような状態に置いておくことが多いので、私自身の精神状態は
そんなに上下することなく安定した状態を保てていて、満足しています。

特に具体的な不安事象がないのに、なんとなく不安を感じている人にとっては、
本作のような優しい言葉で「大丈夫だよ」と語り掛けてもらえると、
心がだいぶ落ち着くのではないかと思います。
正直、そんな曖昧な不安に心配をし続けても心が沈むだけで無意味だと思うので。
漠然とした不安をスルー出来るスキルを身に着けられると、世の中だいぶ楽になると思います。

一方で、どれかの不安が突出して大きくなったり、何か具体的な出来事をきっかけに複数の不安が
押し寄せてくるような事態に陥っている人には、本作のような甘~い言葉は、
不安の解決を先延ばしにするだけなので危険なように思います。
不安とは何か?なんて考える前に、具体的な目の前の「問題を解決する」ことに注力した方が
良いかなと思います。

というわけで、前半の、私たちの周りにどんな不安があるのかという話や、
そんなに真正面から受け止めなくても良いんだよというような話は共感をもって読めました。

しかし、途中から、「私は手書きで原稿を書く。編集者はデータ原稿に移行することを暗に進めてくるが
パソコンなんて使いたくない。私でも無理なく操作できるパソコンが出てきたら考えてやらんでもない」
という主張とかが出てくるに及んでは、「そりゃないべー」と思ってしまいました。

趣味で文章書いている人なら、思う存分好きな方法で書けばよいと思います。
しかし、仕事で文章を書いているなら、編集者という仕事相手がいるわけですから、
彼/彼女の仕事のしやすさも一定考慮してあげるべきではないでしょうか。

「パソコンで試しに原稿を書いてみたけど、なかなか操作が身に着かなくて却って時間がかかるから
編集者を待たせることになって悪いから当面手書き原稿で」とか、「パソコンで書いてみたけど
操作に気が散って文章の内容が浅いものになってしまっている気がするから手書きに戻したい」とか
そういう言い分なら、まだ分かりますよ。
でも、「パソコン時代に置いていかれる不安なんて感じなくてよい、パソコンの性能がまだ私には
追い付いていないんだから」という言い分は、正直、「老害」と感じてしまいました。

この辺りは、大作家様のオレ様感なのか、高齢者の「若者は老いている者を敬え」感なのか
わからないですけれど、文章で堂々とこういうことを書いてしまう感覚は、苦手だなぁ・・・・と
思ってしまいました。




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『三四郎はそれから門を出た』
- 2023/12/20(Wed) -
三浦しをん 『三四郎はそれから門を出た』(ポプラ文庫)、読了。

しをんさんの書評エッセイ、出版時から読みたいなと思っていたのですが、
ようやく100円で見つけたので、早速読んでみました。

売れ筋の本から、昔の本から、マニアックな本から、ラノベから、翻訳物から、マンガから、
とにかく幅広くいろんな本をたくさん読んでいて、凄いなと。
紹介されている本の半分以上は、私が手を伸ばさなさそうなジャンルなので、
これだけの幅のものをどんどん消化していくエネルギーは凄いなと思います。
一方で、ジャンルの偏りはそれなりにありそうなので、何でもかんでもというわけではなく、
著者の好きなジャンルのものをどんどん読んでいく感じなのかなと思いました。

このジャンルの偏りが、売れ筋の本以外は、ほとんど著者と重ならなそうなので、
あんまり私が読んだことのある本は登場してきませんでした。
また、この手の書評本を読むと、読みたい本リストに一気に作品が追加されるのが
いつもの行動なのですが、今回はあんまりリスト追加したいものがなかったです。

一方で、本読みさんの姿勢としては共感できるところや学びになったところが多くて
満足度の高い読書でした。

冒頭の書評は、村上春樹氏の『海辺のカフカ』。
春樹作品には苦手意識があるので(苦笑)、『海辺のカフカ』も読んでいませんが、
著者の最大の感想は、主人公の15歳の少年の下半身事情と克己心。
そして読後感として得た教訓は「基礎体力は大事」。
作品を読んでいない私から見ても、「そんな感想にまとめてしまっていいのか!?」と
思わずにはいられませんが、自分はこう読んで、ここが印象に残った、ここが面白かった、
という読書の満足度の得方は、このスタイルが一番自然なんだろうなと思いました。

「春樹作品だからこういうう風に読まないと」とか「こういう視点は気を付けないと」とか
固定観念に染まった読み方をするのではなく、あくまで自分ありき。
「私の生活感覚からするとここが気になる」というような自然体で作品と向き合ってるので、
読んだ後に心に蓄積できるものの量が多いのかなと思います。

私も、自分が印象に残るところは、作品の主題・本質とされる部分とは必ずしも一致しない
たぶん他人の目から見たらしょーもないことに気をとられていることがありますが、
そういう作品の方が、後々になっても内容が思い出されたりするんですよね。

こんな風に、自分の価値観で本を消化していくことが、幸せな読書体験なんだろうなと
そこへの共感を強く覚えた読書となりました。

ところで、女性の読書家という点で、齋藤美奈子さんと三浦しをんさんの対談とか
読んでみたいのですが、どうですかねー。
一方はフェミニストの欺瞞に厳しいフェミニスト、もう一方は女性という枠から気づいたら外れてそうな
生活を送る女性、対談したら面白そうな着眼点がわちゃわちゃ出てきそうな気がするのですが。




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『マイ仏教』
- 2023/12/19(Tue) -
みうらじゅん 『マイ仏教』(新潮新書)、読了。

みうらじゅんさんの仏像好きは、『見物記』でしっかり読ませてもらっていますし、
山田五郎さんとの対談も見てたので、その延長線上の新書として
軽い気持ちで買ってきました。
まぁ、すでに知ってることを改めて読んでみましょうか、というきぶんで。

ところが読み始めてみて、あまりの面白さに一気読みでした。
そもそも、なぜ仏像に惹かれたのか。
子供の頃に、怪獣にはまったのと同じように、異形のものとしての仏像にはまったという著者。
その経緯は『見物記』でも読んでいたように思うのですが、改めてご本人による文章で書かれると
じゅん少年の心のワクワク感が手に取るようにわかって、興味深かったです。

そして、学校の校長先生をしていたという祖父が、仏像を好む孫を温かく見守り、
両親も含めて、仏像の写真集をプレゼントするなど、その「好き」を大事に育ててあげるような
家庭環境にあったことを知り、幸せな家族だなぁと思いました。
理解の無い家庭だと、小学生が仏像にはまってたら、「もっと子供らしいものに興味を持ちなさい」と
軌道修正しそうなので。
みうらじゅんさんという唯一無二な人物がどうやって生まれたのか、とても納得できる家庭環境だなと
理解できました。

そして、みうらじゅんさん自身の仏教解説というか、みうらじゅん氏にとって仏教や仏像というものは
どういうものなのかという説明が、とても共感できる内容で、頭にすっと入ってきました。
決して、教義とか救済などの目的とか頭でっかちなところから入らず、
「仏像かっこいい!」「お寺は居心地が良い」というような感覚から入って、
「なんでこんなにかっこいいんだろう?」と自分の感覚を起点に考え進めていくことで、
仏教の自分にとってのありがたさを「自分なくし」という要素にあると見抜いたところが
すごく納得できました。

仏教や仏像が、自分の人生の価値観とぴったりリンクしている感覚を
言語化できるのは凄いことだなと。

私は、「自分探し」というワードに拒否感があり、自分探しを目的に行動する人にも
苦手意識があるので、この「自分なくし」という概念にはとても惹かれました。

私自身、例えば仕事をするときの行動原理として、
「自分はこれが得意だからこれをしたい!」とか「これがやらせてもらえる会社を選びました!」とか
そういう自我の押しつけの感覚が全く持てず、いつも考えているのは
「今このチームに足りていないのはここだから自分なりにやってみよう」とか
「ここの弱点を自分がカバー出来たら評価してもらえそう」とか、そういう「欠けているものをどう埋めるか」
ということです。

みんなの不得意に挑戦して上手くいかなくても大して批判されないという打算もあるのですが、
自分の得意を押し付けるよりも、みんなの不得意をフォローした方が、
確実に喜ばれるだろうという気持ちがあります。役に立てている感が強いというか。
なので、基本、仕事は頼まれたら何でもやりますし、よほど自分の能力では不可能な要望以外は
何とかならないかなぁと前向きに考える癖がついています。
誰もやらない仕事だと相場もできてないから言い値で仕事とれるし(笑)。

みうらじゅん氏の解説に従うと、大乗仏教的な価値観のようなので、
もっと仏教の考え方というか、教義そのものよりも仏教が良しとしている人生観みたいなものを
知りたいなと思いました。

本当に良い本でした。






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『日本最大の総会屋「論談」を支配した男』
- 2023/12/17(Sun) -
大下英治 『日本最大の総会屋「論談」を支配した男』(青志社)、読了。

どこでこの本を手にいれたか記憶にないのですが、
積読の山の中から出てきました。
近所のおっちゃんからもらったんだったかなぁ?自分では買わなそう。

「総会屋」というと昭和~平成初期が全盛期のような印象で、
城山三郎作品とかでは魅力ある人物として登場してくるので、
私の中では「企業小説に出てくる任侠者」というイメージです。

本作の主人公の正木龍樹という総会屋の名前は知りませんでしたが、
一匹狼的な印象の強い総会屋の世界で、論談同友会という総会屋の組織を作り、
最大規模の時は50人もの総会屋を従業員として抱えていたというのは
面白い人物だなと思いました。

そして、手がけてきた事件も、三越の岡田天皇の解任劇やら、
日本カーボンの専務による横領の告発とか、派手なものが多く、
しかも、その会社にとって害悪となっている存在をクビにすることで
会社にとっても株主にとっても事態が好転するものとなっているところも
面白いなと思いました。
ただ単に企業からカネをせびり取るのではなく、企業の悪を正そうとする
まさに任侠としての価値観を持っているのが興味深いです。

ただ、残念なのは、文章が面白くないこと。
他の大下作品は、結構、物語の山場の描き方とかは手に汗握る感じがあったのですが、
本作は、エピソードがあっちこっちに飛ぶような印象で、
作品の軸となるものが見えてこない感じでした。
出版社の能力の差かなぁ・・・・・。

もっと正木龍樹という人物なり、論談同友会という組織なりに
絞った描き方をした方が世界観に入っていけたような気がします。




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