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『赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝』
- 2022/01/31(Mon) -
石田衣良 『赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝』(文春文庫)、読了。

IWGPのスピンオフ作品のようですが、IWGPは小説を読んだこともドラマを見たこともないので
完全に独立した作品として読みました。

池袋のカジノの売上を、店長と組んで狂言強盗したものの
仲間の1人が裏切って全額奪われた上に、リーダーの男が銃殺されるという
とんでもない展開で、奈落の底に落とされたカジノで借金まみれの主人公。
カジノを経営しているヤクザの組事務所に連行され、
とっさの交渉で、奪われた金を取り返してみせると豪語し、
ヤクザの若集1人と毎日行動を共にすることに・・・・・・。

最初は、主人公の楽観的なモノの見方や、行き当たりばったりな交渉術から、
「こんなに軽いから借金まみれになるんだよー」と批判的な感覚でした。
一方で、この主人公の世話役となった氷高組のサルという男は、
若いのに状況が先まで読めており、スマートに対処していくので、
このサルを軸に、経済ヤクザと池袋という物語を読んでいきました。

わたくし、一時期、池袋に勤務先があったので、毎日通っていたのですが、
正直、あの町の雰囲気には最後まで馴染めなかったです(苦笑)。
たぶん、真っ当なお店と風俗店が混在しているカオスな街並みが、
私のような田舎者には怖かったんだと思います。
新宿とかなら、「この道からあっちには行っちゃいけないよ」というラインが素人にも分かりやすいですが
池袋には、そのラインが滲んで消えちゃってる印象です。

そんなカオスな池袋で、地道に裏切り者を探していきますが、
ほとんど手探り状態の捜索劇から、発見に至る展開が唐突過ぎて、
ちょっと都合よすぎない?というか、裏切り者なのに脇甘すぎない?という(爆)。

この裏切り者発見のあたりから、急に主人公が真っ当になりまして、
この事件を契機に何人も死んだのに、裏切り者を陰で操っている黒幕に対して
何も制裁行動を起こさないのか!と氷高組に食って掛かります。
ヤクザ相手に本音をぶつけていて、主人公への見る目が変わりました。

黒幕組織への制裁として、主人公は、暴力ではなく経済制裁という手段を選び、
カジノを舞台に大博打を企みます。
伝説の博打打ちまで登場してきて、劇画的な展開になりますが、
そこは池袋という特異な街の雰囲気を重ね合わせると、
なんだか変な現実味もあって、後半はぐいぐい読ませてくれました。

結果的に、サルにも主人公にも共感できましたし、
氷高組の組長のバランス感覚も面白かったですし、
こりゃIWGPも読んでいかないといけないかしら。




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『タイムスリップ明治維新』
- 2022/01/30(Sun) -
鯨統一郎 『タイムスリップ明治維新』(講談社文庫)、読了。

タイムスリップシリーズの第2弾。
第1弾は森鴎外が現代にやってきましたが、本作では女子高生が明治維新の世界に飛ぶという設定。

タイムパラドックスの問題は、真面目に考え始めると収拾がつかなくなるので、
全部スルーして気楽に読みました。
タイムスリップして何か歴史と異なる出来事を起こすと支流ができ、
支流は本流に戻ろうとする自浄作用があるけれど、
一定限度を超えて異なる出来事が起きると支流は確定してしまう・・・・・
かなり都合の良い設定ですが、歴史をごちゃごちゃいじってエンタメにするには
使いやすい設定なんでしょうね。

リンカーンが江戸町奉行に就任するとか、かなりぶっ飛んだ展開ですが、
日米の同時代における歴史状況を知るには、面白い着眼点でした。

小栗上野介がタイムスリップを悪用して暴利を貪ろうとしているのを
女子高生と幕末の志士たちが協力して防ぐというストーリーですが、
明治維新という日本を革命的に変化させたプロジェクトにおいて
誰が本当のキーマンなのかを知るには、面白かったです。

ただ、あまりにぶっ飛んだ設定と、主人公の女子高生のキャラクターも飛んでるので、
真面目に歴史を読みたい人には、受け入れにくい作品だとは思いますが。

笑いながら歴史の裏側をお手軽に知るには、ちょうどよい本かなと思いますが、
基本的な日本史の知識がないと面白さが分かりにくいですし、
真面目に日本史に向き合ってる人には受け入れ難い演出かと思いますし、
なかなか読者を選ぶ作品なのではないかと思われます。




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『安岡正篤 人間学』
- 2022/01/29(Sat) -
神渡良平 『安岡正篤 人間学』(講談社+α文庫)、読了。

安岡正篤氏の人間哲学について、
著作の一節を取り出して、簡易な解説を加えた本。
初心者にもかなり分かりやすく解説されているので
とっつきやすくはありますが、紹介されている安岡氏の文章を
果たしてどれだけ自分は理解できているのだろうかと却って不安になるような
まだまだ安岡氏の哲学の奥深さには到底触れることができていないような感覚になりました。

安岡氏の文章も、難しい言い回しは少なく、丁寧な日本語で書かれているように思えるのですが、
その文章のシンプルさのために、奥行きが感じられ、その奥の方まで自分の理解が
追いついていないように感じます。

これはもう、自分の人生経験の乏しさからくる理解不足、実感不足なのかなと。
これからさらに経験を重ねて、そして何冊も何度も安岡氏の著作を読み返して
その哲学を身に着けていくしかないんだろうなと思いました。

本作では、「運命を拓く」「人物をつくる」「知命と立命」というように
各章にテーマを設けて、それに当てはまる安岡氏の言葉が紹介されていますが、
私は特に、自分が社会のためにどういう風に活動するのか、貢献するのか、
そのためにはどういう心構えでいるべきかという、
「よりよく働くための哲学」みたいな部分に惹かれました。

40代、何よりも社会のために役に立てる1人でありたいなと思います。

ドッグイヤーがたくさん出来たので、しっかりノートにまとめよう。




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『逆説の日本史7 中世王権編』
- 2022/01/28(Fri) -
井沢元彦 『逆説の日本史7 中世王権編』(小学館文庫)、読了。

第7巻を100円で見つけたので、半年ぶりに井沢史観

南北朝時代と室町幕府の成立あたりの話ですが、
子供の頃、NHKの大河ドラマ『太平記』を見てた世代なので、
足利尊氏は真田広之、楠木正成は武田鉄矢、後醍醐天皇は片岡孝夫が
頭の中で動き回ってました(苦笑)。

相変わらず本篇でも、武士たちには「天皇を討つ」という発想がなく、
「君側の奸を討つ」という名目で、天皇に味方する武力勢力を叩こうとします。
天皇制度という大きな枠組みを、誰一人裏切ることなくその枠の中で権力争いをし、
枠組み自体をぶっ壊そうとする革命児は現れてきません。
日本人って、まじめだよなー、と、変なところで感心。
でも、「天皇に逆らうと怨霊に苦しめられる」という恐れがあると
その枠組みに挑戦しようという漢はなかなか出てこないのかなぁ。

で、尊氏も天皇家の権力のもとで幕府を開こうとするわけですが、
今までの武士の棟梁と比べると、なんだか優柔不断な印象が。
戦には強かったようですが、政治センスがなさそうなんですよねー。
戦国時代の大名たちは、戦のセンスと政治センスと両方を持ち合わせていないと
すぐに有力な大名に潰されてしまう競争体制だったこともあり、
優秀な人物が同時代にたくさんいたように感じますが、
それに比べると尊氏は粗削りな印象です。時代のせいですかね。

室町幕府と言えば、足利義満が最初に頭に浮かんでくるのですが、
教科書で学んだ義満のイメージは、勘合貿易とか北山文化とか
なんだか金満政治のような印象だったんですよね。
義満が天皇になろうとしていたというエピソードは教科書にはなかったような気がするのですが
私が室町時代に興味がなかったから覚えていないだけなのか、
それとも天皇の座を乗っ取ろうとした出来事は、忖度して教科書からは消されているのか、
興味深かったです。

同様に、義教については、くじ引き将軍というエピソードばかりが印象に残ってて
あんまりその政治手腕については知らなかったのですが、
恐怖政治の内容を知るにつれ、混乱した時代を収めるには
剛腕が必要なんだなぁ・・・・彼はやり過ぎたみたいだけど・・・・・。
ということで、このあたりのバランスが取れると、家康のようなレベルの政治家として
後世に名が残るんでしょうね。
当時の外的環境とか物事の経緯とか、自分にはどうしようもない要因もあって
時代が混乱していたことは可哀そうだなという一面も。

なんだか、「運も実力のうち」という変な感想を持ってしまいました。






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『輝く夜』
- 2022/01/26(Wed) -
百田尚樹 『輝く夜』(講談社文庫)、読了。

薄い短編集だったので、手軽に読めるかなと思い手に取りました。

感想は、正直、うーん・・・・・・ベタ過ぎない??

5編ともクリスマスの出来事で、失職したり振られたりした不幸な女性が主人公。
辛い目に遭いながら、自分自身は健気に生きようとすることで
神様から大きな幸せを与えてもらえるというストーリー。

展開がベタだし、演出もオーソドックスだし・・・・というので、
百田作品は振れ幅が大きいよなぁ・・・・・と思いながら読んでいて気づいたのは、
私は、百田氏が描く女性が苦手なのかなということ。

女性の言動にリアリティを感じにくくて、こんな人いないよ・・・・と思ってしまいます。
「不幸に直面しても健気に生きる女性」というキャラを、男性が理想化して描くと
こんな感じになるのかしら?
女性に現実感を覚えないから、余計に展開や演出のベタさが浮き上がってしまうのかと。

読み終わってからAmazonのレビューを見たら、
平均で4以上という超高評価になっており、
自分の感覚とは全然違ったので、ちょっと驚きましたが、
こういうピュアな物語を求める場合もあるんだなと、自分のすれっからし具合を反省。




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『ダブル・トラップ』
- 2022/01/25(Tue) -
大沢在昌 『ダブル・トラップ』(集英社文庫)、読了。

ハードボイルド作品というのは、独特の文体というか文章の雰囲気になじめなくて
あんまり触手が動かないのですが、本作はブックオフで50円だったので
試しに買ってきたものかと思われます。
ずーっと積読だったのですが(苦笑)。

主人公は、地方で高級志向のレストランを経営する男。
その町にやってくる前は、「松宮産業」という組織で、何やら怪しい活動をしていた・・・・。

この過去の経歴について、前半で思わせぶりな描写が続くのですが、
裏表紙のあらすじに「元政府機関の腕利き諜報員」とネタバレされてて意味なし(爆)。
ただ、正直、身バレまでにこんなに回りくどい描写をする必要性はあまり感じられず、
あらすじで「政府の諜報員」と明記されているから読みやすいと感じました。
編集者グッドジョブ!

ということで、ハードボイルド作品が苦手な理由のひとつ目、
思わせぶりな描写が延々続くというという点は、あらすじのおかげでクリアできました。

松宮産業という日本政府の諜報機関、そして当然、CIAや中東方面の諜報機関も登場してきて
これらインテリジェンス界の活動は興味深く読みました。
それこそ、佐藤優氏や手嶋龍氏の作品などで、現実世界のインテリジェンスについての
解説は読むことができますが、それらは日常生活に表面的には出てこない裏の話なので
「もし表の日常生活に諜報員たちが登場してきたら・・・・」という空想をするには
ハードボイルド作品というのは一つの手段だなと思いました。

特に本作は、大手商社が絡んでくるという点で、日本らしさもあって面白く思いましたが、
一方で、結局真相を辿ってみると、
内々で潰しあいをしているだけなのではないかという大局観のなさも気になり、
なんだか最後は尻すぼみな感じでした。

やっぱりインテリジェンスの話には、「世界はこうあるべきだ」という大局観が
たとえそれが独善的な思想であっても、そういう大きな話がセットになっていてほしいものです。
その点では、佐藤優氏の著作を超える知的興奮は得られませんでした。

ハードボイルド作品については、私立探偵が目の前の殺人事件を解決するような類のものは
多分、今後も興味を持てないような気がしますが、
本作のような政府の諜報機関が出てくるような作品なら、もう少し挑戦してみても
良いかなと思いました。




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『赤たん褌』
- 2022/01/22(Sat) -
清水一行 『赤たん褌』(集英社)、読了。

近所のおっちゃんからもらった古い本。
戦後直後の東京で、博徒上がりの男が建設会社を立ち上げていくという物語。

冒頭、芸者を相手に閨房での描写が続き、
「これ、官能小説?」と、読むのをやめようかと思いましたが、
しばらく読み進むとGHQが出てきて、物語が進み始めました。
(最後まで閨房描写はてんこ盛りでしたが・・・・苦笑)

博打で金を稼いでいたヤクザ稼業時代に捕虜となった米兵に優しく接した過去から、
GHQが出張ってきてから優遇してもらい、土木業という真っ当な仕事をスタートし、
GHQの仕事をどんどん回してもらうことで建設会社として大きくなっていくという話。

なんの困難もなく事業が大きくなっていくし、主人公の閨房描写の生々しさから
「これは戦後を舞台にしたお伽噺なのか?」とフィクション扱いしていたら、
途中から明治座と思わせる建物の再建話が出てきて、松竹ならぬ梅竹が出てきたことから
「やっぱり、モデルがいる話か」と思い、明治座で検索して見ました。

そしたら、主人公のモデルは新田建設創業者の新田新作で、
明治座の復興以外にも、力道山の支援をしていたということで、
興業関係に縁がある人物の様子。

私は全く知らない人物でした。
こんなに華やかなのに、Wikipediaにも書かれていないのも不思議。
ヤクザ上がりということで、実業家扱いされていないということなんでしょうかね?
松竹、東映、吉本という今も続いている企業も、
戦後のプロレス興行、コンサート、サーカスなど、興行師は怪しい人、後ろ暗い人も多そうですし
ヤクザと深い繋がりのある人も多そうなので、あんまり表で名前があがらないということなのかな。

ただ、焼け野原になった東京に立ち、特に日本橋界隈を盛り上げようとする
その男気が凄い人物だなと思いました。
花街で遊びまくってますが、それが、明治座の興行の成功に繋がっていくのは、
やっぱり人間として花街界隈から信頼されているからこそだと思うんですよね。

今のフェミニズムが大きな声で語られる時代においては、
こういう芸者遊びをし尽くした男を主人公にした作品は批判的に見られてしまうのかもしれませんが、
人間力のある人なんだろうなと思います。

戦後直後の日本のパワーと、江戸っ子の粋を感じられる面白い本でした。




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『サイレント・トーキョー』
- 2022/01/20(Thu) -
秦建日子 『サイレント・トーキョー』(河出文庫)、読了。

相変わらず、テレビドラマのテンポでサクサク進んでいくので読みやすいです。
特に前半は、爆弾魔に巻き込まれたおばさんと若い男の目線から
2つの爆弾事件が続いて起こり、このスピード感がたまらなく面白かったです。

赤の他人をどうやって事件に巻き込み、当事者として遠隔操作するか、
その手口が、なるほどなー、でした。

後半、誰が犯人で、どうやって爆破事件を起こしていたのかという謎解きの部分は、
正直、広げ過ぎた風呂敷をうまく畳めなかった印象でした。
「え、こんな動機なの?」という置いてきぼり感、尻すぼみ感。

そして、中盤でいろんな登場人物が出てくるのですが、
そこも、結局、爆破で殺すために登場してきただけな感じで、
イマイチ広がりがなかったです。

結局、渋谷ハチ公での爆発シーンを描きたかっただけで、
全編を通して伝えたいメッセージというのが、なんだかぼんやりしている印象でした。

そうなると、やっぱりテレビの脚本家が書く小説のレベルだなぁ・・・・・という
ちっちゃい感想で終わってしまうのが残念。




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『すべての教育は「洗脳」である』
- 2022/01/18(Tue) -
堀江貴文 『すべての教育は「洗脳」である』(光文社新書)、読了。

ホリエモンによる教育論。
「学校教育は従順な労働者を生み出すためのものであり洗脳である」という主張は
その通りだと思います。

一方で、そういう「従順な」労働者が一定数いてくれるおかげで
世の中の産業が回っている面があると思うので、今の教育制度のすべてを否定したり
その教育の結果、今、一生懸命仕事をして支えてくれている人を否定したりするのは
違うのかなと感じます。

ホリエモンのYouTube動画はよく見るのですが、
ホリエモンの主張する内容は、私は共感できることが多いのですが、
でも一方で、勝ち組の中でしか通用しない主張だよなと思ってしまうことがあります。

押しつけの教育を素直に受け入れるな!没頭できるものを自分の力で手に入れろ!
そう言われて「よし、やろう!」と思って実行できる人は、
本人の努力もあると思いますが、それと同様に、恵まれた家庭に生まれたとか、
親の知能が高いとか、友達に恵まれたとか、そういう本人の努力ではどうにもならない
与えられた環境によるところも大きいと思います。

誰の言葉か忘れたのですが、「勉強を楽しめる自分は恵まれている存在だと自覚すべき」
というのを、本だか動画だかで見たように思います。
ホリエモンの言葉に共感できる立場に居られるというのは、ある種、恵まれた立場だと思います。
少なくとも、日々の自分の生活や将来の自分には不安を感じていない層かなと。

ホリエモンは、世の中に100人の人がいたとして、
その上位10人、20人に向けて語り掛けようとしているのだと思いますが、
そうではない立場の人々について、どう生きるべきと考えているのか凄く気になります。
それとも100人全員に向けて同じメッセージを発信しているのかしら。
私自身が選民思想的な考え方になってしまってて申し訳ないですが。

さてさて本作の内容ですが、私がホリエモンの話に共感して読んでしまうのは、
その主張が明確で、ダメなものはダメとぶった切るからわかりやすいというのもありますが
それ以上に、「なぜ今はそんな歪な状況になっているのか」という理由説明に
歴史的な経緯を踏まえており、その分析は冷静で客観的なので
説得力があるんですよねー。

今回も、国民国家の成り立ちから、現状分析、そして今後国家はどうなるかという
そういう幅広い視野で捉えているので、その分析の上で主張があると
「そうしなきゃいけないよなー」と納得できてしまいます。

でも、その納得の先に、行動がついてくる人は、
やっぱりすぐ動ける恵まれた環境にある人なのかなーという気もしてしまいます。

結局は、自分が経験したことしかわからないので、
良い親と祖父母のもとに生まれてくることができたからラッキーだったと自覚している私には
そうじゃない環境に生まれてきた人の苦労は、想像しきれないんだろうな・・・・と諦めの境地。
みんなのことを思いやるのって、難しいですよね・・・・。




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『「失敗学」事件簿』
- 2022/01/17(Mon) -
畑村洋太郎 『「失敗学」事件簿』(小学館文庫)、読了。

失敗学の畑村先生。
私は、大学の卒論で産業事故を取り扱ったので、
失敗学の話には普通の人より強い興味を持っているという思いがあり、
日々のニュースでも、発生した事故の原因や再発防止策などが特に気になります。

本作では、多くの実際に起きた事故のエピソードが紹介され、
それぞれの事故において検討すべきキーポイントが示されています。

いろいろな事例をもとに書かれているから分かりやすいように思えて、
1事故当たりの説明が少ないので、表面的な話で終わってしまっているように思え、
私的には不満足でした。

紹介事例を1/3に減らして、1事例ごとの解説を3倍に増やしてほしいなと感じました。
私は、紹介された事故のほとんどは記憶がありましたが、
それでも細かな原因の部分の記憶は曖昧なところがあり、
もっと詳しく書き込んでくれないと、根本原因と被害を加速させた原因とが
うまく区別して理解することができないように思えました。

そして、事例がどんどん出てくるので、ポイント解説もあっさりしていて
指摘されていることの重みが適切に伝わらないんじゃないかなと危惧しました。

失敗学の本質は、別の著作で学んだうえで、
本作は事例に沿って本質を検証していく副読本的な扱いにすべきじゃないかなと感じました。




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