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『影の権力者 内閣官房長官菅義偉』
- 2022/10/29(Sat) -
松田賢弥 『影の権力者 内閣官房長官菅義偉』(講談社+α文庫)、読了。

ブックオフの100円本棚に何種類か菅さんの本が出てて、
どれにようかな・・・・と悩んで、本作を選びましたが、失敗でした。トホホ。

著者は、週刊誌を舞台に仕事をしているジャーナリストで、
小沢一郎の妻が書いた離縁状をスクープした人だというプロフィールを見て、これを選びました。
離縁状をスクープできるということは、政治家の身内の中に入って取材できているような
取材力のある人なのかなと期待したのと、そもそも週刊誌に記事が買ってもらえるような人は
面白おかしく文章を書く能力があるだろうと思ったので。

ところが、前半は、小沢一郎や野中広務の話が延々と続き、
菅さんも登場してきますが、なんだか脇役というか、周辺人物みたいな雑な扱いに感じました。

著者の得意分野に持ち込みたかったのかなと思いますが、
それが小沢一郎や、もう亡くなっている野中広務では、著者はもう最前線のジャーナリストではなく
ひと昔前のジャーナリストなのかなと思ってしまいました。
その印象のせいか、菅さんにインタビューはしていますが、
結構、他人の著作からの引用が多く、あんまり取材が深掘りできてないんじゃないの?と
疑ってしまいました。

そして、文章も面白くありませんでした。
週刊誌的なワクワクするような政局の躍動感が描けていないですし、
話の構成も、あっちいたりこっちいったり、表面を触っただけで次に移ったりと、
読み難さを感じてしまいました。

そして、小沢一郎、野中広務、梶山静六と、昔の政治家がたくさん登場してきて、
清濁併せのむような感じで、フラットな評価が続くのに、
なせか安倍晋三に対してだけは、はっきりと批判を展開しており、
このアンバランスさもなんだかなー、でした。

菅さんについては、他の本で読み直そうと思います。
あと、梶山静六という政治家については、田中真紀子による「軍人」評しか印象がなかったのですが、
結構骨のある政治家のようなので、これもまた別途読んでみたいなと感じました。

それと、久しぶりに野中広務の名前を目にしましたが、
当時、『笑う犬』シリーズで、ネプチューンの名倉さんが「ひろむちゃん」というキャラでコントにしてましたよね。
内村さんも小渕総理を「ぶっちゃん」なんてコントにしたりしてて、
こういうネタになりうる大物政治家って、最近、いなくなっちゃった気がします。
まぁ、あんまりネタにすると支援者からのクレームが凄いのかも知れませんが・・・・・。








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『知財戦略の教科書』
- 2022/10/26(Wed) -
佐原雅史 『知財戦略の教科書』(PHPビジネス新書)、読了。

知財って、うまく使えば、もっと商売に利用できるようには感じてるのですが、
具体的に何をどう活用するかまでイメージできてなくて、着手できてません。

とりあえず、物は試しと、自分がやってる会社のロゴマークを商標登録を
自分で書類書いて、特許庁に申請してみたら、数か月の審査を経て無事登録されたので、
手続き面含め、素人でもちゃんと書類を整えれば利用可能な制度なんだというところまでは
自力で確認済みです。
でも、その商標登録が何か具体的な利益を生んでいるかというと、うーん、という感じなので、
まあ、自分が知財申請プロセスを身に着ける勉強になったという程度の効用です。

知財セミナーとかにも行ったことがあるのですが、
どしても制度の枠組みの説明が前面に出てくるので、イマイチ面白みに欠けるというか、
「で、うちの会社では、どうやって使えばいいのよ?」みたいなところが
腹落ちせずに行動に移せない感じです。

本作では、制度の話の前に、そもそも各会社の事業特徴をベースに、
「販路という強みのある会社」「商品開発力という強みのある会社」「モノづくり力という強みのある会社」
この3分類で、それぞれ、どういう場面で知財を意識すべきなのかを説明していて
分かりやすかったです。

ただ、後半の知財の制度については、やっぱり一般的な説明のように思えてしまいました。
個人的には、例えば、「地理的表示保護制度(GIマーク)」のような、
特許庁が扱うものではないけれども、国の各省庁が国産品のブランド開発・保護に力を
入れている制度も含めて、すそ野を広く紹介してくれた方が、
中小・零細企業にもとっつきやすいのかなと感じました。
ま、そこは、農水省とか経産省とかが頑張って制度PRしなくちゃいけないんですけどね。




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『わたし定時で帰ります2 ―打倒!パワハラ企業編―』
- 2022/10/25(Tue) -
朱野帰子 『わたし定時で帰ります2 ―打倒!パワハラ企業編―』(新潮文庫)、読了。

経理の鬼の話から、定時の鬼の話へ(苦笑)。

経理の鬼の話は、会社組織や人間関係の描き方が上手くて、
「あー、会社でこういうこと、あるよね~」と共感しながら読めるのですが、
本作の1作目は、ちょっとリアリティを感じられなくて、作品との距離がある感じでした。

で、2作目ですが、新たな新人がチームに入ってきたりして、
より珍獣動物園の印象が強くなってしまいました。
現実にある会社の中の人間関係の、どこか特徴的な部分をデフォルメしてキャラクター化して
いるのではなく、人間一人まるごと不思議キャラを作ってしまうので共感がわかないんですよね。
読んでいて、「あー、こういう意味わからん新人いるよねー」と、主人公の悩みに共感したいのに、
これだけ特殊なキャラクターをあれもこれもと出されると、「なんで割り切って捨てないんだろ?」と
むしろ主人公の姿勢にイライラしちゃうんですよねー。

本作では、昔ながらのスポ魂気質のガチガチ上下関係スポーツウェアメーカーが相手で、
社内は超ブラック、社内にはパワハラが横行し、社外のベンダーなどにはパワハラだけでなく
セクハラも堂々とやってしまう体質。
うーん、正直、今回は舞台もリアリティがない・・・・・。

そもそも主人公の東山結衣の「毎日定時で帰りたい」という目標に対して、
その解決方法として選ぶ内容というか、選択に至る思考回路がイマイチ理解できません。
定時最優先なのか、チームワークを重んじるのか、その狭間で揺れる心を描くところが
本作の主題だということは分かっていますが、その悩み方がなんだかアンバランスに
感じてしまいます。
「え、ここで同僚を置き去りにして帰るの!?」とか「え、ここでそんな無茶するの!?」とか。

この主人公と、元恋人の激務大好き男のコンビが上司という新人君たちが哀れに思えてしまいます。
こんなに気を使わざるを得ない職場ってないですよね(苦笑)。
このシリーズは、これで打ち止めかな。




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『県庁そろそろクビですか?』
- 2022/10/23(Sun) -
円城寺雄介 『県庁そろそろクビですか?』(小学館新書)、読了。

「他に就職するところがない」という消極的な理由で佐賀県庁に入庁した著者。
最初に配属になった県土木事務所での用地買収の仕事を皮切りに、
行く先々の部署で改革的な政策に取り組む様子が描かれています。

最も目立つ功績は、佐賀県内の救急体制にiPadを用いた情報管理システムを
導入したことかなと思いますが、何よりもすごいと思うのは、
その課題が組織の上から与えられたものではなく、自分で課題を設定し
解決方法を想定し、現場に説明し、導入に向けてまさに一人で動かしてきたということ。

私は、現在、地方行政組織と仕事をすることが多いのですが、
正直、「計画にない」とか「予算が計上されていない」とか「前例がない」とか
そういう物事に対して、非常に腰が重たくなるんですよねー。
「改善すればよくなる」ということまでは理解してもらえても、実行となると、壁が凄くて・・・・・。

また、自分が会社員だったときのことを思い返しても、
下から「こういうことをやるべきです!」と上にあげていくのは、かなり大変です。
私も、いろんな仕事をやらせていただきましたが、ほとんど社長から「こういうことをやりたい」と
方向性の指示があり、それを受けた部長経由で課長に下り、課長から私に指示がくるという
そういう流れでした。

担当者として、仕組みから運用まで結構好きなように計画させてくれる
会社で、しかも社長プレゼンも部長や課長は横にいるだけで担当自ら説明できる会社だったので
社長が示した方向性からは外れないようにしながら、自分のやりたいことも上手く混ぜ込んで
好きなようにやらせてもらってました。
あとは、年度事業計画を書く担当もしてたので、社長や各担当役員から出てきた施策について
自分が思うような方向にちょっと表現をアレンジしたりしてましたが、
自分で「来年はこれをやるべきです!」と役員に提言したことはなかったかなぁ・・・・。

本作では、救急の話であれば、消防隊や救急病院スタッフなど現場の方たちを
改革の取り組みの中にいかに取り込んでいくのか、また彼らの意見をいかに反映させるか、
そういう周囲の巻き込み方のエネルギーは凄いなと正直に感嘆しました。

一方で、県庁内部で、県の計画にない施策をいかに承認されるようにもっていったのか
内部調整の話はほとんど出てこなかったので、正直、ほんとに計画にないことを
著者が提案して実現していったのかな?もともと上層部に課題意識があって
施策としての盛り込みタイミングを見計らってたんじゃないのかな?というように
若干疑いの目も持ってしまいました(苦笑)。天邪鬼ですみません。
でも、外部の巻き込みと同様に、内部を正式手続きに則って通すことも重要なので
両輪で描いてほしかったなと感じました。

また、現場第一主義という描き方をしており、実際にそういう行動指針で動いてますが、
県庁の指示で、元三重県知事の北川正恭氏が率いる「人材マネジメント部会」に2年参加して
地方行政改革の思想体系なり人脈づくりなりにきちんと取り組んでいて、
しかもドラッカーやクリステンセンなどのビジネス書もいろいろ読んでいるようで、
現場一辺倒ではなく、きちんと体系的知識を身に付ける努力をしているところが
スーパー公務員だなと思います。

あと、佐賀県庁側も凄いなと思うのは、これだけ現場で実績を出している著者を、
その現場に長年置きっぱなしにして「この人じゃないと回らない・・・・」というような
状況に陥らせることなく、3年おきにちゃんと配置換えをして、
その能力を、各現場で最大限に活かそうとしていることです。
私の住む地元の自治体では、実績をあげて市長に気に入られると、そのポジションに
何年も固定化される傾向にありますから、なんだかなーです。




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『これは経費で落ちません!3』
- 2022/10/22(Sat) -
青木祐子 『これは経費で落ちません!3』(集英社オレンジ文庫)、読了。

久々のシリーズ3作目。

今回も、経理のルールに従わない社員のワガママ行動がいくつか登場してきますが、
経理の森若さんによる糾弾はあんまり行われず、
スッキリ感はありませんが、組織内の人間関係やパワーバランスについての洞察に
リアリティがあって納得できる内容です。

会社組織の中には、様々な階層が居て、学校ではスクールカーストという呼び名が一般化しましたが、
会社の中にも身分制度がありますよねー。社員登用とかあるので、カースト制度のように
固定化はしていないのですが、でも、各身分に対するイメージは固定化されていると思います。
もちろんそれは、会社が社員の雇用形態に応じて要求する能力水準が異なるから
あって当然だとは思いますが、一方で、「一般職は口を出すな」「同じ仕事をしてても契約社員は正社員より下」
というような当人の能力とは関係のないところで押し付けられるものがあるので、不合理だなと思います。

できる人にはどんどん仕事と役割を与えて、フル活用すればよいのに・・・・と思ってしまいますが、
人材を活用しきれる能力のある上司がいないと、無理なんでしょうねー。
そうなると、それぞれの身分の中で、周囲から睨まれないように、うまく人間関係を構築できるように
気を遣い始めるので、本作に登場してくるような、細かい出費を自腹で負担する契約社員とか
無能な年上同僚の尻拭いをさせられる若手社員とか、出てきちゃうんですよねー。

そういう、会社組織内の不合理な人間関係の様子が、非常によく描けていると思います。
起こっている事件は、ちょっと突飛な感じのものが多い(クリスマスツリーが破壊されるとか)ので、
そこはリアリティがないように思いますが、しかし、そこまでリアリティのある設定にしちゃうと、
会社組織のドロドロを重厚に描き出してしまい、読んでてしんどいかもしれませんね(苦笑)。




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『戦争にチャンスを与えよ』
- 2022/10/21(Fri) -
エドワード・ルトワック 『戦争にチャンスを与えよ』(文春新書)、読了。

ブックオフの新書100円棚でドカ買いして来た時に、
「このタイトル、どういう意味なの?」と不思議に思い、とりあえず買ってみました。

著者は、国際政治学者という肩書で紹介されるようですが、
米戦略国際問題研究所の上級顧問ということで、学者というよりも、政策提言者という感じの
象牙の塔ではなく、現実社会にどっぷり漬かったところで国際政治を分析している
人なんだなということが、数ページ読んだだけで理解できました。

そして、タイトルの謎。これは、戦争を中途半端に止めるようなことをすると
お互いの怒りが継続し、戦力も維持され、近いうちに再び戦争が起きてしまう。
それよりも、戦争を徹底遂行させ、勝ち負けを明確にした方が、
その後の社会は平和になる、という、なかなか衝撃的な提言でした。
超リアリストな人ですね。

しかし、太平洋戦争でボコボコになった後、奇跡の復活を遂げた日本のことを考えると
「負けた、世界にはもっと強い国がある、植民地政策ではなく経済政策で繫栄を目指すべきだ」
と本人自身が自覚し、反省し、将来像を戦争以外の道に定めることで、
その後の平和的な社会再建が進んだというのには説得力があります。

朝鮮戦争は停戦合意という形で終えてしまったので、未だに38度線があるし、
韓国の徴兵制の仕組みなり、北朝鮮を警戒するために一定のリソースを割かないといけない
という事態は、国の繁栄のためにはマイナスに寄与しているように思います。

さらに、難民キャンプを安易に作り上げ、支援するふりをして戦争の被害者を拡大させている
NGOなどの活動の在り方にも警鐘を鳴らしています。
まぁ、所詮、ボランティア活動もビジネス活動も、すべては自己満足のためですからね。
自分が正しいと思ったことが、すべての関係者に正しいと思ってもらえるわけではなく。

最近の社会を見ていると、20年位前までは、戦争被害者の支援なり
戦争行為自体の支援なり、そういうことができるのは国家規模の大きな組織だけだったと思います。
しかし、情報通信網が発達し、交通機関も発達し、集金システムも発達し、
小さな組織がSNSなどを活用して、クラウドファンディングをして戦争の現地で何らかの活動をしたり
また、その活動報告を広くPRして支援を一層集めたり、反対に非難を集めたり、
いろいろできるようになってしまいました。

結局、その組織なり個人なりが、どのくらい広い視野で国際社会のことや
戦争被害者の将来にわたっての長期的な視野で物事を考えられているかということが
良い効果を引き出すのか、悪い結果となってしまうのかの分かれ道だと思うのですが、
国家規模だと、当然、多くの人口の中から優秀な人が政治リーダーなり官僚なり
著者のような政策提言者なりになっており、視野の広さや長期性を一定確保できそうですが、
それがNGOのような小さな組織になってしまうと、限界がありますよね。
まぁ、国家でさえも良く間違った判断をするので、国家だから安心というわけではないですが。

現在のロシアによるウクライナ侵略について、著者はどんな発信をしているのかな?と
ちょっとネットで探ってみましたが、有料記事が多くて読めず(苦笑)、
とりあえず上念さんが『月刊Hanada』に掲載された著者のインタビュー記事を解説していた
動画を見てみました。
なるほどねー。
長谷川幸洋さんとか、ルトワック氏の見解に触れたりしてないかしら?今度、動画探してみよ。

安倍政権がいかに、米露をはじめとする大国の首脳から信頼されていたのかということも
米国側からみた見解と、米国目線で観察したロシアなどの動向から述べられており、
あぁ、やっぱり安倍さんが若くして居なくなってしまったのは日本にとって大きな喪失だなと再認識。

そして、本作で著者は、日本の近代戦争だけでなく、戦国時代の武将についても言及しており、
ものすごく博学だし、インタビュー相手の国に敬意を払っている人なんだなと感じました。
インタビュアーの奥山真司氏の能力が高いという点もあるかと思いますが、
読者に興味を持ってもらえるように工夫し、自分のメッセージをしっかりと受け取ってもらえるように
最大限の努力をさせているところが、やっぱり戦略家としての凄さですね。
ビジネスマンとしても学ぶべきところが多そうです。





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『超マクロ展望 世界経済の真実』
- 2022/10/19(Wed) -
水野和夫、萱野稔人 『超マクロ展望 世界経済の真実』(集英社新書)、通読。

何度も挑戦しては、歯が立たないままが続いている世界経済の話。
水野氏の著作は2冊目でしたが、またもや撃沈(苦笑)。

今回の対談を読んでいて感じたのは、
世界経済についての議論において、自分は、例えば何がキーワードなのか、
発言者がその10行のコメントの中で、どの単語に最も思いを込めてしゃべっているのか、
その言葉の軽重が感覚的に感じ取れていないので、
どれが主張のキモで、どれがただ単に会話の流れを受けて口にしただけのことなのか、
その判断がつかないところに、私はセンスがないんだなぁと感じました。

例えば、教育に関する著作を読んだときに、
小難しい文章で書かれていて、十分な理解はできなくても、
あ、ここが著者の主張のポイントなんだろうなということが
単語なりフレーズなり一文なりから感じ取ることができます。
とりあえず、ここはノートに取っておこ、みたいな。

でも、世界経済の話は、どれがキーワードなのか、
また、どの具体的エピソードが象徴的な話なのか、反対に与太話なのか、
その辺がつかめないので、全編通して平板な文章を読んでいるような気持ちになってしまいます。
だから、読み終わった後に、ほとんど内容が頭に残ってない(苦笑)。

なにか、この曇った眼が、一気にスカッと開かれるような
画期的な経済の本、ないですかねー。




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『重大事件に学ぶ「危機管理」』
- 2022/10/18(Tue) -
佐々淳行 『重大事件に学ぶ「危機管理」』(文春文庫)、読了。

著者の本は、どの本も基本的には同じ出来事を何度も使いまわしている感がありますが、
でも、やっぱり「危機管理」というのは対応に失敗すると致命的な状況に陥るという重大事ですし
また著者の他に「危機管理」を語れる人物がいないという点もあり、
著者の本を何作も読んでしまいます。

そして、かつて読んだことのあるエピソードだとはわかっていても、
その時の自分の立場(小さいながらも組織のトップを務めることになったとか)や、
それまでに自分が経験した出来事(1500人ものお客様が関わる緊急事態の対応方法に助言を求められたとか)で
読んだときに感じることや、印象に残ることが違ってくるので、
やっぱり読んでよかったと、毎回感じる次第です。

本作では、警備のトップとして現場の1人1人の警察官に向けて言った
「天皇陛下がキミの目の前を通過するのは1分30秒だけだ。
 しかし、その1分30秒の間、天皇陛下とテロリストの間に立っているのはキミだけだ」
この訓示は、安倍元総理の銃撃事件の後に読むと、非常に重たいものを含んでいますね。

昭和天皇の大喪の礼に際しては、直前に新宿御苑周辺5キロ以内の建物の
新宿御苑側の窓20万カ所をすべて、しかも3回訪問チェックをしたと書かれており、
この徹底ぶりは、その現場の労力を思うと、なかなか指示できないことだと思います。
しかし、指示する指揮官と、実行に移す現場の両方が揃っていることが
無事に鎮魂の雰囲気で終えられたという結果に結びついているんだなと実感しました。

先日の国葬儀において、全国の警察官を動員するのは税金の無駄だという意見がありましたが、
私は、こういう機会に、47都道府県の警察署から選抜された警察官が、
日本の警備能力の最も優秀な組織のトップの指揮命令下に直接入って実践経験を積むということに
非常に意味があるのではないかと思いました。

まぁ、奈良県警の署長さんは警備のエリートコースを歩かれていたようなので、
それであの警備体制判断なのか・・・・・・と思うと、
佐々さん亡き後の日本の警備組織は、レベルが下がっているのかもしれませんが(苦笑)。

国葬義実施における税金の有効活用を議論するなら、単なる表面的な数字の話ではなく、
警備なり運営なりに関わった人間や組織に、どれだけの学びがあるのか、
そういう、将来に繋がる効果についてまできちんと意識した議論をしてほしいものです。




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『ドキュメント 金融庁 VS 地銀』
- 2022/10/17(Mon) -
読売新聞東京本社経済部 『ドキュメント 金融庁 VS 地銀』(光文社新書)、読了。

かつて、金融機関に勤めていたので、金融庁検査は間接的に影響を受けてました。
金融庁が来る!となったら、メガバンク側のカウンターパートナーさんが
「金融庁検査最優先の指示が出てるので、しばらく動きが悪くなると思います、すみません・・・・・はぁ」
とため息交じりに電話がかかってきたものです。

というわけで、金融庁検査に対して、銀行マンは戦々恐々としているというのは
彼らのバタバタぶりから間接的に感じていました。
一方で、私は、直接検査の様子を見たことがないので、どんな感じなのかは
あんまり固まったイメージを持っておりませんでした。
(わたくしテレビ持ってないので、例の池井戸ドラマは見てないです・・・・・苦笑)

さて本作ですが、勝手に「メディアは官庁に対して批判的な言論を持つ」と思い込んでいたので、
思わぬ金融庁への期待感に満ちた本作に、驚いてしまいました。
まぁ、読売新聞は、他の新聞よりも体制に近いところにいるメディアだとは思いますが、
取材当時の森信親金融庁長官の手腕をかなりかっているようで、
その在任期間中に行った金融機関への具体的な指導や処分、
特に地方銀行の統合再編について、評価をする内容でした。

確かに、地銀の統合再編は一時期に一気に進んで、そのたびに、私の勤め先では
ビジネスチャンス!ということで、各銀行に営業に回ってましたし、
実際にいくつか案件を受注してきていました。
金融業界の崩壊を防ぐための金融庁の指導だったのだと思いますが、
その余波で潤った周辺企業もあり、ありがたいことです。

今一度、金融庁の取り組みを本作で追ってみると、
最初に、潰すべきヤバい金融機関は冷酷に潰してしまい、
その後、弱小地銀の再編などで潰れないように誘導し、
土台が整ったら貸付事業の後押しと、フィンテックなどへの積極的参加を促していくという
なかなか、確かにきちんと手順を踏んで改革を実行していっていて、
官僚組織の優秀さが適切に機能すれば、ちゃんとできるじゃないのー!という感じです。

それには、優秀な官僚たちだけではダメで、筋の通った方針を打ち出して
それを有言実行で推し進めていく長官の覚悟と、その長官に信頼して現場を任せ、
また時には障害となる事態の打開を支援する政府与党の本気度が
大事な要素だと実感しました。

森長官の時代は、安倍政権だったので、長官と政権の間の力強い関係が分かりやすく見えますが、
それよりも、小渕政権から小泉政権の間の時期に、潰すべきところは潰すという
腹をくくった対応をしたことで、その後、改善の手を打ったら効くようにできたというところが
キモなのじゃないかなと感じました。

竹中平蔵さんとか、最近のメディアでのいじられ方や自虐ネタにする姿を見てると、
この人は世の中の悪役というものを引き受けて、でもやるべき改革は断行するという
覚悟をしたのかなと、最近ちょっとヒーロー的な目で見るようになってきました(爆)。
いろいろ言われてますが、時には冷たく切るような改革をする人も必要ですよね。




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『年金だけでも暮らせます』
- 2022/10/16(Sun) -
荻原博子 『年金だけでも暮らせます』(PHP新書)、通読。

正直、40代前半の私自身は、将来、年金はもらえない覚悟で
お金貯めとかなきゃなーと考えてます。
とりあえず現状の制度把握のために読んでみました。

基本的な著者のスタンスは、今の年金制度の額がもらえて、
介護保険とかの制度も維持されたら、そんなに老後は心配ないよ、というもの。
まぁ、タイトル通りなのですが。

後半に怒涛の提案がなされる節約術は、
新聞の夕刊はやめろとか、アイドリング運転はやめろとか、
とにかくセコいので、ここまでやらないと年金だけでは食べていけないのか・・・・・と
逆に悲しくなってしまいます。

この著作名に惹かれて本作を買う人は、
基本的には、すでに年金暮らしで、他にたいした収入がなく、
とにかく年金で生活しなければ!と焦ってる人なのかなと思うので、
こういうチマチマした節約術でもありがたく実践するのかな?

私は、本作を読んで自分の方針にしたのは、
(1)働ける間にきちんと資産形成をする
(2)基礎体力作りをする
(3)ボケない努力をする

独身で子供もいないので、
とにかく弟夫婦に迷惑をかけない老後にしたいと思います。




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