『カーニヴァル化する社会』
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- 2019/11/30(Sat) -
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鈴木謙介 『カーニヴァル化する社会』(講談社現代新書)、通読。
なんとなくタイトルに惹かれて買ってきました。 で、「はじめに」で、ネット上での「祭り」「炎上」について触れていたので 「タイトルの『カーニヴァル』とは、仮想世界で異常な盛り上がりをみせる状態か!」と解釈したのですが 早とちりでした(苦笑)。 本文では、少子高齢化における労働の構造、監視社会化、携帯電話社会という 3つの章で成立していますが、3つが一つに繋がっていくのかというとそうでもなく 3つの独立した文章を読んだ感じでした。 「はじめに」で、ネット上の「祭り」の考察だと思い込んでいたので 第1章で若者と労働についての話が始まって、盛り上がってた気持ちが一気に醒めてしまいました。 この視点での社会問題の考察も大事なことだとはわかっていますが、 そういう読書の気分じゃなかった・・・・・ということです。 第2章の監視化社会は、当然、フーコーが登場し、 フーコー好きの私としては興味をもって読みましたが、 しかし、本作で特別な情報や視点を得られたかというとそうでもなく、 一般的な話で終わっていった印象です。 最初に期待値が上がってしまっただけに、残念でした。 ![]() |
『史上最強の大臣』
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- 2019/11/27(Wed) -
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室積光 『史上最強の大臣』(小学館文庫)、読了。
シリーズ第2弾。 第1弾は麻生内閣を皮肉ったものでしたが、 今回は、民主党ならぬ民権党の鷹山内閣から話はスタート。 政権交代したものの、「本物の内閣」と認識されてしまった二条内閣のせいで 民権党への国民の期待度は低く、何をやっても信頼されません。 そんな国政状態の中で、今回は、大阪府知事の町本知事が、二条内閣に 大阪府の教育立て直しを依頼し、地方行政への手助けなら・・・・と 二条内閣の新門文科大臣が教育改革に取り組むことに。 人間をつくる教育を始めるために、異端児を教師に採用していきます。 本作では、この教育改革における著者の教育論の展開と、 現実の民主党政権の不甲斐なさに対する毒の効いた批判との2つが軸になっています。 それぞれが面白いのですが、それぞれ中途半端なところもあり、 面白い提案だけれども、ややリアリティに欠けるかなぁという感じも。 ただ、その心意気や良し!っていう印象です。 教育改革は、まぁ、本作で描かれるほど簡単に改善はしていかないでしょうが、 こういう気概を持った教師や教育行政の関係者が増えることを切に願います。 政治家は、選挙で落選したり、地方から国政に鞍替えしたりで その政策が途中で途切れてしまうのが残念ですよね。 町本知事のモデルとなった某氏も、いろんな改革案は面白いと思って注目してたのですが、 結局、政治家ではなくなっちゃいましたしね。 教育のような時間が書かる案件は、特に成功に導くのが難しいですね。 一方の、現実社会の政治批判、マスコミ批判については、 「その通り!」と思うところが多く、小説としては面白いけど、日本の政治の現状を思うと 悲しいことですね。 管良内人(くだらないと)首相を揶揄するくだりとか爆笑。 市民政治家あがりは「市民の意見は正義」として動かなきゃいけないから手足を縛られるとか 本質突いた指摘も多く、勉強になりました。 2013年発行の作品で、マスコミについても「印象操作」というような今のワードで既に斬っていて なかなかに時代を先取りしているとも思いました。 個人的には、第1弾より、地に足ついたところがあって 第2弾の本作の方が面白かったです。 室積作品には、今後もぜひ、日本の政治シーンについて どんどんネタにしてほしいものです。 ![]() |
『とにかくうちに帰ります』
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- 2019/11/25(Mon) -
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津村記久子 『とにかくうちに帰ります』(新潮文庫)、読了。
津村作品は、共感できるものとできないものにはっきり二分されてしまうのですが、 本作は残念ながら共感できない系でした。 というか、冒頭の「職場の作法」という連作短編が、 何を描写したかったのか、よく分かりませんでした。 この手の職場モノは、「そうそう、それあるよね~」という共感性が大事だと思うのですが、 本作では、どこに焦点を置いているのか分かりませんでした。 山場に欠ける話が淡々と続き、ぷつっと終わる感じ。 なんだか世界観が良くわからないまま読み流していくと、 連作短編の枠から外れつつも、登場人物たちは同じの別の短編が始まり、 こちらには興味が持てました。 ひょんなことからアルゼンチンのフィギュアスケート選手(成績微妙)を応援することになり、 職場の先輩で、その人が応援した選手やチームが成績がた落ちや大怪我を巻き起こすという 疫病神的な人に見つからないように祈っているのに・・・・という 仕事とは全く関係のない職場の人間関係を描いた作品でした。 別に何か重大なテーマ性があるわけではなく、 「長野五輪でキャンデロロって選手いたよなー」という変な記憶が蘇ってきたり、 まあ、どうでもよい日常を描いた作品で、気軽に読めました。 そして最後の表題作は、埋め立て地に職場がある主人公たちは、 ゲリラ豪雨以上の短期集中豪雨に見舞われ、交通手段が寸断される前に埋め立て地から脱出しようと 職場全員が早退をしますが、決断力のなさというか、判断力のなさというか、 すんでのところでバスに乗り遅れ、その後のバスは混乱で到着せず、 歩いて埋め立て地を脱出することに・・・・。 道すがら知り合ったオジサンや小学生と一緒になって、 まるでちょっとした冒険譚ですが、まぁ、判断力のない人はどこまでいってもツイてないというか そんな星の巡りの悪さを描いた作品。 お人よしなのかもしれませんが、そういう人だからこそ触れ合える 人の温かさみたいなものがあるのかな。 豪雨の中での人間のささやかな助け合いを描いた作品でした。 ![]() |
『静かな炎天』
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- 2019/11/24(Sun) -
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若竹七海 『静かな炎天』(文春文庫)、読了。
久々の若竹作品。 お気楽に読めるかなと手に取ったのですが、 シリーズ物の第5作だったようで、順番無視です。 ただ、1作目を飛ばして既に2作目を読んでしまっているので、今更順番を気にしてもアレですが。 というわけで、女探偵・葉村晶シリーズです。 古本屋でバイトしながら副業で探偵稼業の40代独身女って、 一体どんなキャラクター設定なんだ!?って感じですが、 まぁ本人がサバサバしてて、そんな身の所在を気にしてなさそうなので 読者がどうこう心配することではないのですが。 さて、コージー・ミステリ風な軽いコメディタッチのものではありまずが、 登場してくる事件は殺人や背乗りなど、なかなかヘビーなものが多いです。 女探偵だし、これはハードボイルドのジャンルに入るのかな? ただ、そう考えるには、結構、都合よく真相が向こうからやってきてくれたり 幸運にも都合よくお話が展開していったりで、 ハードボイルドっぽい硬派さが足りず、なんだか座りが悪いです。 もうちょっと日常の謎的なレベルに抑えたら、 こじんまりとまとまって読みやすいようにも思えますが、 それだとありきたり過ぎるのでしょうかね。 あと、巻末の著者自身による用語解説で、 コージー・ミステリについて、「最近では、食べ物やペットの登場する楽しげな舞台に 謎や殺人のちょい足しミステリを、主にコージー・ミステリと呼ぶようです」とあって、 「えっ!コージー・ミステリって、そういう定義なの??」と驚いてしまいました。 これってホント? ![]() |