『ナース裏物語』
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- 2016/09/30(Fri) -
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中野有紀子 『ナース裏物語』(文春文庫)、読了。
某病院での異物混入殺人事件が世間を騒がしていますが、 何となくその流れで、手元にあったナース・エッセイをば。 現役ナースが、看護の世界や病院という職場について書いているのですが、 結構、本音の話もあり、面白おかしく書いてます。 ただ、さすがナースという職業を10年以上こなしている方なだけあって、 ものすごくバランス感覚に優れています。 これ以上暴露してはゲスな感じになるという限度をわきまえつつ、 この程度のネタではお利口さんぶってて面白くないというラインもわかっている。 そして、個々のエピソードの病院や看護師が特定されないように配慮しながら、 慶○大学医学部に関してはメッタ切り(爆)。 こういう先輩がいたら心強いだろうなぁ・・・・と思わせるだけの 人間力がにじみ出ているエッセイだと思います。 薬品の紛失・盗難事件や、医療事故にまで至らないミスまで ちょっと素直に話しすぎかも・・・・・と思うところはなくはないのですが、 さすがに異物混入による殺人事件の話は出てきませんでした(苦笑)。
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『四国はどこまで入れ換え可能か』
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- 2016/09/29(Thu) -
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佐藤雅彦 『四国はどこまで入れ換え可能か』(新潮文庫)、読了。
タイトルを耳にしたことがあったので、 試しに買ってみましたが、なんとマンガ作品でした・・・・・。 ネット配信していたアニメーションを マンガ形式で本に落とし込んだもののようですが、 これは、アニメで見た方が、テンポがあって面白かっただろうなと思います。 つまりは、印刷メディアの作品としてはイマイチだったということで・・・・。 余韻のない読み方をしてしまったのが、良くなかったかもしれません。
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『理系アタマのつくり方』
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- 2016/09/28(Wed) -
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四ツ柳茂樹 『理系アタマのつくり方』(サンマーク出版)、読了。
理系アタマの話なのに、 小説調の物語展開で、回りくどい!! もっとサクサク説明してくれよ~と思っちゃいましたが、 理系アタマに苦手意識を持っている人を読者にするなら 小説仕立てがとっつきやすいのかもしれませんね・・・・・。 内容的には、各章のまとめページにある部分を 繋ぎ合わせれば言い尽くせてしまいそうで、 正味20ページぐらいの情報量の本だと思います。
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『愛と欲望の日本史』
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- 2016/09/27(Tue) -
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須藤公博 『愛と欲望の日本史』(黄金文庫)、読了。
時間つぶし程度のつもりで手に取ったのですが、 短い文章の中にもストーリー展開があって 結構面白い本でした。 その理由は、著者が予備校講師だから。 自分の受験生時代、夏期講習・冬期講習だけ 名古屋の予備校に通ったのですが、 そこでの日本史の講義は本当に面白かったです。 ただ知識の詰め込みテクニックを教えるのではなく、 きちんと日本史をストーリーで語って聞かせて、 興味が持てるような、もっと知りたいと思うような講義をしてくれます。 学校の先生の授業は、教科書を教えているような印象ですが、 予備校の講義は、日本史を教え、かつ受験テクニックを教える両輪のバランスが 不思議なところで取れているなと感心した次第です。 (学校の先生、もっと工夫しなさいよ・・・・・と思ってしまいました) 当時、代ゼミを使っていたのですが、 その代ゼミの日本史の先生が書いた日本史裏話的な本は、 くだらないエピソードも満載でしたが、読んでいてワクワクする日本史の本でした。 本作も、もっとデカデカと「予備校講師の本」と表記してくれれば 最初から期待を持って読んだのに(笑)。
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『よくわかる食品業界』
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- 2016/09/26(Mon) -
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芝崎希美夫、田村馨 『よくわかる食品業界』(日本実業出版社)、通読。
ちょっと仕事の関係で業界の概観を捉えたかったので読んでみたのですが、 うーん、あまりに総花的で得るものがありませんでした。 広く浅く・・・・・・確かに概観をつかむには必要な観点なのですが、 情報の質が、Wikipediaにすら到底及ばないような掘りの浅さで 読んでいて面白いと思える解説がどこにも見当たらなかったです。 非常に残念。
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『マザコン』
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- 2016/09/25(Sun) -
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角田光代 『マザコン』(集英社文庫)、読了。
様々な形での「母と子」を描いた短編集。 やはり、自分の目線としては、 娘の立場から母親の姿を見た作品が気になります。 特異なキャラクターの母親が出てくれば、 「自分の母は常識的で大人しい人で良かった」と思ってしまいますし、 対立する母娘が出てくれば、 「うちはベタベタするような仲の良さはないけど心の距離は開いてないから安心」と思ってしまいます。 そうやって安心する一方で、 「私は母の本音は知らないなぁ・・・・」と感じしまいますし、 「母もきっと私の本音は知らないだろうし、知らないことを認識してそうだなぁ」と感じます。 うちは、あんまり本音で話す母娘ではないですし、 時事ネタとか近所のニュースとかは良く話すのですが、 自分自身の話(特に感情の部分の話)はほとんどしません。 もうそれで三十何年来てしまっているので 今更、どうこう変えたいという思いもなく、 この距離感がちょうど良いと私は思っているのですが、 いざ、母が無くなる瞬間が訪れたときに、 母のことを知らないことに動揺してしまうのではないだろうかという不安を 少し感じてしまった読書となりました。 そんな瞬間が訪れるのは、まだまだ先の話だとは思いつつも、 ちょっと気になる宿題を残されてしまった気分です。
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『本居春庭』
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- 2016/09/24(Sat) -
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山田勘藏 『本居春庭』(鈴屋遺蹟保存会)、通読。
祖父の本棚にあった一冊。 本居宣長については、いずれちゃんと勉強しなきゃなぁ・・・・と 思いながらも、ほとんど手つかずの状態が続いています。 で、息子さんについての本があったので、 とりあえずそちらから目を通してみました。 が、やはり間接的な興味では、読みこなすのが難しかったです。 ・・・・・当たり前ですけど。 父・宣長の大きな期待を背負いながら、 失明という病魔に冒され、家督を譲るという目に遭った春庭。 しかし、失明前には父の口述筆記などを担い 多くの文章を記録に残したほか、 失明後も文法の研究で功績をあげるなど 努力の人であり、後世のために業績を残す人だったのだと分かり 地味ながらも自分の道をしっかりと歩むことの大切さを実感しました。 伊勢商人の血を引く本居家にふさわしい 手堅さが感じられる人物像でした。
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『赤目四十八瀧心中未遂』
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- 2016/09/22(Thu) -
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車谷長吉 『赤目四十八瀧心中未遂』(文春文庫)、読了。
直木賞を受賞したとき、「あ、三重県が舞台だ!」と印象に残りました。 が、「心中」と来ると、そのような情念世界が苦手なため、 作品として手に取ることをためらっていました。 その後、映画がヒットした時も、 なんだか情念ドロドロな画面の感じが苦手で、見ずじまい。 ようやく、今回、100円で見つけたタイミングで読んでみました。 まず驚いたのは、文章のリズム感の心地よさ。 独特な漢字表現と相まって、濃い日本語の世界に浸ることができます。 一方で、大阪の底辺部の世界をのぞき込んでいるという怖さ。 リズムは心地よいけれども、これ以上読み進めたら、 突然真っ暗な闇が広がっているのではないかと思えてしまう世界観。 部屋にこもって焼き鳥のモツの仕込みをし続ける主人公の狭い視野の範囲で 物語が語られていくため、劇的な事件が目の前で起きることはなく、 その変化の乏しい日々が、これまた、いつか世界が爆破するのではないかという ドキドキ感が増幅していきます。 終盤、パタパタっと世界が動いていき、 いつのまにか赤目口に降り立った主人公とアヤ。 尼崎から赤目までの一気に世界が動ていく感覚から一転して、 赤目四十八滝を歩く2人の穏やかな感覚。 昔、赤目四十八滝には遊びに行ったことがあるのですが その清涼感は素晴らしものでした。 尼崎で体にまとわりつき、こびりついた泥を落とすことができそうな それほどの清々しさを感じる滝々の道です。 最後、この終わり方は、様々な展開の想像を可能にするものだと思いますが、 冷静に考えると暗い展開が待ち受けていると思われるのに なんだか読んだ印象は明るい光を感じるものでした。 この光は何だったのでしょうか。 これも、深い森にある赤目の滝が与えてくれた光なのでしょうか。
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『東南アジア四次元日記』
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- 2016/09/21(Wed) -
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宮田珠己 『東南アジア四次元日記』(幻冬舎文庫)、読了。
著者が会社を辞めるきっかけとなった東南アジア旅行のお話。 すでに著者の本を何冊か読んでいるので、 こういう旅行をする人だという前知識があって 旅の話にふんふんと入っていけるのですが、 よくよく考えてみると、半年間旅行をしたいからという理由で職を手放すのは 相当な覚悟が伴う決断だろうなと。 この本でもさらっと書かれていますが、 旅のために会社を辞める一連の流れを ガッツリとエッセイで読めたら面白いだろうなと期待しちゃいました。 さて、本作での旅行の内容ですが、 香港、ベトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー、マレーシアと巡っていきますが、 とにかく、あちこちの変なものを必死に見て回っています。 特に、いくつかの変な寺院が印象に残ったのですが、 何でそんなもの作るの?という目的不明のモノから、 何でそんな表現をするの?という見せ方不明のものまで、 アジアらしいケバさとクドさが畳みかけてきます。 東南アジアの奥の深さというか、 真っすぐじゃない世界観というか、 ま、「四次元的な」空間が堪能できるエッセイです。 写真もふんだんに収められており、目でも楽しめます。 というか、写真がなければ信じられないような世界が広がっています(笑)。
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『幸せになっちゃ、おしまい』
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- 2016/09/19(Mon) -
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平安寿子 『幸せになっちゃ、おしまい』(幻冬舎文庫)、読了。
小説作品で見せるウィットに富んだ会話や女の性をシニカルに分析する視線が エッセイでも楽しめるかな?と期待して買ってきましたが、 冒頭で3.11の原発問題などの話しが出てきて、 あれれ?なんだか重たいな・・・・・と。 すると今度は、自身の旅行エッセイ等の章になり、 重さはなくなったものの、おばちゃんのお小言みたいな印象で、 小説作品が持つポップな感じがあまりありません。 小説では、主人公たち20代や30代の女性の少し上の世代の人が 書いているのかな?と思うぐらいの、自然な若々しさやポップさがあるのに、 エッセイでは露悪的なぐらいおばちゃん風を吹かせており イメージが全然違いました。 後半に増えてくる、社会を考察したエッセイは、 視点の面白さや、世相を切り取った絶妙な言い回しが、 平女史らしい面白さだなと、やっと思えるようになりましたが、 エッセイ集として全体を眺めると、 なんだか非常にちぐはぐとした印象を残す一冊でした。
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