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『恋する歌音』
- 2020/03/31(Tue) -
佐藤真由美 『恋する歌音』(集英社文庫)、読了。

歌人さんによる短歌解説のエッセイです。

万葉集の「よみ人しらず」の歌から、現代を生きる歌人さんの歌まで
幅広い時代の短歌が収められています。
私のような素人には、短歌の世界を知りたいなと思っても
自分の力で読み解くのは「こんな解釈で良いのかな?」と不安が募って爽快感がないので
こうやって簡単な解説を付けてくれるとすごくありがたいです。

そして、本作の特徴は、解説というよりもエッセイに使い文章が添えられていること。
短歌の解釈そのものを知りたい人にとっては、「お前の話はどうでもいいわ!」となっちゃうかもしれません。

私としては、むしろ、短歌と個人の生活を結び付けてエッセイ風に解説してくれるので
ああ、短歌ってこういう生活シーンの中で生まれてくるのか・・・・とイメージしやすかったです。
なんだか、短歌を詠むという行為が、ものすごく高尚なことのように感じてしまっているので、
もっと生活レベルの日常的な行為なんだよということが伝わってきました。

紹介された短歌の読み手さんは、俵万智さん枡野浩一さん穂村弘さんぐらいしか知らず、
もちろん教科書で学んだ昔の歌人もいましたが、短歌自体は初見のものがほとんどで、
初心者にとって良い入門本でした。

ところで、女性歌人さんの歌集とかエッセイとかを読むと、
「こんな赤裸々に恋愛体験を語っても良いの?しかも不倫だし・・・・」という風に心配してしまいます。
「不倫なんてダメだ!」と非難しているのではなく、
家族の人は妻や母親がこんなことを暴露してて不快に思わないのだろうかと
家族の中の波風が気になってしまいます。
まぁ、そんな風聞を超えて表現したいと思うのが表現者として生きることなのでしょうけれど。




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『一橋ビジネスレビュー2019夏』
- 2020/03/30(Mon) -
『一橋ビジネスレビュー2019夏』

特集が終わるまであとちょっとというところで、ずーっと放置してしまってた巻。
もう記憶が定かではないのですが、たぶん、そこで止まってしまったのは
あんまり興味がわかなかったからではないかと推測(苦笑)。

アクティブラーニングとかの教育指導法の話よりも、
将来の日本を背負う子供たちに対して、どんな日本人像を想定してどんな教育を施していくのか
というもっと大局的な視野での論を読みたかったので、ニーズ違いだったのかなと思います。
(いや、記憶があやふやなので、大局観も論じられてたらごめんなさい)

で、後半というか、通常の連載ですが、
「ブランドとは何か」という解説が、非常に平易な文章で、かみ砕いて説明されていて
経営論文世界の人からすると「何をいまさらこんな初級の話を!?」と思われそうな内容ですが
一般ビジネス社会で右往左往している私からすると、頭の整理に非常に分かりやすかったです。

そして京大EVベンチャーのGLM社の話。
自動車産業という巨大で堅固なビジネス世界に、他分野から飛び込んだベンチャー企業の話が
非常に興味深かったです。
特に、商業生産に乗せるまでの技術的な困難がなぜ解決できないのかとか、
協力会社がなぜ見つからないのかという原因とその解決プロセスのくだりが
「なるほど、そういうところに壁があるのか」と、イメージしやすく、面白かったです。
自分が行っている事業は自動車産業とは関わりがまずないですが、
でも、既存の産業構造と新規参入者の衝突点とその克服というプロセスについて
非常に勉強になりました。

最後に、出口治明氏と米倉先生との対談。
出口さんは三重県出身なので、注目している経営者さんなのですが、
ブックオフに本があんまり出回っていないので、まだきちんと読めていない方です。
今回の対談で、言葉は柔らかいけど、指摘している内容は非常に辛辣で、
それに対する自分の改革責任の表明や、実際の行動、そして実績を読んでいると
やっぱり凄い経営者だなと思います。

出口さんの本は、これからきちんと追っていきたいと思います。




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『大誘拐』
- 2020/03/29(Sun) -
天藤真 『大誘拐』(創元推理文庫)、読了。

何かの書評で見つけて面白そうだったので買ってきたものの
ボリュームが結構あるので積読になってました。

やっと手を付けたら、誘拐が始まるまでに結構ページを要して、
「いつ始まるんだよ・・・・・」とちょっとイライラしてしまいましたが、
いざ誘拐!となったらスピーディに展開していって一気読みでした。

紀伊半島の山林地主である柳川家の女当主とし。
彼女を誘拐して金をせしめようと考えた犯人グループ3人は、
いざ誘拐して身代金の額を当主に漏らしたら、「そんなはした金は認めない!」と突っぱねられ、
本人が言い出した身代金の額はなんと100億円。
自分にはそれだけの価値があると言い切り、この断言を機に、犯人と人質の立ち場が逆転し、
次第に人質自身が誘拐事件の計画を立案し、犯人たちに実行させていきます。

由緒ある家柄の当主とはいえ、高齢のおばあちゃんに言いなりになってしまう犯人たちは
3人とも根が善人です。
犯罪者になろうとしてなったというよりは、やむを得ず犯罪に手を染めてしまったという描き方です。
つまりは、悪人として非常に半端な人材なのですが、
その分、おばあちゃんの言いなりになってしまうという役回りでも
なんとなく読んでいるこちらも受け入れしまうようなホノボノタイプです。

そして、他に登場してくる人物たちも、
女当主への過去の恩が積み重なっていたりして、盲目的に信奉しているので
どうにも判断力が歪んだり、変な決断を受け入れたりしています。
客観的に見るとありえないと思うのですが、
女当主の力強さと、紀伊半島の山の中という神聖さと闇が混じり合った特殊な環境とが
ミックスされて、この世界観が許せてしまうんですよね~。
結局、登場人物みんな善人というところが、ポイントなんだろうなと思います。

最後、どうやって100億円を手に入れるのだろうかという点については、
携帯電話やSNSがない時代だから成立した犯行かなという気がします。
今の時代なら、一般人がみんなドローンを飛ばして捜索しそうですし。

まあでも、40年も前に、こんなにポップな誘拐事件を描いたのは凄いなと思います。
古さを感じさせません。

犯人グループ3人のその後も、爽やかな終わり方で、読後感が良いです。




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『米国さらりーまん事情』
- 2020/03/28(Sat) -
松浦秀明 『米国さらりーまん事情』(東洋経済新報社)、読了。

近所のおじさんにもらった本。
これまた、いつの時代の本なんだ!?って感じで、しばらく積読でしたが、
読んでみたらかなり面白くて一気読みでした。

小学校教員だったのに、そこから米国留学して、
学生ビザで渡航しているのにルール違反して仕事をし、
大学卒業後はエンジニアとして航空産業で働くという、
なんともガッツとエネルギーの塊のような人です。

で、本作のポイントは、そういうユニークな仕事人生を送った自分の話ではなく、
そんな自分の目で見たアメリカ人社会の観察記であることです。

今から40年も前の本なので、描かれているアメリカ人社会の話もきっと古いと思います。
でも、根本的な考え方、アメリカ人の仕事観や、人生哲学は、普遍なのではないかなと思います。
アメリカの産業別労働組合とか、たしか中学の社会(地理?公民?)の授業で言葉は習った気がしますが
実際にどういう勤労体系なのか、本作でようやく理解できました。
産業別労働組合だから、企業の枠を超えて労働者が連携しており、
A社の労働者がストを起こすと、同じ産業に属すB社の労働者も一緒にストに突入するという仕組みに、
「あぁ、こりゃ自分の属する企業に愛社精神なんて育たないわな」と納得。
特定の企業に属しているのではなく、「こういう作業を要求される職に就いている」という感覚なんでしょうね。

税金の仕組みとか、医療保険の仕組みとか、雇用契約の仕組みとか、
著者ならではの日本人的感覚で驚いた部分を中心に解説してくれるので分かりやすいです。
そして、日米の違いの「意味」を重点的に解説してくれるので、
そこに国民性の違いというか、国家観の違いとか、人生哲学の違いとかが象徴的に出ていて
非常に面白い比較文化論になっていました。

こりゃ、拾い物の良い本でした。




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『地図から経済を読むと面白い』
- 2020/03/27(Fri) -
現代ビジネス研究班 『地図から経済を読むと面白い』(KAWADE夢文庫)、読了。

タイトルから、地政学的なネタを扱ってるのかな?と期待したのですが、
内容は、47都道府県のランキングだったり、県民性の話だったり、
いわゆるこの手のネタ本レベルでした。

勝手に期待したのが悪いのですが(苦笑)。

「1人当たりの旅行費用ランキング」では三重県が1位だそうで、これは知りませんでした。
まぁ、確かに、周りのおばちゃんとか見てると「あの人に土産買わな、この人にも買わな」というだけでなく
「足らんとあかんから多めに買ってこ」「自分にも買ってこ、ついでに娘にも」と
ものすごい量の土産を買う人が、結構いて驚きます。

もちろん、土産をもらったらお返しをするので、
もらった側も旅行に行ったら大量の土産を買ってきます。
この繰り返し。
まぁ、景気の良い話ではありますね。




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『般若心経に学ぶ人生』
- 2020/03/26(Thu) -
ひろさちや 『般若心経に学ぶ人生』(すずき出版)、読了。

久々のひろさちや氏。

タイトル通り、般若心経について、
経典の内容や用語、そもそもの釈迦の教え、その教えに基づき日々の暮らしを送ること、
これらの基本的な内容について分かりやすく解説した本でした。

初心者にはやさしい本ですが、
あんまり深みがなく総花的です。

仏教に興味を持って最初に読むには、良い本かなと思います。




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『大阪の謎』
- 2020/03/25(Wed) -
谷川彰英 『大阪の謎』(JIPPIコンパクト)、読了。

お暇つぶしに買ってきたのですが、意外と面白く、ちゃんと読んでしまいました。

大阪って、三重県も関西弁に近い言葉をしゃべるので
なんとなく親近感はあるのですが、でも、鈴鹿山脈に遮られて、
多分、奈良の人が感じてる親近感よりは距離感があるように思っています。
独特の大阪のノリって、のんびり屋の三重県人には付いていけないところもありますし。

私は大学から東京の方に行ってしまったので、
物理的に大阪に縁がなく、なんとなくテレビで見る大阪のイメージしかありませんでした。

ここ1~2年、仕事で大阪に行くようになり、特に車に乗っていくことが多いので、
道路標識とかで「喜連瓜破って凄い地名だな!」とか、「広い道が一方通行って効率的なのか?」とか
いろいろ驚きや疑問を持つようになりました。

それら初心者の関心事について、結構この本で回答が見つかって、
「あぁ、なるほど・・・」と読んでいて心が落ち着いていく感覚がありました。
大阪府民や、大阪に縁が濃い人にとっては当たり前の話ばかりなのかもしれませんが、
大阪との縁ができ始めた私にとっては、興味深い地理ガイドブックでした。




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『参謀の器量学』
- 2020/03/24(Tue) -
奈良本辰也 『参謀の器量学』(廣済堂)、読了。

地元の図書館が蔵書を処分するというのでもらってきた本。

戦国時代以降の歴史の転換期において大きな役目を果たした「参謀」に当たる人物
10人にスポットを当てた本。
歴史の教科書に出てくるような有名な人物から、初めて聞いた名前まで
バラエティに富んだ人選で興味深く読みました。

また、著者名も知らない人でしたが、
熱のこもった文章で、面白く読み通すことができました。

個人的に気になったのは「恩田木工」という人物。
松代藩の財政改革に全身全霊で当たった人物ということですが、
実は、その改革はほとんど上手くいかなかったという実績にも関わらず、
『日暮硯』という書物で劇的に描かれたことで、なぜかヒーロー扱い。
「歴史」が持つ主観性の面白さですよね。





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『わしらは怪しい雑魚釣り隊 サバダバサバダバ篇』
- 2020/03/23(Mon) -
椎名誠 『わしらは怪しい雑魚釣り隊 サバダバサバダバ篇』(新潮文庫)、読了。

雑魚釣り隊の第2弾。

雑誌『つり丸』に連載されたものをまとめています。
誌面の関係か分量がかなりスッキリしていて、サクサク読めます。
この手頃な感じが、雑魚釣り隊やっているクダラナイ釣り行とマッチして
バカしかやってないし、釣りにもそれほど真面目じゃないのに、好感をもって読めます。

みなさん、忙しい日々の中で毎月キャンプに出掛けるわけですから
ものすごい情熱です。
「今月は忙しいから無理!」というわけで不参加のメンバーもその時々でいますが、
連載にしなければいけないシーナさんは、交通事故にでも遭わない限り参加必須なわけで
(実際に事故で1回欠席してますが・・・・・)
こりゃものすごいプレッシャーですよね。
たぶん、このメンバーの中で一番多忙を極めているはずなのに。

だから、「雑魚釣り隊だ!」と言いながら、
「そろそろ釣りには飽きたからご飯作りに行ってくる」と言って
場を離れる自由さを持ち合わせている、このグダグダさが大事なんだろうなと思います。

千葉や湘南や時には羽田空港のそばでキャンプをし、
時には八丈島や新島、小笠原までにも出かけ、
1泊するだけのものから気合の入った連泊キャンプまで
いろいろ覗けるのも楽しいです。
島旅は自分も大好きですが、でも、普段の身近なキャンプの楽しさがあった上での
島旅のエンタメ感かなとも思います。
ダイビングの経験からすると。
身近なキャンプも、すぐ行けてさっと帰れて、きちんと楽しいというのが
大事な要素かなと思います。

個人的には、小笠原旅行記が前編だけでブツっと終わってしまったのが残念。
母島は私も行ったことがないので、読んでみたかったです。




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『玉置和郎の遺言』
- 2020/03/22(Sun) -
樋口恒雄 『玉置和郎の遺言』(飛鳥新社)、読了。

近所のおじさんにもらった本。
「玉置和郎って誰だろう???」という感じでしたが、自民党の国会議員さんでした。
地元が和歌山ということで、隣県の話だからおじさんは買ったのかな?というぐらい
接点が良く分からない本でした。

最後は総務庁長官をやったそうですが、全く知識なし。
亡くなったのが昭和62年ということで、私は8歳なので、まぁ記憶がないのは仕方ないとして
一般常識としての過去の政治家の名前という中に、この人の名前は認知していません。
というわけで、その業績は本作を読みながら知っていくことになりました。

第1章は、ガンに冒されながらも総務庁長官の任を受け、
人生最後の数か月を、中曽根総理の元で、いかに情熱的に活動したかが描かれており
「いくら秘書の贔屓目としても、この調子で、『うちの親分は凄いんだ!』が続いたら辛いな」と
思ってしまうほど、ヨイショ感が漂ってました。

が、第2章、肝心の仕事ぶりの紹介が始まり、
「この政治家は凄いな・・・・」と私が感じたのは、総務庁長官としての仕事ぶりよりも、
日韓関係について問題発言をした藤尾文部大臣の進退をどうするかという問題に直面し、
落としどころを見つけ、そこまでの段取りをつけ、関係者間の調整をしきった姿でした。
「これぞ自民党!」という感じの暗躍ぶりで、陰の権力者ですわ。

あと、藤尾文部大臣にしても、「韓国併合は合意の上、韓国側にも責任がある」という発言について
批判を受けても撤回せず、「自分の歴史認識はこの通りだから、それが文部大臣として問題だと
いうのであれば罷免しろ!」として、頑として辞任要求を受け入れず、
さらには、中曽根総理に対して公的な場で改めて自分の考えを述べ、その結果罷免されるという
なんとも肝の据わった政治家ですね。
まぁ、大臣の発言としては(しかも文部大臣だし・・・・)問題だと思いますけど、
簡単に発言を撤回する政治家が多い現代から見ると、変に羨ましかったりしますわ。

この事件以外にも、KDD事件とか、ロッキード・ニセ電話事件とかが紹介されていますが、
自殺者が残したメモを持っているかもと思わせたり、
ニセ電話を録音した音源を入手したり、
情報の力で党内だけでなく政治の場全体での権力を握る玉置和郎という政治家が
非常に興味深かったです。

総務庁長官としての業績も紹介されており、農協改革とか、外務省改革とか出てきますが、
総務庁長官として「ここにメスを入れるぞ!」という大号令の部分を描くのにとどまった感じで
政治家としての裏の権力の握り方の生臭い詳細描写に比べると、
政治の表舞台の話はあっさり少なめでした。
まぁ、病気のせいで半年しか長官職を務められなかったという事情はあるにしろ、
特に農協改革を描いた省に関しては、その後の改革がどうなったのか全く触れずに
さっさと話を閉じてしまっているので、5行でいいから結果を書いてよ!と思ってしまいました。

そのあたりを考えると、政治評論家ではなく、
政治家秘書が書いた本だなというのが納得できます。
オヤジのことが全て!という感じです。




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