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『カーニヴァル化する社会』
- 2019/11/30(Sat) -
鈴木謙介 『カーニヴァル化する社会』(講談社現代新書)、通読。

なんとなくタイトルに惹かれて買ってきました。

で、「はじめに」で、ネット上での「祭り」「炎上」について触れていたので
「タイトルの『カーニヴァル』とは、仮想世界で異常な盛り上がりをみせる状態か!」と解釈したのですが
早とちりでした(苦笑)。

本文では、少子高齢化における労働の構造、監視社会化、携帯電話社会という
3つの章で成立していますが、3つが一つに繋がっていくのかというとそうでもなく
3つの独立した文章を読んだ感じでした。

「はじめに」で、ネット上の「祭り」の考察だと思い込んでいたので
第1章で若者と労働についての話が始まって、盛り上がってた気持ちが一気に醒めてしまいました。

この視点での社会問題の考察も大事なことだとはわかっていますが、
そういう読書の気分じゃなかった・・・・・ということです。

第2章の監視化社会は、当然、フーコーが登場し、
フーコー好きの私としては興味をもって読みましたが、
しかし、本作で特別な情報や視点を得られたかというとそうでもなく、
一般的な話で終わっていった印象です。

最初に期待値が上がってしまっただけに、残念でした。




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『先見後顧』
- 2019/11/29(Fri) -
堺屋太一 『先見後顧』(毎日新聞社)、読了。

近所のおっちゃんがくれた本。
30年も前の本なのに、内容に古さを感じません。

もちろん、時事的な内容は時代を感じますが、
そこから導き出される社会の眺め方は、今の時代にも十分に通用します。

吉田茂も、池田勇人も、佐藤栄作も、在任期間中は不人気だったけど
辞めた後に評価が高くなったという指摘は、
安倍さんもそうなるのかな?と思えてしまうほど。

不人気の内容が、政策そのものへの不満ではなく
「桜を見る会」の運営とかのクレームですからねぇ・・・・。
こういうクダラナイ議論は数か月もすれば忘れられていき、
アベノミクスの実績とかだけが残っていくのでしょうね。
野党も、久兵衛とかどうでもいいこと言ってないで、
公職選挙法とか政治資金規正法とかの観点で本質的な部分を詰めたらいいのに、
ブーメランを懸念してるのでしょうかね。

そんなことはどうでもよくて。

時代を感じずに読めるというのは、普遍的な本質を書いているからでしょうね。
日本式の教育の仕組みについても、戦後の教育についてだけでなく、
江戸時代からの日本の教育の在り方を、「型にはめる」方法だとし、
型を作ることで誰もが教師になれるマニュアル化なのだと見抜いたことで
あぁ、だから江戸時代の教育水準が世界的にトップレベルだったのかとも納得でき、
先進国になった今は、逆に応用力の欠如が足かせになってるのかと分かりました。

一度、著者の手による日本の歴史の解説書を読んでみたいなと思いました。




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『日と米』
- 2019/11/28(Thu) -
爆笑問題 『日と米』(幻冬舎文庫)、読了。

爆笑問題の本って初めて読んだのですが、
これはシリーズ物のようですね。

2人の掛け合いのような形で、主に田中サンが解説をし、太田サンが混ぜっ返すという
まぁ、TVのイメージ通りの構成で、漫才師の本としては真っ当な作りなのかもしれませんが、
全編通して瞬間的なボケの連続だと飽きてしまいます。
もっと物語性のある笑いを作ってほしいと思ってしまうのですが、
それはウンナン派の欲目かな。

で、肝心の日米関係についての解説ですが、咸臨丸からいきなり日米野球に飛んでしまい、
おいおい、幕末から一気に昭和に行っちゃうのか!と、
その思い切った展開にびっくり。
まあ、確かに、明治~大正にかけては、対ヨーロッパの外交がメインだったのかもしれませんが。
爆笑問題的に語りたいことがなかったのかな?

というか、この手の作品って、どうやって文章を作ってるのでしょうか?
2人の語りの文字おこしなのでしょうか?
それとも太田サンが漫才ネタを書くみたいに書いてるのでしょうか?
謎。




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『史上最強の大臣』
- 2019/11/27(Wed) -
室積光 『史上最強の大臣』(小学館文庫)、読了。

シリーズ第2弾。
第1弾は麻生内閣を皮肉ったものでしたが、
今回は、民主党ならぬ民権党の鷹山内閣から話はスタート。
政権交代したものの、「本物の内閣」と認識されてしまった二条内閣のせいで
民権党への国民の期待度は低く、何をやっても信頼されません。

そんな国政状態の中で、今回は、大阪府知事の町本知事が、二条内閣に
大阪府の教育立て直しを依頼し、地方行政への手助けなら・・・・と
二条内閣の新門文科大臣が教育改革に取り組むことに。
人間をつくる教育を始めるために、異端児を教師に採用していきます。

本作では、この教育改革における著者の教育論の展開と、
現実の民主党政権の不甲斐なさに対する毒の効いた批判との2つが軸になっています。
それぞれが面白いのですが、それぞれ中途半端なところもあり、
面白い提案だけれども、ややリアリティに欠けるかなぁという感じも。
ただ、その心意気や良し!っていう印象です。

教育改革は、まぁ、本作で描かれるほど簡単に改善はしていかないでしょうが、
こういう気概を持った教師や教育行政の関係者が増えることを切に願います。
政治家は、選挙で落選したり、地方から国政に鞍替えしたりで
その政策が途中で途切れてしまうのが残念ですよね。
町本知事のモデルとなった某氏も、いろんな改革案は面白いと思って注目してたのですが、
結局、政治家ではなくなっちゃいましたしね。
教育のような時間が書かる案件は、特に成功に導くのが難しいですね。

一方の、現実社会の政治批判、マスコミ批判については、
「その通り!」と思うところが多く、小説としては面白いけど、日本の政治の現状を思うと
悲しいことですね。
管良内人(くだらないと)首相を揶揄するくだりとか爆笑。
市民政治家あがりは「市民の意見は正義」として動かなきゃいけないから手足を縛られるとか
本質突いた指摘も多く、勉強になりました。

2013年発行の作品で、マスコミについても「印象操作」というような今のワードで既に斬っていて
なかなかに時代を先取りしているとも思いました。

個人的には、第1弾より、地に足ついたところがあって
第2弾の本作の方が面白かったです。

室積作品には、今後もぜひ、日本の政治シーンについて
どんどんネタにしてほしいものです。




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『決断できる人は2択で考える』
- 2019/11/26(Tue) -
石黒謙吾 『決断できる人は2択で考える』(星海社新書)、通読。

ブックオフで50円ワゴンに入っていたので買ってきましたが、
イマイチでした。

タイトルの通りの内容なのですが、
タイトル以上の中身はありませんでした。

著者が好きだという、野球の話やアメフトの話になぞらえて
タイトルの内容を説明しようとしますが、
タイトルの表現で理解できる内容を、全員が持ち合わせているわけではない
スポーツの知識で説明しようとするので、なんだか分かりにくいです。

むしろ、著者が雑誌の編集者をやっていた時に、
グラビアページのトップの写真を、200枚以上もあるカットの中から
効率的に選び出すときの手順(判断していく順番)を紹介していたのですが、
そちらの方が具体的で非常に分かりやすく、また編集者のお仕事の裏話的な要素もあり
興味が持てました。

自分の編集者としてのノウハウ紹介みたいな本にしたら
もっと面白くなっていたのではないかと思うと、残念です。




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『とにかくうちに帰ります』
- 2019/11/25(Mon) -
津村記久子 『とにかくうちに帰ります』(新潮文庫)、読了。

津村作品は、共感できるものできないものにはっきり二分されてしまうのですが、
本作は残念ながら共感できない系でした。

というか、冒頭の「職場の作法」という連作短編が、
何を描写したかったのか、よく分かりませんでした。
この手の職場モノは、「そうそう、それあるよね~」という共感性が大事だと思うのですが、
本作では、どこに焦点を置いているのか分かりませんでした。
山場に欠ける話が淡々と続き、ぷつっと終わる感じ。

なんだか世界観が良くわからないまま読み流していくと、
連作短編の枠から外れつつも、登場人物たちは同じの別の短編が始まり、
こちらには興味が持てました。
ひょんなことからアルゼンチンのフィギュアスケート選手(成績微妙)を応援することになり、
職場の先輩で、その人が応援した選手やチームが成績がた落ちや大怪我を巻き起こすという
疫病神的な人に見つからないように祈っているのに・・・・という
仕事とは全く関係のない職場の人間関係を描いた作品でした。

別に何か重大なテーマ性があるわけではなく、
「長野五輪でキャンデロロって選手いたよなー」という変な記憶が蘇ってきたり、
まあ、どうでもよい日常を描いた作品で、気軽に読めました。

そして最後の表題作は、埋め立て地に職場がある主人公たちは、
ゲリラ豪雨以上の短期集中豪雨に見舞われ、交通手段が寸断される前に埋め立て地から脱出しようと
職場全員が早退をしますが、決断力のなさというか、判断力のなさというか、
すんでのところでバスに乗り遅れ、その後のバスは混乱で到着せず、
歩いて埋め立て地を脱出することに・・・・。

道すがら知り合ったオジサンや小学生と一緒になって、
まるでちょっとした冒険譚ですが、まぁ、判断力のない人はどこまでいってもツイてないというか
そんな星の巡りの悪さを描いた作品。

お人よしなのかもしれませんが、そういう人だからこそ触れ合える
人の温かさみたいなものがあるのかな。
豪雨の中での人間のささやかな助け合いを描いた作品でした。




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『静かな炎天』
- 2019/11/24(Sun) -
若竹七海 『静かな炎天』(文春文庫)、読了。

久々の若竹作品。
お気楽に読めるかなと手に取ったのですが、
シリーズ物の第5作だったようで、順番無視です。
ただ、1作目を飛ばして既に2作目を読んでしまっているので、今更順番を気にしてもアレですが。

というわけで、女探偵・葉村晶シリーズです。
古本屋でバイトしながら副業で探偵稼業の40代独身女って、
一体どんなキャラクター設定なんだ!?って感じですが、
まぁ本人がサバサバしてて、そんな身の所在を気にしてなさそうなので
読者がどうこう心配することではないのですが。

さて、コージー・ミステリ風な軽いコメディタッチのものではありまずが、
登場してくる事件は殺人や背乗りなど、なかなかヘビーなものが多いです。
女探偵だし、これはハードボイルドのジャンルに入るのかな?

ただ、そう考えるには、結構、都合よく真相が向こうからやってきてくれたり
幸運にも都合よくお話が展開していったりで、
ハードボイルドっぽい硬派さが足りず、なんだか座りが悪いです。

もうちょっと日常の謎的なレベルに抑えたら、
こじんまりとまとまって読みやすいようにも思えますが、
それだとありきたり過ぎるのでしょうかね。

あと、巻末の著者自身による用語解説で、
コージー・ミステリについて、「最近では、食べ物やペットの登場する楽しげな舞台に
謎や殺人のちょい足しミステリを、主にコージー・ミステリと呼ぶようです」とあって、
「えっ!コージー・ミステリって、そういう定義なの??」と驚いてしまいました。
これってホント?




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『弾言』
- 2019/11/23(Sat) -
小飼弾 『弾言』(アスペクト)、読了。

著者の本は初めてでしたが、
もっと突っ込んだ本音の内容を期待したのに、
結構、一般的なビジネスの常識や心構えの話だったので、
あんまり刺さってきませんでした。

改めて思ったのは、小飼弾さんって何者?ってこと。

プロフィールをみるとオン・ザ・エッジの役員だったようですが、
結局は、開発者という立ち位置の方なのかなと。
経営者目線での発言を求めてしまうと、それはニーズ違いなのかなと思ってしまいました。

もっと尖った発言をする人だと思ってたのですが、
意外と常識人でした。




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『ひらいて』
- 2019/11/22(Fri) -
綿矢りさ 『ひらいて』(新潮文庫)、読了。

私の「読みたい本リスト」にあったので、ブックオフで見つけて買ってきたのですが、
うーん、全然刺さらなかったです。
何かの書評で高評価されていたのを読んで、「読みたい本リスト」に入れたはずなのですが。

モテると自覚している女子高生の愛が好きなのは、地味な男子。
しかし、その地味な男子の彼女は、学年内で触れないように距離を置かれている病気持ちの女の子。
愛の感情が暴走して、この3人の人間関係を濃密に動かしていくというお話なのですが、
私には、愛の暴走は暴走でしかなく、共感どころか理解できませんでした。

著者の描く洞察力の鋭い女の子は、私の好みのキャラクターなのですが、
本作の主人公・愛は、洞察力が鋭いのに、行動が暴走してて、どうにも共感できず。
この洞察力があるのに、先々の展開が読めずに暴走してしまうのは、
自分への過剰な自信があるからでしょうかね。
綿矢作品では、主人公に共感できなかったら、その作品はアウトです。

あと、本作にはいろんな要素がキャラクター設定の中に詰め込まれているのですが、
それがどれも消化不良な感じでモヤモヤしました。
主人公・愛の聖書を読むという習慣、
地味な男子の家庭における父親との関係、
糖尿病を持病に抱え毎食事前にインシュリン注射をする女の子、
どれも単発的なシーンで人目を引くために使われただけで、
あまり物語全体に効果的な寄与をしていかなったように感じました。

なんとも座りの悪い小説でした。




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『選挙トトカルチョ』
- 2019/11/21(Thu) -
佐野洋 『選挙トトカルチョ』(双葉文庫)、読了。

タイトルが面白そうだなと思って買ってきましたが、
どの短編も現実味の無いフワフワした人物ばかりが登場してきて
話に入っていけませんでした。

謎の内容が、殺人事件そのものではなく、
殺人事件の目撃者が口にした嘘の理由とか、
占いが当たった理由とか、カラスの言葉が分かるとか、
捻ったものが多かったのは興味を引きましたが、
コトの真相についていろいろ捻り過ぎで、
「そんな展開あるかいな」と思ってしまうものも多く、オチで醒めてしまいました。

散歩途中に知り合った父親のような年齢の愛犬家に対して、
犬の名前「タロー」を取って、「タローのパパ」と呼ぶような関係もなんだかなぁですし、
それを若い女性の方が冗談交じりに言うならともかく、
オジサン側が自分のことを「タローのパパ」と言うのは、ちょっと気持ち悪かったです。

表題作の「選挙トトカルチョ」は、選挙でトップ当選をした理由が
こういう作戦もあるのかという点で面白かったですが、
やっぱりリアリティに関しては疑問でした。




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