『少し酔って』
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- 2022/07/31(Sun) -
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森瑤子 『少し酔って』(角川文庫)、読了。
ブックオフの50円ワゴンで目に留まり、 「あ、上野千鶴子に喧嘩を習った人だ」と思い、試しに買ってきたら、 上野女史の方は、「遥洋子」さんでした(爆)。 というわけで、何の情報もないままの読書となりましたが、 お酒の名前がタイトルになった短編10編が収録されています。 最初の1編を読んだら、不倫をしている夫が主人公で、その妻がキッチンドランカーだと 最近気づいたことで、妻にどう切り出そうかと悩む話。 客観的に見たら、しょうもない夫婦なのですが、 話の運び方が上手いのか、文章のキレが良いのか、なぜか面白く読めました。 そのあとに続く短編も、男と女の要は痴話げんかみたいな話が多いのに、 なんだかコジャレた感じがして、すいすい読めました。 全く認知外の作家さんでしたが、Wikiで見たら多作な作家さんのようなので、 今後、気にかけていこうかなと思います。 ![]() |
『捨てない生きかた』
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- 2022/07/26(Tue) -
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五木寛之 『捨てない生きかた』(マガジンハウス新書)、通読。
いただきものの本。 五木寛之氏というと、私が大学生だったころに『大河の一滴』がヒットし、 そこで初めて存在を認識ました。 ヒット本なので、まもなくブックオフで100円で売られるようになり、 試しに読んでみましたが、正直、ピンとこないというのが感想でした。 書かれてい内容がピンとこないというだけでなく、 どういう読者層に刺さっているのかもうまく想像できませんでした。 その後、10年以上著作に触れることはなかったのですが 数年前に近所のおばちゃんに古本の山をドカッと譲っていただき、 その中に著者の作品がたくさん含まれていたので、ちょこちょこ読むようになりました。 その正直な感想は、「こんなすごい小説を書く人だったのか!」というもの。 小説やルポルタージュなど面白い作品がたくさんあり、 まだ読んでないものも手元で積読になっているので楽しみです。 で、本作なのですが、こちらはエッセイ。 帯によると発行から3か月で5刷10万部突破!ということのようですが、 相変わらずこの手の人生を見つめるエッセイ的なものは、私にはピンときません。 なんとなく、著者の同世代の人たちで、生活が別に苦しいわけではないけど 新鮮味が欠けているように感じているような、ないものねだりの人たちが 自分たちの暮らしを肯定してほしくて読んでいるのかな?と 勝手な想像ですが、そんな風に感じながら読んでました。 大きな文字で行間もしっかり空いているので、分量的にもかなりあっさりしてると思うのですが これで先に書いたような帯が付くぐらい売れるというのは、 もう五木ブランドが確立してるということなのでしょうかね。 本の内容より、一つのビジネスアイテムとして考察したくなりましたわ。 ![]() |
『MBA経理課長 団達也の不正調査ファイル』
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- 2022/07/25(Mon) -
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林總 『MBA経理課長 団達也の不正調査ファイル』(日経ビジネス人文庫)、読了。
小説仕立ての会計実務を解説した本。 日経ビジネスオンラインの連載企画だそうです。 この手の小説仕立てのビジネス本はいろいろ出てますが、 他の著者のシリーズよりも小説としての書きぶりがそれなりに様になってて、 ストレスなく読めました。 シンガポール大学ビジネススクールでMBAを取得した主人公は、 並みいるコンサル企業からのオファーを蹴って、恩師の勧めに従って 日本の中規模部品メーカーに就職します。 創業者が亡くなり、社長を継いだボンボンは優柔不断で経営判断ができない。 そのためいとこで銀行勤務だった優秀な男を専務に引き入れますが、 次第に専務が経営権を握るようになり、専横的な行動を隠さなくなってきます。 そんな状況で経理課長として就職した主人公は、 社内に蔓延る不正を見つけて糾弾していきます。 メーカーだからこそ可能な仕掛品の過大評価とか 仕入販売で労力なしに売上を底上げできる循環取引とか、 具体的にこうやってやるのかぁ・・・・・と変な実務が勉強になりました(苦笑)。 現場に会計知識がなければ、それこそ経理部や調達担当に指示された通りに 伝票を立てたり仕入れ品を動かしたりしてしまうでしょうから、 スキームの組み立てさえしっかりできたら、統制の取れている日本の会社組織では 意外と実行しやすいのかもしれませんね。 そして、社内でいろんな悪事を繰り広げてきた専務に対しても、 最後に、「最初から乗っ取ろうというようなつもりはなかったはず」と評価しており、 意外とそうなのかもな・・・・と感じました。 あまりに跡継ぎ社長がボンボンで頼りないから、自分がなんとなしなければ・・・・という思いから 次第に、自分の能力をストレートに発揮するために権力を集める必要があり、 それが、専務というポジションのために歪んだ指揮系統の構造になってしまい 最終的に、乗っ取らないとダメだという判断になってしまったのかなと。 この手の作品では、悪役に対しては勧善懲悪を求めたくなるのですが、 小さいながらも会社経営をしている身としては、 本作の専務には、なんだかちょっと同情してしまうところがありました ![]() |