『淋しいのはお前だけじゃな』
|
- 2020/06/16(Tue) -
|
枡野浩一 『淋しいのはお前だけじゃな』(集英社文庫)、読了。
私が読む本の中で「短歌の人」というと、枡野浩一氏と穂村弘氏がごっちゃになってしまいます。 まだ、私の中できちんと蓄積ができていない感じです。 今のところ、「暗い」枡野氏と「恋愛こじらせ系」穂村氏というザックリとした区別です(苦笑)。 で、本作は、暗い枡野氏の初の雑誌連載をまとめたもの。 短歌が一首と、その歌ができた背景を解説というよりはエッセイ風にまとめた作品です。 短歌も共感できるものが多くありましたが、それ以上に、エッセイの内容の方に興味が持てました。 周囲の人に言われたことや体現されたことに対して、 どんな風に受け止め、何が著者の心の中に残り、そしてそこから歌が生まれたのか。 短い文章の中できちんと表現されていて、ものすごく丁寧に熟考して書かれたエッセイなんだろうなと その思考の厚みを感じられるものでした。 恋の歌より、仕事の人間関係や、人間関係の社会性を詠んだ歌の方が印象に残りました。 自分自身、いろいろ複雑な人間関係の中で、最近、考えることが多いからかな?と思います。 ユニークなイラストも楽しめて、仕事が立て込んでいる中で ホッと息を付ける読書タイムになりました。 そして、最後まで私はタイトルを 『淋しいのはお前だけじゃない』という同朋意識を誘うものだと勘違いしてました。 『淋しいのはお前だけじゃな』という、とっても突き放したタイトルなんだということは、 最後の最後、長嶋有さんの解説を読んでいて気づきました(爆)。 ![]() |
『スナックさいばら サバイバル篇』
|
- 2020/06/14(Sun) -
|
西原理恵子 『スナックさいばら サバイバル篇』(角川文庫)、読了。
このシリーズはお下劣でちょっと苦手なところがあるのですが、 結局買ってしまうのは、サイバラ女史の人生哲学を読みたいから。 浮気の話とか、ピロートークとか、そういうテーマはささっと読み飛ばして、 離婚とか、残り物とか、そういう生活感あふれるテーマに期待しながら読みました。 投稿者の女性の愚痴のように見えて、結構、本人が笑い飛ばしていたり、 もしくはサイバラ女史に笑い飛ばしてもらえるように演出してたり、 そういうのを見ると、女性ってみんな根性あるなーと思います。 だって、旦那の浮気とか、借金とか、姑問題とか、自分だったら耐えられそうな思い問題ばかり。 それを、自分も仕事をやりながらとか、専業主婦業をこなしながら なんとか受け止めたり、うまく受け流したりして生きていくのって、すごいパワーだなと思います。 私にはそんな根性ないから、結婚という制度から逃げまくってます。 最後のテーマが「旦那を一言褒めるなら」で、あら、珍しく褒めるのね・・・・と思ったら、 このシリーズが本作で一旦完結を迎えたようですね。 最後は前向きに締まったと思いますが、 中盤の下ネタが凄かったから、これはブックオフ行きかな(苦笑)。 ![]() |
『漁師の愛人』
|
- 2020/06/13(Sat) -
|
森絵都 『漁師の愛人』(文春文庫)、読了。
森絵都さんのイメージって、なんとなくキラキラ青春小説!って感覚があったのですが、 こんな情念の世界も描けるのかと驚いた短編集でした。 女性の目から見た男性という存在を書いたものが多かったですが、 男の自分勝手なところとか、周辺社会を見ているようで見ていないところとか、 辛辣な評価なのですが、ダメなところも含めて女性側が受け入れてあげているような 懐の深さというか諦念というか、そんな女性らしい(苦笑)ところも描かれており、 結局、考え方やレベルが似ている男と女がくっつくんだなぁと思ってしまいました。 サイバラ女史もそう言ってましたしね(笑)。 3.11が各物語の中で人生観の転換のきっかけになっていて 東北に住んでいなくても、あの揺れの日々を経験した者にとっては、 地震の前と後では違う自分になっていたんだろうなと改めて思いました。 私自身も、東京で揺れる日々を過ごして、 直接的ではないにしろ、その後、東京を離れて地方で生活することを考える遠因の一つに なっていたのかもしれません。 プリンアラモードの話とか、くすっと笑えて好きでしたが、 やっぱり本作では表題作の「漁師の愛人」ですね。 タイトルからしてキョーレツ。 脱サラして故郷で漁師になった中年男と、それにくっついて移住してしまった愛人、 そしてなぜか愛人のもとに親しげにしょっちゅう電話をしてくる本妻。 なぜかこの3人の人間関係は変な安定の仕方をしているのに、 愛人にとって悩みの種は、移住先の田舎の人々の好奇の視線と蔑みの視線。 愛人という存在に対する田舎の拒否反応の描写が強烈です。 それに対して悩みながらも腹を据えてしまう主人公の強さが際立ち、 なぜか最後は前向きな気持ちになれてしまうという面白い作品でした。 Amazonでの評価が思いのほか低かったのが納得いかない・・・・。 ![]() |
『少女は卒業しない』
|
- 2020/06/11(Thu) -
|
朝井リョウ 『少女は卒業しない』(集英社文庫)、読了。
印象的なタイトルの本。 「高校の卒業式の日」×「朝井リョウ」ときたら、一見あっさりしているように見える裏側での ドロドロの人間関係が垣間見えるのかしら?と期待したのですが、 結構、恋愛小説寄りで、「あ、こんな作品も書くんだ」と若干驚いた次第。 でも、前作でも思っていた雰囲気と違う作品だったので、 私が、朝井リョウという作家を、特定の小さな枠の中に押し込めちゃってるのかも・・・・と反省。 高校生の恋愛ものって、キラキラし過ぎちゃってて苦手意識があったのですが、 意外と本作は抵抗なく読めました。 それはたぶん、著者が主人公の本音の部分をうまく掬って描いているからなんだろうなと思います。 「好き」という感情だけでなく、相手に覚えた違和感とか、物足りなさとか、そういう負の感情も 主人公なりの目線で描いているので、単にキラキラしているだけじゃない、 高校生として精一杯頭を悩ませて生きている感じが伝わってきました。 軸となっているのは高校の卒業式。 しかも、高校の建物が卒業式の翌日には取り壊されることが決まっているという 特殊な状況下での卒業式。 だから、卒業生という同じ学年の友人たちという人間関係だけでなく、 高校という場に対する生徒の思いも描かれていて、興味深かったです。 みんな、勉強嫌いとか言いながら、やっぱり高校という場は大事な価値を持つところなんだなと再認識。 私自身の高校生活は、勉強一色であんまり華やかな思い出が無かったので こんな感情豊かな高校生活を送れる主人公たちは幸せだなとうらやんでしまいました。 ![]() |
『わたしの旅に何をする。』
|
- 2020/06/07(Sun) -
|
宮田珠己 『わたしの旅に何をする。』(幻冬舎文庫)、読了。
旅行に関するユルユルエッセイだと、 最近、珠己サンと高野サンの区別がつかなくなってきてます(苦笑)。 これはタマキングの雑誌コラムを集めたショートエッセイです。 会社員の時にできる限り日程を調整して行っていたという海外旅行での経験や 会社員をやめて物書きになる顛末を軽~いエッセイにしています。 分量が短いので、雑誌の隅で「ふふふ」と笑うためのものであり まとめちゃうと軽さがくどくなっちゃいますね。 個人的には、タマキングは、海外旅行をしている姿よりも、 日本国内で大仏を見たりジェットコースターに乗ったりしている姿の方が好きです。 軽さがちょうどよい感じです。 海外で簡単に怪しいおじさんの車に乗っちゃったりすると、 「ネタを作るのに必死だなぁ・・・・」と思っちゃいます。 「旅」以外の切り口を持った作品を選んで読んだほうが私には良さそうです。 ![]() |