『三重の文学』
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- 2022/11/30(Wed) -
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植村文夫、若松正一 『三重の文学』(桜楓社)、読了。
近所の公民館の図書室からの廃棄本の中からもらってきて、 ずーっと積読になってました。 『万葉集』にはじまり、三重県各地を舞台に詠まれた歌や書かれた文学、 そして、三重県出身者や三重県に長期滞在した人による三重県を舞台にした小説など、 多様な文学が紹介されており、改めて「三重県ってこんなに作品化されてるのか~」と その歴史や文化の深さに感じ入りました。 元々、奈良、難波、京都に近く、熊野や伊勢という神聖な土地を抱えているため、 古くから人の行き来は非常にあった土地だと思います。 やっぱり、文学とか芸術とか、そういう人間の叡智の結節点みたいなものは、 人の交流の多いところに生まれやすいんだなと納得。 ただ、本作で紹介された文学作品は、ほとんど読んだことがないので、 三重県人としてちゃんと勉強しないといけないですね。 中上健司とか丹羽文雄とか、買ってはあるものの、難しそうで積読になってます(苦笑)。 ![]() |
『「人たらし」のブラック心理術』
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- 2022/11/27(Sun) -
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内藤誼人 『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、読了。
「イマイチ」とか感想を書きながらまた買ってしまった内藤作品。 この著者は、とにかく、タイトルが上手いんですよねー。 本人が付けてるのか編集者が付けているの分かりませんが、 ブックオフで100円だったら、「ま、買ってもいいかな」と思えてしまいます。 本作は、「人たらし」というキーワードをもとに、 相手の懐にするするっと入り込むテクニックを紹介しています。 基本的は、一般的なビジネススキルの解説本に書いてあるような内容なのですが、 ちょこちょこっと心理学の実験の話が出て来るので、 なんとなく説得力があるような気がして読んでしまうんでしょうね。 私の場合は、むしろ、こんなニッチな視点で実験をしている学者がいるのかー、という ちょっとシニカルな視点で楽しみました。 あと、「ブラック」というのが著者の冠になってますが、 とにかく努力して相手に好かれようとするのではなく、 「それ以上やっても無駄だよ」というラインを引いて、それを越えたらスパッとあきらめる見極めの良さを 持ち込んでいるので、効率を求めるビジネスマンにはウケるんだろうなと思います。 ![]() |
『見仏記 4 親孝行編』
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- 2022/11/26(Sat) -
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いとうせいこう、みうらじゅん 『見仏記 4 親孝行編』(角川文庫)、読了。
岡田斗司夫先生に教えてもらってみるようになった山田五郎先生の絵画解説動画。 そこに先日、みうらじゅんさんが登場し、仏像について熱く語っていたのを見て、 「『見仏記』面白かったのになー」。 第3弾で海外にまで見仏に出かけて行ってしまったので、 それで完結したような印象を持ってましたが、ブックオフで第4弾を見つけて、 「えー!終わってなかったのか!」とビックリ。 というか、第7弾ぐらいまで出てるようで、まだまだ楽しめそうです。 第4弾は、再び国内に戻っての見仏となりますが 奈良や京都などの基本のお寺のツアーから穏やかに始まり、 中盤、「親見仏」として、いとうせいこう父母が加わった4人組ツアー、 続いてみうらじゅん父母が加わった4人組ツアーと、 思いもよらない変化球を混ぜてきて、見仏以外に、「親子とは」という裏テーマが 非常に興味深かったです。 つまりは、家族旅行に友達がひとりくっ付いてきているような形になるのですが、 私だったら恥ずかしくて無理。 そもそも、友達の前での私と、家族の前での私は全然別人ですから。 標準以上に、私はその空間の人間関係や自分の立ち位置によってキャラ変えちゃうので(苦笑)。 この4人組ツアーを敢行できるなんて、友達同士がお互いを信用してないと無理だと思います。 いとうさんとみうらさんって、本当に仲良しというか、信頼しあってるんだなと分かりました。 そして、家族旅行に余計なものがくっ付いてきている形だからこそ、 その余計なものの視点で見つかる気づきがあり、 息子と同じ行動を取ってしまう父親、息子の変なところが母親に由来することが発覚、など あ、血の繋がりって、こういうことなのか・・・・・と実感できるシーンがたくさんあり、 面白く読みました。 それでいて、見仏の対象は即身仏! 親子でミイラ見に行ってどうするのよ・・・・と思ったら なんとみうらじゅん氏は子供の頃に百貨店の催事で両親とともに即身仏を見ているそうで、 キワモノの超エリート教育を施す家庭だったんだなと、みうらじゅん誕生の原因が判明。 この親仏記が面白過ぎて、最後、本当の見仏としてはイチオシであろうと思われる 北陸見仏ツアーが、ちょっと地味な感じになっちゃったのは、まぁ仕方ないよね。 お二人がとっても見仏の成果に満足していることは伝わってきたけど、 でも、親子の縁にはかなわないわ。 ![]() |
『なぜ、脳は神を創ったのか?』
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- 2022/11/25(Fri) -
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苫米地英人 『なぜ、脳は神を創ったのか?』(フォレスト2545新書)、読了。
「なんで、あんなに怪しい教祖に対して何千万円も寄付しちゃうんだろ?」という疑問が渦巻く今日この頃、 ちょうど良いお手軽本かな?と思い、ブックオフで買ってきました。 天才脳科学者の苫米地先生の本は、過去に何冊か読んできて、 「なんで話している動画を見ると天才性を感じるのに、本になると軽い感じがしちゃうんだろ?」と いつも疑問でした。 本作を読んでいて思ったのは、「私の思考回路に読者はついていけないだろうから 読者のレベルに落として易しく解説してあげなければいけない」という著者なりの思いやりに対して、 著者が、読者の凡人度合いをうまく見極められていないから 易しくし過ぎてるんじゃないかと思うようになりました。 我々凡人が天才苫米地の思考回路を想像できないように、 天才苫米地は凡人の思考回路を理解できないのでは?という気づきです。 動画では、対談相手や現場スタッフの反応などを見ながら、そのレベル感を適度に調整できるけど、 著作では一方的に書くしかないから、軽い方に振れちゃうのかなと。 いきなり話が脱線してしまいましたが、本作は、人間と神の話。 なぜ脳が髪を作ったか?という問いは、私にとっては、なぜ脳は神を必要としたか?という 感情の面、特に集団感情の面での必要性の問題だと思っていたのですが、 著者は感情は関係なしに、あくまでロジカルに神を説こうとします。 人間は完全情報を得たいという欲望があるが、自分が不完全な部分情報であるため 完全情報としての神を希求するというコトバは理解できたのですが、 うーん、そんな単純で合理的なものなのかしら?と腑に落ちない感じが残ります。 不安という心情も、怖いという心情も「完全」に対して何かが欠けている状況だから、 それを神という存在で埋めようとしているのだ・・・・ということかもしれませんが。 そんな人間と神の関係において、神が存在するのかという疑問を、 数学的な証明方法で「神はいない」と書かれても、なかなか受け入れにくいです。 いや、私は、神様が物理的に存在するとはもともと思ってませんが、 誰の心にも何かの折にすがりたい「神」という存在がいるということは、 精神的安定感を得るためとか、気持ちの逃げ場を確保するためとか、そういう理由で とても大事なことだと思っています。 だから、数学的に「神はいない」と証明することの意義が良く分かりませんでした。 というわけで、前半は、文章の上を目が滑るだけで、中身が頭に入ってきませんでした。 後半は、神や仏の世界を、各宗教がどういうう風に説いているのかを簡単に解説しており そこは興味深く読みました。 著者が「天台宗ハワイ別院国際部長」という肩書をなんで持っているのか、 そもそもそのポストは一体何なんだという疑問は尽きないのですが(苦笑)、 かといって仏教や天台宗の教えが一番だと主張するのではなく、 仏教というものを突き放して説明してくれるので、興味深く読めました。 そして、キリスト教などの一神教と、仏陀の説く世界の仕組みとの根本的な違いについても 私なりに理解できたような気がします。 日本人の変な宗教観は、仏教だからこそ許されたものであり、 インドから日本に伝わってくるまでの間に、チベットやら中国やら朝鮮半島やらで 様々な要素が勝手に足された状態で日本に渡ってきたので、 じゃあ、日本人も神道と混ぜちゃえ!となっても、そりゃ仕方ないですよね。 それでいて、今のチベットの仏教徒が、日本の仏教感について「おかしい!」と モノ申す訳でもないところが、仏教の寛容さというか、 そもそも宗教というより生活の教えみたいな面が強いからだろうなと感じました。 最後に、本作を読んでの私なりの結論ですが、 やっぱり、神が客観的に居るか居ないかとかはどうでもよい議論であり、 万人の心の中にそれぞれ困ったときにすがる相手や、助けられたときに感謝する相手が 神なり仏なりの姿で像を結んでいることが、幸せな状態のなのじゃないかなと思いました。 ![]() |
『汽車旅12ヵ月』
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- 2022/11/21(Mon) -
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宮脇俊三 『汽車旅12ヵ月』(河出文庫)、読了。
著者の汽車旅本は、インド旅を読んだことがあるだけでしたが、 おー、国内旅行もするのかー、と本作を買ってきました。 が、読んでみると、国鉄全線制覇とかやり遂げてて、 ど真ん中の鉄ちゃんのようですね。 むしろ海外に出ることの方が余禄的だったのかな。 中央公論社の編集者だったというのは、本のプロフィールで確認できましたが、 Wikiを見てみたら、常務取締役まで務められていたようで、 ここまで出世しながら、毎月泊りがけで電車旅に出かけてる体力というか意欲というか、 そこはすごいですね。 本作は、そんな毎月の旅模様を1月から始まって12月まで描いたもの。 実際の旅の情景もしっかり描かれていますが、どの月の電車が混むのかとか、 新幹線の車両で団体客と個人客の車両の振り分けなどのルールや 座席指定のシステムの話など、鉄ちゃん豆知識的な情報も豊富で面白かったです。 この人の場合、旅行と言っても、電車に乗ること自体が目的なので、 綿密にダイヤを調べてプランを立て、土日で北海道や九州へと電車で旅行に行きます。 電車そのものが旅の目的というと、のんびりヒラヤマ山系くんと電車に揺られてる百閒先生も居ますが、 百閒先生ののんびりぶりとは違って、著者の場合はガッツリ乗り重ねる旅です。 まぁ、時代が違うので、そもそも路線の数が全く違うという背景もあるのでしょうが、 現代人っぽい詰め込み式の趣味だなぁ・・・・・と感じました。 わたくし、コロナ禍になって電車には3年乗っていないような気がしますが、 来週、久々に新幹線に乗る予定なので、今から車中でどの本を読もうか楽しんで計画中です。 ![]() |
『汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也詩集』
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- 2022/11/17(Thu) -
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中原中也 『汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也詩集』(集英社文庫)、読了。
詩の世界はどちらかというと苦手意識があるのですが、 中原中也は、たまたま手にした本に親しみが湧いたおかげか、 ブックオフで見つけると気になるほどになりました。 中也の詩集はすでに他社の文庫本で持ってますが、 勢いで本作も買ってしまいました。 出版されている中也の詩集は少ないので、当然、収録された作品は ほとんど被ってるかと思いますが。 やっぱり、日本語のリズム感が心地よいです。 そして、中也の心情がストレートに伝わってくる言葉たちに 共感しながら読むことができます。 難解な日本語を使うのでもなく、伝わりにくい比喩を使うのでもなく、 日常口にする言葉たちで、繊細な心情を描くところが、すごいなと思ってしまいます。 これを、若くして成したんですからね。 30歳で亡くなったという、悲しい人物像も、 詩への共感度合いを高めているのかもしれません。 ![]() |