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『往古来今』
- 2018/12/31(Mon) -
磯崎憲一郎 『往古来今』(文春文庫)、通読。

知らない作家さんだったのですが、
表紙絵がポップな感じだったので、試しに買ってみました。

が、内容は暗くて重い・・・・純文学系でした。

わたくし、内省的な描写が続く作品は苦手なんですよね。
個人と社会との交流に興味関心があるので、
その繋がりが薄くなってしまうと、読んでいてしんどくなります。
まぁ、読書癖がお子様なのかもしれませんが。

前半はほとんど頭に入ってきませんでした。
途中でカフカが登場してきて、
「あ、平野センセも言ってたカフカだ」と思ってみたり。雑念(苦笑)。

ところが「脱走」だけは、なんだか急にピントが合った感じで頭にスッと入ってきました。
なんででしょうか。
山下清という具体的な人物が登場したからでしょうか。
現実世界における主人公の話よりも、山下清の話の方が印象に残りました。
「へぇ、自分自身が嘘をつき人を騙して食い繋いでいたことを認識してたのか」と。
本題と関係のないところで引っかかってます。

というわけで、全然しっかりと読めませんでした。
この作家さんとの相性が良くないのかな。




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『本の読み方 スロー・リーディングの実践』
- 2018/12/30(Sun) -
平野啓一郎 『本の読み方 スロー・リーディングの実践』(PHP新書)、読了。

読書に関する本は、普段は楽しんで読めるのですが、
本作は、なんだかしっくりこなかったです。

アンチ速読として、スロー・リーディングを説いていますが、
じっくり読むための方法論が、「大事なところに線を引く」「接続詞を丸で囲む」といった
受験のテクニックのような形だったので、無味乾燥な感じがして、受け入れにくかったです。

確かに、こういうテクニックを駆使すると、文章の構造は良く分かるので
テストの点数を上げるための理解は進むと思いますが、
それで文学作品への共感が進んだり、感動が増えたりすることはないような気がします。

本作の特徴は、ただ読書の方法論を解説するだけではなく、
実際の文学作品を用いて、どう読むべきか具体的に解説しているとことかと思います。

漱石の「こころ」、鴎外の「高瀬舟」などがテキストになっていますが、
それほど深い読みになっているような感じもせず、
受験国語のテクニックの延長線上である印象が否めませんでした。
逆に、受験勉強もきちんとやれば、国語解釈がちゃんとできるということの証左ですかね。

新書一冊使って解説すべきほどの濃い内容ではなかったように思いました。




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『殺し屋たちの町長選』
- 2018/12/29(Sat) -
加藤鉄児 『殺し屋たちの町長選』(宝島社文庫)、読了。

ブックオフでドカ買いしてきた中の一冊。
何の前知識もなかったのですが、「町長選」という言葉がタイトルに入っていたので、
政治を風刺した作品かなと思って買った次第です。

しかし、本作の重点は「町長選」ではなく「殺し屋たち」の方に置かれていて、
あくまで「殺し屋たち」の話でした。「町長選」は舞台装置なだけで。

「東日本特殊請負業組合」にもたらされた仕事は、
愛知県の小さな町の町長選に立候補した新人候補の殺害。
報酬はたったの100万円なのに、殺し屋業界の名だたるメンバーが
それぞれの事情を抱えて名乗りをあげるという事態に。
それぞれの立場から、ターゲットをいかに抹殺するかのプロセスが描かれます。

もう、主題が「殺し屋」の方だと分かった時点で、
かなり興味は削がれてしまっていたのですが、
途中で本を投げ捨てられないのが、私の往生際の悪さです(苦笑)。
結局、最後まで殺し屋の話であり、政治的な意味付けはほとんどなし。
B級ドタバタ劇を見ている感じでした。

文章の運びもあんまり上手くないので、
読み終わるまでにメチャメチャ時間がかかってしまいました。
読書に際して往生際の悪い自分が出ちゃいました。




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『仕事が9割うまくいく雑談の技術』
- 2018/12/27(Thu) -
ビジネス科学委員会 『仕事が9割うまくいく雑談の技術』(角川ONEテーマ21)、読了。

なぜ買おうと思ったのか記憶が定かではないですが、
新書のドカ買いで買ってきた本。

自分の意思で買っておいて言うのもなんですが、
この手のコミュニケーションのノウハウを伝授する本って、
どういう読者層を想定しているんですかね?

コミュニケーションが苦手で、雑談にも詰まっちゃうんです・・・・・という人は、
正直、この本の指南を読んでも、実行できない気がします。
言われた通りしゃべれるなら、苦労しないわ!的な。
そういう人は、対面での緊張感の緩和とか、何だか心理学的なアプローチの方が
上手くいくような気がします。
まぁ、勝手な想像ですけど。

逆に、雑談バッチリな人は、こんな本に見向きもしないでしょうし・・・・となると
結局は、それなりにコミュニケーション能力はあるよ~という自己評価の人が
自己肯定の目的で読むのかなと。
「そうそう、自分もこういう意識で、その行動とってるよ!」みたいな。

そういう私自身、「私は、これはできてるな」とか、「あぁ、その観点には気づいてた」みたいな
自分の行動パターンを自己評価するような目で本作を読んでいて、
結局は自己満足のための読書なんですよね。
「私もそれやってますよ!」的な。

まあ、それが、セルフチェックとして働いていれば意味がありますけど、
ただ満足するためだけなら、読む意味ないかも。

こんなことを思ってしまったのは、
結局、この本を読んで、「これは知らなかった、すぐに実行しよう!」となる人が
どれくらい居るのかな?という単純な疑問が浮かんだからです。




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『ハロー・ワールド』
- 2018/12/25(Tue) -
藤井太洋 『ハロー・ワールド』(講談社)、読了。

父が読んでいた本。
「ずいぶん、若々しい装丁の本を読んでいるなぁ」と気になり、
私も読んでみました。

主人公はITエンジニア。
広告ブロックアプリを余暇で作ったり、ドローンを販売したり、仮想通貨を作ったり。
「父よ、68歳にして、なんて”今”な本を読んでるんだ!」と驚いてしまいました(苦笑)。

ITエンジニアが、余暇で広告ブロックアプリを作っている話から始まりましたが、
あぁ、最先端の会社で働くITエンジニアって、こういう生活を送ってるんだ・・・・・と
ある種、社会勉強になりました。
例えば、GoogleとかAppleとかの本社の職場空間の様子とか、
それぞれの会社の例えば「20%ルール」のような慣習とかはいろんなメディアで伝えられますが、
実は、そこで働く1人1人の従業員の生活って、よく知らなかったなと思いました。

私も、仕事で、Appleとの方々と向き合ってた時期がありましたが、
自分が居た打合せの空間以外の場で、Appleの人たちがどんな仕事ぶりなのか
全く想像がつきませんでした。

で、本作では、そういう部分が主人公の生活として描かれていて、
「あぁ、世界はこうやって作られていくんだな」と感じました。
広告ブロックアプリという小さな世界であっても、そこに一つの価値をもった世界が生まれてると
そんな風に感じられた小説でした。

そして、最初は、連作短編集のような構成でしたが、
後半、小説の舞台が今現在の時間を超えて未来に入ったあたりから
主人公が国家権力と対峙するような大きな話が動き出し、
もうそこからは、読む手が止められませんでした。

主人公は、自身のことを「中途半端なエンジニア」と自虐していますが、
プログラミングの技術は一流じゃなくても、この人は、「世界観を作る能力」が突出していて、
「こういう理念があるべきだ」「こんな無駄は不要だ」と判断する能力が素晴らしいなと。
それを現実のものとするプログラミングは、誰かにやらせればよいわけで、
「どんな世界観をもったプログラムを作るか」という概念をまとめられる人物が、
今後の世界を作っていくのではないかと思いました。

最後に登場した「两」という仮想通貨。
もし、この仮想通貨が現実世界に登場したら、世界はどう反応するんだろうかと
興味津々でした。

先日読んだ「プロジェクトX」の世界観とは異なる興奮が、この本には広がってますね。




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『プロジェクトXリーダーたちの言葉』
- 2018/12/24(Mon) -
今井彰 『プロジェクトXリーダーたちの言葉』(文藝春秋)、読了。

ブックオフで50円だったので買ってみました。
『プロジェクトX』は、きっと見たら面白いんだろうなと思いつつも
結局1度もきちんと見たことがない番組でした。
でも、よくバラエティ番組ではパロディ化されているので
番組の様子は何となく分かってしまうという(笑)。

さて、本作は番組のプロデューサーが、ピックアップした放送回のリーダーが
どんな言葉でプロジェクトを動かしてきたかということに焦点を当てて
簡潔に紹介しています。

『プロジェクトX』らしい、大きな困難を乗り越えていくプロセスを読みたい人にとっては
そこは端折られているので物足りないかもしれませんが、
リーダーがどうやって困難なプロジェクトのメンバーを率いていくかという
この本のテーマ自体に興味がある人にとっては、刺激的な本なのではないでしょうか。

普段は寡黙な人でも、肝心な時に皆に語り掛ける言葉を持っているということ、
それでも話が苦手なリーダーは、その場に存在しているということで何かを伝えるということ、
それまでパッとしない経歴だった人が、リーダーの役割を与えられた途端に熱く燃えるということ、
それぞれのリーダーを通して、様々なリーダー像が見えてきて、勉強になりました。

この本で紹介されているプロジェクトは、今の日本の屋台骨をまさに命がけで作ってきた
というものが多く、多くの視聴者が惚れ込んだのも良く分かります。

今も、日本の産業や世界全体の産業を前進させるべく、難題なプロジェクトに取り組んでいる
日本人は数多くいると思います。
しかし、「命を落とすかもしれない」という危険な状態の中で働いている人は、
昔に比べて大きく減ったのではないでしょうか。
もちろん、安全管理指導の徹底や、安全確保のための技術が向上したことなど
様々な要因があるでしょうし、金融産業のような、ホワイトカラー職の台頭もあると思います。
(ホワイトカラーは、逆に、過労死のような状況に面してはいますが・・・・)

それは国民生活の質の向上のために非常に大事なことなのですが、
やはり、こういう昭和の戦後~高度成長期にかけての、命の危険を制してまで
取り組んだプロジェクトの成功という時代があったからこその今なのだということに
感謝する気持ちを持ち続けることが大事なんだろうなと思います。
そういう気持ちを持つことのきっかけづくりをする番組として
存在価値のある番組だったんだろうなと思います。

こういう、信念のあるリーダーがあちこちにいて、また、こういうリーダーに
大きなプロジェクトを任そうという気概のある会社や組織が日本中にあったことが、
今の日本の経済力やひいては国力に繋がっているんだなと、
感謝の念に溢れた読書となりました。




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『数学史のなかの女性たち』
- 2018/12/23(Sun) -
リン・M・オーセン 『数学史のなかの女性たち』(文化放送)、読了。

祖父の本棚から。

数学と女性って、イメージが結びつかないですよね。
カタブツそうなおじさんがしかめっ面して数式に挑んでいる様子や
キレキレの若手数学者がスラスラと数式を書いている様子が頭に浮かびます。
全部、勝手な妄想なんですけど(苦笑)。

子供の頃、祖父の本棚にあったキュリー夫人の伝記がやたら気になってました。
「読みなさい」と言われた記憶はないけれど、祖父はキュリー夫人が好きだったようで
時々話に出てきたような思い出が。

放射能の研究成果は、性別を超えて素晴らしい業績だと思いますが、
やはり祖父としては、女性という当時はハンディキャップになったであろう要素がありながら
ここまでの業績を残したという点で、女であった私に伝えたいことがあったのかなと思います。

で、数学ですが、本当に数学の世界では、女性研究者のことを全く知りません。
Wikipediaで女性数学者を見てみましたが、書かれている名前を1つも知りませんでした。

そもそも数学界においては女性が活躍した実績が乏しいのか、
それとも女性の業績を低く評価するようなことが行われてきたのか
果たしてどうなのかな?というのが読む前の関心事でした。

しかし、読みながら思ったのは、私自身にそこまで数学の知識がないので
紹介されている女性数学者の業績が、どれほど凄いものなのか判断がつかないという(爆)。
中学・高校では、数学は大得意だったのですが、受験数学と研究者の数学は
全然別世界ですわよね~。

あと、ちょっと文章が説明文的で、
もうちょっと物語を盛り上げるために小説チックな演出が欲しかったな・・・・という思いも。
欲張りですみません。




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『払ってはいけない』
- 2018/12/22(Sat) -
荻原博子 『払ってはいけない』(新潮新書)、読了。

実家で父が読んでいたので、そのままもらってきました。
テレビで時々見かける経済評論家さんの本です。

儲けるための本ではなく、損をしないための本だと位置づけ、
「持病があっても入れる保険には入るな」とか
「金融機関が勧めてくる投資商品は買うな」とか
分かりやすく〇×をつけていきます。

自分の収支を見直したい人には参考になる本かなとは思いますが
あまり深く解説せずに結論だけを述べている感じなので
金融の知識は身につきません。
だから、この本で言われてる50個のことしかできない読者が大半だろうなと(苦笑)。
まあ、この50個のことですら実行するのか分かりませんが。

金融とか経済の分野って、やっぱり仕組みを知ることが面白いと思います。
サブプライムローンとか、悪の根源のように言われてますが、
やっぱり仕組みを考えた人は凄いと思います。

仕組みが頭に入ってないと、この本で言われてることだけ守ってても、
結局、他のところで損をしてそうです。
知ることって、本当に大事だと思います。




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『小生物語』
- 2018/12/21(Fri) -
乙一 『小生物語』(幻冬舎文庫)、読了。

乙一さんというと、どうしてもデビュー作のイメージが強くて、
不気味で早熟な青年という像を勝手に作り上げていたのですが、
本作では、ユーモアあふれる人間性が前面に出ています。
(まぁそれも創作かもしれませんが)

自分のHPを作ったことをきっかけに、
そこに日記を書いて公開し始めた著者。
その日記を一冊にまとめたものです。

ただ、日記の体裁は取っていますが、
全く創作のように思えるものや、短編の没ネタのような感じのものもあります。
虚実入り乱れたところが、この人の不思議な作品の感じとマッチしてます。

作品を書いたりゲラを校正したりという仕事の話はほとんど出てこないので
より創作感が強い印象を受けます。

ところで、この日記の前半は愛知県豊川市が舞台なのですが、
豊橋技術科学大学の卒業直後だったようです。
小説家なのに科学技術大学の工学部で学んだというのは面白い経歴ですね。
著者の作品に活かされているのでしょうか。

そして、著者が作ったというHP、今もあるのかしら?と検索してみたら
それっぽいのがありました(笑)。
まさに、インターネットが一般の人たちに広がり始めたころの
自作HPのレベル感そのまんまです。




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『崖っぷち町役場』
- 2018/12/20(Thu) -
川崎草志 『崖っぷち町役場』(祥伝社文庫)、読了。

全く知らない作家さんでしたが、地方におけるお仕事小説のようだったので
試しに買ってみました。

愛媛県の南予町という架空の町の役場が舞台。
前町長が作った「推進室」という謎の部署に異動になった主人公。
主管業務がないため、担当不在の面倒案件ばかりが持ち込まれ・・・・・。

お仕事小説というよりは、日常の謎ジャンルですかね、これは。
持ち込まれる面倒ごとの真相を、主人公と偏屈な先輩とで解決していきます。
主管業務がないという設定の時点で、お仕事小説としての魅力は薄れますわな。

そして、地方というテーマですが、過疎化とか、空き家とか、学校の統廃合とか、
移住者と地元民との対立とか、今の地方の課題がそのまま現れてます。
ただ、日常の謎のレベルで話が進むので、
これらの課題も味付け程度で、あまり踏み込んだ話にはなっていきません。

後半になると、先輩・一ツ木による地方の課題の解説が多めになり、
そこは読んでいて興味深かったです。
特に「都市は周辺の人口を吸い上げて成長していた」
「都市そのものの人口は疫病の大流行や戦乱で減る一方だった」という考察。
これは、私自身、持ってなかった視点だったので、へぇ~と思って読みました。

主人公の結衣、先輩の一ツ木、室長の北のそれぞれが思い描く
南予町の将来像、あるべき姿が違っているという分析も、なるほどなぁと。
地方公務員は、自分の自治体が存続していけるように仕事をしているのでしょうけれど、
確かに、この3つの考え方に分かれているのかもしれませんね。

ところどころに面白い視点があっただけに、
小説としての味わいが足りないのが何とも残念です。




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