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『部長って何だ!』
- 2023/06/30(Fri) -
丹羽宇一郎 『部長って何だ!』(講談社現代新書)、通読。

ネット保守の人たちからは嫌われている著者ですが(苦笑)、
中国大使としての仕事ぶりは正直分かりませんが
伊藤忠商事での実績は、やはり、やり手のビジネスマンだと思います。

本作は、部長という中間管理職のの重要性を解説した本かと思いきや、
特に部長職に特化した話ではなく、ご自身のビジネスマン人生を振り返った本でした。
正直、一冊丸々自慢話です(爆)。
実績は凄いということは認めますが、上手く行ったところばかりを抜き出して語られても
読者としては、あんまり得られるものがないような気がします。

むしろ、失敗談とか、それのリカバリー方法とか、躓いた時の気持ちの戻し方とか、
そういう、山あり谷ありのビジネスマン人生のうち、谷の部分の乗り越え方や、
谷から山に向かう時の高揚した現場の雰囲気とか、そういうものをビジネスマンの読者は
読みたいものではないかなと思います。

家庭を犠牲にして、仕事第一の人生だったから、妻には辛い思いをさせたし、
母親の危篤の連絡でも講演会を優先し、死に目に間に合わなかったということを振り返って
言葉の上では家族に対して詫びてはいますが、それは自分の仕事第一の人生を
際立たせるエピソードとして使っているように思え、あまり気持ちの良いものではありませんでした。

「ビール事件」のくだりも、誇らしげに語ってて、その感覚のズレには驚きます。

「昭和の働き方」と言ってしまえばそうなのかもしれませんが、
それをわざわざ令和の時代に新しく出す本で述べなくても・・・・・とは思ってしまいます。

ただ、著者の言うように、働きたい人間は放っておいても働くので、
働き方改革とか言って何でもかんでも時間で制限つけるのは止めてほしいとは私も思います。
過労死とかって、労働時間そのものよりも、パワハラとか、いじめとか、無関心無協力とか、
そういう精神的なものの方が原因としては大きいと思っているので。
労働時間的にはかなり無理したこともありますが、そういう時って、
チーム全員で取り組んでいるという環境があれば、深夜2時、3時にミーティングしてても
意外と冗談が出て笑えるようなところもありますから。
(感覚が麻痺してるという意見もありますけど)

働きたい人が思う存分働ける環境、
働くのがしんどい人が無理しなくても済む相互配慮のある環境、
そういう仕事環境が出来たら良いんですけどね。




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『日本人の忘れもの』
- 2023/06/29(Thu) -
会田雄次 『日本人の忘れもの』(角川文庫)、通読。

積読の山の中から掘り出してきた本。
「会田雄次って、何した人だっけ?」という状態でしたが、
「あ、『アーロン収容所』の人か・・・・・で、本業なんだっけ?」ということで
Wikiを見てみたら、歴史学者というお仕事で良いんですかね?

自分のBlog見てみたら、『アーロン収容所』以外にも一冊読んでましたわ。記憶ないけど(苦笑)。
その本は面白く読めたようですが、本作はイマイチでした。

昭和の大学教授ということで、お堅そうなイメージがありますが、
かなり放言に近い内容も多く、今の感覚で読むと、ポリコレにひっかかりまくりな文章で
なんだか読んでて嫌ーなドキドキ感がありますわ(爆)。
昭和49年発行という時代のエッセイなので、そういう時代ということでししょうかね。
女性への評価とか、黒人への評価とか・・・・。

文中にあった「嫁と姑の対話」のエピソード。
外出から戻ってきた姑と、家で赤ん坊の世話をしながら夕飯づくりをしている嫁、
直接的にはお互いに何も言わないけど、ちょっと見た様子や表情、言葉の感じで
お互いを思いやり、うまく家の中が回っているという話。
最近、誰かの本で同じような話を読んだ気がするですが、有名な小話なんですかね?
逆に鼻につくように感じるようになっちゃいました(爆)。

終盤の「西洋文化と日本文化」という章は面白かったです。
そういえば、昔はアメリカを「人種のるつぼ」と呼んでいたのに
いつのまにか「サラダボウル」って言われるようになったのは、確かにその通り。
一つに解かして米国というものに冷やし固めるのは無理だったんでしょうね。
というか、それは正しくない方向性だったんでしょうね。
ポリコレの入り口みたいなものも感じられて、ここは面白かったです。



※こちらは「新選」のため私が読んだ本とは内容が異なるかもしれません

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『科学の歴史』
- 2023/06/28(Wed) -
大沼正則 『科学の歴史』(青木教養選書)、通読。

近所のおっちゃんにもらった本だったかな。
長年積読だったもの。

石器時代の道具の話から始まり、第一次世界大戦まで、
科学の発展の歴史を順番に淡々と説明していきます。

特に古代科学から近代科学直前までの間が面白かったです。
今の科学の常識からすると「誤り」とされてしまう仮説に対して、
あーでもない、こーでもないと、その時代の最先端の科学者たちが知恵を絞り、
世の中の理屈を一生懸命構築しようとする姿に、
たとえそれが間違いだと後に証明されてしまったとしても、
後進の育成に繋がる成果だと思えるところが、人間の進歩を実感できました。

教科書で学ぶ科学は、基本、正しいとされていることしか出てこないので、
どうやって正解に辿り着いたのか、そのために誤りとされてしまった人々の努力のあれこれが
教科書からは見えてきません。そこが無味乾燥に思えてしまうのかなと。
もし、中学生、高校生の頃に、科学の発展の歴史を学んでたら、
理系に進みたいと思うような興味をもててたかもしれません。

そして、もう一つ本作で思ったのは、登場してくる科学者の名前を結構知ってたことに驚きました。
大学は文系だったので、自然科学に関する知識は、ほぼ高校までの授業が全てなのですが
主だった著名な科学者は教科書を読むだけで学べてたんだな、やっぱり高校までの教育って
基本の基本をきちんと押さえているんだなと実感しました。

まぁ、私は、社会に出てから、改めて気象予報士の資格を取るために地学の勉強をし直したので、
一般の文系大学卒の人よりは、自然科学に対する知識というか興味があるかと思いますが、
それでもやっぱり、日本の教育は、ちゃんとしてるんだなと思える内容でした。

今になって、高校の教科書とか読み直してみると面白いのかも。
中学校からちゃんとやり直した方が良いかな(苦笑)。




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『余話として』
- 2023/06/27(Tue) -
司馬遼太郎 『余話として』(文春文庫)、読了。

「無駄話」というタイトルのエッセイ集。

前半2/3ほどを占める「話のくずかご」が、作品に仕上げるほどにはネタがない人物など
著者が気になる歴史上の小ネタを気軽なタッチで書いていて面白かったです。
「へー、こんな人物がいたのかぁ」とか、「へー、こんな些細なことも記録に残ってるのかぁ」とか。

明治維新期に全員苗字をつけるように命じられた明治新姓は教科書で学びましたが、
むしろ、武士階級が持っている幼名、本名、渾名などの複数の名前を一つに統一するようにとの
政府の命令があり、各々姓名1つを登録させられたという話は、初耳でした。
しかも、西郷隆盛は、本人が出張中で不在だったため、周囲の人間が曖昧な記憶で登録したら
それは父親の本名だったって、なんという適当さ(苦笑)。
でも、西郷隆盛の人柄を表すには良いエピソードかも。
父親の名前だと訂正せずに、それで通しちゃうんですからね。

終盤にあった「日本的権力について」という文章は、徳川幕府の権力構造の話から始まりますが、
これは文章が短すぎて食い足りない。「徳川幕府の権力には、そこまでの絶対性はなかった」という
結構面白い観点だったので、もっとしっかりした文章で読みたいなと思いました。

最後、「霍去病の墓」は、霍去病という歴史上の人物の話はともかく、
文化大革命と中国共産党を礼賛する文章は、さすがに、ビックリしました。
当時はまだ、文革の真相が日本には伝わっていなかったということなんですかね?
この辺の時系列がよく分かってないので現在からみて一面的に批判するのは良くない姿勢だとは
自認していますが、でも、2009年の第37刷でも掲載されているということは、
著者の認識はそういうことなのかな。




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『恐怖の金曜日』
- 2023/06/26(Mon) -
西村京太郎 『恐怖の金曜日』(角川書店)、読了。

なんだか頭がフワフワして調子が出ないので、仕事を休んで終日家でゴロゴロしてました。
寝ても寝ても眠気が取れないので、基本、寝ていたのですが、
時々目覚めては1~2時間読書して、また睡眠という過ごし方。
そんなブツ切れ読書にはちょうど良い十津川警部です。

若い女性が深夜の帰宅時に襲われ、暴行のうえ殺されるという事件が発生。
裸にされた女性の死体は、ビキニの日焼け跡がくっきりという、
今で言うリア充的な生活がにじみ出ている感じ。

そんな事件が、翌週の金曜日にも起こり、連続レイプ殺人事件ではないかという疑いで
合同捜査本部に十津川警部が臨場することに。

さらには次の週にも、同じようにビキニの日焼け跡がくっきりした若い女性が殺されるのですが、
そこまで読んできて思ったのは、実際に、現実社会でこんな連続レイプ殺人っていうのは
起っているのかな?という疑問。
まぁ、でも、連続幼児誘拐殺人とかありましたしねぇ・・・・。
若い女性を狙った連続殺人も、私が知らないだけで、過去にありそうですね。

正直、作品での推理に関しては、たった数名の捜査陣で、
そんな行き当たりばったりな調べ方してても、真犯人には行き当たらないだろうに・・・・・という
なんとも情けない感じだったのですが、まぁ、途中でヤメ検の弁護士とかがちょっかい出してきたりして
中盤は本筋ではない枝葉の部分で面白かったです。

最後は、強引な容疑者の絞り込みと、違法な捜査により、無理やり真犯人を追い詰めるという
なんともな展開でしたが、十津川警部作品なら、こんなものかな。




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『パンドラ・アイランド』
- 2023/06/25(Sun) -
大沢在昌 『パンドラ・アイランド』(徳間書店)、読了。

最近、友人と小笠原諸島の話になり、
私は今まで5回行ったことがあるので、「また行きたいな~」と懐かしさに浸っていたら、
そういえば南国の離島が舞台の作品が積読だったはず・・・・・と思い出し、
本の山の中から出してきました。

舞台は、小笠原諸島の母島からさらに定期船で1時間半という場所にある
架空の「青國島」が舞台です。
人口が900人ほどのため、駐在員を置くほどでもないとの判断で、最寄りの警察官は
小笠原側にしかおらず、それでは支障があると考えた青國島村役場が
村職員として「保安官」を置いています。
前任の保安官が急病で亡くなったため、その後任の募集に手を挙げた主人公。

警視庁の捜査一課に在籍していたエリート刑事であるにもかかわらず、
捜査中の事故がきっかけで警察官の仕事に疑問を抱くようになり、
警察官を辞めて、都会から逃れるかのように青國島にやってきます。

ストーリーの本筋は、この平和な島で発生した殺人事件の犯人探しなのですが、
それよりも、舞台装置の巧みさが、小笠原に行ったことがある人間なら
「そうそう、そんな雰囲気あるよね!」と納得できる構成で、面白かったです。

米軍占領期以前から島に住んでいた旧島民、返還後に島にやってきた新島民、
さらに観光地化してからやってきた新新島民の、表面的には仲良くやってるけど
腹の中では不満が渦巻き、ちょっとしたことで不信感が表面化する複雑な人間関係。
さらに、島民の中で発言権のある人間が村役場の上のポジションを占めるので
ますます権力が偏在していく構造と、その下に仕える事なかれ主義の職員たち。
米軍占領期以降も島に残ったアメリカ人、米軍の影響が歴史的にも文化的にも残る島の気質。

何もかもが、「そうそう、そんな感じ!」と納得できて面白かったです。
父島がそういう事件の起こるような不穏な島だという意味ではなく、
何か大きな事件が起きたら、平和な雰囲気がガラッと変わりそうな土壌がありそうだなという意味で。

大作だったので、読み通すのに5日間ほどかかりましたが、
凄く満足度の高い5日間でした。久々に読書に浸った感覚です。
なのに、この投稿を書くのにAmazonを見に行ったら、評価が低い(悲)。
どうやら固定ファンの方からすると、大沢作品的要素が薄かった模様。
私は、特に大沢ファンというわけではないので、その視点では評価不能です。
あとは、作品のリアリティのところでマイナスにされてるのかな?という感じ。

正直、私も、父島に行ったことがなければ、この世界観は嘘っぽいと感じたかと思います。
でも、行ってみると、島に移住した友人はやっぱりいろんなところに気を遣ってる感じだし、
宿のオーナーさんがアメリカ出身だったり、土産物店の話を聞いても
「あそこは前からある店」「あそこは最近移ってきた人の店」みたいな表現をされるし、
そういう複雑な人間関係はひしひしと感じました。

物語の後半で出てくる濃霧に関しても、父島では体験がないですが、
八丈島では濃霧のため終日飛行機が空港に下りられず
帰る日を1日後ろにずらさねばならないことがあり、
島の濃霧ってとんでもなく濃霧なんだと実感しました。
だから、この展開も違和感なく受け入れられました。

唯一リアリティがないと感じたのは、さすがに終盤で人が死に過ぎだと思いますが、
まぁ、ハードボイルド作品とはこんなものなんだろうと、そこは割り切って読めました。

これまで6冊大沢作品を読んでいますが、
「ハードボイルドは苦手だなぁ・・・・」と思いつつ、読後の感想は「面白かった!」というものばかりなので
大沢作品だけはしっかり追っていこうかなと思います。




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『スイングアウト・ブラザーズ』
- 2023/06/24(Sat) -
石田衣良 『スイングアウト・ブラザーズ』(角川文庫)、読了。

大学同級生の男3人組。
33歳になってもいずれも独身、というか彼女に振られて全員フリーに。
そんな3人に「モテ男に変身するためのコースを用意したから受けてみて」と提案したのは
大学の美人の先輩。自身が経営するエステサロンの新事業として男性向けのモテ男コースを
検討しているので、そのお試し要員になってほしいというもの。

お肌のエステから始まり、教養講座、ファッション改革、女性との会話術など
様々なコースに専門講師が登場し、3人に厳しい指導を行います。

この設定どおり、かなりコメディタッチの作品で、主人公たち3人も、
オタクのゲームプログラマー、デブの飲料メーカー営業マン、ガリで薄毛の銀行員と、
かなりカリカチュアライズされた「典型的なモテない男」たちです。

軽いノリで進んでいきますが、専門講師たちが指摘する「なぜキミはモテないのか」という
本質をズバッと斬る言葉は、なるほどー!と思えるものもあり、
女ながらに、女性はそういう風に見てるのか・・・・・と勉強になりました(苦笑)。

この3人組は、モテないという設定ではあるものの、
先輩から「これをしなさい」とミッションを与えられると、最初はモジモジしてても
最後は「えいや!」できちんと行動に移して、しかも何とか成果を得ようと知恵を巡らすので
意外と行動力があります。これって、モテる男の一要素な気がします。
本当にモテない男は、イジイジ、グズグズと、言い訳ばかりで動かないですからね。

主人公のオタクくんは、冷静に周りが見えているし、「じゃあ俺からやるよ」と
先頭を切って行動する思い切りの良さもあり、正直、彼はもともとモテ男系列の人じゃないかなと
思いながら読んでました。
自分勝手なところもないし、普通に女性とうまく付き合っていけそうな感じです。

それを思うと、そこまで無理ゲーをやっているわけでもなく、
まぁ、この主人公に引っ張ってもらったら、友人2人も何とかなりそうだなぁという感じ。

それって、著者の石田衣良氏が、いわゆる新人類世代なので、
人間の本質が前向きというか、楽観的なものだと捉えているのじゃないかなと思えてきました。
例えば、ロスジェネ世代の非モテ男性って、もっとこじれて拗ねてるような気がします。
暗い人はとことん暗い。

その後の世代は、再び明るくなってきてると思うので、
ロスジェネ世代ってやっぱり悲惨だよなー、と本筋と関係のない感想で終わってしまいました。




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『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ』
- 2023/06/21(Wed) -
大崎梢 『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ』(創元推理文庫)、読了。

シリーズ第2弾。
番外編の長編という位置づけだったので、先に第3弾を読んでました

成風堂書店に以前勤めていた先輩女性社員が
現在勤める長野県の老舗書店で、幽霊が出るとの騒動があり、
夏休みがてらその解決に向かう主人公たち。
幽霊は、現地で27年前に殺害された有名作家ではないかとの噂が立ち・・・・。

老舗書店側の経営者一族はみなさん良い人な感じですが、
殺害された作家の周辺にいた書生やお手伝いさんたちは曲者ぞろいで
幽霊騒動という軽めのノリから、次第に重たい空気が占めていくことに。

主人公たちが作家の周辺人物たちに聞き込みに当たるのですが、
蕎麦屋の女将さんに収まっている元お手伝いさんに話を聞きに行くのに、
営業日の昼前11時過ぎに店に行き、ランチ客が来ているのに話を続け蕎麦屋の主人に嫌な顔をさせ
さらにはランチを食べずに店を出てくるって、広い意味で同じサービス業に従事しているのに
配慮なさすぎじゃない!?と、本筋と関係ないところが気になっちゃいました。

コトの真相は、動機の面でも、トリックの面でも、ちょっと強引かなと。
老作家と書生たちというシステムがどんな感じなのかを知るには面白かったですが
結局、歪んだ仕組みだよなー、と思ってしまいました。

本屋側のお仕事小説的な要素は薄かったので、
これはやっぱり、短編の方が楽しめるかな。




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『にっぽん怪盗伝』
- 2023/06/19(Mon) -
池波正太郎 『にっぽん怪盗伝』(角川文庫)、読了。

「怪盗」って言われると「ルパン」が浮かんでくるので、
なんだか西洋風に思ってしまいますが、そこは池波作品、いわゆる盗賊の短編集です。

単独で掏りや窃盗を行う盗人よりも、どちらかというと組織的犯行グループに所属する
盗人たちにスポットが当たっています。

時代ものとして面白い舞台装置ではあるのですが、
実際、そういう組織的窃盗団というのは、江戸時代にいたんですかね?
清水次郎長一家(半分明治ですけど)とかがヤクザ者としては思い浮かびまずが、
あれは博徒ですよね。
石川五右衛門とか実在するのか創作なのか良く知らないのですが、
こういう人物が窃盗団を率いてたってことなんですかね。

石川五右衛門が演劇世界のダークヒーローとして持て囃されたことで、
盗人集団の物語が一つのジャンルとして確立されたのでしょうかね。
江戸の庶民文化って、あんまり知識がないので、想像が空回りしてしまいます(苦笑)。

池波作品を読むと、結局、そんな盗人たちも、1人1人は自分の生活を背負い、
妻が居て、思い人が居て、というような状況が描かれており、
どんなに法に歯向かう職を選んでも、人間の本質ってあんまり変わらないんだなというのが
読んでの印象でした。




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『ジオラマ』
- 2023/06/18(Sun) -
桐野夏生 『ジオラマ』(新潮文庫)、読了。

久しぶりの桐野短編集
表表紙の内側に、著者近影が載ってたのですが、
ずいぶんキリッとした宝塚の男役さんのような雰囲気で、
「あれ?こんな感じだったっけ?もっとお姉さまっぽい雰囲気だったような・・・・」と戸惑いました。
ネットで検索してみたら、やっぱりイメージ通りのきりっとしたお姉さまの写真がたくさんでてきたので
たまたま本作の写真を撮ったときの雰囲気がそんな感じだったのかな。

さて、桐野短編集ですが、やっぱり読み心地が悪いです。
人間のズルい面や逃げる面を追い込んでいくようなストーリーと描き方で、
「こんな人が近くに住んでいたら嫌だな」という人物ばかりが出てきます(苦笑)。

そして、日常生活で辛いこと、苦しいこと、深く考えることを止めたくなることに直面すると、
性的な快感に逃げ様子とする人が多くて、うんざりしてしまいます。
一方で、結局、人間も動物か・・・・・という思いもあり。
冷静に判断できる状況じゃなくなった人間というのは、見ていて辛いですね。

個々の作品としては、新婚なのに結婚前から電話でだけ繋がっている高校生の少年と
妻の目を盗んで夜な夜な長電話をする男の話「六月の花嫁」が印象に残りました。
まぁ、この妻は、一緒に暮らしてても楽しくなさそうだなぁ・・・・とは思ってしまいましたが
異性が好き、同性が好きという線引きは、意外とこの作品で描かれたように
曖昧なものなのかもしれないなと感じました。

あと、「井戸川さんについて」は、冗談めいた軽い口調で物語が語られていくので、
桐野作品には異色な印象が残りました。
かなりヤバい人の話でしたけどね。
でも、これも、その人がどんな人なのかは、自分が接点を持つ一面しか知らないよなー、
職場にいるときと、家庭にいるときと、一人で趣味に没頭しているときとは、
全然別人になる人も居そうだというか、みんな程度の違いはあれそんな感じあるのかなと。

結論としては、人間を一面で判断してはいけない、人間って怖いよ、という思いが残りました。




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