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『さよなら小売業!』
- 2017/08/31(Thu) -
鈴木豊 『さよなら小売業!』(PHP)、読了。

タイトルだけ見てドカ買いしてきた本だったのですが、
てっきり、生産者が消費者に直販を始めるという内容だと思い込んでました。
が、実際は、小売業者が知恵を絞れ!という話で、
どこまで行っても小売業の話でした(苦笑)。

単なる売り場に商品を並べるモノ売りから、
ライフスタイルを提案していく売り場づくりにに変えていきましょうということなのですが、
今更感の溢れる内容でした。
まあ、10年以上前の出版なので仕方ないですが。

あと、著者独自の言葉遣いが理解をしにくくしています。
「四重奏経営」とか。
毎度、「どんな方針のことを言ってるんだっけ?」と前に戻らないと
頭がついていけない感じです。

そして、専門用語もちょこっとアレンジされてるのが読みづらいです。
ダイバーシティを「ディバーシティ」とか。
本来の発音はそうなのかもしれませんが、
日本語として定着した横文字は、一般的な書き方をして欲しいなと。

ただ、各章の冒頭に示される著名人の言葉は、
含蓄のあるものが多く、興味深かったです。


さよなら小売業!―四重奏経営(カルテット・マネジメント)でライフスタイル提案業を目指せ!さよなら小売業!―四重奏経営(カルテット・マネジメント)でライフスタイル提案業を目指せ!
鈴木 豊

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阪神×ヤクルト
- 2017/08/30(Wed) -
今年2度目の野球観戦は、
初めて阪神甲子園に行くことができました!

甲子園 20170829 (23) (800x450)

長期ロードから戻った初戦です。
否が応にも、甲子園球場は大盛り上がり。
このサラウンドな感じの応援、素晴らしい迫力ですね。

先発は勝ち運に見放された小野投手。
ヤクルトは石川投手。
新人 vs ベテランの、勝ち運ない対決でした。

初回から、小野投手は制球が不安定で四球出しまくり。
ボール先行で、2回終わった時点で40球ぐらい投げてて、
こりゃダメだわ・・・・・という感じでしたが、
ヤクルトの拙攻に助けられ、残塁の山、まさかの無失点投球。

こんな状態で、阪神ファンからは野次がバンバン飛んでおり、
褒めるだけじゃない、真剣な応援ぶりに、さすが甲子園・・・・・と変な感動。
でも、この、メリハリのある応援スタイルは好きでしたわ。
ちょっと野次が続くと怖かったけど。

ちなみに、この日ホテルに戻ってから各スポーツニュースを梯子しましたが、
どの番組でも、「小野のストレートが冴える」みたいな初勝利オメ編集になっていて、
ニュースって信じちゃいけないと思ってしまいました(爆)。

甲子園 20170829 (6) (800x450)

見事な夕焼けを眺めながら、
陽が沈むころには小野投手の投球も安定してきて、
阪神側は、これまたヤクルトの拙守に助けられてポコポコと3得点。
なんだか、スカッとする点の取り方ではなかったですが、
相手のエラーに付け込んで、きっちり得点まで持っていくというのは
大事なスキルだと思いました。

終盤は、桑原、マテオ、ドリスのリレーで、安定の完封リレー。
序盤のモタモタした展開はどこへやら・・・・9時前に試合は終わってしまいました(笑)。

甲子園 20170829 (17) (800x450)

梅野選手やロジャース選手が見られなかったのは残念。
それはまた、来年の観戦までのお楽しみですね。

甲子園 20170829 (22) (800x450)

勝利の儀式、ヒーローインタビューも見られて、
満足な観戦でした。

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『歴史を変えた太陽の光』
- 2017/08/29(Tue) -
桜井邦明 『歴史を変えた太陽の光』(あすなろ書房)、読了。

図書館のリサイクルフェアでもらってきた一冊。

前々から、地球温暖化Co2犯人説の対抗理論として
太陽化学の本を読みたいと思いながらも、まったく手つかずの状態が続いてます。
高校生向けのような印象の本ですが、とりあえず目の前にあるものから読んでみました。

やさしい日本語で書かれていますが、
しかし、解説されている内容は、しっかり太陽物理学の話であり、
高校生読者は、興味を持った人が真剣に読まないとしんどいかも・・・というレベルです。

気象予報士の立場からすると、基本的な太陽物理学の話なので、
目新しい話ではなかったですが、復習にはちょうど良かったです。

また、太陽の話ばかりをするのではなく、
「北ヨーロッパの人の身長が高いのは、体積当たりの表面積を抑制して
熱が逃げないようになっているのだ」というような生物学との関係や、
「黒点数が増えると太陽活動が活発になり小麦は豊作、価格は下落」
というような経済面への影響も述べられており、
まさに、人間の生活と密着した太陽物理学という位置づけになっているので
読んでいて面白かったです。

こういう理科の本に子供の頃に触れられると、
もっと理科が身近になるだろうなと思える良書でした。


歴史を変えた太陽の光―太陽研究の発展 (科学・技術の最前線)歴史を変えた太陽の光―太陽研究の発展 (科学・技術の最前線)
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『ジャイロスコープ』
- 2017/08/28(Mon) -
伊坂幸太郎 『ジャイロスコープ』(新潮文庫)、読了。

短編小説集です。

「ジャイロスコープ」という言葉は、
確かに、伊坂作品を表すのにぴったりの言葉かもしれません。
「軸を同じにしながら各々が驚きと意外性に満ちた個性豊かな短編小説集」を指すのだとか。

ただ、本作に関しては、あまり、その表現が合わなかったように思いました。
個々の作品が突飛すぎて、軸を感じられなかったからかもしれません。

最初、「浜田青年ホントスカ」の主人公2人を軸に
連作短編集が展開されていくのかと誤解しておりました(苦笑)。

続く「ギア」は、筒井康隆と椎名誠を足して3で割ったような印象の世界感。
でも、伊坂風の味付けが、あんまり得意ではありませんでした。

「二月下旬から三月上旬」の幻想的な感じというか、
現実と非現実の間を揺らぐような世界感も、私には不得意な感じ。

「彗星さんたち」は、伊坂作品にしては珍しくお仕事小説で、
しかも、新幹線の清掃員という、今となっては知られ過ぎている世界の話で、
あんまり新鮮味を感じることができませんでした。
何も、伊坂さんが書かなくても・・・・・という感じです。

乗り切れないまま最後まで来てしまい、
書き下ろしの「後ろの声がうるさい」で、これまでの短編を繋いでいこうとしていますが、
これまた、ちょっと強引かな。

期待していた伊坂ワールドとは、少し趣が違っていました。


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日本気象学会中部支部公開気象講座
- 2017/08/27(Sun) -
久々に、日本気象学会関連の講座に参加してきました。

テーマは「黄砂・PM2.5・エアロゾル」ということで、
主に中国大陸内陸部から飛来する自然由来または人工物の微粒子について
現地観測、衛星観測、体への影響といった3つのポイントから
専門家が業績を発表する構成でした。

少し前は、人工由来のPM2.5について
北京あたりの劣悪な環境を映した映像とともに
センセーショナルな報道がなされていましたが、
いつの間にか静かになりましたね(苦笑)。

今年は、GM中に大規模な黄砂現象があったりしましたが、
人工物にしろ黄砂にしろ、偏西風に乗って西から流れてくるわけで、
大陸の東に位置する日本としては、根本的に防ぐが難しい課題です。

で、観測やシミュレーションにより予想の精度を上げ、
また、防衛策として、疫学的な対策をしっかりとりましょうということになるわけです。

今回、特に興味深かったのは、九州大学の弓本先生が発表した
気象衛星を用いた観測やシミュレーション。
ひまわり8号の運用開始により、観測精度が非常に上がり、
静止画像での観測から、コマ送りに近い観測にまで進歩したことで、
飛来物の動きを追えるようになってきたとのこと。

実際に、その動画を数種類見せてもらいましたが、
黄砂や煙の動向が把握できて、一目瞭然です。
これにより、シミュレーションの評価も事実に即してできるようになるわけで、
大きく予報モデルの精度向上に寄与するものと思われます。

静止衛星と極軌道衛星のそれぞれの特徴を活かした観測システムの向上は、
「与えられた条件の中で、最大限の成果を上げるためのメカニズムの構築」という観点で、
設計思想や運用思想を学べたことが一番面白かったです。

気象学は、とかく予報について目が行きがちですが、
こういうシステム作りのところに、私は一番惹かれます。
今後、観測の成果が出てくることが楽しみです。

DSC_0908 (641x1024)



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『絶叫委員会』
- 2017/08/26(Sat) -
穂村弘 『絶叫委員会』(ちくま文庫)、読了。

雑誌のコラムをまとめたものです。
著者が日常生活で聞いた、目にした言葉で、
強烈な印象を残したものについて書いています。

どの言葉も、文章にするとドキッとするものだったり、
ワハハと思えるものだったり、十分面白いのですが、
それ以上に、著者の言葉に対する感度の高さに感心します。

歌人なんだから当たり前だ!と怒られてしまいそうですが、
自分自身の中にある言葉に敏感なだけでなく、
自分の外にある言葉、他人が発した言葉にも
ここまで敏感だということに、やっぱり凄いなと。

私だったら聞き逃していそうですし、
わざわざノートにメモるような行動に移らないと思います。
そこを地道に拾っていく著者。
そりゃ、変な会話にも遭遇しますわね。

あと、著者が子供の頃、右と左が分からなかったという話。
どっちがどっちか分からなくなるということではなく、
東西南北と違って、自分が動けば右の方向が変化するということで
混乱したという穂村クン。

私、右と左を、方向として捉えたことがなかったので、
この視点は目からウロコでした。

絶対的な方向か、相対的な方向かということなのですが、
この2つを混乱させた穂村クンの考え方にも驚きましたし、
この2つを特に混乱することなく理解した幼い私にも何だか驚いてしまいました。

視点って、本当に面白いですね。


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穂村 弘

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『シアター!』
- 2017/08/25(Fri) -
有川浩 『シアター!』(メディアワークス文庫)、読了。

貧乏劇団が内部分裂で借金苦に。
劇団主宰が金の無心に泣きついたのは実の兄。
兄は、これを機に、弟にまともな職についてほしいと願い、
借金300万円を肩代わりし、2年以内に返済できなかったら劇団解散という
激烈な指令を出す。そして、自ら経理を買って出て・・・・・

劇団が舞台という時点で、
私の頭の中では、劇団SHA.LA.LAのイメージで動き始めました(笑)。

個々の劇団のメンバーも、鉄血宰相の兄も、
キャラクターがしっかり立っていて、
逆にちょっとキャラが強すぎてマンガチックになってしまっている部分は、
劇団という非日常的な舞台を用意することで、上手く吸収しちゃってる感じです。

そして、小劇団という、ビジネスベースには乗せにくい事業を
見事にビジネスライクに運営しようとする鉄血宰相の手腕が、
これまた小気味良いのです。

そもそも、この劇団自身にそれなりの集客力があったという点がミソで、
コスト管理ができていなかったから赤字だっただけで、
コストを見直せば十分利益を出せるという部分で、
お仕事小説的にも面白くなっていたのかなと思います。

これが、集客が今一つの劇団が舞台だったら、
「そんな簡単にお客さん増やせないよ~」てな感じで
リアリティの無さを突っ込んでたような気がします。

ひとつ、リアリティの面で気になったのは、
公演最終日に起きたトラブルの内容と影響度合い。

前日に舞台上で起きたトラブルの対処の仕方が非常に上手いというか、
演劇のライブの息遣いみたいなものを取り込んで
見事にトラブルから解決までを描いていたので、
そのドキドキワクワクの感覚のまま最終日のところも読み進んでいったら、
「え、そんなトラブルやっちゃうの???」という感じで
肩透かしを食らったような気持ちになりました。
この展開は、作品の設計としてどうだったのでしょうかねぇ?

本作では、300万円の借金を肩代わりした後の
最初の公演までしか描かれていないものの、
非常に前向きというか、先行きが明るい感じで終わっているので、
何となく、このままいけば300万円返せそうな雰囲気を感じるのですが、
続編ができたということは、何かしらまた事件が起きているはずで、
どんな展開になっているのか楽しみです。


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『持ってる人が持っている共通点』
- 2017/08/24(Thu) -
小笹芳央 『持ってる人が持っている共通点』(幻冬舎新書)、通読。

小笹さんって、こんな表面的な話をする人だったっけ?と
思ってしまうほど、浅い感じの本でした。

ハンカチ王子の発言で一気に広がった「持っている」という言葉、
その言葉が送られるような人は、どういう人なのかということを、
主にアスリートの活躍シーンとともに分析した本。
・・・・・でも、「分析」というほど深くはないかも。
そういうシーンを「振り返った」という程度ですね。

共通点のあぶり出しも中途半端だし、
結局、何をして、どういう状態に至れば「持っている」人になれるのか
この本では糸口がつかめないように思えました。

私の考えからすると、「持っている」というのは、
しっかりとした分析と計画の元に、日々努力を重ねた人が、
その成果を発揮した際に、これらの努力を照れ隠しでごまかすための言葉が
自分は「持っている」という表現だと思ってます。

イチローにしても、本田にしても、ハンカチ王子にしても、
不断の努力をしてこその活躍であり、そこから得た自信があるので、
自分自身のことを「持ってる」と冗談交じりに言えるのだと思います。
そして、それは、「努力の賜物です」というクソ真面目なコメントを言わないための
照れ隠しなのでありまして、「持ってる」とう表現を
一生懸命分析するのも間抜けな話ではないかと思ってしまいます。

「持ってる」人が、陰でどのような努力を積み重ねているか、
結局、大事なのはそこだと思います。
そして、自分には何ができるか、ですね。


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『彼女の嫌いな彼女』
- 2017/08/23(Wed) -
結川恵 『彼女の嫌いな彼女』(集英社文庫)、読了。

相当お久しぶりの結川作品

商社勤めの23歳のOLと35歳のOLが、
中途入社の27歳男子の気を引きあうバトルを展開。
そこに部長同士の権力闘争が絡まって・・・・・。

何だかコメディマンガみたいな筋立てで、
私の中の結川作品のイメージとギャップがありました。

そもそも、権力闘争はあるにしても、
スパイみたいなことって、ここまでまともにやるんですかね?
お互いに、相手の動向を探ることはあっても、
スパイを送り込むのは、バレたときの代償が大きすぎて
メリットがない気がするんですよね。

そして、色恋仕掛けでスパイ活動をするというのも、
バレたときに、スパイ当人だけでなく、スパイを送り込んだ側も
相当なダメージを追うはずで、これもメリットがないように思えます。

私のいた会社では、こういうの聞いたことなかったけど、
商社の世界じゃ、あることなのかなぁ?

というわけで、この本の中で繰り広げられていることに
親近感が湧かなかったので、最後まで作品との間に
距離を感じてしまいました。

ま、35歳・瑞子のような、仕事に一生懸命で、気づいたら35歳独身だった・・・・・
という境遇の人には、親近感が湧きますが(爆)。
彼女が後輩の女の子たちを見下している内容は
非常に共感できました(笑)。

でも、23歳・千絵の頭の働かせ方も、
熱意が仕事に向かずに恋愛に向かっているというだけで、
人間観察の内容とか、面倒な人のかわし方とか、
なかなか面白いなと思いました。
なので、クリスマス・イブに千絵が取った行動は、
「お、凄いじゃん!」と感心してしまいました。
このくだりで、彼女のことが好きになりました。

全体としては、結川作品ってこんなんだったっけ?という感じになってしまいましたが、
ま、恋愛小説というものは、こんなものなのかな・・・・とも思った次第です。


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『光媒の花』
- 2017/08/22(Tue) -
道尾秀介 『光媒の花』(集英社文庫)、読了。

連作群像劇というスタイルの道尾作品は初めてでした。

冒頭の「隠れ鬼」。
主人公が子供の頃の夏に避暑地で経験した年上の女性との出会い。
熊笹の生い茂る空き地へ、毎日会いに行くというファンタジーな感じで物語は進みますが、
終盤、やっぱり道尾秀介!というグロい終わり方。
タイトルを見返すと、また不気味さが光ります。

というわけで、続く「虫送り」も、これまた不気味。
道尾秀介×虫という組み合わせが、すでに気持ち悪いですが、
虫送りというある種の農耕儀式を、ここまで不気味な道具に使う人も
なかなかいないのではないでしょうか。さすがです。

ところが、この不気味さが、「冬の蝶」あたりから
少しずつ、人間の内面の葛藤の積み重ね、ひいては人生を描いていく作品に
タッチが変化していきます。
このあたりの匙加減が絶妙。

苦しみを背負ってきた人間が、
ある出来事が切っ掛けで視野が変わり、
過去の自分と決別するとともに、周囲の人にも寛容になれる、
そういう前向きな気持ちになる読後感が、
道尾作品ということを忘れさせてくれるほどでした(苦笑)。

連作群像劇のつながり具合も面白かったですし、
そのつながりの中で感じられるグラデーションもまた面白い作品でした。


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