『ローパフォーマー対応』
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- 2023/05/31(Wed) -
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秋本暢哉 『ローパフォーマー対応』(日本経済新聞出版社)、読了。
こちらも図書館本。 小室淑恵さんの超前向きなパフォーマンス向上策の本の次は、 ローパフォーマーをどのように再教育するかという守備的な本。 たまたまだけど、正しい順番で読めましたわ(苦笑)。 「ローパフォーマー」を、「業績が低く評価も低い人」と定義しています。 ただし、常識の通じないような問題児や、病気やメンタル面での問題を抱えて一時的に落ちている人は 対象に含まないという整理です。 つまりは、指導や教育、または環境を整えることで復活可能な人材という位置づけです。 前半の、そもそもローパフォーマーとは何か、どういうタイプに分類ができるのかという 整理考察のパートは興味深く読みました。 一方で、後半の「ではどうするか」については、具体性が乏しいというか、 まぁ、そこを担当することでお金を稼ぐ商売をしている人なのだから 「詳細は金払って雇ってね」という、この手の本にありがちな流れです(苦笑)。 まぁ、でも、ローパフォーマーの分類、および、どういう人をその定義内に入れて良いのか、 逆に入れてはいけないのかという前段整理を適切に行うことは、 この手の人事系課題に対処するには最も大事なプロセスだと思うので、勉強になりました。 ただ、結局、こういうローパフォーマーの復活のために金と時間をかけられる企業というのは 結局大企業でなければ難しいところであり、そういう対象者が一旦前線から外れても 業務を回せるだけの体力がある企業に限られちゃうのかなと。 中小企業で、部署にスタッフが5人しかいませんとか、そもそも全社員が5人しかいません、 みたいなサイズの企業だと、仕事を任せながら再教育していくというのは現実味がないかなぁと。 たぶん、ローパフォーマーには重要な仕事は任せず、他のスタッフで分担し合うとか、 その負担が一定ラインを越えちゃうと、周囲の過負荷なスタッフがローパフォーマーをいじめて 組織から追い出すような展開になっちゃうんじゃないかなと想像します。 人材育成っていうのは、ある程度、組織体制の余裕と、スタッフの心の余裕がないと 難しいですよねー。 ![]() |
『6時に帰るチーム術』
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- 2023/05/30(Tue) -
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小室淑恵 『6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)、読了。
図書館本。 著者については、一度、社外セミナーの講師としてお話を伺ったことがあります。 そして本も一冊読みました。 勤め先の社内セミナーにも人事部が呼んでましたが、そちらは仕事の都合で参加できず。 著者は、「起業の準備最中に妊娠発覚で開業時は出産直後で時短勤務だった」という経歴と 「ワーク・ライフ・バランス」という考え方の提唱、そして起業した社名もそこからつけていることから、 特に男性には、「女性の権利を主張する人」みたいなイメージで捉えられているところが あるんじゃないかなと懸念しています。 しかし、多くの働く女性が出産と育児をこなして職場復帰する時代ですし、 男性が育児休暇を取るのも普通になってきた時代。 「ワーク・ライフ・バランス」というのは、決して、労働者が権利を一方的に主張するための言葉ではなく、 優秀な社員に継続的に会社に貢献してもらうために必要不可欠な概念だと思います。 そして、私自身が小さいながらも経営者の立場になった今、 「ワーク・ライフ・バランス」というのは、要は、短時間で成果をあげる仕組みづくりであり、 会社にとっても、効率よく成果が上がるわ、残業代は削減できるわで、 メリットたっぷりの概念だと、身をもって実感しています。進めないと損です。 その具体的な導入事例を、まさに著者が自身の起業した会社を舞台に、 どういう方法で取り組んだのか、また社員からどんな反発があり、どんな風に納得させてきたのか、 わかりやすく紹介、解説されています。 ポイントは、著者が社外コンサルタントとして制度導入を推進した事例ではなく、 自身の会社に導入してきた当事者としての姿を見せることで、 なぜ、その施策の導入が必要だと思ったのか、どういう反応が社員から返ってきたのか、 その反発にはどう対応したのか、結果どうなったのか、それらが具体的に書かれていて 社外コンサルのキレイごとではなく、経営者自身の目線で実利的なメリットを解説しているので、 納得性が高いです。 Amazonのレビューは低めですが、この本はやっぱり、課長とか部長とかの管理職目線では 「そうは言っても実現するのは難しいよなぁ・・・・・」という感想で終わってしまいがちで、 経営者の立場になって初めて説得力が増すというか、実感がくっ付いてくる本だと思います。 だって、課長の立場なら、残業代を減らすことより、とりあえず目の前の仕事を処理することの方が 優先されちゃいますからねー。 残業代が増えても、「だって仕事が昨年より増えたし・・・・」という言い訳で通っちゃうところがありますし。 それに対して経営者は、社員の残業代が増えることは、会社の利益減少に直結するわけで、 社員を早く帰らせることのメリットは直接的に自分の業績に大きな影響を与えるわけで。 一方で、既存の企業が途中からこれらの施策を導入しようとしても 現場は混乱するだろうし、実績出すのはしんどいだろうなということも分かります。 やっぱり、起業の段階で、ゼロベースで社内の制度設計に最初から組み込んじゃわないと 社員の抵抗も大きいだろうし、そもそも惰性で動いている社内の風土みたいなところを 変えていくためのエネルギーは途方もない量が必要だと思います。 というわけで、新規事業の立ち上げ時とか、合弁会社を作って社風をリセットできるときとか、 そういう一定条件下でないと、実現は困難かなという気がします。 弊社は幸か不幸か、コロナ禍の際に、高齢従業員さんが感染防止のため外出したくないとして退社したので、 そのタイミングで社内体制の刷新を図りました。 事業特性上9時-5時の仕事ではないので、「6時に帰る」というわけではないですが、 少数精鋭で事業を回すスタイルに変えられたので、売上を伸ばしながら総人件費は減らし、 その分、個人単位での給与をアップできました。 「ワーク・ライフ・バランス」という概念とは違う形にはなってますが 経営効率化は成果を出すことができたかなと思います。 ![]() |
『店長がバカすぎて』
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- 2023/05/20(Sat) -
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早見和真 『店長がバカすぎて』(ハルキ文庫)、読了。
昔からブックオフに行ったときに気にはなっていたのですが、 タイトルが今風過ぎて、ライトノベル系かな?とか思ってしまい敬遠してました。 先日、ストレス解消にドカ買いしてきた中で一緒に買ってきました。 これまで書店を舞台にした作品は何冊か読んだことがあるのですが、 いずれもしっくりこない感じで、相性が悪いように思ってました。 お仕事小説系は人間関係に悪意あり過ぎだし、日常の推理ものでは展開に無理があり過ぎだし。 それが、本作では、店長がバカなだけで、却って書店スタッフたちは団結しており、 人間関係の濃い薄いはあっても悪意があんまり介在していないので 気持ちよく読めるお仕事小説でした。 そして、書店内の出来事だけでなく、作家との関係、版元の会社のデカさや歴史に基づいた書店への圧力、 版元の営業マンとの関係、取次会社との関係、などなど、日本の出版業界をめぐる 問題点も分かりやすく描いており、興味深かったです。 書店員は、基本、本好きが選ぶ職業でしょうから、インテリも多く、 仕事に給料だけでなく、「やりがい」「出版界への貢献」なども求めがちで、 たぶん、不満が複雑な形で溜まりがちなのかなと思いました。 しかも、出版社側は高給取りの人気職業ですから 業界内での権力的ヒエラルキーと、所得的ヒエラルキーのダブルパンチで書店員は下に置かれており まぁ、確かに、「やりがい」とかの精神的満足を得られないと、やってられないんでしょうね。 というわけで、主人公は、書店スタッフという職業に誇りを持ちながらも 薄給および契約社員という不安定な立場のせいで、その誇りが揺らいでしまうという 気持ちの上がり下がりが、深刻さは控えめなポップな文章でつづられていて面白く読めました。 そして、主人公は、武蔵野書店本店を改革しよう!とかいうような野望は抱かず、 あくまで、自分が共感できるスタッフと日々の業務をきちんと回そうというレベルで 仕事に向き合っており、繋がりの薄いスタッフには変に関りを持たず 薄い人間関係を持続するという、イマドキの若者の行動をしており、 そこもリアリティがあって、読みやすかったです。 一方で、タイトルにも出てくる店長。 本を読まない、自己陶酔な朝礼をする、結果、スタッフの人望がない、という バカ店長として描かれていますが、ごくまれに変な行動力を発揮し、 「もしや、普段のバカぶりは演技で、本当は逸材なのか!?」と 勘違いしてしまいそうな一面を見せ、主人公も勘違いをしてしまうのですが、 最後、やっぱり勘違いだったという(苦笑)。 このバカさ加減と、逸材かもという誤解加減が、正直あんまりバランス良くないような気がして 店長のキャラクターに筋がしっかり通っていないような印象を受けました。 そこだけ、読みづらさというか、リアリティのなさを感じてしまいました。 ま、そのリアリティのなさが本作の面白さなのかもしれませんね。 ところで、本作内で書店員が独自のセンスでPOPによる販促活動を行うことや、 それが発端で本の帯や雑誌の書評で書店員の推薦コメントが付くとか、 その先には本屋大賞があるような業界の構造も丁寧に描かれていますが、 じゃぁ、本作は、本屋大賞でどうだったのよ?と調べてみたら、 2020年度にエントリーされたものの9位だった模様。 ・・・・・うーん、中途半端。 書店員の待遇改善とか、版元と書店の力関係の改善とかを提言していますが、 必ずしも作品として素直に書店員が推すわけではないんだなと、 インテリの天邪鬼な一面を垣間見ました(笑)。 ![]() |
『最高のオバハン 中島ハルコはまだ懲りてない!』
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- 2023/05/17(Wed) -
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林真理子 『最高のオバハン 中島ハルコはまだ懲りてない!』(文春文庫)、読了。
中島ハルコシリーズ第2弾。 べったりではないけれど、中島ハルコは食事や観劇などの連れに利用し、 主人公は相談事をする相手として利用する。 お互いにうまく相手の得意分野を見ているサッパリした関係なので 女性の会話が続く作品ですが、読んでいて重たくないので読みやすいです。 そして、一つ一つの話が短めなので、サクサク読めます。 ハルコの特異なキャラクターを活かしていかないといけないので、 持ち込まれた相談事への回答は、いわゆる一般的な穏やか路線ではなく、 相談者がハッとしたり愕然としたりするようなものを用意せねばならず、 かといって、あまりにトンデモな回答では読んでいて面白くないので、 このバランスを取りながら短い文章の中で説得力もたせて面白がらせてって、 やっぱり力量のある作家さんだなと、この軽めの作品でも実感。 主人公の結婚問題では、なんでそんなにイジイジして前に進まないんだろうと 主人公とそのお相手の慎重さに若干イライラしてしまいましたが、 金持ちの息子、しかも妾の子となると、なかなか家の事情というものが難しいでしょうね。 なんのしがらみもない貧乏人の家に生まれてラッキーだわと思ってしまいました(爆)。 ![]() |