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『アホは神の望み』
- 2018/11/29(Thu) -
村上和雄 『アホは神の望み』(サンマーク出版)、読了。

読みたい本リストの中にあって、ブックオフオンラインで見つけたので購入。

タイトルと、サンマーク出版という出版社の特徴から、
宗教的な考察をしている本かと思ったのですが、
科学者による科学者としての心得を書いた本でした。

それはそれで良いのですが、
タイトルのような遊び心があるのかというと、文章は結構まじめで、
そこは少し拍子抜け。
編集者さんがタイトルで上げ底しちゃった感じです。

書かれている内容は、一般的な科学者の心構えという感じです。
常識を疑え、無駄を嫌がるな、傲慢なになるな、などなど。

なんで読みたい本リストに入れたのか良く分からない本でした。




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『官僚の責任』
- 2018/11/27(Tue) -
古賀茂明 『官僚の責任』(PHP新書)、読了。

何となくタイトルで買ってきました。
現役の官僚が今の官僚制度を批判した本ということで、
「へぇ、どんな官僚なんだろう?」と読む前に検索してみたら、
あの、『報ステ』を突然降板した人だとわかり、
テンション下がっちゃいました(苦笑)。
(実は前にも著作を読んでいたのに、すっかり忘れてました)

本作を書いた当時はまだ現役の官僚だったということですが、
経済産業大臣官房付という閑職に追いやられ、
本作を書く暇があったということのようです。
本来であれば、現役官僚なのだから、本なんかで主張せずに、
省内で改革論を主張して実現すれば良いわけですからねぇ。

ま、嫌味はこの程度にしておいて、
おもに官僚制度の改革について述べた本ですが、
現役官僚らしく、官僚がどんなテクニックを使って自分の成し遂げたいことを
実現ししていくかというところは、面白く読みました。
自分も、そんなテクニックを使いこなせるようになrたいなと(爆)。

こういう話を読むと、一般の人は、ずる賢い官僚が自分の利益のために良くない方法で
仕事をしているという印象を持つのかもしれませんが、
私は、「こういう制度を実現させたい」と企画した内容を何とかして成立させようとする
官僚の努力のようなところに注目してしまいます。
自分にも、こんな粘りが欲しいなと。

あと、著者が書いている官僚制度改革案は、現実味がどのくらいあるのかは分かりませんが、
「変える」という空気を作るためだけでも、チャレンジしてみたら面白そうだなと思うものが
いくつかありました。
こういう著者みたいな突飛なことをいう人がいて、反対に保守的な人もいて、
省内で議論していくと、落ち着くべきところに落ち着くのかなという気がします。
著者のような人が何人もいると混乱するでしょうが、1人2人が騒ぐ分には
活性剤として必要な役割なのかなとも思いました。

一方、前半では当時の民主党政権への批判を書き連ねていますが、
やっぱり立場上、官僚が公の場で政権を批判することには違和感を覚えます。
企業が、取引相手の悪口を言いふらすような感じでしょうか。
本に書くのではなく、官僚(しかも上の方の職位)なんだから、
政治家に直接モノ申しなさいよと言いたくなります。

それ以外にも、著者は、自分自身に対する修飾語が過剰で、
読んでいて鼻白んでしまいます。
自分自身の役職について「抜擢された」と表現したり、
「私は決してヒーローではない」と、暗に自分はヒーローなのだとアピールしたり、
自己PRが過剰だという点では、相当クセのある人物です。

そこさえ我慢できれば、官僚制度の実態を知るには面白い本でした。




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『お客さま!そういう理屈は通りません』
- 2018/11/25(Sun) -
吉野秀 『お客さま!そういう理屈は通りません』(ベスト新書)、読了。

クレーム対応についてノウハウを伝授する本。

基本的に、「無理筋なクレームには毅然とした態度で応じる」、
「クレーマーにつけ込まれるようなミスはしない」という冷静な対処を求めています。

私自身は、あまり理不尽なクレームを受けたことがなく、
こちらの非を詫びて対処するということで丸く収まる事例ばかりだったので、
本作の話も、若干、他人事のように読んでしまいました(苦笑)。

でも、同じ会社のお客様相談室の人たちの愚痴や、
電話でガンガン言われている同僚の姿とかを見てきたので
そういう人たちのことを思いながら読んでました。

結局は、経験と知恵と忍耐力の複合格闘技ですよね。
つけ入る隙を与えずに、ここだ!というポイントで一撃必殺。
これを職業というか担当業務にしている人は、本当に凄いなと思います。

私が前に勤めていた会社のお客様相談室長は、
社員みんなのビッグマムみたいな存在でした。
人生に役立つノウハウは、そういう人の中に蓄積されているんでしょうね。




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『抱擁、あるいはライスに塩を』
- 2018/11/24(Sat) -
江國香織 『抱擁、あるいはライスに塩を』(集英社文庫)、読了。

不思議なタイトルのお話。
そして、登場人物たちはもっと不思議。

神谷町の大きな洋館に住む一家。
祖父母と両親と4人の兄弟姉妹、さらに叔父と叔母。
このうち長女の父親は別にいて、弟の母親も別にいるという
奇妙奇天烈な家族構成。

そんな家族1人1人、もしくは家族に縁のある人の視点から
1章ずつ、この家族のことが語られていきます。
それも、それぞれの人物の人生に大きな意味を持つ出来事を
時間を遡ったり下ったりしながら、描いていきます。

30年前に戻ったり、5年進んだり、著者の構成力に身をゆだねる感じですが、
とても良いスムーズに話は進んでいきます。
「そうそう、この人物のバックグラウンドが知りたかったのよね」とか
「この人たちの変な関係性ってどこから来てるんだろう」とか
まさに知りたかったことが次に描かれていくという心地よさ。

兄弟姉妹は、学校にも行かず、自宅で家庭教師による教育を受けており、
家庭教師はお爺ちゃん。
友達もごく限られた人しかいない状況です。
そして、突然、父の思い付きで小学校に通うことになりますが、
環境になじめず3か月でリタイア。
また家庭教師生活に戻ります。

こんなんじゃ、この4人は、社会不適合者になっちゃうよ~と
心配しながら読んでいったのですが、
家の教育方針に従って大学だけは行くことになってます。
この場合の大学とは、男子は東大で女子はお茶の水限定。

で、大学に行ってみると、友人ができ、恋人ができ、
変わった人というレッテルを貼られながらも案外、なんとかやっていけるようになり、
人間って逞しいんだなと思わずにはいられませんでした。
それとも、大学生の柔軟さというところでしょうか。

そして、家を出ていく子供たち。
家から離れられない大人たち。
対照的です。

親子3代にわたる日々が描かれていきますが、
終盤、この人の死は悲しかったです。
なんだか家の明かりが明滅してしまうかのようで。
それに合わせるかのように、稼業の貿易業が傾いてきたような描写があったり、
この家の未来に暗雲が立ち込めてきそうな予感がありながら、
物語は幕を閉じます。

火が消える最後のパッと明るくなる瞬間が、
この本で描かれた後半20年間だったのかもしれませんね。





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『トリックスター』
- 2018/11/23(Fri) -
濱嘉之 『トリックスター』(講談社文庫)、読了。

以前読んだ著者の本が、エネルギー政策を真っ向から取り上げており
なかなか面白かったので、次の一冊にチャレンジしてみました。

裏表紙のあらすじには、財閥婦人、新興宗教、大物代議士というフレーズが踊っており、
私が好むカルト系のお話かと期待したのですが、
いかにしてカルトが信者を獲得していくのかという方面の話ではなく、
信者数も成長してもう出来上がっている新興宗教組織が、組織保身に走る話であり、
カルトというより単なる組織防衛の話で期待外れ。

そして、その宗教がらみの話以外に、
マレーシアのゴム園主の未亡人という大金持ちや
ヤクザ社会とつながっている代議士なども登場してくるのですが、
複数の事件があまりにも大きな規模で繋がっているので、
物語の進行が、淡々とそれぞれの事件を描くことに終始してしまっており、
小説としてのワクワク感があまり感じられませんでした。
要は、話を広げ過ぎじゃないですか?ってことです。

どれか1つか2つぐらいの事件に絞った方が
もっとスリリングな展開を描けたのではないかと思います。

新興宗教は、本作で3つ登場してきますが、
「このカルト教団がモデルかしら?」と推測しながら読むのは面白かったです。




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『魚影の群れ』
- 2018/11/22(Thu) -
吉村昭 『魚影の群れ』(新潮文庫)、読了。

タイトルに惹かれて買ってきました。

収録作品は4つ、どれも人間社会の中に動物が登場してきます。
侵入者であったり、飼育であったり、道具であったり、漁業であったり。
多様な人間と動物の関係性を描いています。

吉村作品らしい、淡々としたドキュメンタリータッチの作品なんだろうなと想像はしていましたが、
冒頭の「海の鼠」の、冷徹で迫力のある描写に圧倒されました。
とある小島に現れたドブネズミの集団。
瞬く間に数を増やし、足の踏み場もないほどに。
畑を荒らし、漁獲をついばみ、家の中に侵入してくるドブネズミたち。
毒餌で殺しても、ネズミ捕り機で捕獲しても、一向にその数は減りません。

小説としてみると、ドブネズミと人間の鼬ごっこを淡々と描いていく形で、
物語としての大きな山場がないので、これは実話をモチーフにしているのかな?と感じましたが、
どうやら宇和島沖の戸島という島で起きたことのようです。

しかし、物語に山場がないからと言って、本作がつまらないということではなく、
島民の苦悩や県の担当者の努力、そして何よりドブネズミの描写が緻密で、
十分に読ませてくれる作品でした。

次の「蝸牛」は、食用カタツムリがもたらす中毒性の味わいがテーマで、
こちらも、「ついつい手を伸ばしたくなる中毒性」というのが
なんだか不気味です。

「鵜」は、動物としての鵜そのものよりも
鵜飼の家族を通した人間物語だったので、本作の流れの中では、
ちょっと興味を失ってしまいました。

最後に表題作の「魚影の群れ」。
こちらは、大間のマグロ一本釣りにかける漁師とその娘、そして恋人の
3人を軸に話が進んでいき、主人公のベテラン漁師の不器用さが
なんとも言えず健気な感じで、中盤までは微笑ましく読んでいました。

しかし、中盤で、事故が起こり、その事故に面したベテラン漁師の行動が
周囲の人間に対して大きな影響を及ぼします。
そして、当の本人も、事故当時から心の奥に感じていた疚しさが
消えてなくなることがなく、居心地の悪い日々を送らねばならないことに。

咄嗟の際に、そういう行動をとってしまうということが、
前半の漁師の性格を描いた日常シーンにより、納得的に受け入れられ、
やっぱり吉村昭はすごいなと素直に感心。

どの話も、淡々とした一行で幕を閉じるのも、これまた印象的でした。




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『山内一豊の推理帖』
- 2018/11/21(Wed) -
鯨統一郎 『山内一豊の推理帖』(光文社文庫)、読了。

今日は、ちょっと緊張する大きな仕事があったのですが、
その会場に向かう電車の中で、緊張をほぐすのに良い本はないかと思い、
積読だった本作を持っていきました。

で、ビンゴ!

山内一豊の妻・千枝が、一豊が遭遇した難問珍問の答えを探すのに手助け・・・・
というか、千枝が答えを見つけて一豊が上司に報告するのですが、
どの謎解きもうまくいき、一豊は50石持ちの貧乏侍から2万石持ちの大名になるという
まぁ、それはそれはお気楽な内容でした(笑)。

でも、そのお気楽さに今回は助けられました。

千枝の機転の利かせ方、一豊の素直さ、一豊が使える主君の判断力や行動力
そして家臣たちの競争と協力、戦国時代エンタメとして面白かったです。

謎解きというか、トリックの方は、「そりゃ無理だろ」と思うものもありましたが、
(影武者が暗闇で切り付けられた事件とか)
まぁ、読書の目的が目的だったので、目くじら立てずに読めました。




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『イワシと気候変動』
- 2018/11/20(Tue) -
川崎健 『イワシと気候変動』(岩波新書)、通読。

私の住んでいる町では、冬になるとサンマの丸干しを作る文化がありますが、
ここ2年、まるでサンマが網にかからず、燃料代が勿体ないからいと
船さえ出さないシーズンが続いています。

漁師さんたちが口にするのは「台湾漁船に先に獲られた」「黒潮の大蛇行のせい」
「そもそも魚がいなくなった」などなど、多種多様。
どれがホントかわからないけど、いろんな要素が絡まっての結果なんだろうなと思ってます。

で、本作は、イワシが獲れなくなった理由を
「レジームシフト論」という枠組みで説明しようとします。

「レジーム」というと、社会科学を学んできた私にとっては「政治体制」みたいな
意味で捉えており、そんな用語が魚の世界に出てくると違和感を覚えてしまいますが、
海水温と大気の数十年単位の変動により水産資源の増減を説明しようとするもの。

結構専門的な解説が多いので、ちょっと食いつきにくいところがありますが、
学会における仮説の取り扱われ方なども紹介されていて
そこは面白かったです。

ただ、こういう分野の専門家ではない私にとっては、
「で、いつサンマは獲れるようになるの?」という問いへの答えやヒントが欲しかったわけで、
やっぱり答えるのは、まだまだ難しいようです。




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『無名』
- 2018/11/19(Mon) -
沢木耕太郎 『無名』(幻冬舎文庫)、読了。

「読みたい本リスト」の中にあり、ブックオフで見つけたので買ってきました。

どんな本んだから読みたいと思ったのか全く記憶が買ったのですが、
著者の父の晩年、脳出血で入院してから亡くなるまでの期間、
看病をしながら感じ考えたことをまとめた本です。

面白いという簡単な言葉では言い表せない読後感が、
じーんと胸に響きました。

私自身、ガン末期の叔母の看病で病院に数日泊まり込んだ経験がありますが、
患者さんは苦しくて大変そうなのに、看病している自分は大してすることがなく、
言われた雑用をこなしたり、話し相手をしたり、薬で意識がもうろうとなった時の
幻覚なんかの症状に対応したり。あとは横に居てじっとしているだけ。

でも、精神的にはすごく疲れます。
病状の急変とか、何かあったらどうしようという不安が常にあるのと、
あと何時間この人と一緒に過ごせるのだろうかという切迫感と。
夜になると薬の影響で変なことを言ったり、起き上がろうとしたりするので、
対応するこちらも睡眠がウツラウツラで、何もしていないのにしんどかったです。

そんな日々を著者は急な入院の付き添いという立場で経験し、
父の寝顔を見ながら、昼間の父の言葉を思い出しながら、父との思い出を呼び起こします。
また、父がこっそり作っていた俳句を眺めながら、
「句集を作りたい」と密やかな計画を練ります。

父親が入院した時点では、退院して早く普通の生活に戻したいという思いが
著者をはじめ、家族全員が持っていたので、それほど悲壮感なく入院生活が過ぎていきます。
しかし、一度決まっていた退院の日程が延期になり、そのまま退院予定日さえ
設定されないような状況が続き、なんとなく「死」というものが迫ってきているのを感じることに。

このあたりから、もっと作品は重く苦しいものになっていくのかと懸念しましたが、
著者の描写が句集の話を軸に進んでいくようになったことや、
上手く挿入される子供の頃の父との記憶の健気な感じに隠されて
それほど悲壮感を感じませんでした。
そのあたりが著者の上手さであり、反面、父親に対して他人行儀な言葉遣いをする息子としての
ある種の冷たさみたいなものも感じてしまいました。

いずれにしても、本作の後半も、そこまで悲壮感漂う展開にならなかったのは、
家族1人1人の芯の強さかなと思います。
父の病状の変化に精神的に参ってしまう家族が出てきていたら、
句集のことなんか考えている暇、なくなっちゃいますものね。

ちょっとだけ気になったのは、家族の誰もが、父の病状や病気について
あまり科学的な面から考察しようとした形跡がないこと。
著者に至っては、点滴の調整弁を勝手に動かしてしまい、父の腕を腫れさせて
慌てて医師に電話をしてたりして、「何やってんだ!(怒)」と思ってしまったことも。
もうちょっと病気や医療について科学的に向き合ってもよいのでは?と思ってしまいました。

終盤は、お葬式のシーンになりますが、
ここはもう、叔母の姿が瞼にちらつき、読み進めては意識が叔母の通夜の夜に向かうということを
繰り返してしまいました。
たぶん、私は、入院や通夜、葬儀というと、これから先もずっと、
叔母のことを思い出し続けるんだろうなという諦めとも絆とも判断のつかない感情を抱いてしまいました。




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『直感力』
- 2018/11/18(Sun) -
羽生善治 『直感力』(PHP新書)、読了。

羽生さんの本は3冊目ですが、本作は内容が薄かったです。

タイトルの「直感力」について触れているのは数ページであり、
断片的なエッセイを一冊にまとめただけのような、まとまりのなさでした。
どこかの雑誌に連載されたコラムをまとめたものかな?と思ってしまうぐらい。

子供の頃、どのように将棋に出会って、
どのように将棋と向き合ってきたかというエピソードは興味深く読みましたが、
でもそれって、「直感力」とは違うよなぁ・・・・・なんて。

『決断力』『大局観』とヒットしたので、
それにあやかった名前を付けました・・・・・程度の本でした。
残念。




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