『迷子の王様』
|
- 2022/06/19(Sun) -
|
垣根涼介 『迷子の王様』(新潮文庫)、読了。
ついに「君たちに明日はない」シリーズ完結です。 シリーズが進むたびに、主人公のリストラ面接官・村上の立ち位置が後退していき、 リストラされる側の人物にスポットが当たる量が強くなっているように感じました。 その分、リストラされる側の人生の悲哀というか、その人の持つ人生観がじっくり描かれ、 より一層読み応えのある作品になっているなと感じます。 本作では、化粧品会社の美容部員の女、家電メーカーの研究員、書店員の女、そして・・・・ という4人の被リストラ要員が登場してきますが、 みんな自分のこれまでの歩みに自分なりに確信を持っているというか リストラの危機に遭って多少の揺らぎはあっても、振り返って冷静に考えてみると 「自分はこうあるべきだ」と思えるものがある人たちばかりで、 あぁ、なんだかんだ良い人生を送ってるんだな・・・・・と爽やかな気持ちになりました。 リストラされてるのに本人も読者も前向きになれる力強さを持っている人って、 凄いですよね。尊敬します。 そして、彼らの共通点として本作を通じて感じたのは、 職場の同僚以外に、しっかりと会話ができる家族なり恋人なり友人なりが居るということ。 職場で辛い立場に追いやられても、その外に、それを相談することができる人が居るのは 本人が心強く感じたり、安心感を覚えたりできるという面もあるでしょうけれど、 それ以上に、そういう信頼できる人間関係を築く能力がある人間だという証明なんだろうなと。 そういう人は、逆境にも強いですよね。 自分もそういう人間関係を、毎日地道に作り上げていくようにしないといけないなと 心を引き締める読書となりました。 シリーズ完結編としては、最後、大団円の終わり方でしたが、 まぁこれぐらい強引に締めないと、このシリーズは終われないのかな。 変に続きが復活しそうな雰囲気を醸し出さずに締めたのは、すっきりしてて良いですね。 ![]() |