『猫だましい』
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- 2021/03/21(Sun) -
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河合隼雄 『猫だましい』(新潮文庫)、通読。
心理学者の河合センセが書く猫の本。 愛猫家のにゃんにゃん日常エッセイかと思いきや、 猫が登場する小説や絵本を紹介、解説した本で、かなり高尚な内容でした(苦笑)。 お気楽読書を想定していたので、ちょっと飛ばし読みになってしまいました。すみません。 その文学作品の解説も、猫が登場する作品ではありますが、 あくまで作品解説の方に軸が寄っていて、作品そのものの主題や、 その作品の中で猫が果たしている役割などをしっかり説明していきます。 かなり硬派な猫の本でした。 『風の又三郎』『100万回生きた猫』など、私も読んだ本があり、 そこはフムフムと引き込まれました。 ![]() |
『人類学的宇宙観』
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- 2021/03/15(Mon) -
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川喜田二郎、岩田 慶治 『人類学的宇宙観』(講談社現代新書)、通読。
KJ法、そして三重県津市の銘家・川喜田家の一族である著者。 代表作の『KJ法』は読んでいましたが、 対談形式の本作を読んで、「あ、川喜田二郎博士というのは人類学者なのか」と 今更ながら気づきました(苦笑)。 大学に入学したころは、人類学とかフィールドワークとか面白そうだなと思って 講義を取ったりしてみたのですが、 結局私が興味をもったのは、フィールドワークの結果分かった人類学的考察内容を使って 現代の先進国社会を斬るとこういうことが見えますよ・・・・・・的な部分だったと分かり、 それは人類学ではなく社会学だな・・・・というわけで、今ではあんまり人類学に対しては 興味が薄れてしまいました。 本作の対談も、人類学的関心が持てているときに読んだら もっと熱中できたように思うのですが、今は通り一遍な感想で終わってしまいました。 学生時代のことのように、いろんなことに関心を持つのって、 40代になってくるとしんどいのかなぁ・・・・・とちょっと老いを感じてしまいました。 それにしても、Amazonで中古本にすごい値段がついてますね・・・・・・。 ![]() |
『意欲格差』
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- 2021/03/14(Sun) -
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和田秀樹 『意欲格差』(中経出版)、通読。
ブックオフの50円ワゴン本。 タイトルから、『下流志向』とか『下流社会』とかの和田センセver.だろうなと予想できたので買ってきましたが、 これら2作で受けた衝撃に比べると、中身が薄くて残念な内容でした。 マクロ的なデータは出てくるのですが、 著者が主張する具体的な内容になってくるとデータの裏付けが少なく、 「私はこう思う」というようなエッセイみたいなレベルの文章が続き、 説得力がないんですよね。 本作を最初に読んでいたら、「そうか、学歴とか経済力とかでなく、意欲そのものに格差があるのか!」と 膝を叩いていたかもしれませんが、前2作の後では、パンチ力なさすぎでした。 ![]() |
『Fukushima 50』
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- 2021/03/13(Sat) -
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『Fukushima 50』
公開時に、保守系Youtubeチャンネルでは「絶対見るべき!」と大きく宣伝されていたので 観たい観たいと思ってましたが、どうしてもコロナが怖くて、映画館に行けませんでした。 東京から三重県の田舎に引っ越してからは、そもそも映画館に行く習慣が消えてしまいましたし・・・・。 で、たまたま今日、実家に帰って夕飯後にテレビの前でゆったりしていたら、 金曜ロードショーで本作が始まり、「え、今から放送するの?」と、お風呂にも入らず視聴。 わたくし住んでいる家にはテレビがないので、実家に帰っててよかったです。 映画スタート直後、何の余韻もなく東日本大震災の地震が起こり、 現場がバタバタする中で津波襲来により電源が落ち、原子炉の状況が把握不能の状況に陥ります。 とにかくテンポが速く、淡々と起きた事象が伝えられていく演出です。 後半になるほど死の危険と直面するようになり、普通の映画でやったらお涙頂戴過ぎる・・・・と 引いてしまいそうなセリフも、福島第一原発の現場なら、本当にこんなやりとりだったんだろうなと、 その切羽詰まった状態が、よく伝わってきました。 まず驚いたのは、地震直後に、ちゃんと福島第一原発と東電本社とをつなぐテレビ会議の場が きちんと立ち上がっていること。このあたりは、さすが大企業のマニュアルですね。 組織だって動けていることに、日本の企業はちゃんとしてるよなと思いました。 その後、非常用電源を喪失した原子炉において、 次々と非常事態が起き、水素爆発という事態になっていくのですが、 映画全編を通して驚いたのは、原子炉が吹っ飛ばなかった理由は、結局分からないということ。 今、日本が曲がりなりにも国家として持続できていることが、奇跡だったということ。 現場にいる所長以下作業員の方たちが必死の努力をして、 出来る限りのことを試し、なんとか原子炉を制御しようと踏ん張ってきた姿には、 本当に涙が止まらず、感謝の気持ちしかありません。 しかし、冷静になってみると、技術的には敗北してたってことですよね。 1号機のベントを一つ開けられたのは決死隊のおかげだと思います。 でも、その効果は数値の上では表れなかったということですよね。 2号機の圧力が下がったのは、たまたま壁に穴が開いたからであり、 大きな地震の揺れのおかげで壁がもろくなっていたのかどうかは知りませんが、 本来であれば穴が開くはずのない壁が壊れたから救われたわけですよね。 まさに、神様、仏様に祈ったら、助けてもらえたみたいな。 本作を見るまで、私は、Fukushima 50 の決死の行動が直接的に 何か大きな効果をもたらして大災害に繋がるメルトダウンを防いだのだと思っていたのですが、 どうも、そうではないようで、本当に、真っ暗な闇の中での奇跡の綱渡りだったのだなと感じました。 もちろん、Fukushima 50 が現場に残ってデータ収集やできる限りの行動をとってくれたから 被害が抑えられた点もたくさんあると思いますが、それ以上に運だったのかなと思ってしまいました。 まだ福島第一原発のことは、全容が解明されたわけではないので、 今後の検証が進めば、やっぱりFukushima 50 のこの行為が、有効打となったんだという 技術と知識の勝利みたいな結論がもたらされるのかもしれません。 しかし、今の時点では、Fukushima 50 の努力の成果が、科学的にどこまで効果を証明できるのか 難しいというのが精いっぱいのところなんだなということが本作からわかりました。 あと、実は海水注入とかはほとんど漏れ出していて実効がなかったということが 言われているようですが、そのあたりの効果検証は本作では全く触れられていなかったので 本作においては科学的な側面の描写はされていないと割り切った方が良いのかなと思いました。 いずれにしても、福島第一原発に関わっていた東電社員の皆さん、協力会社の皆さん、 自衛隊の皆さん、そのご家族の皆さん、日本を助けようと命を投げ捨てて立ち向かっていただき、 本当にありがとうございました。 こういうプロフェッショナルが現場で地道に支える国に生まれてこれたことは、幸せなことだと思います。 緊張を強いられる状況下にずっと居ながら、「食事にしよう」と息を抜く術を持っていたり、 ふとしたときに笑顔を見せ合える現場というのは、すごく良いチームワークだし、みんな大人だなと感じます。 このあたりのどんなに辛い状況でもお互いを信頼しあえる関係づくりを普段からしていて、 いざというときにチームで困難に立ち向かえるという点に、日本人らしさが一番出ているように感じました。 そして、福島第一原発だけでなく、様々な現場で、様々な人々が、 地震や避難や復興のために地道に仕事をされていたものと思います。 そういう全ての人々に感謝いたします。 一方で、政府の対応や東電の上層部の描かれ方は、ブラックユーモアで満艦飾ですが、 ちょっと批判しやすいシーンに偏り過ぎているんじゃないかなと感じました。 現在の姿はともかくとして、私は、当時の枝野官房長官は、不用意に国民を混乱に落とさないよう 彼なりの立場で頑張っていたと思いますし、首相はともかくとして、 現場と直接向き合っていた政治家や役人も、表には見えにくかったでしょうけれど、 必死に頑張っていたのではないかと思います。 Fukushima 50 を英雄視するには、その対極に位置するピエロ役が必要だったのかもしれませんが、 ちょっとカリカチュアライズし過ぎな印象を受けました。 というわけで、本作は、技術面、科学面、政治面の話は抜きにして、 とにかく、Fukushima 50 の方々に感謝の気持ちを捧げるために、見た方が良いというのが私の結論です。 |