『悩みどころと逃げどころ』
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- 2020/07/27(Mon) -
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ちきりん、梅原大吾 『悩みどころと逃げどころ』(小学館新書)、読了。
最近読んだ「Go To キャンペーン大混乱について」という、ちきりんさんのBlog記事が 大納得というか、あらゆる疑問の方向に対して整合の取れた解釈ができてるなと思い さすが、ちきりんさん、考察力が凄いなぁと思っていたところでした。 なので、ブックオフでお名前を見つけて、とりあえず買ってきました。 梅原さんの方は、全く存じ上げないお名前だったのですが、 ちきりんさんの対談なら、まあ、大丈夫だろうということで。 結果、読んでみて思ったのは、梅原さんの発言の方に興味がわいた!ということです。 梅原さんというのは、14歳で格闘ゲーム日本一になり、2010年に日本人で初めて企業と スポンサー契約を結びプロゲーマーになった人ということです。 うーん、私はゲームをやらないので、知らない世界の住人のお話のようです。 でも、私がよくこのBlogに書いている、「一流の人は語るべき言葉を持っている」というのは 梅原さんにも当てはまって、自分の人生観なり仕事の哲学なりを、 ゲーム好きの人に向かってだけ話すのではなく、一般人に向かって、プロゲーマーとはということを 熱く語れる言葉を持っている人なんだと分かり、ものすごく興味が湧きました。 自分の職業に対するプロ意識がとてつもなく高いですし、 その意識の高さが、非常にロジカルに自分の中で整理されている人だなと感じました。 梅原さんが語ることで、格闘ゲームの世界にも、少しだけ興味を持つことができました。 今まで、正直、ただ戦いを繰り返すだけの格闘ゲームって、何が面白いのか良く分からなかったので。 数少ない私のゲーム経験は、『信長の野望』とか『三国志』とかの歴史シミュレーションゲームに 偏ってるのですが、天下統一!という分かりやすいゴール設定に向けて コツコツやっていくのが好きでした。 梅原さんの人生観とか仕事の哲学とかはご本人の著作でじっくり読めそうなので そちらで確認するとして、本来楽しみにしていた方のちきりん先輩に関しては 正直なところ、ちょっと残念に感じてしまいました。 何よりもまず、この対談をコントロールしようという思いが前に出過ぎてしまっていて ところどころ誘導尋問のように感じてしまいます。 一方の梅原さんは自分の考え方が間違って伝わることに強く抵抗するようなところがあり、 その意思が強い分、ちきりんさんの誘導尋問ぶりが目立ってしまい、 「あれ、こんな強引な話の誘導の仕方とか、反対におだてて誘導するとかする人だったっけ?」と 思わずにはいられませんでした。 正直、あんまり対談という形式が、ちきりんさんに合っていないのではないかという気がしました。 往復書簡という形式なら、もっと落ち着いて読めたような気がします。 ちきりんさんが言う「子供の頃から世の中の仕組みに凄く興味があった」という点には 激しく共感します。私もそうだから。 明日雨が降るかはあんまり興味ないけど、なぜ雨が降るのか、なぜ台風の雨風は強いのか その仕組みを知りたいと切に願ってしまいます。 だから、最近読んだちきりんさんのBlogも、なぜ政府はあんな中途半端な形で Go To トラベル キャンペーんを始めようとしたのかスッキリ理解できたのだろうなと思います。 ちきりんさんの解説が面白いのは、誰がどういうことをしたいと思ったというような個人の価値観や 誰と誰が対立しているというような個人的な感情を除いて、 なぜ、そういう政策を取ろうとするのか、何が目的なのか、その目的に対して一直線に進むには その政策で良いのか、というような感情を挟まないロジカルな話の展開に 私は心惹かれるのだと思います。 だから、学校生活楽しかった?みたいな感覚的な話をちきりんさんがしているのを読むと、 「あなたがやるべき言論活動は、そういうことじゃないだろう!」と思えてしまうのかなと。 まあ、Blogはちきりんさん本人が興味の赴くままに世の中の仕組みのことを語れますが、 本にするには、当然、出版社側の思惑に沿って企画せねばならないわけで、 そうすると雑念が入って面白くなくなっちゃうのかも・・・・と思ってしまいました。 ちきりんさんは、最近読んだ著作は、どうも満足しきれないものが多いので、 出版社が絡んでくる本よりも、Blog記事を追いかけた方が、私は満足できちゃうかも。 ![]() |
『酒に謎あり』
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- 2020/07/19(Sun) -
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小泉武夫 『酒に謎あり』(日経ビジネス人文庫)、通読。
発酵の先生によるお酒学。 雑学&紀行エッセイ的なものを期待していたのですが、 ガッツリ自然科学的考察が続き、なかなかお堅い本でした。 美味しいお酒やおつまみの話が出てくるんだろうなと思ってたので、 こちらもご飯を食べながら読んでいたら、いきなり「口噛み酒」の話になり、 「うわー、ご飯食べながらは読めないわ」という、トホホな展開に。 『君の名は。』でも登場した「口噛み酒」ですが、 文化とか風習とか歴史とか、そういう重たいものを乗り越えて、 私にとっては、ただただ気持ちの悪いもので、生理的に受け付けないです(苦笑)。 生理的にNGなものが最初に出て来ちゃったせいか、 その後の話もあんまり気持ちが入っていかず、 読み飛ばしになってしまいました。 ![]() |
『異類結婚譚』
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- 2020/07/18(Sat) -
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本谷有希子 『異類結婚譚』(講談社文庫)、読了。
著者の作品は2冊目です。 前作では、グアムという明るい土地を舞台に、女3人を中心とする家族のドスグロ旅だったわけですが、 本作は夫婦関係が主題です。 「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた」という冒頭の一文は 秀逸な導入だと思いました。 しかし、主人公の妻目線で語られる夫の描写が不気味で気持ち悪く、生理的にダメでした。 最初は、外面が良くて、家の中では横柄なタイプの人なのかなと思っていたのですが、 近所の女性とトラブルになった時に(この女性も変わってるのですが)、 途中から対応を妻に丸投げして、しかも終わってから妻に文句を言うという流れに、 「え、何この人!?」という嫌悪感が先立ってしまい、以降、敵視しながら読んでしまいました。 後半になるにつれて、この夫が妻に対して 「サンちゃんも俺とおんなじでしょ。本当は何も考えたくないのに、 考えるふりなんかしなくって、いいじゃない」と言い放つのですが、 それに対して何も言い返せない妻に、私は、「似たもの夫婦なんかい!」と 妻にも敵視感覚が芽生えてしまい、共感要素ゼロになってしまいました。 途中で、猫捨てのエピソードが入ってきて、 群馬の山中に行ったあたりから、物語全体がふわふわと異世界に入っていったような感覚で、 旦那も妻も猫の飼い主も、みんな、この世に存在している人たちなのかしら?と思えてきましたが、 それを差し引いても、人間の気持ちの悪い部分が見えてくる作品で、苦手でした。 併録されている作品も、夫が藁で出来ていて、「なんで私は藁なんかと結婚したのかしら?」と 悩む妻など、正直、意味不明な世界観が続き、それが人間の明るい部分と繋がっていたら読めたのですが 人間のドスグロい部分とか、嫌~な部分とかに直結している描写だったので、 読み進めるのが辛かったです。 解説で斎藤美奈子氏が言うには、著者は「こじらせ女子」をリアルに描ける作家らしいのですが、 ダーク側にこじらせている作品には、ちょっと近づきたくないなぁと思ってしまいました。 3冊目に手を伸ばすか、悩みどころです。 ![]() |
『その後のツレがうつになりまして。』
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- 2020/07/17(Fri) -
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細川貂々 『その後のツレがうつになりまして。』(幻冬舎文庫)、読了。
ブックオフに行ったら、第2巻も100円で出ていたので、早速買ってきました。 第1巻は、うつ病の発症から、それを受け入れて改善していくまでの流れを順を追って描写していましたが、 第2巻では、第1巻を発表する経緯や周囲の反応から書き始めて、 うつ病に苦しむ人からの共感の声や、はたまた病気への対処方法への意見などもあったようで、 ツレさんの経験から、著者自身の「良いと思う対応方法」「悪いと思う対応方法」を紹介しています。 「これは個人の経験から生まれた参考情報なので、それぞれの症状に合わせて対応を考えてください」 という前提で話が進められますが、こういう具体的な情報を開示してくれるのは 当事者の方々にとっては、とてもありがたく心強いものなのではないでしょうか。 ストーリーらしいストーリーはなく、 家族としてどういう風に向き合えばよいのかを紹介してくれているガイドブックみたいな感じです。 ツレさんの症状が軽くなり、心に余裕をもって事態を受け入れられるようになって良かったなぁと 最後は、まるで知り合いのような気持ちで読んでいましたが、 こういう風に心の持ちようを変えられるようになるには、本人の意識の置き方の工夫と、 周囲の家族の理解があってこそですよね。 素敵な夫婦だなと改めて感じました。 ![]() |
『サイン会はいかが?』
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- 2020/07/14(Tue) -
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大崎梢 『サイン会はいかが?』(創元推理文庫)、読了。
ブックオフにこのシリーズが全部100円で揃っていたのですが、 第2弾は長編ということで躊躇してしまいました。 第1弾がどうにも乗り切れない部分があったので、それで長編はつらいかなと。 で、本来なら好きじゃない順番飛ばしをして第3弾の短編の方を買ってきました。 舞台は引き続き駅ビルに入った中堅どころの書店です。 そこに持ち込まれる様々な謎や難題を、主人公の女性店員とアルバイトの女の子で 解き明かしていくというスタイルも一緒です。 読んでいて、第1弾に乗り切れなかった理由が思い出されてきたのですが、 謎がやけにダークサイドを醸し出すんですよね。 人間の悪意や憎悪がスルッと入り込んでくるところが、 読んでいて、あんまり気持ちの良いものではありません。 謎の真相における悪意以外にも、登場人物の皆さんが、結構、他人を簡単に疑うんですよね。 あいつが怪しいとか、それが小学生であっても。 これも、読んでいてあんまり気持ちよくないです。 そして、最後に、謎解き役の女の子のキャラを際立たせようとして、 常識的な対人感覚を持ち合わせていないような描写が時々出てきて、それも引っ掛かります。 自分の身が狙われているとして怯える被害者に対して、 真相の開示を後回しにして「大丈夫ですよ」とほほ笑むだけだったり、楽しそうだったり。 どんなに謎解きのできる頭の回転の良い人でも、 困っている人に対して、こんな態度で臨んでしまう人とは、あんまりお友達になりたくないなぁと。 相変わらず日常の謎の方も、リアリティに欠けるような印象です。 取次の人の話とか、サイン会の運営の話とか、書店をめぐるお仕事小説としての要素を もっと前面に出してほしいなぁという思いです。 ![]() |