FC2ブログ
『落語的笑いのすすめ』
- 2020/12/31(Thu) -
桂文珍 『落語的笑いのすすめ』(新潮文庫)、読了。

桂文珍師匠が慶応大学で行った講義の記録。

正直、大学で芸能人や有名人が教鞭をとるというのは、
学生を集めるのに必死な二流三流大学がやる手法だと思っていたのですが、
慶応大学でもこういう講義をやるんだなぁ・・・・と最初は思ってしまいました。

が、読んでみると、「現代芸術」という講義において、
落語や浄瑠璃などの古典芸能の話をしながら、笑いというものを語っていきます。

なるほど、確かに、ただの有名人ではなく、落語家であれば
その職業のもつ歴史や他の古典芸術との違いなどを語れば、
十分に「現代芸術」という内容の講義になるのだなぁと変な感心をしてしまいました。

もちろん、落語家の仕事を話しているだけではダメで、
落語というジャンルと他のジャンルとの比較文化論的な考察や、
落語における笑いの構造のような分析を行えてこその講義ですから、
やはり著者ならではの視点が入っていると思います。

そして、落語家らしさと言えば、1つの講義における起承転結がしっかりと考えられていること、
また全9回の講義の全体の流れも練られていて、そこはさすが、ストーリーで笑わせる落語界の
トップを取った人の力だなと思いました。

慶応大学で早稲田大学の話題を出したり、福沢諭吉先生をディスったり、
まぁちょっと毒があるところもさすがです。

難点は、文章が、講義録の書き起こしのようになっているところで、
ちょっとした話し方の癖なんかもそのまま書いてあるので、
最初はすごく読みにくさを覚えました。
中盤まで来るとだんだんリズム感みたいなものがつかめてきて、スムーズに読めるようになりましたが
文章に関しては、もう少し工夫の余地があったのではないかと思ってしまいました。

最後の方で著者が学生の前で披露している新作落語の「心中恋電脳」は、
何年か前の正月番組で師匠が演っているのをたまたま見て爆笑した記憶があります。
それを改めて本作において文章で読んだら、やっぱり落語は生だよな・・・・と
当たり前の感想になってしまいました。




にほんブログ村 本ブログへ


この記事のURL |  桂文珍 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『女の人指し指』
- 2020/12/29(Tue) -
向田邦子 『女の人指し指』(文春文庫)、読了。

年末の忙しい最中に、向田女史のエッセイは、ほっと一息の清涼剤でした。

冒頭のエッセイが、「高いところから墜落して」と始まるので
ドキッとしてしまいましたが、他人の身に起きた話でした。
うーん、編集者さん、これは狙い過ぎではないですか。

グルメの話、旅先での話、仕事の話、子供の頃の話と、
結構、テーマはあれこれ飛んでいるように思えるのですが、
1つ1つのエッセイがしっかりとまとまっているせいか、
一冊の本としての散漫さは全く感じませんでした。
むしろ、しっかりと身が詰まったような読後感。

無駄な言葉を使わずに、ばしっと場面を切って並べて一つの作品に組み立てる
その力量は群を抜いていますね。

読んでいて、嫌みなく、押しつけがましさもなく、無駄もなく、気の抜けた感じもなく、
それでいて気持ちの良い日本語を書く人って、なかなか居ないと思います。

寒さが募ってきた年の瀬に読むには、
気持ちがしゃんとするエッセイ集でした。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  向田邦子 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『豊臣秀長』
- 2020/12/28(Mon) -
堺屋太一 『豊臣秀長』(PHP)、読了。

我らが藤堂高虎公の生涯を紐解くと、キーマンとして出てくる豊臣秀長の名前。
しかし、秀吉の弟としてしか描かれないことが多く、
どんな人物なのか良くわからなかったです。

たまたま近所のおっちゃんが本作をくれたので、高虎公の主君はどんな人物だったのか
という興味で読んでみました。

兄である秀吉が、農民をしていた秀長を召し抱えにくるシーンから始まっていますが、
嘘も方便で演出過剰な兄と、その嘘を薄々分かりながらも乗ってあげる弟という構図に始まり、
最初から二人の人間関係、信頼関係は明確な状態から始まります。

教科書にしても、歴史文学にしても、行動が華々しく目立ち、
キャラクターも経っている秀吉にばかり目が行くのは当然ですが、
こういう社交で出世していく男の後ろには、銃後を守る妻がいるわけでありまして、
秀長は妻の役割、つまり秀吉が華々しく活躍する後ろで領土経営の安定化や
家臣の統率の安定化に努めています。

この人がすごいなと思うのは、自分はそういう役割だと割り切っているところ。
兄のように目立ちたいとか、自分も武功を上げたいとか、カネを稼ぎたいとか、
そういう不埒な思いは捨てて、ただひたすらに兄のために尽くす姿がすごいなと思います。
腹が括れているというか、覚悟ができているというか。

そして、その安定した精神の上に、大局的な情勢の読みとか、
経済的な側面での国の経営とか、人間関係の細やかな配慮とか、
さまざまなことに意識を向かわせて最善を尽くしています。

武功だけを求めるのではなく、いかに国を治めるかという点で努力をした
藤堂高虎公が仕えた人物として納得できる功績の持ち主でした。
教科書にしても、歴史小説にしても、秀長の扱いが小さいのは残念ですね。
せめて、ビジネス本の世界では、もっと取り上げられてもよい人物だと思います。
いわゆる番頭役としては、ピカイチの実績はないでしょうか。

一方で、高虎公との関係でみると、本作は物足りないです。
秀長を主人公としつつも、あくまで描いているのは秀吉の天下取りまでの道のりであり、
さらには、信長の天下布武の構想がメインだと思います。

物語も、清須会議あたりで終わってしまっており、
秀長の生涯最後のシーンが描かれることなく閉じられてしまいます。
これでは、形式的な主人公であり、真の主人公は秀吉または信長のような印象です。

あくまで秀長の目を通して秀長よりも上の世界にいる人々の動向を描いた物語であり、
秀長とその家臣との関係はほとんど描かれません。
そこは残念。
あの藤堂高虎が、秀長を慕った理由というところをもっと詳しく読みたかったです。

断片的に登場する高虎については、
数術の知識が豊富な武将という描かれ方をしており、だから後に築城の名手となったのかと納得。
秀長が高虎に会計知識を学ばせたというようなくだりもあり、
だからこそ、もっと高虎と秀長の関係を知りたかったなという思いが高まりました。

戦い方を知っているだけではなく、国の治め方、部下の使い方、人脈の作り方を知っていることが
戦国の世から天下統一へと動いていく時代の中で重要な能力だったということが良くわかり、
時代の一つ先を行く能力を身につけ、それを伸ばし、最大限に活用することの意味を
しっかりと伝えてくれる面白い作品でした。





にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  堺屋太一 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『一橋ビジネスレビュー2020春』
- 2020/12/25(Fri) -
『一橋ビジネスレビュー2020春』、通読。

特集は「TOKYO:ポスト2020の未来展望」。
東京オリパラの開催直前にぶつけて、あえてポスト世界を描こうという魂胆だったのに
コロナ禍で当てが外れてしまった悲しい号。

夏ごろに一度手に取ったのに、やっぱり気分が追い付かず、いったん放置してました。
ただ、来年開催できるのかというと、それも微妙な空気があるので、
こりゃもう、年内に消費しておいた方が良いかもと思い、年末のドサクサの中で読んでみました。

特集で描くポスト2020の世界は、
産業革命、都市開発、ベンチャー、地方などとバラエティに富んだ角度で考察されており
本来であれば興味深く読めたのだと思うのですが、
いかんせん、「オリンピックできなかったしなぁ・・・・・」という気持ちが先に立ってしまって、
文章にのりきれないまま終わってしまいました。

都市開発、街づくりという観点は、私はこれまであんまり読んだことがなかったので
特に新鮮に感じました。
これはまた、オリンピックの文脈とは別の切り口で読んでみたいと思います。

ビジネスケースの「Francfranc」は、大学に入って上京した時に
「こんなおしゃれな店があるのは、やっぱり東京だなぁ」と思ったのですが、
もともとは福井県の家具メーカーの子会社として始まったと知り、驚きました。
家具メーカーの子会社としてスタートする部分、要は斜めに一歩を踏み出した瞬間を
もうちょっと詳しく知りたかったなという感想でした。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  一橋ビジネスレビュー | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『あほらし屋の鐘が鳴る』
- 2020/12/25(Fri) -
斎藤美奈子 『あほらし屋の鐘が鳴る』(文春文庫)、読了。

著者の本はなんと6年ぶりでした。
なかなか100円で見つけられないんですよねー。

メインは雑誌『pink』での連載エッセイ。
本に限らず世相を斬っていくものですが、やっぱり本とか雑誌とかエンタメとか
その手のジャンルのものが多かったので、その毒っぷりに面白く読みました。

ATMの画面に登場する女子キャラクターの銀行別特徴とか、
『失楽園』の勝手にあらすじ紹介&行動パターン分析とか、
まぁくだらないことを何もそんなに一生懸命分析しなくても・・・・って感じで笑えます。

冷静に考えると、それほど深い分析をしていおるわけでもないようにも思えますが、
結構オーソドックスな世の中の批評の枠組みに素直に当てはめて、
ただ具体的な分析を分かりやすく盛り込みズバッと斬っているところが面白いのかなと。
郷ひろみの『ダディ』の話とか・・・・・くだらないけど。

著者の分析力が光るのは、メインコンテンツの世相批評より、
終盤に併録された雑誌批評の方が面白いですね。

以前読んだ『男性誌探訪』の前段に当たる企画のようで、女性誌探訪です。
正直わたくし、ファンションとかに全く興味がないので、いわゆる女性誌ってほとんど買ったことがありません。
極まれにウンナンさんのインタビューがあったりすると買う程度で(苦笑)。

著者はいわゆるフェミニストですから、ちょっと主張がくどく感じる部分もあるのですが、
でも、やっぱり、女性の評価は女性の方が厳しいというもので、
女性誌のカテゴリ分けとか、読者層分析とか、販売戦略の変遷とか
毒まみれの解説で、笑えました。

紹介されている女性誌は、名前は知ってるけど手に取ったことが無いものがほとんどなので、
これでまた、私の中に勝手な各雑誌のイメージが構築されてしまいました。

ところで、タイトルの語感がすごいな~と感心していたのですが、
Amazonレビューを見ていたら、どうやら大阪の方で使われる言い回しのようですね。
こんな表現、初めて知りました。
誰が最初に言い出したのか、すごく気になります(笑)。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  斎藤美奈子 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『娘と嫁と孫とわたし』
- 2020/12/23(Wed) -
藤堂志津子 『娘と嫁と孫とわたし』(集英社文庫)、読了。

藤堂作品、実に4年ぶりでした

息子が交通事故で急死。
悲しみに暮れる日々を送る母親のもとに嫁と孫が通ってくるようになり、いつの間にか同居。
そこにセレブで嫌味な娘がしょっちゅう押しかけてくるようになり、女4人でドタバタ。

この嫁の里子が、一人暮らしの義母の家に押しかけてくるという展開が
本作の設定の特徴だと思うのですが、どうにもこの里子のキャラクターが上手くつかめませんでした。
本作は3つの章に別れているのですが、第1章を読んでいた時は、
「できた嫁だなぁ」という感想で私の中ではまとまっていたのですよ。

ところが、第2章に入り、息子の急死後に家族を捨てて別居していた夫が
4人の前に姿を見せるようになると、この嫁の毒が端々に出てくるようになり、
なんだか陰険なものを感じてしまいました。
義父への辛辣なコメントと言い、合コンに参加して亡き夫に似た雰囲気の男の人につきまとったり
ちょっと危うさを感じる一面がありました。

で、第3章、義母の前で娘への辛辣な評価を口にしたり、
結構、ほころびが見えたように思え、第1章の「できた嫁だなぁ」評はどこへやら。
最初の印象が良かったので、この嫁の立場から作品を眺めようと思っていたのに、
後半は共感できずに終わってしまいました。

反対に、奔放な娘が後半に行くほど本音を吐露して素直になったりと、
なかなか人間、複雑ですねぇ。

後半に出てくる秋生のスマートな身のこなしと各方面への配慮の仕方に
安心感を覚えてしまうほどでした。

私は、やっぱり、藤堂作品の独身女に興味があるのであって、
藤堂作品の結婚して家庭を持った女にはあんまり共感できないなぁと感じてしまいました。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  藤堂志津子 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『道は無限にある』
- 2020/12/22(Tue) -
松下幸之助 『道は無限にある』(PHP)、通読。

手元の小説を読み終わって、手近に本がなかったので、
近所のおばちゃんにもらって放ったらかしになってた本作を手に取りました。

・・・・・・が、読みたくて手に取ったタイミングではなかったためか、
全然内容が頭に入ってきませんでした。

なんだかキレイごとが並んでいる気がして。

名経営者としての評価が固定され、相談役として経営の第一線からは退いた人の言葉な気がしました。
松下電器を拡大させようと我武者羅に陣頭指揮を執っている社長時代の言葉が読みたいと感じました。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  松下幸之助 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『仏果を得ず』
- 2020/12/21(Mon) -
三浦しをん 『仏果を得ず』(双葉文庫)、読了。

文楽の世界を舞台にした作品。
いわゆるお仕事小説なのかな。

私自身、文楽は2年前に初めて「初心者のための文楽」みたいな舞台を見ただけで、
それが唯一の体験ですし、普段の生活では全く意識にのぼることがない世界です。
「あぁ、そういえば、橋下知事と揉めてたなぁ・・・・」程度の関心でした。
文楽と人形浄瑠璃の違いも分かっていないぐらいで・・・・・人形浄瑠璃の一派が文楽座なんですね。

その文楽の世界に、研修生上がりという立場で入り、語りを担当する若手の太夫が主人公。
冒頭、その主人公と師匠であり人間国宝である銀太夫との楽屋の様子から始まりますが、
最初に感じたのは、「ずいぶん弟子が師匠に対して軽い口を叩くんだな」というもの(苦笑)。
私に多少の馴染みがある落語の世界は、もっと厳しい上下関係にあるような印象を持ってました。
吉本興業の上下関係も、楽屋では結構歴然としたものがあるような気もしてました。
だんだん読み進めていくと、これは文楽全体の風土というよりは、銀太夫の個性なのかなとも思いましたが。

そんな自由な雰囲気の銀太夫のもとで、太夫としての成長に必死になる主人公。
コンビを組む三味線に指名された兎一郎は無口な変人として周囲に認識されているカタブツ。
凸凹コンビに発破をかけたりフォローしたりする先輩芸人たち。
小学校での文楽指導で一生懸命学ぼうとする女の子、それを見守る先生、そして母親。
お仕事小説目線で見ていたので、最後の小学校まわりのエピソードはちょっと異質な印象を持ちましたが
まぁ、最後の大団円に持ち込むには必要な要素だったのかな。

各章には、それぞれテーマとなる文楽の演目が充てられていますが、
著者による丁寧な解説がついていたので、素人でも楽しめました。
むしろ、演目の世界観、登場人物たちの心情を理解することについて、太夫や三味線という人たちが
こんなにも頭を悩ませながら取り組んでいるのだと初めて知りました。
もっと、業界内の通り相場的な解釈が一本あるものだと思っていたので、
演者個人個人が各自の解釈で演じるものなんだということに驚きました。

そういう、文楽の演目解説という意味では非常に手厚い内容でしたが、
お仕事小説という点では、太夫と三味線の仕事が中心に語られ、人形遣いはたまに登場する程度、
裏方スタッフについてはほとんど描写がないので、片手落ちな印象でした。
著者は、お仕事小説ではなく、文楽紹介として作品をとらえているのかもしれませんね。

兎一郎のキャラクターが特に興味深く、
そこに一生懸命ついていこうともがく主人公の姿も健気です。
先輩たちもなんだかんだ優しく、良い職場ですね。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  三浦しをん | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『図書館危機』
- 2020/12/20(Sun) -
有川浩 『図書館危機』(角川文庫)、読了。

シリーズ3作目です。

前作を読みながら、手塚や柴崎のバックボーン的な暗い話が出てくると
しんどくなってくるかも・・・・・と予想していたのですが、
あにはからんや、いきなり恋愛モード全開で、別の意味でしんどかったです(苦笑)。

確かに、主人公・郁の思い出の王子様が上司の堂上であることが分かり、
郁にバレたことで堂上も急に意識し始めるという、
まあ、ベタな展開です。

前半の章が、そういう恋愛モード中心で展開していき、
話の軸となるエピソードが小粒だったので、読み応えないなぁ・・・・と思ってしまったのですが、
編集者の折口を主人公にした「ねじれたコトバ」は
ストレートに言葉狩りの様子を描写しており、興味深く読みました。

「床屋」という言葉がメディア良化委員会の違反語に当たるから、雑誌のインタビュー記事で
適切な言葉に自動的に置き換えたら、インタビューされた側が激怒したという展開。
てっきり、本作の中で違反語として「床屋」という用語が設定されたのかと思いきや、
現実社会でも放送禁止用語になっているようですね。
「~屋」という呼称は、日銭稼ぎの蔑称なんだとか。
何がいけないのか、いまだに良く分かりません。
差別って、差別を定義づけするところから始まる場合も多々ありますよね・・・・・。

この話から後半は、一気にテーマが重くなっていきます。
後半は、茨城県立図書館での県展受賞作の展示を巡って
メディア良化委員会や、その取り巻き組織、そして「無抵抗者の会」と名乗る暴力反対派と
図書特殊部隊の戦闘を描きます。

保身第一の図書館長に、上手く取り入った「無抵抗者の会」と、
その危ない関係を利用して横暴を究める検閲側の勢力たち。
図書館戦争という架空の舞台を通して描くことでカリカチュアライズされていますが、
現実社会もこんなもんなんだろうなぁと思います。

茨城県が舞台になっており、行政側の人物の受け身姿勢な感じとか、
県民・市民を名乗る横暴な人たちがたくさん登場しますが、
茨城県民からクレーム来ないかしら?と心配になる描き方でした。
たまたま関東近辺を舞台に選んだというだけ?それとも県民性とか反映されてるのかしら?
ちょっと気になるわー。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  有川浩 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『鉄の骨』
- 2020/12/18(Fri) -
池井戸潤 『鉄の骨』(講談社文庫)、読了。

文庫本で600頁オーバー。
ずっと積読でしたが、仕事のやる気が超減退しているので、手に取ってしまいました(苦笑)。

いやー、もう、1日で一気読みでしたよ。
池井戸作品って、展開にスピード感があるし、最後にどんでん返しがあるしで、
ボリュームあっても、読む手が止まらないですね。

建設業界を舞台に、公共工事の談合の様子を描いていくのですが、
入社4年目の若手が、「談合課」と呼ばれる業務課に異動することとなり話が始まります。

最初、業務課に主人公含めて4人(課長、先輩、主人公、事務員)しかいないので、
「いくら中堅とはいえ、こじんまりし過ぎじゃない!?」と思ってしまいました。
が、談合という性質上、秘密保持をするには少数精鋭じゃないと厳しいのかしら。
建設業界って、大学時代の友人で行った人が居ないから、良く分からない世界です。

2000億円規模の地下鉄工事を巡って、大手ゼネコンと、主人公が属する中堅建設会社とで
どこが入札するかという争いになるのですが、そこで各社が頼るのが
「天皇」と呼ばれる、大手ゼネコンの顧問を務める人物。
この人物のもとに、各社の役員クラスが日参して情報収集と自社PRに努めるのですが、
談合って、こんな感じで進むんですかね?

正直、大手ゼネコンで談合担当の役員が、皆、自分勝手でプライドだけは高く
しかし大局観も戦略もなにもなしに天皇に頼りっぱなしで、
よくぞまぁ、こんな程度の人物力で役員になれたな・・・・という感じです。

よっぽど4年目の主人公の方が、自分の考え方を持っているというか、
建設業界というものに対して、青臭くても、自分なりの思いを描いているなと思いました。

主人公の恋人はメガバンク勤務で、主人公が絡む談合に関して、
ある種の情報を得られる立場に居るのですが、
協力するでもなく、けん制するでもなく、中途半端な立ち位置に描いたことが
逆に談合の面白さを引き立たせていたように思います。
この恋人が、変に談合に情報提供をしたり、関わったりしてくると、
リアリティのない単なるエンタメ小説になってしまった気がします。

絶妙な立ち位置で描きつつも、ただ、この恋人と銀行の先輩の恋愛もどきの関係は、
あんまり共感できませんでした。
迷っているのに呼ばれたらホイホイ出ていくのは、不誠実じゃないかと。
ま、でも、談合小説の味付けだと思えば、仕方がないのかな。

最後、入札の日に起こることは、ある程度予想してはいたものの、
その行動をとると、業界内で村八分にされるのじゃないか、そこはどうするのだという疑念で
読み進めていたところ、「まさか、そんなところまで考えられていたなんて!」という展開で、
やっぱり、池井戸作品のどんでん返しは面白いなぁと素直に思えました。

600頁を使って描くだけの意味がある業界の話だったなと思います。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  池井戸潤 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
| メイン | 次ページ