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『雑談力』
- 2020/05/31(Sun) -
百田尚樹 『雑談力』(PHP新書)、読了。

百田氏が語る「面白い話をする秘訣」。
Amazonのレビューを見ると、「雑談集でありテクニックを語った本ではない」と批判が目立ちましたが
私は逆に、雑談の事例が数多く載っているからこそ、紹介されているいくつかのテクニックが
具体的にどのような効果があるのか分かりやすいと感じました。

例えば、話の起承転結のつくり方。
そして、時系列で話すのではなく、話の幹を見極め、そこに効果的な枝葉を付ける方法。
具体的な雑談事例が乗っていて、しかもその内容が面白いので、ぐいぐい読めました。
ハウツー本ですが、半分はショートショートを読んでいるような気分に浸れます。

トピックの選び方も重要だなと痛感します。
黒人リーグの話とか、初めて聞いて、こんな世界があったのか!と一つ賢くなれました。
アームストロングとガガーリンの地球帰還後のコメントは知っている話でも、
それに対する百田さんの批評を読んで、あぁ、なるほどなか、そういう視点もあるのねと
これまた興味深く読みました。

ネット番組の『虎ノ門ニュース』では、百田さんの2時間独演会みたいな時もありますが、
それでも退屈せずに聞けるというのは流石の話術ですよね。
個人的には、暴言に近い毒舌は控えていただきたいのですが(苦笑)。

放送作家ならではの、一瞬で聞き手の関心を捉えるテクニックが具体的に披露されていて
勉強になりました。

あと、最終章の、靖国問題とか従軍慰安婦問題とかの話は、
このテーマの重要性も、百田さんが主張している内容も分かっていますが、
さすがにこの本にくっつけるのは無理があるだろうと思ってしまいました。




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『海よりもまだ深く』
- 2020/05/28(Thu) -
是枝裕和、佐野昌 『海よりもまだ深く』(幻冬舎文庫)、読了。

タイトルには特に惹かれるものがなかったのですが、
著者が映画監督の是枝さんで、表紙絵に阿部寛さんが載っていたので、
コメディ系なのかな?と思って買ってみました。

小説家の新人賞を取ったっきり次の作品が書けず15年、
生活に困って、「小説のネタ探しに」という理屈付けで探偵事務所に勤めます。
しかし、まともに働くわけでもなく、自分より若い人間に仕事は押し付けて、
自分は、不倫調査の調査対象に不倫現場の写真を高値で買わせて、
依頼者には「シロです」と報告する恐喝まがいのことまで。

それでも生活に困り、事務所の若手に金を借りたり、姉の勤め先に無心に行ったり
実家で母の目を盗んで家探しして質草を探したり。

なんで、こんなダメ男が主人公になりうるんだろう・・・・・という軽蔑の目を向けてしまいがちになりますが、
一方で、憎み切れない一面もあり、ついつい先を急いで読んでしまいました。

離婚して母親についていった息子と月に1度の面会があり、
それを楽しみに毎日を生きているような男ですが、案の定、養育費が払えません。
小学校高学年の息子にも、そんな父親のダメさ加減はばれてしまっており、
どうしようもない男なのですが、憎めないのは、彼が、自分のダメさに気づきながらも
そこから脱することができないという、みんながどこかで感じている自分のダメさを
凝縮したような感じで見せてくれるからなのかなと思いました。

文章は、映画の原作というよりは、映画をノベライズしましたというような
会話文中心で表面を流れていくような感じだったので、
「男の苦悩を表現している」というには、ちょっと浅すぎる感じでしたが、
会話文で進んでいく軽さがあるからこそ、男の軽さも際立った感じがしました。

映画作品については全く存在を知らなかったのですが、
シニカルコメディだったのかな。
私の頭の中では、姉は、小池栄子さんが動いてました(笑)。




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『楽園のつらい日々』
- 2020/05/27(Wed) -
デビッド&ミッキ・コルファクス 『楽園のつらい日々』(農文協)、読了。

近所のおばちゃんがくれた本。
ずいぶん分厚い本を読んでるなぁ・・・・・と思い、しばらく積読でした。

積読本があまりに増えてきたので、
体積の大きいものを何とかしようと手に取りました(苦笑)。

大学で社会学を教えていた著者は、学外での政治的活動が煙たがられて
大学教授の座を追われ、しかも他の大学にも手を回されて再就職が不可能な状態に。
ウガンダの大学から声がかかったので家族と一緒に渡航しようとしますが、
アミン政権末期の内乱で入国できず。モロッコあたりでウロウロした挙句に帰国。
行き場をなくした家族は、カリフォルニアの山奥に土地を求め、自給自足の生活を始めます。

大学で教える道が閉ざされたから農業!って、どんだけ急展開なんだという話です。
いやまぁ、脱サラして農業やるっていう道は結構アリだと思うんですけど、
なぜ、電気も水道も通っていない土地をわざわざ買って自給自足生活を選択するのかという(爆)。
お父ちゃん、普通に働けばええやん!って突っ込みたくなる展開です。

大学教授の職を追われた理由も、左翼的な活動のようですし、
正直、結構引きながら読んでいたのですが、自給自足の生活が始まったら、面白く読めました。
自分のできないこと、判断を間違えたこと、他人に責任転嫁したこと等を
素直にそのまま書いていて、好感が持てた理由が大きいのかなと思います。

とにかく貧乏。
家を建てている間の数か月間、キャンピングカーで生活するなど、
最低レベルの生活さえできていない印象です。

都会で生活しているときは、公民権運動や反戦運動に関わって、
(たぶん)貧しいがために社会から抑圧されたり、戦地に行かざるをえなかったりした人を
支援する活動をしていたのではないかと予想する(本作中に詳細な記述がないので)のですが、
自給自足生活を始めたら、「金がない」「金がない」と毎日のように言っていて、
なんだか自給自足生活をしているときの方が、カネに支配されているような皮肉。

で、そんな生活を送り、苦しい思いをしていたはずなのに、
再び大学に戻ろうと就職活動をするために都会に出たら、
またまた社会を上から目線で見る様な調子が戻ってしまっており、
いわゆる活動家の方の目線というのがどういうものなのか端的に理解できて
ある意味興味深かったです。




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『ウィキペディア革命』
- 2020/05/26(Tue) -
ピエール・アスリーヌ 他 『ウィキペディア革命』(岩波書店)、読了。

「革命」というタイトルだったので、ウィキペディアがもたらす社会への影響を評価した本かと思ったら、
ウィキペディアに書かれた記事内容の信憑性を問う本だったので、
ちょっとタイトルに問題があるんじゃないの!?(怒)と思ってしまいました。

確かに、Wikipediaには、誤りも書かれていますし、
冗談として改竄する人もいれば、意図をもって改竄する人もいます。
でも、信頼度100%の内容ではないんだと分かって使えば、
手っ取り早く情報を知ることができる非常に便利なツールだと思います。
私は、3人の人に質問する手間を省くツールだと思っているので
信憑性も、知人3人の情報を集めたレベルだと思っています。

それよりも、Wikipediaの信憑性が「低い」というからには、
信憑性が「高い」ものである比較対象があるわけで、本作ではわかりやすく既存の百科事典が
比較の対象とされていますが、百科事典にしたって100%正しいわけじゃないことが
本作の中で語られています。

そして、書籍、新聞といった印字された活字メディアに対して
WEBよりも正確で、信頼ができ、悪意がないと思っている人も、まだまだ居るように思いますが、
「WEB情報は玉石混交」という前提で読んだWEB情報と、
「新聞は正しい」と思い込んで読んだ新聞記事とでは、
前者の方がリスクが少ない気がします。事実を見極めるという態度においては。

なので、Wikipediaの信憑性を批判する場合は、
同じように、他のメディアに対しても同じ土俵に乗せて批評すべきではないでしょうか。

まぁ、本作の発行は2008年なので、
当時としては、こういう評価なのは仕方ないかもしれませんが、
世の中の、WEBのみ信憑性を疑うという態度は、非常に危ないなと思う今日この頃です。




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『少数株主』
- 2020/05/25(Mon) -
牛島信 『少数株主』(幻冬舎文庫)、読了。

非公開株式を主題にしており、弁護士出身作家の面目躍如という感じの企業法務小説です。
ただ、小説としてのバランスが悪いような気がして、小説というよりは
企業法務について小説仕立てで解説しました・・・という程度な印象です。

同族経営で、それなりの規模に育ててきた会社というのは、
創業家のプライドなり、家族関係問題なりが重みをもってしまい、
本来の企業経営の観点とは異なった価値観で判断しなければならないことが増えてくるというのが
具体的な同族企業を舞台にした株式のやり取りを通じて、興味深く覗き見ることができます。

現実社会でも、キンチョーの大日本除虫菊株式会社における
同族株式の評価額が裁判で争われたという事例は、なるほどなぁと思いながら読みました。
企業法務の業務に携わったことがある人間なら、みんな興味深く読めるのではないでしょうか。

ただ、小説としては、主人公と弁護士の会話だけで状況を説明していこうとする進行が
冗長な会話文を招いて、読みづらいです。
さらに、老いらくの恋みたいな要素も絡んできて、69歳と65歳のラブシーンは、正直しんどいです。

そもそも、大金持ちの主人公が、母親の友達の窮状を救ったことで
義憤に駆られて世間一般の少数株主の味方をする社団法人を立ち上げるというのは
あまりにリアリティがないように思いました。
著者の哲学というか、主義主張が、小説の中で爆発しちゃった感じですかね。

過去に読んだ著者の作品に比べると、小説としての魅力に欠けたのが残念です。




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『経済学のセンスを磨く』
- 2020/05/24(Sun) -
大竹文雄 『経済学のセンスを磨く』(日経プレミアシリーズ)、読了。

大竹先生は、新型コロナウイルス対策の諮問委員会に指名されてましたね。
行動経済学という新しい学問分野の人を登用するとは、
安倍首相の人選でしょうか、西村大臣の人選でしょうか・・・・・・何となくイメージで後者のような。
なんとなく華々しいものとか新しいものが好きそうなので(←根拠なしと一緒ですね)。

ま、コロナの話は置いておいて、
本作も、前に読んだ本と同様に、『ヤバい経済学』の臭いがします。

体罰の有効性を誤認してしまうロジックとかは、なるほどなぁと思いました。
行動経済学の本領発揮な分析だと思います。

一方で、消費税増税問題に関しては、
増税するか否かの議論では当然反対意見が出るから、
不足分をどの税の増税で解消するかを議論するようにしたら話が進むと述べています。
そうかなぁ・・・・・。

著者の言うように、消費税増税と所得税増税で、仮に同じ税金を取られるとして場合に、
所得自体が目減りする所得税増税よりも、所得は減らずに使う度に支払額が微増する消費税増税の方が
心理的に受け入れやすいというのは、腑に落ちませんでした。

月1回増税の影響を意識する所得税増税、しかも給与振り込みなら意識すら弱まるかも、
それに対して、毎日毎日、財布を開くたびに意識する消費税増税、
どちらが感情的な反対が現れやすいかというと、消費税のような気がします。

今回のキャッシュレス決済ポイント還元の導入時に
マスコミはこぞって「制度が分かりにくい」「消費者の目をごまかしている」なんて批判してましたが、
そもそも消費税の仕組み自体をちゃんと理解している消費者ってどのぐらいいるんですかね?
同じく、所得税の仕組みも理解している人は少ないような気がします。
消費税の逆進性とか言われてもポカーンとしている国民が多いなら、
結局、官僚も政治家も、国民に説明するのを諦めますわな。
頭良い人間だけで決めるから、あとは皆ちゃんと従えよ・・・・みたいな。

ここ数年、会社を経営するようになり、税金の仕組みをそれなりに勉強した身としては、
どういう哲学で税金を取ろうとしているのかという国家の考え方がわかって、とても面白く感じています。
そして、ちゃんと勉強すれば、優遇措置もきちんと受けられるし、
国が税制面で優遇している以上は、そういう方針に従って会社経営をしていくと
税制以外にも優遇されたり得をしたりして、本当に、勉強しなきゃ損!という世界だと思います。

何でもかんでも反対の声を上げるだけじゃなく、
よりよい制度設計をして、より賢く制度を活用できる国民にならないといけないなと思います。
というわけで、最近の、政府に反対!ありきの世論に残念な気持ちになってしまう読後感でした。




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『ツーアート』
- 2020/05/23(Sat) -
ビートたけし、村上隆 『ツーアート』(光文社知恵の森文庫)、読了。

芸人として社会に大きな影響を与えただけでなく、映画監督や役者としても実績のあるビートたけし氏と
お花、Mr.DOBなど日本の若者ならみんな知っているであろう作品を作る村上隆氏の
往復書簡形式の対談です。

芸術とは?アーティストとは?作品とは?みたいな
抽象的な概念について語り合っており、様々な角度から定義づけをするような試みもしていますが、
興味深い考察だなと思った反面、いわゆる芸術家自身が一生懸命「芸術」の定義づけを
しようとしている姿に、正直「寒いな」と思ってしまったのも事実。

「芸術」と「工芸」の違いって、
結局、日用品として使用できる常識的な範囲に価格が収まっていれば「工芸」で
常識を超える値段が付き始めたら「芸術」なんだと思ってます。
で、値が付かないものは「自己満足」(苦笑)。

最近、美術品盗難に関する本を読んだばかりなので、一層強くそう思ってしまうのかもしれませんが、
日常生活をかけ離れた値段をつける人が出てきたら、そこからが芸術なんじゃないかなと。
それが、本当に作品の価値を思って付けられた値なのか、投機対象としての値段なのかという
本質的な部分の差異を見極めようするのは無駄なことなのじゃないかなと思います。
結局、見る側が判断することですから。

そして、村上隆氏の自己紹介の嫌味っぽさ。
「僕自身は、貧乏な家の出身でした。絵しか描けないから、生業を立てるにはこれしかなくって」
生業を立てるのに絵を描くことしか選択肢がないって、ありえないですよね。
今の時代、宅急便の配達員さんとかになったら、きちんと食べていけて
しかも世の中からとても感謝される仕事ですよね。
配達員になるには、地道に働く素質は必要であっても、特別なスキルは要らないと思いますし。
そういう世の中が人材を求めている職業がたくさんあるのに、「絵しか描けない」とか言ってしまうのは
自己陶酔だと思いますし、芸術家として売れたから言えるセリフだと思います。

芸術家の嫌な面をさらけ出しているという意味では、痛面白い本かも(苦笑)。

前に読んだ村上隆さんの新書では、
素直に、ビジネスとしての芸術を語っていて、とても面白く読みました。
本作でも、小難しいことや小綺麗なことを言わずに、もっと本音の「稼業としての芸術家」を
2人で語ったら面白かっただろうになと思ってしまいました。




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『実と虚のドラマ』
- 2020/05/22(Fri) -
佐高信 『実と虚のドラマ』(日本経済新聞社)、読了。

近所のおっちゃんにもらった本。

著者の左翼的な思想は苦手なのですが、
企業を見る目は、読む価値があると思っています。

本作は、タイトルでは中身が見えないのですが、
経済小説のモデルとなった人物と、小説家の双方にスポットを当てて、
実際の実業の現場と、小説として読者に魅せる側のそれぞれの哲学を紹介しています。

経済小説の、こんな紹介の仕方があるんだなぁと、
企画そのものに感嘆しました。
そして、夕刊フジで連載できるほど、モデルと作家の組み合わせを実現させる編集部の
実行力もすごいなと思います。

正直、経済小説の読書記録としてまとまったものは、城山三郎氏ぐらいしかなく、
あとは、高杉良とか広瀬仁紀とかを、ちょこっと読んだだけで、
かなり読書歴に偏りがあります。

なので、本作においても、城山三郎氏の作品や、そのモデルの話については
非常に前のめりに興味をもって読めるのですが、
それ以外の著作については、そもそも本を読んでいないため、ワクワク感が減殺される感じはありました。

それにしても、モデルのいる企業小説が流行ったのは、昭和までなんですかね?
例えば、最近の流行作家で企業が舞台となると池井戸潤さんとか頭に浮かびますが、
明確なモデルがいるとか、題材となった事件があるとかいう感じではなく、たぶん創作ですよね。

現代は、現実の事件に題材をとった企業小説は流行らないのですかね?
最近の企業小説で、良い本があったら教えてください。




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『なぜあの人はいつも助けてもらえるのか』
- 2020/05/21(Thu) -
藤巻幸大 『なぜあの人はいつも助けてもらえるのか』(PHPビジネス新書)、読了。

なぜか周囲から助けてもらえる人って、居ますよね~。
特別なポジションにいるわけでもないのに、
なぜか周囲がポジティブに助けようと動いてくれる人。

その秘密を知りたくて、読んでみました。

結論から言うと、サブタイトルの「職場で可愛がられる法則」の通り、
要は、可愛げがあるか無いかの違いなのではないかと。
そして、可愛げがある人というのは、何かテクニックにより「可愛げ」を発散させているのではなく、
その人が本質的に持っているキャラクターに拠るところが大きい気がします。

本作でも、著者が伊勢丹時代に実行してきた行動や、
上司や社長が取った行動で、これは凄い!と思ったものを紹介してますが、
基本的に、紹介された行動は、皆さん、戦略的にやっているというよりも、
感覚的にやってることなんじゃないかなと思います。

頭で考えているのではなく、体が反応している感じ。
愛される人って、狙ってないと思うんですよね。
存在そのものが愛されているというか。

もうこれは、三つ子の魂が成立するまでに、
親や家族、周囲の人によって形成された、プリミティブなものなのではないかなと思います。

著者が解説している内容は、確かに、そういう行動が取れたら周囲に愛されるだろうなという
因果関係は理解できますが、では、みんながみんな、その因果関係が理解出来たら
実行に移せるかというと、かなりハードルが高いように思います。

頭ではわかるけど、実行不可能という点で、
観察記録としては興味深いけど、実現性は乏しそうな気がします。




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『夜を乗り越える』
- 2020/05/20(Wed) -
又吉直樹 『夜を乗り越える』(小学館よしもと新書)、読了。

帯にあるように「なぜ本を読むのか?」について書かれた本。

最初の章では、本との出会いのシーンが書かれています。
直接的には、中学校1年生の国語の教科書で読んだ芥川の『トロッコ』に感銘を受けたのだとか。
しかし、その手前の小学生のころの又吉少年の姿の描写に驚きました。

親戚一同集まっての宴会で、父親が踊って笑いを取ったとき、
場の流れで又吉少年も踊らざるを得ない状況に陥り、場を白けさせてはいけないと思い、
恥ずかしさを振り切って思い切って踊ったら爆笑となり、思いもかけぬ満足感に浸っていたら、
陰で父親に「あまり調子に乗るなよ」と注意されたんだとか。
こんな父親がいたら、少年の心は歪んじゃいますよ(苦笑)。

結果、又吉少年は周囲の人間の顔色を窺うようになり、
笑いを取ってグループの中の自分のポジションを確保しようとします。
そのために、友人グループの中心にいられるようになり、逆に頼られることで、
喧嘩の相談を受けたりまですることに。
それに対して、「本当の自分は、こんな笑わせたり喧嘩したりするような人間じゃないのに・・・・」と
自分自身が思い描く姿と現実世界の自分とのギャップがだんだん大きくなっていき、悩みます。

そこで出会ったのが『トロッコ』。
主人公の内面を描いたところを読み、「頭の中でこんなにアレコレ考えてるのは自分だけじゃなかったんだ!」
と発見することで、本の世界にのめり込んでいきます。

この「本との出会い」についてのくだりは、とても共感できるものでした。
本が身近になる瞬間って、自分自身が悩んでいることについて、本の中でズバッと描写されているのを見つけて、
「あ、自分が悩んでいたことと同じようなことを悩んでいる人がいるんだ!
 しかも、その悩みの内容がとても明確に文章化されててすごい!」と感じることだと思います。

私の場合は、有吉玉青さんの『身がわり』でした。
私自身、又吉少年と同じように、周囲の大人の期待に応える自分になろうとして、
勉強したり、本を読んだり、わがままを言わないようにしたり、家業の手伝いをしたりしてましたが、
一方で、「周囲の期待に応えて行動するというのは、自分がないのではないか?」と悩んでました。
大学に入ってから、それは、「主体性」という概念だと学びましたが、
当時は、「他の子はやりたいことやったり、わがまま言ったりするけど、自分にはそれがない」と悩んでました。

で、『身がわり』を読んだら、そこには、親である大作家の有吉佐和子と娘としての自分との葛藤が書かれていて
「本を出版できるような凄い人でも、周囲(=親、祖母)の期待と自分自身のあり方に悩むものなんだ!」と思い、
自分事として読める本というものが世の中にあるんだ!と気づいた瞬間に、読書と自分の関係が
一気に転換した感覚がありました。

冷静に考えれば、有吉玉青さんの置かれている状況と、私が悩んでいたことはズレているのですが、
でも、自分がモヤモヤしたまま言葉にできなかった感覚とか、
あぁ、親に対してそういう見方をすることもできるのか・・・と視界が開けたような感覚があり、
中学生ながらに人生を学んだ本でした。

こういう一冊に、中学生とか高校生とかで出会えると、一気に本の世界にのめり込めますよね。

又吉さんの本との出会いの部分に深く共感できたので、
残りの章を一気に読めてしまいました。

芸人論のところは、新書でこんな頭でっかちなことを書いて大丈夫なのかな?不安になりました。
私の感覚では、そういう話は、『Quick JAPAN』みたいな、
コアなファンを対象にした本で披露することなのかなと思っているので。
ま、でも、そのとんがった芸人論も、興味深く読ませてもらいました。




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