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『無銭優雅』
- 2021/05/31(Mon) -
山田詠美 『無銭優雅』(幻冬舎文庫)、読了。

40歳を過ぎた男と女のイチャイチャ同棲話・・・・・要約するとこうなっちゃう(爆)。

Amazonのレビューは結構辛辣なものが多かったのですが、
私はそこまで嫌な印象は受けませんでした。
「痛いおじさん、おばさんだなー」とは思いましたが、「まぁ世の中にはこんな人たちもいるかも」という程度。

正直、「心中する心持ちで付き合う」とか、そんなの40代じゃなくても痛いぞーと思い、
それほどこの二人には興味を持てなかったのですが、
周囲の家族たちとの話の方が意外と面白く、
我を忘れて二人の世界に浸っているわけではない、外部世界とのつながりの方を軸に
読んでいた感じです。

Amazonレビューでは、どうも男の方への嫌悪感を指摘している声が多いのですが、
カップルなんだから痛さ的には同レベルじゃない?と思ってしまう私は
どうやらエイミー作品の読者とは感覚が違うみたい。
なんで男の方だけ気持ち悪いって言われちゃうんだろう?
性差別とか、そんなことを言いたいのではなく、エイミー作品における
男の痛さと女の痛さの違いが気になってしまいました。




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『花実のない森』
- 2021/05/29(Sat) -
松本清張 『花実のない森』(光文社)、読了。

サラリーマンの男が、ドライブ帰りに車に乗せたヒッチハイクの男女。
女は上品さの陰に妖艶な美しさがあり、一方の男は粗野な感じの中年男。
女の素性に俄然興味を持ったサラリーマンは、女が誰かを探り始め・・・・・。

第一印象は、「これ、ストーカーだよね」(苦笑)。
正直、車に乗せただけの女に、ここまで執着できるものなのかという心情が理解できませんでしたが
まぁ、ストーカーというのは、そういうものなのでしょう。

毎日の仕事を早く片付けて、女の周辺を探索しまくり。
探偵行為が楽しいのかなぁ・・・・。

この女が、旧華族なり上流階級の人たちと接点を持っていることが分かってきたら、
「一体どういう人物なんだろう?」という興味は、読者の私も感じるようになりましたが、
結局、最後まで主人公の執着心には共感できず。

どうしても、松本清張作品には社会性を求めてしまいがちなので、
こういう作品の評価は、私の中でマイナス点が大きくなってしまいます。

もう少し、旧華族社会側の事情というか、業界情報を描いてくれたら
もっと興味を持って読めたような気がします。




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『凛とした日本人』
- 2021/05/27(Thu) -
金美齢 『凛とした日本人』(PHP文庫)、読了。

著者の印象は、たまにテレビの情報番組にコメンテーターとして出ている人・・・・・ぐらいで
あとは保守系の発言をする人という程度。

どんな本を書くのかなと買ってみたのですが、
思っていた以上に精神論の本でした。

安倍晋三氏が自民党総裁に返り咲いた総裁選の話からスタートし、
その後の衆院選で自民党が勝利したことについて「八百万の神々が起こした奇跡」と表現したので
「え!そういう方向の人なの!?」と、かなりな警戒感から読書スタート(苦笑)。

前半は東日本大震災における様々なエピソードから日本人論を展開していますが、
震災後に日本人の冷静な行動を評した海外メディアの論評を
日本在住の著者なりの視点でまとめ直したような内容に思え、
言ってしまえば、どこかで読んだような話の総まとめのような印象でした。
エピソードが日本社会の中の人らしく具体的だというところが特徴でしたが。

日本人の良いところをとらまえて、
デレデレと褒めそやしたのが直前に読んだ黄文雄氏の著作であり、
「あんたたちの本質はこういう良いものなんだからしっかりしなさい!」と叱咤激励するのが本作なのかなと。
なので、読んでいてこそばゆさを感じにくいという点では、
本作の方が読みやすかったですが、
あくまで、「日本人としてしっかりしなきゃ」という、反省の視点に立って本作を読まないと
それこそ「凛とする」という目的が達成できないように思えました。

気持ち良くなるために読む本ではなく、自分自身を律するために読む本かなと思います。




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『消えたエース』
- 2021/05/26(Wed) -
西村京太郎 『消えたエース』(角川書店)、読了。

プロ野球界におけるリリーフエースの誘拐事件を描いた作品。

以前に、長嶋巨人軍がまるごと行方不明になるという作品を読みましたが、
本作は阪神タイガースと思われる京阪ハンターズのリリーエース江島が行方不明になり
ホステスの殺人事件の容疑をかけられたと思いきや誘拐事件に発展するというもの。

主人公は、京阪ハンターズのマネージャーの男ですが、
彼の目を通して、プロ野球という業界の内情や、球団への愛情、ファンへの思いが語られ、
著者は野球が好きなんだぁな・・・・と感じられて好印象です。

舞台は、優勝争いを演じる1位の巨人と2位の京阪の甲子園4連戦なのですが、
巨人の選手はみんな実名で、京阪側はモデルが類推できる名前を当てられているのですが
この扱いの違いはなぜ?
事件に巻き込まれる側なので、クレームが出ないようにということでしょうかね。

問題児のリリーフエース江島は、ぱっと見では江夏豊さんがモデルのように思えますが、
作品中では、江夏選手は日ハムのピッチャーとして出てくるので、
この辺もやっぱりクレーム防止策なのですかね。

さてさて、本題のほうですが、正直、ホステス殺し、ピッチャー誘拐に加えて、
それ以外にも殺人や誘拐が絡んできて、正直、単なる怨恨に対して犯罪を詰め込みすぎという
費用対効果の不経済さが気になってしまいました。
特に、甲子園の試合中に起こる事件は、あんなに観客が大勢いる中で、
しかもファールボールが飛んできて周囲の人が注目している環境下で
その展開は無理だろう・・・・・と思ってしまいました。

ただ、甲子園での試合の描写が生き生きとしていて面白かったので、
途中からは、事件の展開よりも、巨人阪神4連戦の展開のほうが気になってくる始末(爆)。

というわけで、本題とは違う部分で楽しめてしまう作品でした。




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『日本社会の歴史』
- 2021/05/25(Tue) -
網野善彦 『日本社会の歴史』(岩波新書)、通読。

この3巻が、著者の代表的な著作なのかなと思って、期待して読んだのですが、
期待していたよりも教科書的な雰囲気の本だなと感じてしまいました。

前に読んだ網野作品が、庶民の生活のロジックみたいなものをしっかりと描いており、
納得感が得られたし、歴史の本であまり注目したことがない場面への考察だったので
とても面白く読めました。

本作にもそういう雰囲気を期待していたのですが、
原始社会の日本の描写から始まり、「あら、普通の教科書と一緒なのね」と思ってしまいました。

結構、淡々と時代を順番に追いかけているように思え、
高校の日本史の教科書のように、政治の話があったと思えば、宗教の話に飛び、美術の話に飛び・・・・
というようなあっちこっちに話が飛ぶことはなかったのですが、
政治や生活の話に特化して、時間の流れはしっかり意識されているものの、
淡々と描写が進むというところは教科書的なトーンのように思えました。
もっと、手に汗握る生き生きとした描写を期待しちゃってました。(ハードル上げすぎ?)

で、本作の主題とは話がずれるのですが、
なんで日本史の話って、原始の時代から始めるんですかね?
本作でも、200万年前の話からスタートするのですが、
日本列島は当時、中国大陸と陸続きでしたよ・・・・・ってもう、
日本史ではなく地学の世界ですよね。
こういう話から始めるから、「日本の歴史を学べるんだ!」と思っていた子供たちが
「思ってた話と違う・・・・」というので、興味を失ってしまうのではないかと思ってしまいます。
日本史の授業が卑弥呼の話から始まったら、その神秘的なキャラクターと相まって
もっと子供たちは日本史に興味を持つように思うのですが。
金印の話とか、めちゃくちゃ物語性もありますし。

どうせ授業で教えるなら、子供たちが興味を持つような「掴み」を
教科書会社も、学校の先生も、もっと工夫した方が日本社会のためになるのにな・・・・。








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『日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか』
- 2021/05/23(Sun) -
黄文雄 『日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか』(徳間文庫)、読了。

ヒットしていた記憶があったので、試しに買ってみました。

もう、タイトル通り、日本礼賛本です。
ここまで来ると、ちょっと居心地悪いかな。お尻もぞもぞ的な(苦笑)。

日本を訪れた様々な外国人が残した日本評(好評なもの)をピックアップし、
彼らの目に、当時の日本がどう映っていたのかという解説をしているので、
外国人の目に日本がどう映っているのかを具体的な言葉をもとに理解できるのは
興味深いなと思えました。

ただ、好評な言葉ばかりをピックアップしているように思え、
視点が偏っているので、話半分で読まないといけないな・・・・
と自分自身でブレーキをかけてしまい、素直に読めないです。

例えば「日本人は名誉を重んじるので命を捨てることも厭わない」という日本人評は、
確かに誇り高さを表しているとは思いますが、相手に対して自己主張をし尽くすという
論理に基づく行動力が弱まってしまったように感じます。
それって、今の日本にはマイナスに作用しているところもあるように感じます。
「いつか分かってもらえるだろう」と主張を半ばで諦めたり、
「くどくど主張するぐらいなら身を引く」と断念してしまったり。
今の国際的社会では弱点ですよね。

そういう、弱点の視点も併せて考察に加わっていたら
とても奥行きのある日本人論になったと思うのですが、
読んでいて気持ちの良くなる評価だけを取り上げているので、物足りないです。

まぁ、本作の目的は、日本人を気持ちよくさせることだと思うので、
私が求めるものは、そもそも筋違いなのだとは思いますが。
話半分で読むと丁度良い感じかと思います。




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『関西商法』
- 2021/05/22(Sat) -
田辺昇一 『関西商法』(新潮文庫)、読了。

いつ買ってきたか分からないほど、ずーっと積読になってた本作。

著者は経営コンサルタントらしいので、
タイトル通り関西企業の経営論なり商売法を解説した本だろうと思って手に取ったのですが、
解説本というほど重くはなくて、まぁビジネスエッセイという程度でしょうか。

どこかで読んだ気がするエピソードが多かったので
そんなに新鮮味はなかったですが、
まぁお気楽にビジネスの話を読める手軽な本ということで
時間つぶしにはちょうど良い感じでした。




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『境遇』
- 2021/05/21(Fri) -
湊かなえ 『境遇』(双葉文庫)、読了。

親がなく児童養護施設で育った陽子と晴美。
県会議員の妻となり、息子のために描いた絵本がメディアにのって大ヒットした陽子。
新聞記者として、そんな陽子を取材する晴美。
この2人の関係の中に、陽子の息子が誘拐されたという衝撃の事件が飛び込んでくる!

湊作品なので、当然、人間のいやーな部分がどんな風に見えてくるのだろうかと
怖いもの見たさで読み進めていくのですが、
なんだか、いつもの湊作品よりもマイルドというか、ゆるめというか。
うーん、とモヤモヤしてたら、どうやらテレビドラマ用の作品だったようで、
そりゃ地上波放送なら緩めにならざるを得ないわなあ・・・と納得。

個人的に面白かったのは、夫が県会議員ということで
その後援会の会長やら中心スタッフやらがアレコレ介入してくるところ。
でも、あんまりみんな頭の切れが良くないというか、思いつき行動が多いので
ドタバタ感がぬぐえません。

まぁ、最後も、なんだかみんな善人な感じで終わっていったので、
これはこれで、甘めの感じの湊作品としてありなのかな。

児童養護施設という環境について、もっと突っ込んだ作品を読んでみたいなと思いました。




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『熔ける』
- 2021/05/20(Thu) -
井川意高 『熔ける』(幻冬舎文庫)、読了。

大王製紙の会長だった著者が、マカオのカジノで会社の金を100億円以上スッたという報道に触れたとき、
私自身、勤め先の取締役会や株主総会の運営主担当をしていたので、
「いったいどういう手続きで100億円もの金を引き出したんだ!?」とほんとに疑問でした。

日産自動車のゴーン氏の解任劇の報道を聞いた時も、
「追い出した側の社長らは正義みたいな扱いだが、あんたら取締役会で承認したんじゃないの?」と
やはり手続き論のところで疑問符でした。

まぁ、大王製紙は同族経営だし、ゴーン政権下の日産は外国人が仕切ってたようだし、
日本企業とは言え特殊な環境だから、やりたい放題ができたのかなぁ・・・・と思いつつ、
でも大企業なんだから、社外役員とか監査役とか会計監査人とか、
それなりに内部統制が働くはずなんだけどなぁ・・・・・と腑に落ちず。

というわけで、本作を読んだら実態が分かるかなと思い、読んでみました。

で、まず感じたのは、強烈な既読感。
「あれ?前にこの本読んでたかな?」というぐらいの感覚です。
Blogで検索したら、吉田修一さんの小説のせいでした。
本作よりも、吉田作品の方が臨場感にあふれる描写で、よりリアルさを感じられます。
さすが小説家!
小説の方は、ラストが創作でしたけどね。

で、肝心の手口の部分は、グループ会社で用立てできそうなところに電話して
お金を振り込んでもらうという、なんとも単純なものでした。
あー、創業者一族って、こんな権限を持ってるんだなぁ、そして誰もその指示を疑問に思わないんだなぁと。

著者は、その金額の大きさ及び使用目的がスキャンダラスだったので
大きく報道されたし、逮捕も収監もされましたが、
もっとミミッチイ案件だったら、世の中の中小企業と社長の間で日常茶飯事に行われてそうだなと
なんだか虚しくなりました。

著者個人のことをちゃんと意識したのは、Youtubeのホリエモンチャンネルにゲスト出演した回を見た時で、
「あれ、カジノ狂いのバカ息子かと思ってたら、意外と興味深い人なのかも」と印象が好転したのですが、
本作を読んで、「あれ、結構、自己弁護みたいな感じになってるな」と、また評価反転(苦笑)。

創業者一族に生まれて、必死に勉強した学校時代があり、遊びまくった大学時代があり、
そして入社後に難しいポジションを若くして任され・・・・という、事件を起こす前までの部分は
興味深く読みました。
でも結局、吉田修一作品の方が面白かったな・・・という感想で終わってしまいました。






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『ダーティ・ママ!』
- 2021/05/19(Wed) -
秦建日子 『ダーティ・ママ!』(河出文庫)、読了。

シングルマザーの先輩刑事は赤ちゃん連れで捜査活動を行う変わり者。
検挙率が高いという理由で、子連れ勤務が黙認されているという設定。
そこに、ベビーシッター代わりに異動させられた若手刑事が主人公。

ま、ドタバタコメディなので、時間つぶしに軽ーく読んで終わり、という本かな。
それほど期待していなかったので、まぁお手頃な感じでした。

設定に無理がありすぎるとか、
ストーリー展開がご都合主義的だとか、
同僚たちもキャラが立ちすぎだとか、
いろいろ目につくことはありますが、
あんまり深く考えてはいけないかな。

雪平夏見シリーズとは、だいぶ重さが違う作品でした。

脚本家出身の作家さんなので
まぁ、テレビドラマ色というか、視覚的情報優先のプロットになっちゃうのは
仕方がないのかなぁ・・・・。




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