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『配達あかずきん』
- 2018/05/16(Wed) -
大崎梢 『配達あかずきん』(創元推理文庫)、読了。

書店員が主人公の日常の謎解き。
謎解きよりも、お仕事小説の要素に期待して手に取りました。

冒頭、主人公のキャラクター紹介的なまくらの部分で、
お客様が主人公に本探しを依頼するシーン。
タイトルや著者名、出版社名が分からないだけでなく、
内容もあやふやな状態で本探しを依頼する客。こんな奴いるんかい!?と疑問噴出で、
主人公の本に対する愛情を見せるための過剰な演出ではないかと訝しみましたが、
著者は元書店員ということですから、こういうお客さまもいるんですかねぇ・・・・・。

というわけで、何となく主人公との距離が空いたまま読書はスタートしてしまいましたが、
お仕事小説としては、書店員の役割分担とかシフトとか、1日の業務の流れとか
そういうものが断片的にでも情報として分かるので、興味深かったです。

店頭のディスプレイコンテストとか、そういう販促戦略があるのねーという
出版社側の事情も分かったりして、面白かったです。

日常の謎の方は、ちょっと無理やりすぎないか?と思えるような
動機や犯行内容が多く、もう少しリアリティのある方が好みでした。

シリーズ化されているようなので、お仕事小説と割り切って
もう1冊読んでみようかな。


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大崎 梢

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『0葬』
- 2018/05/13(Sun) -
島田裕已 『0葬』(集英社文庫)、読了。

タイトルは「ゼロ葬」と読むそうです。
初めて知った言葉でしたが、著者のあとがきを読むと、
この本の発売以来、世間に根付いたそうで、検索してみると確かに「0葬」を謳った
葬儀屋さんのサービスがそれなりにヒットしてきました。

私自身が30代で、まだ父母の葬儀というものに現実味を感じていないので
そういうニュースや広告があっても、目にとまらないんでしょうね。

さて本作は、「0葬」に代表されるような現代の葬儀の在り様をレポートした本。
「0葬」とは、火葬した後の遺骨の処理を火葬場に任せて引き取らない方式を指す
著者の造語だそうです。

そもそも、火葬場で遺骨を引き取らないという選択肢があることに驚きました。
地域によって、条例や火葬場のルールで、引き取り必須のところもあるようですが、
火葬場で供養(処分)してくれる地域も多いようです。

行きつくところまで行ってしまったような感じですが、
遺族がそれで納得してるなら、それで良いのかなという印象です。
そもそも葬儀も法事も、亡くなった本人のためよりも
遺された人々のケアの意味合いが強いと思うので、
遺族が好きなようにすればよいのかなと。

本作では、「0葬」の具体的な内容というよりは、
なぜ「0葬」というものが生まれてきたのか、その背景にはどんな環境要因があるのか
というような分析が具体的にされており、興味深かったです。

墓に遺骨を納めて供養する 
⇒ どの家も墓が必要になる
⇒ 人口が増え家が増えると必要になる墓の数も増える
⇒ 日本の土地は狭く墓にできる土地も限られている
⇒ 墓の取り合いになる
⇒ 墓が高騰する
⇒ 安く供養できる方法が求められるようになる

宗教とか信心とかのアプローチではなく、
経済的なアプローチで「0葬」へ行く着く過程を描いていて
社会科学的に面白い題材だなと思いました。

宗教学的な考察も必要だと思いますが、
葬儀の費用の推移とか、お布施の相場とか、
とにかく下世話なデータをしっかり集めて、これまでブラックボックスだった部分を
明らかにしていくというのも、社会学者として重要な活動だなと思いました。

現代の宗教というもののデータを記録し、考察を行い、推移を観察する、
今の時代というものを掴むのに、面白い研究だなと思いました。

本作を、「0葬」のガイドブックとして期待すると、がっかりすると思います。
本作はあくまで社会学の本だと思います。


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『にゃんくるないさー』
- 2018/05/12(Sat) -
北尾トロ 『にゃんくるないさー』(文春文庫)、読了。

久々のトロエッセイ。

ところが、いつものアグレッシブなテーマ設定ではなく、
ネコとの日常を描いた、非常に穏やかな本でした。

愛猫家と呼ばれる人ほどにはネコにベタベタではなく、
あくまで野良猫で家の庭に入ってきたもののうち
面倒なく関わり合えそうなネコだけを選んでいるので、
結構、視線は冷静です。

でも、ネコNGな借家にネコを入れちゃったり、
公園で日がな一日ネコを眺めていられるというのは、
やっぱりネコ病患者さんですね(笑)。

庭にやってきたネコに残り物を投げてやり交流を図るものの、
来なくなればなったで、「最近来なくなったねー」でサッパリしているので、
特にネコに思い入れのない私としては、
抵抗感の少ないネコエッセイでした。

最後の方は、家でネコを飼い始めている(しかも2匹!)ので、
もう立派なネコ病患者さんですが、
ネコとの間の不思議な距離感が面白いエッセイでした。


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『食後のライスは大盛りで』
- 2018/05/11(Fri) -
東海林さだお 『食後のライスは大盛りで』(文春文庫)、読了。

お気楽読書に本作を。

食に関するエッセイが多いですが、
スキーや犬、競馬など、日常的なテーマも幅広に扱ってます。
本当に、身の回りのことに、どんなふうに興味の眼差しを向けているのか
ということが勉強になります。

個人的には、山菜採りの話や、温泉一泊作法、夜行列車、東京湾クルーズなどが
本音ベースの毒舌も少しずつ混じりながら、ふふふと笑えます。

裏表紙の紹介文のとおり、
「深く考え込まないで」読むのが良いのでしょうね。


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『ハッピーロンリーウォーリーソング』
- 2018/05/11(Fri) -
枡野浩一 『ハッピーロンリーウォーリーソング』(角川文庫)、読了。

枡野さんの短歌集。
昭和な感じが残っている東京の風景写真と一緒に綴られています。

短歌の印象は、イマドキのネガティブさ。
引きこもりとは違う種類だけど、教室の隅でいじけてそうな感じの
そんな根暗な男の子の頭の中を覗いたような感じがしました。

世の中の観察眼は鋭いけれど、
それを外に向かって発する勇気はなくて頭の中にこだまさせているような感じ。

でも、みんな、自分の中に、そんな根暗な一面を持っていると思います。
だから、どの歌も、何かが自分の中に残っていきます。
「そうだよね」と素直に頷けるものもあれば、
「そうかもしれない」と思ってしまうものもあります。
共感度はいろんなレベルがあるけれど、腑に落ちる感じが味わえます。

今を感じられる、興味深い歌集でした。

でも、全ページに写真を入れて、かつコストを抑えようとしたせいか、
紙質が分厚くて開きにくいので、読みづらかったです。


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『暴走する国家恐慌化する世界』
- 2018/05/08(Tue) -
副島隆彦、佐藤優 『暴走する国家恐慌化する世界』(日本文芸社)、通読。

佐藤優さん、一時期は面白いと思って続けざまに読んでいたのですが、
最近はご無沙汰してしまっています。

本作では、冒頭から、なぜ副島隆彦という人をこんなに持ち上げるのか
ちょっと、しっくりきませんでした。

もともと私に副島さんへの苦手意識があるからかもしれませんが、
いきなり「アポロ11号の月面着陸はなかった」という陰謀論の話から始まって、
ついていけませんでした。
(副島さんの『人類の月面着陸は無かったろう論』は、単なる陰謀論に終始した話ではなさそうなので、
 一体どんなことが書かれているのか機会があれば読んでみたいと思います)

陰謀論的な話から、ロスチャイルドとかロックフェラーとかの話も出てきますが、
ユダヤ系の話を理解しようとするなら、やはりユダヤ教やキリスト教への最低限の理解が
必要になってくるんだなぁと痛感。私の苦手なジャンルです。
欧米人のバックグラウンドを理解するには、神学的な知識が必要ですよね。
それがベースにあるから、佐藤氏の分析は大局観を感じられるんですよね。

あとは、日本の政局についてですが、
リーマンショック直後で、民主党への政権移行が期待されていた時期のため
お二人とも民主党政権誕生にワクワクしているようで、
そこは、ひと時代昔の本だなぁという印象を受けてしまいました。

結局、一番面白かったのは、佐藤氏によるロシア政府の内情解説といういつもの要素。
学識者が自分の別荘に客人を招いてどんな議論をしようが
政府は干渉しないというところに、ロシアという国の不思議な懐の深さを感じてしまいました。


暴走する国家 恐慌化する世界―迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠暴走する国家 恐慌化する世界―迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠
副島 隆彦 佐藤 優

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『僕らの事情。』
- 2018/05/07(Mon) -
デイヴィッド・ヒル 『僕らの事情。』(求龍堂)、読了。

読みたい本リストの消化、どんどん行きますよ~。
ニュージーランドの作品だそうです。

主人公は15歳の男の子ネイサン。どこにでもいるような少年です。
その親友のサイモンは、筋ジストロフィーを患い、電動車いす生活。
でも、サイモンはネイサンと同じ学校に通い、同じクラスで授業を受けています。

そんな彼らの学校生活が、いろんな友人や先生、家族との関係も絡めながら
明るいジョークや毒の効いたジョークとともに綴られていきます。

まず驚いたのは、体が弱っていく段階に入っているサイモンも、
一般の学校に通っているという点です。
私の勝手なイメージでは、介護が必要な子供は養護学校だったり病院内で教育を受けたり
するのかなと思っていました。
日本でも一般学校に通うのが普通なのかもしれませんし、サイモンがNZLでも特殊なのかもしれません。
私の知識がないだけかも。

主人公のネイサンは、ごく普通の少年として描かれていますが、
サイモンの置かれた立場をしっかり理解しており、
また、新しい場面場面で、ネイサンを配慮しようと努めており、
なんて素敵な少年なんだろうかと思いました。
彼の母親との会話を見ていると、親の教育のおかげだなと感じます。

そして、サイモンも、自分の境遇を嘆くことなく、
毒舌を吐きながら、毎日を前向きに生きようとしています。
サイモン自身も、親友のネイサンを悲しませないように、気遣っている様子が
とても良くわかります。

こんなに素敵なコンビなのに、死はすぐそこに迫っている。
切ないです。

死ぬのは辛い。
でも、親友の死を受け止めるのも辛い。
15歳の少年・少女に待ち受ける未来は、とても重たいものです。
でも、彼らは、自分たちなりのやり方で、それぞれがサイモンの人生に向き合っています。
すごく強い子供たちだなと思います。

これも一つの教育としてキレイゴトで読んでしまうのは、あまりに無責任だなと思いました。
サイモンにとっては友人がたくさんできて短くとも濃い人生になったという思いもありますが、
でも、友人たちを遺して自分だけが若くして死なねばならないというのは
本当に悔しいことだろうなと思います。
遺された側の子供たちも、そうそう簡単には友人の死は受け止めきれないだろうなと思います。
どんなに覚悟していたとはいえ、実際に死に直面するのは、想像とは違っていると思います。
そのショックは、計り知れません。

重度の病状を持つ子供を、どんな教育環境、友人環境で過ごさせるべきなのか、
私には結論が出せない問題です。
読み終わった後も、考えがまとまりません。

でも、せめて、ネイサンとサイモンは、幸せな関係だった、
思い出の中では、幸せな関係が続くんだろうなと思わせてくれる作品でした。


僕らの事情。僕らの事情。
デイヴィッド ヒル David Hill

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『京都鴨川殺人事件』
- 2018/05/06(Sun) -
梓林太郎 『京都鴨川殺人事件』(祥伝社文庫)、読了。

シリーズものとしては、十津川警部シリーズ浅見光彦シリーズなど、
いろいろある中で、私は茶屋次郎シリーズが一番好きかもしれません。

本筋よりも、秘書のサヨコとハルマキとのやり取りが面白いというか、
ホッとさせてくれるというか。
しかも、サヨコの調査力や情報整理力は意外と有能だったりして推理のキーになったりします。
が、本作では、あまり活躍がありませんでした・・・・・残念。
いつも飲みながら無駄な電話をかけてきて、茶屋センセの活動を邪魔しているだけのような。
その分、今回は牧村編集長がやる気を出したりしていて、変な回でした。

肝心の事件の方は、茶屋次郎の京都のガイドをしていた地元出版社の女性社員が
ガイド途中に突然いなくなったことから始まります。
この行方不明事件が、なんとも現実味がないというか、目的がみえないというか、
彼女に共感できないので、その後何日も潰して彼女を探し回る面々の行動を
応援できない感じでした。

彼女を探す過程で、彼女の周りに行方不明者が他にもいることや、
過去の未解決事件などがどんどん出てくるのですが、
そもそもの彼女の行方不明事件の方向性があまりにボンヤリしているので
他の事件に広がっていっても繋がりを意識することができず、
いろんな事件の話を同時並行で読まされているような気分で、
読むのが面倒になってきてしまいました。

もう少し、それらしい繋がりをヒントとして出していってもらえないと、
ただ単に、1人の怪しい男がどの事件にも関与していそうだという話だけでは
相互の事件の関係を整理しながら読んでいくことができず、頭が疲れます。

実際、コトの真相については、
「何もあなた、そこまで犯行の手を広げなくても・・・・・」みたいな感じで
やっぱりリアリティを感じられませんでした。

こんな事件の謎解きのために、
何日も会社の仕事を片手間程度で済ませられる出版社の人々も
なんだかなぁ・・・・でした。


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梓 林太郎

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『おりの中の秘密』
- 2018/05/05(Sat) -
ジーン・ウィリス 『おりの中の秘密』(あすなろ書房)、読了。

こちらも「読みたい本リスト」にあった作品。
取り寄せたら「指定図書 小学校高学年」の帯が(苦笑)。

耳は聞こえるのに話せない主人公の男の子。
友達とも馴染めず、ひとり動物園で過ごすことが多い彼は、
ある日、ゴリラの檻の前に佇んでいると、メスゴリラが手話で話しかけてきた・・・・・・。

軸となる話は、話の出来ない少年とお母さんゴリラとの手話による交流なのですが、
そこに、障害者への配慮とみせかけた差別だったり、
動物園の種の保護プログラムとみせかけた商業主義だったり、
結構、難しい社会問題も含んでいて、大人でも考えさせられる作品です。

少年の決死の突撃により、
ゴリラの檻の中には、悲しみに満ちたお母さんゴリラ、少年、そして生まれたばかりの少年の妹。
檻の外の人には、間違って檻の中に入ってしまった(?)少年の手から
小さな妹をゴリラが奪って人質にしているように見えてしまいます。
慌てふためく大人たち。

しかし、少年は自分の意思でゴリラの檻に入り、妹をゴリラに預けたのです。
その真意は、そして、何をみんなに伝えたかったのか・・・・。
話せなかった少年が、自分の思いを伝える・・・・展開は王道ですが、
それでもやっぱり、彼の訴えたかった内容が胸を打ちます。
そこに重ねられる、お母さんゴリラの思いも。

喋れないという状況は、自分の心理状態が招いた困難だったかもしれませんが、
それを克服し、人間の思い上がった動物管理の考え方をも打ち破り、
自らの思いを周囲に納得させるという少年の行動力には、あっぱれです。


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『幸福者』
- 2018/05/03(Thu) -
武者小路実篤 『幸福者』(新潮文庫)、通読。

父の本棚から。
苦手意識を持つ白樺派の作品に再度チャレンジ。

師匠が主人公たち弟子に向かって語った言葉をつづり、
また終盤には師匠の決断した行動を弟子の目から描いた作品。

師匠の言葉の一つ一つを味わえば良いのでしょうが、
私には、どうにも、仏教説話を読んでいるような気分になりました。
「アーナンダよ・・・・・」みたいな。

著者の理想像が師匠という姿で現されているようですが、
師匠と書生という関係性が絶滅に近くなった現在では、
どうにも存在感を持って読むことができませんでした。

神様と悪魔が人間の本性について議論したというエピソードは
面白く読みました(笑)。


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