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『海は誰のものか』
- 2021/07/31(Sat) -
小松正之 『海は誰のものか』(マガジンランド)、読了。

東日本大震災を受けて、再興していかなければならない
三陸の漁業の現状をベースに、水産業全体のことを考えていきます。

漁業権の問題、資源管理、漁師と市場の関係、設備投資に投入される税金など
多角的な面から日本の漁業の問題に迫っており、わかりやすいです。

一方で、著者が水産庁の官僚だったという立場からすると、
ちょっと第三者的な物言いが気になりました。
水産行政のど真ん中に居たわけですから、もっと当事者としての発言があってもよいのではないかと
思ってしまいました。

漁業権や資源管理に関しては、地元の漁師の姿勢(特に60歳以上のベテランの方々の言動)を
見ていると、足元で改革が一気に進むようには感じられません。
残念なことですが。

こういう高齢世代が現状維持でしばらく漁業を続けていき、
ほんとうに、日本の漁業が潰れてしまうという極限まで堕ちたら、
そのときにようやく下の世代が「これじゃダメだ!」と改革を始めるのではないかと予想しています。

もちろん、今でも、若い世代で改革に取り組んでいる素晴らしい方々がいますが、
一部の意識が高い人たちが動くだけでは間に合わないと思っています。
もっと土台を支える多くの漁師が改革の意識を持たないと、構造改革はできないと思います。
それには、危機感を覚えざるを得ないような極限の事態に追い込まれないと
正直なところ無理かなぁ・・・・と思います。

漁業権があるために異業種からの新規参入がかなり困難かと思います。
そうなると、外からの改革は無理で、中から改革のエネルギーが湧いてこないと難しいかなと。
それとも、政府が改革に着手するような展開が訪れますかねぇ。




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『図解さかな料理指南』
- 2021/07/30(Fri) -
本山賢司 『図解さかな料理指南』(新潮文庫)、読了。

イラストレーターさんによる魚を中心とした食エッセイ。
もちろんイラストもふんだんです。

この本を読むと、魚が食べたくなります。

三ツ星シェフが繰り出す調理技術もすごいと思いますが、、
こういう、シンプルな料理をサササっと手際よく作ってしまえる人も憧れます。
理屈で料理するのではなく、過去に自分が見た聞いた食べた経験で
「この魚ならこんな風に料理するとサクッとおいしいものができそう」という
その判断がちゃんと思った通りのところに落ち着くのがすごいなと。

そして、魚屋さんの店頭で、「この魚がうまそう」「お、安くて良いものが売ってるな」と
常にワクワクしている感じが伝わってきて、心から魚食を楽しんでいる様子が
伝わってきます。

こういう暮らし方をできる人って、毎日が幸せに満ちているんだろうなと思います。
見習いたいです。




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『哀切の小海線』
- 2021/07/29(Thu) -
西村京太郎 『哀切の小海線』(角川書店)、読了。

サクサク進む、西村作品の消化活動。

本作は、府中刑務所の受刑者が、あと1週間で刑期満了というところで
刑務所長を殴って脱走するという事件を起こします。
この脱走者を十津川警部が追うというストーリー。

結局は、刑期残り1週間という状態を棒に振るほどの脱走の動機は何のかという点に尽きると思いますが、
そこが腑に落ちないと、なかなかスッキリ感は得られないですよねー。
正直、私は共感できず。

脱走者の母や娘といった身内が登場してきますが、
彼女たちの行動もあんまりリアリティを覚えず、可哀想だなという共感心が芽生えませんでした。
娘の友達も、巻き込まれた立場でそんな行動するかなぁ・・・・・と。

物語の小粒感が残念でした。




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『二十四の瞳』
- 2021/07/28(Wed) -
壷井栄 『二十四の瞳』(新潮文庫)、読了。

超有名作品。
夏休みの読書感想文の課題図書にもよく挙がってましたが、
天邪鬼な私は、あんまりピュアな感じの作品は苦手意識があり避けてました。

40歳を過ぎてようやく手に取りました。

まず、「小豆島の田舎の学校に新米女性教師が赴任してきて12人の生徒と交流する話」と
勝手に自分の中で決めつけていたところがあり、2~3年ぐらいのスパンの話なんだろうなと
思い込んでました。

ところが、新米教師の赴任から始まり、戦争を挟んで、大人になったかつての教え子の
子供たちを再び教えることになるまでの、長い期間を描いていて、
新米先生と生徒たちのキラキラ話なのではなく、戦争が彼ら彼女らから何を奪ったのかを
ストレートに描いた骨のある作品でした。

小学生や中学生が読むのも大事かもしれませんが、
むしろ、自分の子供が小学生や中学生になる30代のときに親が読んだ方が
考えるべきポイントが多い作品なのではないかと思いました。

小説のうまさという点では、話の展開にスムーズさが感じられなかったり
構成が歪に思えたり、漢字とひらがなのバランスが読みにくいなと感じたり
読みにくさの方が印象に残りましたが、でも、戦争というものは
1人1人の人生にこんなにも大きな影響を及ぼすのだという事実を知ることができる作品だという
その1点においても素晴らしい作品だと思いました。




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『まさかジープで来るとは』
- 2021/07/25(Sun) -
せきしろ、又吉直樹 『まさかジープで来るとは』(幻冬舎)、読了。

自由律俳句のシリーズ第2弾。

第1弾を楽しんだのかと問われると、なんとも回答できず
「知らない世界を覗き見ました」という程度の感想だったのですが、
ブックオフで50円だったので、つい買ってしまいました(苦笑)。

今回も、2人が自由律俳句を詠みあい、
間にエッセイが挟まっているのですが、
自由律俳句は、「この視点は面白いな」というものもありつつ、
「これって、このシーンのどこに気持ちが動いて詠んだのかな?」というものも多く
やっぱりなかなか難解な世界でした。

ただ、半分ぐらいまで読み進んだ時に
「あ、自由律俳句って、大喜利だ!」と気づいてしまいました。
いや、自分でも合ってるのかどうかわかりませんが(苦笑)、
自分の目の前のものをお題として捉えて、短いフレーズでうまく切り取って見せるという。
作者が芸人さんなので、より、笑いの要素が強く感じられるのかもしれません。

「大喜利だ」と思った瞬間に、
「間を開けないように大量生産だから、面白いものと面白くないもの、出来不出来があって仕方ない」と
自分の理解力の限界を作者のせいにできてしまい、ストレス減(笑)。




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『京都嵐電殺人事件』
- 2021/07/23(Fri) -
西村京太郎 『京都嵐電殺人事件』(カッパノベルス)、読了。

引き続き、十津川警部消化シリーズ。

舞台は京都の京福電鉄。
嵐電会のメンバーが、雑誌社のバックアップでイベントツアーを催行。
嵐電沿線の寺社や名所3か所で写真を撮りながら終点駅までのタイムトライアルを競うもの。
その賞金、なんと500万円。

雑誌社がバックについているとはいえ、そもそもメンバーが7人しかいない嵐電会の中のイベントで
賞金500万円って、すごい違和感。
私がメンバーだったら、逆に怖いわ。裏がありそうで(苦笑)。

で、その通り裏があって参加した夫婦2人が殺害されます。
そのうち、東京でも殺人事件があり、この嵐電会のメンバーに申し込んだものの
審査で落とされた女性が亡くなります。
この2つの殺人事件の謎解きとなりますが、
まずは、嵐電を使ったイベントが舞台のため、沿線の寺社がたくさん登場し
また嵐電そのものも鉄道マニアを呼べる魅力があるということで、
嵐電自体の紹介や、その嵐電マニアをあてにした駅周辺の飲食店などの描写もあり
京都という観光地のひとつの経済圏の姿が見えて面白かったです。

2つの殺人事件のつながりは、あぁ、過去のそういうことが契機なのね・・・・・と
それはそれで受け止められましたが、過去の自殺事件については
「そんなことで即行自殺しちゃうのかな?」とやや疑問。
いずれにしても、遺された側は辛いですよね。

京都府警と警視庁の合同捜査というか、
そこまで組織的な印象はなく、
現場を仕切る刑事たちが個々にうまく連携していて捜査しましたという展開で、
リアルな警察機構の姿を描いて縄張り意識バチバチみたいな作品も面白いけど、
こうやって素直に協力し合う作品も、気持ちよく読めるわね~と再認識。

最後、京都の事件と東京の事件の間をどう移動するか、
鉄道ダイヤを使ったトリックが出てきそうな雰囲気だったのに
雰囲気倒れで終わってしまい、雑な捜査で結論を出させてしまったので、
その無理やり終わらせた感は残念でした。

携帯で時刻表を簡単に検索できるようになった現在では、
時刻表を使ったトリックの作品はもう書けないのでしょうね。




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『日本全国 「名産品」100の謎』
- 2021/07/22(Thu) -
話題の達人倶楽部 『日本全国 「名産品」100の謎』(青春文庫)、読了。

この手のお手軽ネタ本は、時間つぶしと思いながら手に取って、
結局、予想以上に内容が薄くて、あぁ・・・・・・と思ってしまうことも少なくないのですが、
本作は面白かったです。

日本全国、北から順に、その土地のご当地品、名産品、郷土食などを
2~3ページ程度にまとめて紹介しているのですが、
そのまとめが、結構、特徴、歴史、地元の人の思いなど、
重要ポイントを簡潔に盛り込んでいて、読みやすく勉強になりました。

よく知られているネタもありましたが、
うまくまとめられているので、食傷感がないというか、新鮮に読めました。




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『鹿島臨海鉄道殺人ルート』
- 2021/07/21(Wed) -
西村京太郎 『鹿島臨海鉄道殺人ルート』(小学館NOVELS)、読了。

お手伝いしている仕事先での人間関係のゴタゴタに巻き込まれて
もう、うんざり。疲れた。

というわけで、現実逃避に十津川警部連投。
これが正しい使い方かも(爆)。

テーマは剣士。
今の時代に剣士とか言われてもピンときませんが、
剣道の全国大会で優勝した現職刑事と、その師匠の紹介で長い付き合いのある若き剣士をめぐる
殺人事件を追っていきます。

タイトルは「鹿島臨海鉄道~」ですが、鉄道はほとんど関係なし(苦笑)。
単なる一舞台として登場してくるだけです。
まぁ、沿線沿いにある鹿島神宮が武芸の神ということで、剣士には関係するのですが。

この時代に、剣士という存在がどうやって生計を立てているのかは興味がありましたが、
正直、そのあたりの描写は適当です。

むしろ、剣士が考える「あるべき剣士の姿」というものが、
この本では殺人事件の動機として真正面から描かれるのですが、
そこに全く共感できず。

師匠である父をどれだけ尊敬していようとも、剣士という存在を侮辱するような輩がいたとしても、
でも、無関係の一般市民の命を奪うことが、剣士としての合理的な判断として
許容されることは起きえないのではないかと思います。
この自分に甘い判断が、私の中の「剣士は自らを厳しく律する人」というイメージと合わず、
最後まで納得できませんでした。

お仲間の刑事も同類ね。

ピュアな人が何かに盲目になると大変だよね・・・・・という結論です。




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『生死を分ける転車台』
- 2021/07/18(Sun) -
西村京太郎 『生死を分ける転車台』(祥伝社ノンノベル)、読了。

十津川警部モノは、読むたびに「リアリティがない」だの「ご都合主義だ」だの
批判的な感想をたくさん書いてしまうのですが、それでもなぜ読んでいるのかというと
実家のお店のお客さんが読み終わった本を置いていってくださるので、タダで手に入るから(爆)。
とりあえず目の前にあったら手に取ってしまうのが活字中毒のサガでして・・・・・。
あと、やっぱり、気楽に読めるのが良いですね。時間つぶしにピッタリ。

というわけで、またまた十津川警部ですが、今回のテーマは「ジオラマ」。

私の父が学生時代にジオラマづくりをちょっと齧っていたようで、
実家の本棚の一角に、列車の模型がいくつか置いてあります。
でも、幼い頃の私が触っても別に何も言われなかったので、そこまでジオラマ命!って感じではなかった印象。
最近は、弟の子供のために、実家の空いた部屋がプラレールの部屋化しているので
ジオラマ愛も少し復活しているのかも。

というわけで、私自身は、ジオラマには興味がなくても親近感は覚えている分野なのですが、
本作に出てくるのは、ジオラマの大会で優勝を争ったり、
はたまた作ったジオラマが数十万円で売れたりするような凄腕のジオラマ職人なので
知らない業界を覗いているような面白さを感じました。

なんとなく私の中でプラモデルとごっちゃになっているので、
ジオラマも作ること自体が楽しいのではないかと思ってしまうのですが、
出来上がった見事な作品を所有すること自体も趣味になるのですね。

殺人事件の犯人捜しの手法として、ちょっとジオラマ愛好家たちのことを
マニアな人間というか偏執狂的な性質があるということを前提にして
十津川警部が作戦を組み立てているような気がして、
これは本来のジオラマ好きの人たちからクレーム来ないのかな?とちょっと心配になりました。

あと、肝心の殺人事件は、
なんで、その殺人事件の現場に、たまたまそいつが居合わせて、
しかも足だけ見てるんだよ!!という驚きのご都合主義展開で(苦笑)、
ま、それも十津川警部かなと、ある意味笑いながら読めました。




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『津ゆかりの作家と作品』
- 2021/07/17(Sat) -
岡正基 『津ゆかりの作家と作品』(二角獣社)、読了。

親戚のおじさんからもらった本。
生まれ育った津市に住んでいたことがある作家や津が舞台の作品などについて
紹介した本です。

正直、きちんと作品を読んだことがあるのは江戸川乱歩と宮尾登美子ぐらい。
あとは、丹羽文雄の名前は知ってるけど・・・・ぐらいで
大半が知らない作家さんでした。時代のせいかな。

ただ、本作はあくまで津市が主役なので、
自分が知っている町の様子が詳細に出てきて、面白かったです。
特に、作中でどのように描かれているのかというのは、
街のそういう特徴に作家さんというのは目が行くのか・・・・・などの気づきがありました。

文章も読みやすく、良かったです。


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