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『処女連禱』
- 2021/06/15(Tue) -
有吉佐和子 『処女連禱』(集英社文庫)、読了。

超久々となった有吉作品は、
初の長編小説という初期の作品です。

戦後間もないころの女子大学の仲良し7人組。
卒業後のそれぞれの人生を、結婚という人生の転機をいかに迎えるかという観点から
女性らしい悩み、そして働く女の悩みを描いていきます。

最初、7人グループというのは、話の展開がワチャワチャしそうな人数だなと不安に思いましたが、
大学時代の描写の時点で、すでに、7人の中でも5人対2人に分かれるような温度差が描かれており
あ、これはリアリティあるわ・・・・と逆に感嘆しました。

そして、その大学時代から、婚約者との手紙のやりとりを赤裸々にみんなに話して聞かせる
裕子という目立ちたがりの女性の言動に翻弄される女たちという構成になっていますが、
よくもまぁ、こんな面倒な人物をグループの中に居させ続けたわねぇ・・・・と
逆に他のメンバーの寛容さにびっくり。

まぁ、仲間はずれにしたり、グループから追い出したりすることはとても骨が折れ心も疲れることなので
私自身がこのグループの中に居ても、「あの人、嫌ね」とは言い出せないかも。
そんな状況をずるずると卒業後も10年近く維持してしまったが故の
最後の爆発がハラハラする展開でした。

姉御肌のトモ子の行動力に頑張れ~と声援を送りつつ、
女は打算的と表現されることが多いけど、男も打算だよな・・・・なんてガッカリしたり。

一方で、作品の時代背景とともに気になったのが、
7人組の中で卒業10年たって結婚したのが、1人だけ。
この裕子問題があったにしても、この時代の、しかも良いとこのお嬢さんが
こんなにも未婚のまま三十路を迎えるってことに、リアリティがあるのかな?って思ってしまいました。
みんな25歳ぐらいまでに、本人の意思は別にして、家族や親族が
早く結婚しろという圧をかけるだけでなく、実力行使に移してしまいそうな気がします。
それとも、それは私の思い込みなだけで、戦後の若い男性が戦死などで減ってしまった当時においては
一般的な状況だったのでしょうかね。
そのあたりの謎は、小説世界ではなく、なにかルポ等を通して知りたいなと感じました。




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『人は死ぬから生きられる』
- 2021/06/14(Mon) -
茂木健一郎、南直哉 『人は死ぬから生きられる』(新潮新書)、通読。

モギケンさんの著作には、最近、不満げな感想しか書いていないのですが、
ブックオフで50円だったので買ってしまいました(爆)。

モギケン先生と禅僧との対談です。

生とは、死とは、目の前の世界とはいったい何なのか、
そういう哲学的な話が続きます。

モギケン先生の言う「クオリア」という概念について、南氏は世界を捉えるために有効な概念と
捉えているような感じでしたが、正直、私にはよく分かりませんでした。
「現象学と何か違うの?」てな感じです。
まぁ、私は、哲学分野は苦手なので、現象学についても学生向けの簡単な本を読んだ程度の
知識しかないので、正しく理解できてるとはとても思えませんが、
南氏が、さもモギケン先生の「クオリア」という概念を絶賛されているので、
「そういう考え方って、昔からあったように思うんですけど・・・・・」と、ちょっと引いちゃった感じです。

一方の南氏についてですが、私は、仏僧という存在に、結構無防備な信頼感を覚えてしまうたちなのですが、
本作も、そういう心理的スタンスで最初は臨んでいました。
しかし、途中、恐山を初めて訪れた際のエピソードに触れ、「あれっ?この僧侶、大丈夫?」と若干不安に。

極楽浜の草が結んであるのを見ていたずらだと思い、
南氏が「どこに行ってもバカなことをする人がいますね」と発言したところ、
お参りした人が思いを込めて結んだものだと教えられ、驚いたという話が紹介されていました。
僧侶の口から、短絡的に「バカな人がいる」というフレーズが出てきたことに、
私の僧侶像と全く繋がらず、ぼんやり感じていた信頼感が一気に減ってしまった感じです。

まあ、読者に分かりやすいエピソードとして提供するために
若干表現を盛ったのかもしれませんが、そんな演出を私は僧侶には求めていないので、
イマイチな読書となってしまいました。

対談の中で、「疑い続けなければいけない」という真理探究の姿勢について、
モギケン先生は「我々科学者は方法論的困難に直面する」と困惑を表現してますが、
私の感覚からすると、「えっ?常に疑問の目で見るというのは科学の基本姿勢なのでは?」と
驚いてしまいました。

私が大学で学んだ科学は社会科学の分野なので、「世の中で常識だと思われていることを当たり前と思うな」
「世論を鵜呑みにするな」「活字になっていることを正しいと思い込むな」というようなことを
4年間ずっと叩き込まれてきました。
自然科学は、確かに全てを疑っていたら基礎研究から応用研究に進めないというなことは
あると思いますが、でも、自然科学も、あくまで「すべて仮説の上に成り立っている学問」ではないのでしょうか。
私は、自然科学はそういうものだと思い込んでいたので、自然科学者も当然、
「今まで全員が正しいと思っていたことがある日突然崩れるかもしれない」という不安の上に
自分の学究成果を積み上げていってるものだと思っていたのですが、
それは私の思い込みだったのですかね・・・・。

なんだか結構なモヤモヤが残る読書となってしまいました。




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『「好かれる理由」「嫌われる理由」話し方の処方箋』
- 2021/06/13(Sun) -
福田健 『「好かれる理由」「嫌われる理由」話し方の処方箋』(知的生き方文庫)、読了。

近所のおばちゃんがくれた本。

時間つぶしぐらいのつもりで手に取りましたが、
意外と面白かったです。

著者は、株式会社話し方研究所の所長とのことですが、
いわゆる、話し方セミナーの講師だと思います。

セミナーに訪れた生徒さんとの具体的なやり取りや、
そもそも自身がサラリーマンの時に話し方セミナーを受講した時の体験とかを述べられてて、
人が自分自身の何かに「気づく」瞬間のことに触れられていて、
そこが興味深かったです。

話し方の技術云々というよりも、人間のそういう気持ちの部分の変化の描写が面白かったです。




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『ゲゲゲの女房』
- 2021/06/10(Thu) -
武良布枝 『ゲゲゲの女房』(実業之日本社)、読了。

朝の連続テレビ小説でヒットしてましたよね~。
その原作というか原案となるエッセイです。

水木しげる氏との結婚から、極貧生活時代、そしてマンガ雑誌に連載が始まり
マンガ家として成長していった時代を、妻の目線で振り返っています。

とにかく全編を通して感じられたのは、著者の夫に対する愛情と信頼感。
お見合いで、実質、初対面から数日で結婚式を挙げ、そのまま東京に上京という急展開なのに、
釣り書きの時点で「なんだか頼もしそう」と、夫となる人に対して好意的な印象を持ち
最初から信頼感を持っているように描かれています。

この、その人の良いところに注目して、そこを信頼していこうという
著者の非常に前向きというか、他人を信じようとする力が、
その後の極貧生活も明るく楽しく乗り切っていけたコツなのかなと感じました。
なんだか、人生のどの場面を切り取っても、前向きに自分の人生を捉えていそうです。
こういう人生を送れる人って、強いですよねー。とにかく幸せな人生を送れる気がします。

マンガ雑誌の連載が始まり、生活が安定してアシスタントさんがたくさん勤務するようになってから、
「昔は私がベタ塗りとか手伝っていたのに、今は全然関われない・・・・・」と
逆にさみしく感じる様子は、まさに夫と二人三脚でマンガというものに取り組んできた妻の鑑ですよね。

夫のマンガがテレビで放映されると決まったら、毎回テレビの前に正座して視聴し、
エンディングロールで夫の名前が流れたら拍手し、
おもちゃメーカーから夫が生み出したキャラクターの商品が出たら子供たちに与え、
子供たちもそれで毎日遊んでいる・・・・・
夫にとっては、こんなに幸せな空間はないんじゃないかなと思うぐらい
家族同士の愛情にあふれている家庭だなと感じました。

久々に気持ちの良い読書となりました。




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『ジーン・ワルツ』
- 2021/06/09(Wed) -
海堂尊 『ジーン・ワルツ』(新潮文庫)、読了。

東大医学部がモデルと思われる帝華大学医学部の助教である産婦人科医が主人公。
大学での仕事の傍ら、民間のマリアクリニックへ週1回ヘルプで勤務しています。
そのクリニックは、諸般の事情で間もなく閉鎖が決まっており、
最後の患者である妊婦5人を観ています。

その5人は、10代の望まない妊娠あり、5年間もの不妊治療の末に子供を授かった妊婦あり、
55歳の超高齢妊婦あり、誰もが重たい背景を抱えていたり、何やら怪しい曰く付きな感じの人ばかり。
この5人の出産までの定期健診の様子を軸にしながら
医学部で受け持つ「発生学」の講義の様子や、医局でのボス教授や上司の准教授とのやり取りが描かれ、
相変わらず濃密な海堂ワールドが展開されています。

前半は、学生向けの講義のシーンや、望まない妊娠をした妊婦への説教のシーンが続くので、
やや理屈っぽいというか、著者の思想が主人公を通して全面に展開されているように感じました。
エンタメ感がやや薄いので、小説を楽しもうと思っていると、結構しんどいです。

ただ、この前半の理屈の積み重ねが、後半に物語が動き出したときに重要な意味を持ってくるので
頭の中で整理しながら読んでいく必要があります。

5人の妊婦のうち、最高齢の妊婦の帝王切開手術を予定していた日に、
いろんなことが重なって、他の妊婦のうち3人もの妊婦が産気づくという
まぁちょっと盛りすぎな展開のようにも思えましたが、医師2人と助産師1人で
4人の妊婦の出産に対応するという、素人が考えてもムリゲーな展開にハラハラドキドキ。

その中で、主人公が企んだことも明るみに出て、
閉院間近な産院で、思い切ったことやるなか・・・・という感じで捉えていたら、
最後の最後、なんとも壮大なスケールの計画が発動され、
そのスキーム全体を、この主人公の若い女性一人で考え抜き、そして実際に構築し
動かすところまで漕ぎ着けたという、その構想力と計画力と行動力に脱帽。

医療関係者の方が読んで、この最後の展開に、どれだけのリアリティを感じるのかは分かりませんが、
とにかく構想力が素晴らしいなという一点だけでも、私的には、この読書の満足度が
ぐっと上がりました。

こういう社会に対してモノ申すだけじゃない、自らの行動で主張を具現化していく人物は
清々しさに応援したくなります。

著者の熱い思いが、この主人公に乗り移ったのかなという感覚も。
続編もあるようなので、楽しみです。




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『安倍官邸と新聞』
- 2021/06/08(Tue) -
徳山喜雄 『安倍官邸と新聞』(集英社新書)、読了。

タイトルから、NHKの番組に圧をかけたと騒がれた安倍官邸が
新聞にも何か圧をかけていたというのかしら?と思って買ってみました。
が、そうではなく、主要紙6紙が、安倍政権の各種政策やその実施状況について
どのように報じたのかを比較検証した本でした。

この手の本では、まず著者の立場の確認が重要です(苦笑)。
ナント朝日新聞社の現役社員で、AERA等も担当してきたとのことで、
ゴリゴリの左の人かと警戒したのですが、意外ときちんと整理しているように感じました。

もちろん、左寄りの意見を持っているということは透けて見えるのですが、
右派陣営の新聞がどんな風に安倍政権を支援したのか、または批判したのか、
また左派陣営の新聞がどんな風にどの程度強く安倍政権を批判したのか、
結構、冷静に分析されているように思いました。

むしろ、毎日新聞や東京新聞の踏み込んだ批判を褒めて、
朝日新聞の時にグダグダした中途半端な批判の仕方を非難するようなところもあり、
自社の主張を絶対視するのではなく、左派的見解を正として
時には自社のスタンスをも批判するという姿勢は、ある意味読みやすかったです。

株価が下落した際に、アベノミクスがあたかも破綻したかのように報じた朝日新聞の記事について
「何を根拠にそのようなトーンの記事にしたのか」と疑問を呈していたりして、
自社に批判的な目もお持ちです。

また、右派陣営の新聞についての解説も、
無暗に批判的な言説を取るのではなく、結構、冷静に評価を下しているように感じました。

まあ、安倍政権下での参院選大勝利に際しての、
「衆参のねじれがなくなっても、民意と政権がねじれては元も子もない」との意見には、
選挙の結果が民意じゃないのか???と意味不明でしたが。
ここはいかにも朝日新聞的主張でした(苦笑)。

2014年出版の本でしたが、「ファクト(事実)」という表現が使われており、
ファクトチェックの重要性、フェイクニュースの氾濫というのは、
今に始まったことじゃないんだなと思いました。




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『心にナイフをしのばせて』
- 2021/06/07(Mon) -
奥野修司 『心にナイフをしのばせて』(文春文庫)、読了。

先日読んだ『絶望ノート』で、サカキバラ事件を思い出してしまい、
「そういえばサカキバラ事件に関するルポルタージュが積読だったなぁ・・・・」と
積読の山を探したら本作が出てきました。

ただ、サカキバラ事件そのものを扱った作品ではなく、
40年前の中学生が中学生をメッタ刺しにした事件を扱った作品でした。
サカキバラ事件をきっかけに、著者が40年前の事件を掘り返したという点で、
ところどころにサカキバラ事件への言及がある程度です。

さて、本題の方ですが、中学校の裏のつつじ畑の中で、
中学生が同級生をメッタ刺しにし、しかも当初は「日本刀を持った男に襲われた」と
虚偽の報告をしていたという事件。
この事件の被害者の少年の遺族である母親と妹へのインタビューを中心に構成されています。
父親は病死しており母親と妹の目を通してしか描かれていません。

「なんでこんな凶暴な事件が起きたんだろう」「被害者と加害者の関係は特異なものだったんだろうか」
という一般的な疑問をもって読み始めたのですが、中盤あたりから
事件後の母親の様子を妹が語り始めるようになり、新たな疑問が生まれてきました。
「この母親って、今でいう『毒親』なんじゃないの???」と。

そう思ったら、加害者の話は私の中でどっかに行ってしまって、
妹の立場で事件を追ってしまいました。
正直な感想は、事件が起きなくても、この依存性が高くしかも自分勝手な母親と一緒に生活するのは
かなりしんどそうだな・・・・というもの。

そして、事件後は、その自分勝手さに拍車がかかっていきます。
事件の被害者だから精神的に不安定になったという可哀そうな面はもちろんあるのですが、
でも、もともとの本性の部分が事件により強化されたんじゃないかなと思えてしまいました。

加害者側に関する取材が、裏ではしているんでしょうけれど、
本作の中ではほとんど描かれないので、事件の本質的な部分への興味が
どうしても持ちにくい感じになってしまいます。

うーん、私の読後感は、著者が望んだものではないように思いますが、
「毒親」っていう現代を表すキーワードが、40年前にもあったことで
結局は、昔からある家庭の問題なのかなと思うようになりました。




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『絶望ノート』
- 2021/06/06(Sun) -
歌野晶午 『絶望ノート』(幻冬舎文庫)、読了。

中学2年生の太刀川照音(たちかわしょーん)は、
キラキラネームを付けた父親の行為がきっかけでいじめられることに。
その内容を「絶望」と名付けた日記に綴っており、それを盗み見た母は・・・・・。

この「絶望」という名の日記を通して作品が展開していきます。
そのため、いじめの内容が延々と描き連ねられることになり、
なかなか読んでいてしんどいですが、主人公の照音が結構強い心を持っているので
その点は読者として救われた気がします。反抗しようとする気概があるから。

背表紙のあらすじによると、「ある日、苦しさのあまり『神よ、是永を殺してください』と書く。
すると主犯格・是永が死んだ」とありますが、
ここまで明確に、殺人依頼と死亡事件とが直線的に描かれているわけではないので、
読んでいて「あらすじとニュアンスが違うなあ・・・・」と気になってしまいました。
「次々に名前を書き付け級友が死んだ」というあらすじも、小説の中の展開の印象は異なります。

なので、最初は、ノートに書かれた日記に応じて、誰が事件を起こしているんだろう?という
目線で読んでいたのですが、次第に、「これは因果関係はなくて偶然が重なってるだけでは?」と
思うようになり、ちょっと読書の軸を見失ってしまった感もありました。

最後、物語のからくりというか、事件の構造がつまびらかにされて、
あぁ、そういう登場人物たちの関係だったのねぇ・・・・と頭では納得できましたが
ミステリ作品の種明かしとしては腑に落ちないところも感じてしまいました。
筋は通ってるけど、人間らしさを感じられない行動展開と言いますか。

まぁ、でも、本作は、いじめというものがどうやって発生するのか、
そして、そのいじめが防げない理由が、当事者以外に、家族の側にどんな問題があるのか
という部分では興味深い示唆に富んだ作品だったと思います。
あ、ここで家族が見て見ぬふりをするのか・・・・とか、
こういう家族の言動が子供を追い詰めるのか・・・・とか。

いじめを描いた作品としては力作だったと思います。
ただ、個人的に、「オイネプギプト様」という存在が登場した瞬間に、気分が悪くなりました。
これはフィクション作品でも、一線超えちゃう表現じゃないかなと。

いわゆる「バモイドオキ神様」を想起してしまったからなのですが、
私の中で、サカキバラ事件は、他の事件との差異を「バモイドオキ神様」に象徴していて、
この虚像の神様の存在が、サカキバラ事件の少年Aの精神状態の異様さを表していると思います。
なので、その神様と同じような神様を本作内に登場させてしまったことで、
生理的に受け付けない感じになってしまいました。
主人公に共感できなかったのは、この神様の存在のせいかと思います。

あの事件が世間というか私に与えたインパクトの大きさを思い起こさせる読書となりました。




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『死体は眠らない』
- 2021/06/05(Sat) -
赤川次郎 『死体は眠らない』(カドカワノベルズ)、読了。

金持ちのボンボンが、浮気相手と暮らすために煩い妻を殺害。
ところが、その妻の父親が亡くなったとの連絡が飛び込んできたことから、
妻が誘拐されて行方不明で葬儀に出席できないと嘘をつき、
そこから自体は二転三転・・・・・。

ドタバタコメディサスペンス作品です。
いったい何人の人が死んだんだろうというような展開に苦笑いですが、
お気楽サスペンスなので気にしないことに。

主人公も浮気相手とフラフラしてるし、やってきた刑事も頼りないし、
なんだか怪しい素性の人がどんどん絡んでくるしで、
ハチャメチャですが、そのハチャメチャぶりをはははと笑う作品なのでしょうね。

死体があっちいったり、こっちいったり、かなり豪快な展開をしていますが、
最後、ちゃんと、なんでそんなことになったのかは筋道つけて説明されていたので
そこの組み立て力は凄いなと。リアリティは別にして。

赤川作品の魅力がわかりやすく詰まっている作品のように思いました。




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『若者はなぜ「決められない」か』
- 2021/06/05(Sat) -
長山靖生 『若者はなぜ「決められない」か』(ちくま新書)、読了。

自宅の窓から見える隣の広い駐車場にある朝突然50人ばかりの若者が集まっていた。
その日から毎朝多くの若者が集まり、リーダー役がグループに分け、車に乗せて運んでいく。
しばらく眺めていると、どうやら人材派遣会社に登録したフリーターが
毎朝、派遣先に送り込まれる様子だったとわかり、そこから、現代の若者へと思考が深まっていく。

この派遣軍団、集められたフリーターの群れと、
彼らに指示を出し派遣先へと送り出す派遣会社社員に分かれるものの、
両方とも年頃は同じ。
片や覇気のない背中を丸めた若者であり、片や如才なく著者に挨拶ができる若者。
明らかに違って見えたという著者の言葉を読みながら、
あぁ、そうだよなぁ、学校を卒業して世に出た時点で、
もう人生のレールは敷かれちゃってて、そのレールが交わることは普通ないよなぁ・・・・と。
ま、レールは卒業時でなく、入学時、もしくは生誕時に既に敷かれているのかもしれませんが。

本作の中に明示されているわけではないのですが、
「階層」というものを意識しながら私は読みました。
日本では、「階層」って表立っては言われないですが、厳格に存在しますよね。
「勝ち組」「負け組」なんて柔らかい言葉で表現していますが、それって「階層」ですよね。

昭和のころは、「階層」という概念を意識していたかは別として、
若い人は、自分を閉じ込める壁をぶち破ろうという上昇志向を持つ人が多かったような
イメージがありますが、今や、閉塞感というか、上昇志向のない若者が増えたように思います。
ガツガツしてないです。
ガツガツするのは格好悪いとか、そういうレベルではなく、
ガツガツの仕方が分からない若者が多くなったのではないかと感じます。

結局そこが、タイトルにもなっている優柔不断さに繋がっていくのかなと思いました。

ネットメディアとか見ていても、
99%の静かな若者と、1%の才能豊かで行動力のある若者に二極化しているように感じます。
これからの社会は、1%が99%を従わせる構造に変わっていくのかもしれませんね。




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