『わたし定時で帰ります2 ―打倒!パワハラ企業編―』
|
- 2022/10/25(Tue) -
|
朱野帰子 『わたし定時で帰ります2 ―打倒!パワハラ企業編―』(新潮文庫)、読了。
経理の鬼の話から、定時の鬼の話へ(苦笑)。 経理の鬼の話は、会社組織や人間関係の描き方が上手くて、 「あー、会社でこういうこと、あるよね~」と共感しながら読めるのですが、 本作の1作目は、ちょっとリアリティを感じられなくて、作品との距離がある感じでした。 で、2作目ですが、新たな新人がチームに入ってきたりして、 より珍獣動物園の印象が強くなってしまいました。 現実にある会社の中の人間関係の、どこか特徴的な部分をデフォルメしてキャラクター化して いるのではなく、人間一人まるごと不思議キャラを作ってしまうので共感がわかないんですよね。 読んでいて、「あー、こういう意味わからん新人いるよねー」と、主人公の悩みに共感したいのに、 これだけ特殊なキャラクターをあれもこれもと出されると、「なんで割り切って捨てないんだろ?」と むしろ主人公の姿勢にイライラしちゃうんですよねー。 本作では、昔ながらのスポ魂気質のガチガチ上下関係スポーツウェアメーカーが相手で、 社内は超ブラック、社内にはパワハラが横行し、社外のベンダーなどにはパワハラだけでなく セクハラも堂々とやってしまう体質。 うーん、正直、今回は舞台もリアリティがない・・・・・。 そもそも主人公の東山結衣の「毎日定時で帰りたい」という目標に対して、 その解決方法として選ぶ内容というか、選択に至る思考回路がイマイチ理解できません。 定時最優先なのか、チームワークを重んじるのか、その狭間で揺れる心を描くところが 本作の主題だということは分かっていますが、その悩み方がなんだかアンバランスに 感じてしまいます。 「え、ここで同僚を置き去りにして帰るの!?」とか「え、ここでそんな無茶するの!?」とか。 この主人公と、元恋人の激務大好き男のコンビが上司という新人君たちが哀れに思えてしまいます。 こんなに気を使わざるを得ない職場ってないですよね(苦笑)。 このシリーズは、これで打ち止めかな。 ![]() |
『これは経費で落ちません!3』
|
- 2022/10/22(Sat) -
|
青木祐子 『これは経費で落ちません!3』(集英社オレンジ文庫)、読了。
久々のシリーズ3作目。 今回も、経理のルールに従わない社員のワガママ行動がいくつか登場してきますが、 経理の森若さんによる糾弾はあんまり行われず、 スッキリ感はありませんが、組織内の人間関係やパワーバランスについての洞察に リアリティがあって納得できる内容です。 会社組織の中には、様々な階層が居て、学校ではスクールカーストという呼び名が一般化しましたが、 会社の中にも身分制度がありますよねー。社員登用とかあるので、カースト制度のように 固定化はしていないのですが、でも、各身分に対するイメージは固定化されていると思います。 もちろんそれは、会社が社員の雇用形態に応じて要求する能力水準が異なるから あって当然だとは思いますが、一方で、「一般職は口を出すな」「同じ仕事をしてても契約社員は正社員より下」 というような当人の能力とは関係のないところで押し付けられるものがあるので、不合理だなと思います。 できる人にはどんどん仕事と役割を与えて、フル活用すればよいのに・・・・と思ってしまいますが、 人材を活用しきれる能力のある上司がいないと、無理なんでしょうねー。 そうなると、それぞれの身分の中で、周囲から睨まれないように、うまく人間関係を構築できるように 気を遣い始めるので、本作に登場してくるような、細かい出費を自腹で負担する契約社員とか 無能な年上同僚の尻拭いをさせられる若手社員とか、出てきちゃうんですよねー。 そういう、会社組織内の不合理な人間関係の様子が、非常によく描けていると思います。 起こっている事件は、ちょっと突飛な感じのものが多い(クリスマスツリーが破壊されるとか)ので、 そこはリアリティがないように思いますが、しかし、そこまでリアリティのある設定にしちゃうと、 会社組織のドロドロを重厚に描き出してしまい、読んでてしんどいかもしれませんね(苦笑)。 ![]() |
『超マクロ展望 世界経済の真実』
|
- 2022/10/19(Wed) -
|
水野和夫、萱野稔人 『超マクロ展望 世界経済の真実』(集英社新書)、通読。
何度も挑戦しては、歯が立たないままが続いている世界経済の話。 水野氏の著作は2冊目でしたが、またもや撃沈(苦笑)。 今回の対談を読んでいて感じたのは、 世界経済についての議論において、自分は、例えば何がキーワードなのか、 発言者がその10行のコメントの中で、どの単語に最も思いを込めてしゃべっているのか、 その言葉の軽重が感覚的に感じ取れていないので、 どれが主張のキモで、どれがただ単に会話の流れを受けて口にしただけのことなのか、 その判断がつかないところに、私はセンスがないんだなぁと感じました。 例えば、教育に関する著作を読んだときに、 小難しい文章で書かれていて、十分な理解はできなくても、 あ、ここが著者の主張のポイントなんだろうなということが 単語なりフレーズなり一文なりから感じ取ることができます。 とりあえず、ここはノートに取っておこ、みたいな。 でも、世界経済の話は、どれがキーワードなのか、 また、どの具体的エピソードが象徴的な話なのか、反対に与太話なのか、 その辺がつかめないので、全編通して平板な文章を読んでいるような気持ちになってしまいます。 だから、読み終わった後に、ほとんど内容が頭に残ってない(苦笑)。 なにか、この曇った眼が、一気にスカッと開かれるような 画期的な経済の本、ないですかねー。 ![]() |