『東大生が育つ家庭のルール』
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- 2021/11/27(Sat) -
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東大家庭教師友の会 『東大生が育つ家庭のルール』(PHP文庫)、読了。
私には子供が居ないし、別に教育関係の仕事をしているわけでもないし、 東大卒でもないのに、なぜか買ってしまい、ずーっと積読になっていた本。 積読解消に読まないと・・・・と半ば義務感から手に取りましたが、 予想と異なり非常に興味深い内容で面白かったです。 現役東大生にアンケート調査を行い、 子供の頃にどんな勉強をしていたか、どんな躾をされたか、どんな家庭のルールがあったかというのを 根掘り葉掘り調査して、1人1人の事例として紹介しています。 で、見えてきた実態は、 「保守的で常識的なまじめな両親にしっかり基本に忠実に育てられた子供たち」という印象です。 そして、それは、我が家にも当てはまります。 本作では、各章でチェックリストが示されているのですが、我が家に当てはまるのは以下の通り。 ・ 毎日の勉強、塾選び、進路は子供本人に任せて親はサポート程度。 ・ 成績が悪かった時のペナルティはなく、成績が上がったときのみ褒める。 ・ 勉強を強要するルールは採らない。 ・ 他人への礼儀を最重視しきちんと教え込む。 ・ 基本的な生活態度やマナーは中学生になるまでに徹底的に習慣づけさせる。 ・ 食事のマナーは厳しめ。 ・ 家族そろって囲む食卓を大事にする。 ・ 自分の頭で考えてお金を使う習慣が身につくルールを設定している。 ・ 欲しいものがあるときは、なぜそれが欲しいのか必要なのか自分の口で説明させる。 ・ 人付き合い、体験の機会に必要な費用は必要以上に制限しない。 ・ 自由になるお金をある程度は与え、その使途には干渉しない。 ・ ゲームの使用時間は本人の性格を見極めてルールを設定している。 ・ 友人付き合いに絡む娯楽には寛容で必要以上に制限しない。 ・ 娯楽を制限するときはその理由を本人に説明したうえでルールを設ける。 ・ 自分の頭で考え自分の足で人生を歩むことを念頭に置いた教育方針。 ・ 親自身が自分の経験から学んだ教訓をもとに方針を決めている。 ・ 子供の成長に重要な方針を柱に据えたら、細かな口出しは控える。 ・ 日常生活から学習面、交友関係まで一貫した方針に従う。 ・ 学校生活を重視している。 というわけで、7割合致しました。 たぶん、ロザンの宇治原さんも同じなんじゃないかと推測。 大学の友達と話してても、親から勉強を強制されてやっていたという友人は ほとんど居ないのではないかと思うぐらい、みんな、勉強そのものを楽しんでいた感じです。 知識を得ることや視野が広がること自体が面白いことだし、テストは点取りゲーム。 だから大学に入ってからも、社会に出てからも、みんな引き続き勉強してるし、 会うたびに刺激を与えてくれる存在です。 結局、人間は、何千年も時間をかけて今の「常識」や「慣習」を作り上げてきたわけで、 そこには、人間が社会という仕組みの中で快適に暮らしていくための 知恵が凝縮されているのだと思います。 だから、保守的な考え方で、きっちり物事を進めていくと、社会の中で良い位置に 進んでいけるのかなと思います。 自分自身が、両親や祖父母、親戚のおじちゃんおばちゃん、学校の先生、そして友人たちから 学んだり躾けてもらったりした、その全てに感謝しようという気持ちになる本でした。 ![]() |
『読書の腕前』
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- 2021/11/24(Wed) -
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岡崎武志 『読書の腕前』(光文社知恵の森文庫)、読了。
ブックオフでたまたま目に留まって、全然知らない著者だったのですが、 本読みさんのエッセイのようだったので、買ってみました。 本に関する本って、ノリノリで読める本と、読んでいてしんどい本と 両極端に分かれるんですよねー。 多分、私が本の虫なので、自分の趣味を肯定してくれるか、けなされてると感じるかの違いかなと。 とりあえず苦手なのは、「本を読むときはこうすべき!」「こんな本の読み方はダメ!」という 本に対する姿勢を押し付けてくる本。 好きに読ませてよ~、と思ってしまいます。 あと、「読書をしたらこんな効用があるよ」というご利益の部分だけを強調してる本も苦手。 「時間が空いてるから本を読んで楽しく過ごす」、このシンプルな動機で良いんじゃないの?と思います。 「仕事に活かせ!」的な現世利益的なものから、「人生の教えを得よう」的な高尚なものまで、 目的意識が強い読書は疲れるのでしんどいです。 本作も、ちょっと前半で、「ツン読しかありえない!」と強調されていたので、 「確かに結果的にそうなってるけど、そうあるべきだなんて押し付けないでよ~」って思っちゃいました。 やや警戒しながら読み進めましたが、中盤からは著者の本への熱い思いが溢れ出ていて 「そうそう、こういう本の本が読みたいのよ~」と、とても楽しい読書になりました。 何にしても読んでいて楽しいのは、著者自身が読書の楽しみを嬉々として語り、 自分の好きな本を「私はこう読んだ!ここが面白かった!」と素直に書いている本です。 その紹介されている本の趣味が自分とは違っていても、 単に好みが違うんだなと思うだけで、本に向き合っているときのワクワク感は共感できるので そういう本の本は面白いです。 そして、だいたい、自分の好きな作家さんが褒めている本は、自分も面白いと思えます。 本の好みは、著者はかなり高尚なラインナップだったので 知らな本や敷居の高い本も多く登場しましたが、いくつか気になる本もあったので そちらは「読みたい本リスト」に追加しました。 さて、どんどん積読を解消しないと! ![]() |
『我慢ならない女』
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- 2021/11/18(Thu) -
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桂望実 『我慢ならない女』(光文社文庫)、読了。
お初の作家さんです。 『県庁の星』の原作者ということですが、映画の方はイマイチだったので そこまで期待せずに本作に挑戦。 苦節十数年、日々一つの文章、一つの言葉を捻りだして作品を紡いできたのに 一向に作品が編集者に読んでもらえず、中華料理屋の皿洗いで生計を立てる日々。 そんな叔母のところに、大学生の姪っ子が「自分の書いた小説を読んでくれ、編集者を紹介してくれ」と 上京してくるところから物語がスタートします。 いやぁ、もう、私だったら、こんな世間知らずの姪がやってきた時点で コテンパンに理詰めにして今後近寄れないようにしてしまい、実際に遠ざけると思うのですが、 この叔母は、同じようにコテンパンに言いつつも、それでも時間をおいて再訪してきた姪を 受け入れている度量の広さがあり、私とは違うできた人だなと思い、 そこから叔母の側に共感する目線で読んでいくようになりました。 ま、姪の行動に興味がなかったというだけかもしれませんが、 私としては、血のつながりが意識下で影響したのかなと感じました。 で、その姪は、自分の世間知らずさを反省し、また叔母の小説にかける情熱を受け、 叔母の手伝いをするようになります。 最初は、なかなか物語が展開せず、叔母がどんなに偏屈な人かを描くのにページを取っていますが、 あんまり人間的魅力が伝わりにくいなと感じました。 同時に、叔母の書いた作品が合間合間に挿入されるのですが、 その文章が、作品中で凄い凄いと持て囃されるほどには凄さが感じられず・・・・。 私が、作品mの断片を読むのが苦手というのもあるのですけどね。 叔母が万年筆で書きなぐった原稿を清書し、時には図書館などで調べ物を手伝い、 コミュニケーションが取れない叔母に代わって編集者とのやり取りも姪がやるようになり 作家活動がスムーズになったことで、作品にも良い影響が出るという流れで、 ついに作品が映像化されることになります。 このあたりから物語が面白くなってきました。 ここからとんとん拍子に叔母の作品は売れるようになり、 売れっ子作家への道を驀進していきますが、 これって、現実世界でいうと誰に近いんだろう???と思いながら読んでました。 江國香織?宮部みゆき?角田光代?みんな売れっ子になってからの姿しか知らないので、 苦節十数年からいきなり売れっ子になる人のイメージがわかないです。 ということは、あんまり一般的じゃない作家の姿なのかも。 一発屋みたいな人は毎年出てきますが、ヒット作で急に登場した後、 何でもかんでも売れるようになることって、あるのかしら? 売れてる時しか作家のことを意識しないから、わからないのかな・・・・。 中盤、美形俳優が叔母のもとに付け入ろうとやってきますが、 男にうつつを抜かしてしまった叔母の心の隙よりも、 それまでに、いろんな出版社から作品を求められて、 作品一つ一つに思い入れがないまま出版してしまうことを許していた その作家意識の変化こそが、残念でした。 姪がイライラするのもわかります。 そこは最後、そのしっぺ返しを受けることで目を覚ましますが 同時に、叔母なりのしっぺ返しも用意しており、すっきりした形で終わります。 ありきたりと言えば、ありきたりな、オーソドックスな展開ですが、 商業出版に翻弄される作家というものの生態が垣間見れて、興味深かったです。 ![]() |
『京大芸人』
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- 2021/11/15(Mon) -
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菅広文 『京大芸人』(幻冬舎よしもと文庫)、読了。
ロザンの印象は、東京の放送局が作ったTV番組で見ていた時と、 YouTubeチャンネルで見るようになってからと、ガラッと変わりました。 東京のテレビでは、宇治原さんが秀才芸人として、あくまで頭の良さをウリにしていて 菅さんは「デキの悪い子」というポジションに置かれていることが多かったと思います。 『スクール革命!』とか見ていた時は、「菅さんの何が面白いんだろう?」と 今思うと大変失礼な評価を下していました。 が、何かの流れで、YouTubeで「ロザンの楽屋」がレコメンドされてきて、 たまたま見てみたら、菅さんの面白さに一気に引き込まれました。 今や、毎晩、新しい投稿を楽しみに待っている状態です。 着眼点が面白いですし、優しそうな笑顔でバッサリ世の中の現実を割り切って受け止めており、 また、時には、他人に厳しすぎるぐらいのコメントを出します。 インテリが好むお笑いセンス的に、良いキャラしてるわ~と思います。 で、そんな菅さんが、相方の宇治原さんを京大に行くように薦めて、 芸人として「高学歴」をウリにするという戦略を立てますが、 それを受けて、宇治原さんが1年間の勉強計画をしっかりこなして きちんと予定通り合格を勝ち取るというプロセスを紹介しています。 一応、菅さんは「小説」と言ってますが、私には「思い出エッセイ」だと思いました。 YouTubeにアップされていた大学のイベントでの講演を見たことがあったので、 宇治原さんに菅さん以外の友達がいなかったこと、宇治原さんの勉強法、センター試験で失神したことなど 主だったエピソードは既に知っていたのですが、改めて菅さんの無駄のない文章で読むと 今一度面白かったです。 それと、進学校に居たので、菅さんも宇治原さんの陰に隠れているけど 子供のころから頭が良かったんだろうなと思っていたら、 長野から大阪に引っ越した時に、長野の国立中学から大阪の国立中学に転籍となり 難しい試験を受けずに、大阪の小中高一貫エリート校に運良く入れたという経緯を知り、 うわ~、なんて持っている人なんだ!しかも、そこに宇治原さんが受験して外からやってくるなんて! 世間的には、宇治原さんの受験テクニックを知るために読む人が多いような気がしますが、 確かに、自分の決めたやり方を徹底しているのは凄いなと思いますが、 1つ1つの勉強法は、そんなに変わった方法ではないように思います。 私も同じ事やってたなーと思うものも多かったです。 また、自分では特に意識してなかった「英単語帳を作らない」というのも、 宇治原さんがやらない理由を述べているのを読んで、確かに自分もこんな考えだったかも・・・・・と 今更ながら私自身の勉強法の整理にもなりました。 宇治原さんの「センター試験で9割獲る」という目標設定は、 私もそんな感じで設定してました。科目ごとの配分は結構違いましたが。 ただ、試験途中で失神して30点分を失ったのに、9割獲れたのは脱帽。 地頭がいいのと、度胸がある(自分への自信が確固としている)のでしょうね。 ![]() |
『東大オタク学講座』
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- 2021/11/14(Sun) -
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岡田斗司夫 『東大オタク学講座』(講談社)、読了。
岡田斗司夫氏のYouTubeチャンネルが面白いので、よく見ています。 YouTubeでチャンネルを持つことが一般化する前に、 この方は、ニコニコ動画で番組を配信し、視聴者を囲い込む戦略を実行したり、 アップグレード動画という形式で過去の動画を何度も収益化したり、 いろんな手法を編み出し、実行し、ちゃんと軌道に乗せているところがすごいなと。 そんな岡田氏が世間一般で有名になるきっかけになったのが、 たぶん、この東大で「オタク学」を講義したことだと思います。 「オタク」という存在の分析は、前に読んだ『オタク学入門』の方が 分かりやすかったように思いました。 本作は、「ゲーム」「アニメ」「まんが」「オカルト」というように、各分野についての考察となっており 私の興味の濃い薄いで、楽しめる章とそうでない章にはっきり分かれてしまいました。 中盤は、どんどん一般的な「オタク」のイメージから離れて、 マニアックな世界というか、アングラな世界になっていったので かなりしんどかったです。 実は、冒頭1/5ぐらいを読んでいた頃に、YouTubeのレコメンドに下の動画が出てきて、 いつもの流れで事務仕事しながら見てみたのですが、 なんと、岡田斗司夫の愛人騒動(離婚者だから愛人じゃないけど)についての言い訳動画でして・・・。 その言い訳の内容が、相手を庇っているように見えて実は相手に非を押し付けている鬼畜さと、 そもそも80人と同時に付き合っていたというブッチャケ話に 「岡田斗司夫って、そんな人だったのか・・・・・」と正直引いてしまい、 その状態でエログロな中盤を読んだので、ますます引いてしまいました(苦笑)。 まぁ、「80人と同時に」というのは盛りすぎだと思いますし(継続性のない関係を入れちゃダメでしょ)、 自分の非を認めているようでうまく逃げているところは 口の回るダメ男なところを見せていますが、でも、斗司夫愛好家の人々には、 そんなところこそ「斗司夫すごい!」という評価に繋がっていそうで、苦笑。 私は別に、不倫してる人とか、二股(以上)をする人とか、 そういうダメな人も、私自身のリアルな生活において直接的な影響を受けなければ、 「そんな人は居るだろうし、勝手にやれば~」てな感じで割り切れる方なので、 本件により、岡田斗司夫の動画の面白さへの評価は変わらなかったのですが、 ただ、岡田斗司夫という人物は、若干、胡散臭いという目で見るように変化しました(爆)。 ま、動画を見てしまったタイミングが良かったのか悪かったのか、 とにかく印象に強く残りましたが、本作の内容の評価としては、 オタクの具体的な行動そのものを説明している部分よりも、 なぜ彼らがそういう行動を好むのかという思考回路の解説の方が、やっぱり面白かったです。 ひとつの社会現象の分析ですよね。 たぶん、「オタク」のジャンルというのは、際限なく細分化していくと思うので、 本作で解説されるようなジャンルもどんどん増えていくのだと思うのですが、 そういう1つ1つよりも、「オタク」に横串を刺して分析できるような視点が得られると より面白くなりそうだなと思いました。 ![]() |