『グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業』
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- 2022/05/31(Tue) -
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夏野剛 『グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業』(幻冬舎新書)、読了。
夏野さんの本を読むのはこれで3冊目ですが、 どの本も、夏野さんの面白さがイマイチ出ていない凡庸な内容になってしまっているような気がします。 Abemaの番組などで夏野さんはよく見かけて、 一般人があーだこーだ思い込みで社会に対する不安や不満を述べると、 経営者としての経験からズバッと「その考え方はおかしい」というような指摘をされるので 個人的に非常に注目しているコメンテーターです。 ただ、口が悪かったり、態度が大きかったりするので世間的には誤解されているように感じますが、 自分の視点を明確に主張するために、あえてそういう態度をとっているようにも思えます。 動画が面白く、新書が面白くないのはなぜなんだろう??と思いながら読んでいたのですが、 著者の存在価値は、世間一般が誤ったイメージや意見を持っている事象について 「そうじゃないよ、本質はこういうことだよ」とクリアに見せてくれるところにあり、 そのクリアさが際立つのは「議論」になったときなので、 一人で淡々と解説する新書という形式は向かないんだろうなと思います。 対談形式とか、読者からの質問に答えるというような形式だったら もうちょっと面白さは出てくるのかなと感じました。 夏野さんの著作の代表作ってどれなんでしょうかね? それを読んでみても面白くなかったら、夏野氏の著作は私的には打ち止めかな。 なお、本作は、相変わらずタイトルと中身の乖離が甚だしいです。 編集者が、著者の世間的イメージをベースに、毒のあるタイトルを無理やりつけてるような気がして タイトルが読書前の印象をミスリードするから、読んでも満足度があがらないという 悪影響を与えている気がします。 ![]() |
『海の見える理髪店』
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- 2022/05/27(Fri) -
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荻原浩 『海の見える理髪店』(集英社文庫)、読了。
直木賞受賞作ということで期待しましたが、 読みはじめたら短編集で、「直木賞を与えるならこの作品じゃないだろう!」と怒りが沸々(苦笑)。 なんだか直木賞って、最近、常に与える作品を外しまくってませんか? 受賞者自体には何の違和感もなく納得できる人選で、むしろ「遅きに失した」と思うことが多いくらい。 何度も候補作に名前が挙がったうえで、ようやく与えられるわけですが、 「これに与えるなら前回候補作の方がふさわしいだろ!」と思えてしまいます。 なんだかなー。 選考委員が年寄りばっかりだから、若手の台頭を素直に評価できないんですかね。 ちなみに、直木賞選考委員のコメントを読んでみたら「他の作品で受賞させたかった」的な コメントを発している人が何人かいて、そんな言い訳すんな!とさらに怒り(爆)。 というわけで、愚痴愚痴と書いてしまいましたが、 普通に短編集と思って読んでたら十分楽しめたと思います。 「この作品で直木賞かよ・・・・・」という思いがどうしても私の読書タイムを邪魔してくるのが 非常に残念。直木賞の弊害ですよ、こりゃ。 冒頭に表題作があるのですが、たまたま入った理髪店でイメージチェンジをした俳優が その新たな髪形で演じた役柄がきっかけで大ブレイクを果たしたというエピソードを交えて、 現在、仕事でも家庭でも悩みを抱える主人公が、その理髪店を訪れるお話。 結末は、予想通りというか、ある種の王道路線ではありましたが、 理髪店店主の人柄と、俳優のエピソードの爽快さで楽しく読めました。 他に印象に残ったのは、英語を学び始めてなんでも英単語で呼んでみたい小学生の女の子が主人公の 「空は今日もスカイ」。 女の子の一人語りで進んでいくのですが、ポンポンと英単語が挟まれるので 不思議なリズム感をもった文章になっていて、読んでいて心地よかったです。 終盤、家出という展開になりますが、自宅の方でどんな騒動になっていたのか全く描かれず 警察官に発見されるという場面しか描かれないので、却って自宅の様子が頭の中で いろいろ想像されてしまい、主人公のこの後が過酷な人生になったのか状況が改善したのか 気になるところですが、家出先の関係者に与えた影響の描写が冷酷だったことを思うと、 少女のこの後も辛い日々が待ち構えていたのではないかと、恐ろしい想像をしてしまいました。 あと、「いつか来た道」。13年間母に会っていなかった娘が、弟に促され 久々に母の元に行くと、自分の頭の中に居た母の姿と現実の老いた母のギャップに直面し いろいろと心が揺れてしまう娘の心情を描いています。 私は毎週のように母に会ってはいますが、でも一緒には住んでいないので もし母が、この作品の母のように、レールから足を踏み外してしまうようになったら・・・・と思うと 不安がこみあげてくる作品でした。 というわけで、なんだか不安な気持ちになる作品が多かったのですが、 最後の「成人式」の突き抜けた爽快感に救われました。 突飛なドタバタした展開も、荻原作品らしさが堪能できて良いですね。 ![]() |